その日の夕方。冬夜はすぐに梨花ちゃんに報告をした。陰鬱な雰囲気を出してしまっていたのか、梨花ちゃんは少し不安そうである。
「冬夜、安心なさい。これでハッキリとしたわ。入江は黒幕じゃない」
「梨花ちゃん、竜宮さんの立て籠もりが終わって皆無事だったら、君と沙都子ちゃん二人で園崎家の地下室へ向かってくれ」
「園崎家にはもう伝えているの?」
「今日の夜、すぐに園崎家へ向かおうと思う」
もう今は協力者が存在しない。富竹さんと入江先生は死亡し、鷹野さんは連絡が途絶えた。大石さんは竜宮さんの持つ手帳に執着している。
「私、諦めたくない」
「!?」
それは悲痛な叫びのように思えた。ポツリと呟いた彼女の言葉が胸に刺さる。そうだ、諦めたくない。ここで諦めるわけにはいかないのだ。
「だから冬夜、そんな顔をしないで」
「・・・ありがとう。目が覚めたよ」
協力者がなんだ。俺には彼女を生かすという使命がある。やらねばならないのだ。心から奮起していくような気がしてくる。
起きたことに対して反省会をするのは全て終わってからだ。黒幕を見つけてぶっ飛ばす。そのことだけを考えよう。
ドタバタする中、冬夜はその日の夜に園崎家へ向かった。突然の訪問に対しても園崎家は親切に来客用の部屋へ案内をしてくれる。
対応をしてくれたのは魅音ちゃんではなく、雇われの家政婦さんであった。お茶を出されて待機をする。すぐにお魎さんと魅音ちゃんの両者が部屋へ入ってきた。
「夜に訪問とは穏やかじゃないんね」
「突然ですみません」
「大石さん絡みですか?」
えぇ?なぜ大石さんの話が出るのだろうか。いやいや、それは置いておこう。
「梨花ちゃんと沙都子ちゃん。二人を園崎家地下に匿ってくれませんか?」
「二人を?」
「殺される可能性が高い」
「梨花ちゃまを殺そうとするやつがおるんなら、全面戦争しかありゃせんじゃろう!」
「相手は大きな組織です。もう既に協力者だった富竹さんと入江先生は殺されました」
もう言える範囲なら全て伝えた方が良いだろう。それで突拍子もないと見捨てられるのであれば、それはその時だ。
「興宮近くでの事故死じゃないんですか?」
「ほぼ間違いなく。犯人が誰かは分からない。でも、今回の『オヤシロ様の祟り』として狙われるのは梨花ちゃんなんです。お願いします、彼女たちを匿ってください」
「匿っても犯人は諦めにゃあせんじゃろう。綿流しには組のもんは動かせんのが辛いのぉ。警察も最近は張り込みが多いんね」
そうか、園崎家の荒事をする人がいないのであればお魎さんたちを巻き込むわけにはいかない。園崎家に匿っても見つけ出されて殺されてしまうだろう。
「冬夜さん。どういう状況なのか教えてくれませんか?」
「魅音ちゃん・・・。
「大丈夫です、突拍子もないことでも信じます。先生が言うなら本当のことなんでしょう?」
惚れた弱みに漬け込んでいるような気がする。少々心が痛むが、しっかりと話をしよう。冬夜は話し始める。ループのことは説明はできないが、多少ぼかして雛見沢症候群のことを、女王感染者も、東京やら山狗部隊も。
「その『東京』がもしかしたら去年調べられなかった原因な気ぃがするんよ」
「なるほど・・・」
「それでも構わんね。綿流しが終わったらすぐに二人を園崎家に連れてきなさい」
「分かりました」
これで解決をしたというわけではない。匿う先は見つかったものの、それで諦める相手ではないだろう。
「私もその時まで黙っておきます。犯人が誰か分からないなら、下手に相手を刺激してしまいますから。先生はどうされるんですか?」
「俺も匿われてばかりではいられない。やれる限りはやるよ」
一緒に匿われてしまっては頼み込んでいる園崎家に対して申し訳なかった。自身にできることを最後までやり遂げる必要がある。
園崎家との連携が無事に終わり、冬夜は一息つく。まだ解決はしていないものの、園崎家ならば殺されてしまった富竹さんや入江先生のようにはならないだろう。もう深夜を回ってしまった雛見沢を、街灯のない中で懐中電灯片手に歩く。そういえば学校の様子も見ておかないとな。
学校近くまで歩いていると、学校内の校舎から光が見えた。雛見沢分校の校舎はなるべくお金をかけないため夜中に警備など入らない。つまり、あの光は・・・。
冬夜は学校から離れて監視をする。時間が少し経ち、その光を出していた張本人が学校の校門から出てきた。竜宮レナ、彼女が出てきたのである。彼女が今何か仕掛けたならば、立て籠もりが始まるということ。もう深夜になっているので日付的には今日か。綿流しの前日、このタイミングは悪すぎる。立て籠もりの後に綿流しを無事に終えて、その後問題なく地下施設へ連れていけるだろうか。
竜宮さんは大きな仕事を終えた後だからか、どこか油断しているようにも見える。しかしここでこちらが慌ててはいけない。彼女の持っている鉈がこちらに向いたら即逃げをしなくてはいけない。
緊張が走るなか、竜宮さんは鉈をぶんぶんと回しながらダム現場だろうか、その道へと歩いていく。どうやら冬夜とは反対方向らしい。
完全に姿が見えなくなって少し時間が経った後、冬夜は学校に侵入した。目的はもちろん、彼女が何をしようとしているか確認して、それを防ぐためである。
まずは物置小屋の確認をする。何が無くなっているのか分からないが、現状問題はなさそうである。爆発物らしき物も見つからない。
続いて職員室や教室を確認する。特に問題はなさそうだ。何もないというのが恐ろしい。絶対何かあるはずだ。そう思い色々教室内を確認するのだが、それらしい物は見つからない。
一生懸命探すものの、全く見つからない。もしかして立て籠もりをしないのか、そう悩んでいると変な臭いがしてきた。何の臭いか、それは分かる。原付で給油している時に嗅いだことのあるもの。そう、ガソリンの臭いだ。
それを理解してから冬夜は様々な所を見ていく。そもそも爆発が起こる規模や生徒全員が犠牲になるほどのものであれば、すぐに見つかるものだと思っていたのだが・・・。
雛見沢分校はそこまで大きくない宿舎である。部屋の隅から隅まで確認をしても見つからず、教室内で特に臭いが強くなる。いや、まさかそんなことは・・・。
学校の最上階へ向かい窓を開ける。そこからガソリンの臭いがした。ガソリンがあるのはこの付近らしい。まさか屋根の上に爆弾を設置しているとか?それで爆発できるのか?
一度疑問に思ったのならば確認をしなければならない。冬夜は恐る恐る屋根を渡る。何か変な物が見つからないか、そうキョロキョロと見ていると・・・。
「有ったよ、マジか」
建物の桟近くに、謎のタイマーらしきものが有った。見るからに時限爆弾ですと言わんばかりのタイマーがある。近くによればすぐに分かる。桟にガソリンを撒いたのだ。なるほど、桟を伝ってガソリンが学校の周囲が負けるようになっている。タイマーを恐る恐る手に取ってみる。良かった、爆発しない。
このタイマーの位置、外からは見えないようになっているし屋根を伝わない限りは見えないようになっている。うまく設置したものだ。ならばこのタイマーはこちらで処分をしておこう。他に爆弾らしきものは見つからない。問題は彼女がどのように放火をするかだ。教室内を撒けるようにガソリンが置かれていると思ったのだが、巧妙に隠されているのか見つからない。
結局の所、爆発物らしきものを発見はできたものの放火に対しての問題は多く残されてしまったのである。