ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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所詮この程度

 綿流し前日。立て籠もり事件当日となった今日。冬夜は度重なる徹夜により学校では目が虚ろになっていた。

 女子生徒が教室に入り、変な臭いがすると報告をくれる。確認をすることを伝え、知恵先生には臭いの原因を探ります、ぐらいで留めている。冬夜は部活メンバーに状況を説明をして爆発物を取り除いたことだけは伝えた。ガソリンは見つかっていないことも同様に伝える。それに対して部活メンバーはすぐに行動してくれた。ガソリン探しのために地道に探してくれるのだが見つからない。もしや手荷物で持ってくるとかだろうか。冬夜は廊下とグラウンド両方を散策しながらガソリン探しと竜宮さんに備える。

 

 教室内では隙を見て魅音ちゃんと梨花ちゃんが話をしていた。おそらく綿流し後のスケジュール確認をしてくれているのだろう。彼女たちの段取りの速さに舌を巻いた。

 廊下で爆発物の確認をしていたその時、声をかけられる。

 

「先生、おはようございます」

「おはよう」

 

 ふっと言われて思わず答える。背後から声をかけられた人物は竜宮さんで間違いなかった。振り返ろうとすると、視線の端に光る物が見える。いつの間にか鉈を首元にかけられていた。

 

「・・・これは、どういう意味かな?」

「先生、今日で全て終わるんです。大人しく教室まで行きましょうか」

 

 彼女は楽しそうに言う。冬夜にはそのいつもよりも少し高い声音が恐ろしく思えた。

 

「ち、知恵先生は?」

「先生は外出されましたよ?先生知らなかったんですか?」

 

 最悪である。この小さな学校で知恵先生とすれ違わなかった事に自分の悲運さを嘆きたくなった。知恵先生が外出するなら、こちらも色々と見回らずに待機できたというのに。いや、もしかしたらそれも竜宮さんの手の内だったのかもしれない。

 

「ほら先生、教室へ」

「竜宮さん。落ち着いてくれると有難いんだけど。まずは鉈を降ろそうか―――っ!」

 

 竜宮さんは鉈を少しだけ冬夜の首元へ近づけた。少しだけ首の皮が切れてしまったらしい。鋭い痛みが走る。

 すると教室から誰かが出てきた。

 

「冬夜さん?知恵先生が外に向かっているのが見えるんですけど・・・。れ、レナ!?」

 

 出てきたのは魅音ちゃんだった。すまない。油断していて本当にすまない。俺が人質一人目になるだなんて。

 あぁ、園崎詩音さんの時に油断をしたというのに。何を学んだというのか。歩いて三歩で忘れる鶏でも危機管理ぐらいは分かるんじゃなかろうか。

 

「魅ぃちゃんも教室に戻って。ほら、先生も入りましょう?」

 

 普段ならば一言何か言うのだが、人質の状態では何も言うことができない。しかも後ろから狙われているせいで、反撃をする前に殺されると思った。

 魅音ちゃんと冬夜は大人しく教室へ入る。生徒全員、いや、部活メンバーを除いた生徒たちは現状を理解していないような面持ちだった。

 すると竜宮さんは思いっきり鉈を教壇へ叩きつけた。おや?今なら反撃できるのでは?そう思った矢先、鉈を持っていた右手とは違い、左手にはナイフがいつの間にか冬夜の首元で待機していた。用意周到なことである。

 今まで腹を刺されたことがある冬夜にとって、刺され慣れているという言い方も変な話だが驚異的には思えない。しかし、さすがに首を刺されてしまえば即死してしまうだろう。大人しくするしかない。

 

 竜宮さんは前原君に命令をして生徒全員の両手両足を縄跳びの縄で縛った。それは特に問題は無い。深夜のうちに少しばかり細工をしてある。生徒たちはいつでも逃げ出せるだろう。俺を舐めるなよ。

 そんな冬夜は縄跳びではなくU字ロックという本来自転車屋バイク用のもので首と窓枠を固定された。あれ?縄跳びで縛ってくれないの?おやおや前回のループを思い出す。あの時は十字架吊りをされたが、今回は随分と雑な方法だ。

 そして初手から鉈の峰で頭を殴られた。一瞬で意識を刈り取られそうになった。前回は運よく生きていたが、そもそも生きていたことが奇跡だった。今回ばかりはこのまま死ぬ可能性がある。竜宮さんは何も言わずガンガンと鉈の峰で冬夜の頭を滅多打ちする。

 

「レナ、もう止めて!」

「これは罰なの。魅ぃちゃんが死体の場所を移動させて警察に売ったから。本当は魅ぃちゃんのために用意したんだけど・・・」

 

ガン!

 

「冬夜先生のこと好きだもんね。この方が罰になるでしょ?」

「レナ!私ならいくらでも殴って良い!でも冬夜さんだけは止めて!何も知らないんだよ!?」

 

 まだ辛うじて生きているのだが、立て籠もりが始まってすぐにこれでは、間に合わない。警察は動いているだろうか。いや、大石さんが動いてくれるか微妙だな。

 

「あぁ、いけない。忘れてた忘れてた。うーん、じゃあ沙都子ちゃんにしようかな」

「な、何ですの?」

「あぁ、暴れなければ死なないからね。でも暴れたら・・・そうだね梨花ちゃんもセットで殺す。良い?皆も妙な動きをしたらランダムで誰かを殺す!そうだ!出席番号を10足して、その子もセットで殺す!自分だけが死ぬんじゃなくて他の誰かも一緒に死ぬんだからね!」

 

 脅し慣れていやがる。そんな発想したことがなかった。頭がぼんやりとするなかで、竜宮さんは沙都子ちゃんを担いで(両手両足を縄で縛っているからだろうか)どこかへ行った。

 

「ま、まさかガソリンを持ってくるつもりか・・・?」

「冬夜さん!大丈夫ですか!?」

「冬夜、冬夜!しっかりするのです!」

 

 二人が身を案じてくれている。今はまだ大丈夫だ。これでも頑丈さだけは取り柄なのだ。嘘、本当は辛いです。

 

「大丈夫、ここで前みたいに病院行きにはならないからさ。梨花ちゃんのこともあるし・・・」

「ま、前?冬夜さん何を言って・・・」

「魅音ちゃん、梨花ちゃん。あと前原君。もう既に爆弾は使い物にならなくしてある。残りはガソリンだ。俺は今は動けないから皆に頼るしかない」

「分かりましたのです」

 

 いつの間にかポタポタと血が流れ落ちていた。もうすること終わってしまったよ。このU字ロック、さすが防犯用に作られただけはある。普通に取り外すことはできない。ハサミとかペンチでも無理そうだ。

 少しばかりすると足音がする。どうやら帰ってきたらしい。ガラガラと教室のドアが開く。頭が殴られたせいかボンヤリとするが、今の状況を見ることで冴える。

 教室へ意気揚々と入ってきたのは竜宮さん。そして抱えられている沙都子ちゃんだ。しかし、竜宮さんの持つ手にはかなり大きめのポリタンクがあった。沙都子ちゃんの頭はずぶ濡れ状態だ。まさかガソリンをかけられたのか。

 

「圭一君、外に大石さんがいるからこの手帳を渡しにいってほしいかな、かな」

「こ、これを・・・?」

 

 どうやら鷹野さんの手帳を大石さんへ渡すらしい。ガソリンを取りにいく間に外に大石さんがいるのが分かったらしい。大石さん、あなたの警察魂はあんな胡散臭い手帳に翻弄されるのか。違うだろ。

 ウトウトする中で意識を限界まで保つ。前回、監禁をされたあの時、無駄に1ヵ月も眠っていたんだ。そのせいで、俺が眠りこけている間に全員死んだ!俺が最後まで気張らなかったからだ。

 もしかしたら最後になるかもしれない今回のループ。意識を最後まで保って綿流しを超えていかなければならない。




 大変失礼しました。プロット上では深夜のうちに縄跳びに細工しているのに書き忘れをしています。このページは既に編集して細工のことを書き込んでいます。
 書き込んだ場所は冬夜がU字ロックで拘束される文章の少し前になります。
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