古手梨花は今の軌跡は今までのカケラの中で最高のモノであったと確信していた。圭一は自身が魅音とレナを殺めたことを思い出し、沙都子も同様に以前の記憶を持っている口ぶりを見せている。
そして何より冬夜が、地田冬夜がいる。彼は時折現れる奇妙な存在だった。冬夜は今回で3回しか会ったことがない。数百年も過ごしてきた中で突然現れた謎の男を、はじめは妙な縁として考えていた。雛見沢分校の先生として舞台へ躍り出て、何をしでかすのかと思えば彼は突然として行方不明になった。初めはただ無様に動くだけの大人だと思った。圭一を更に疑心暗鬼にするだけで、いきなり行方不明。
2回目に会ったのはそれから何度か雛見沢の夏を繰り返した後のこと。もうこれ以上舞台を壊さないで欲しいと願っていたが、良い意味で裏切られた。以前の記憶を持つ彼が協力をしてくれるというのだ。本当は赤坂のような頼れる大人が良かったのは秘密だ。
羽入?貴女なぜ冬夜を嫌うの?もうそろそろ教えてくれても良いじゃない。
「梨花ちゃん!あまりボーっとしてると死んじまうぜ!」
「あんな大振りの鉈に当たるわけがないのです」
「アハハハハハハ!それなら一番最初に殺してあげる!」
今、梨花と圭一、レナは職員室と教室の間付近の廊下で殺陣を展開していた。レナは鉈を、圭一は沙都子から渡された金属バットを、梨花はモップ。正直鉈とは相性が悪すぎる。
沙都子と魅音はその状況を見て、即座にどこかへ移動をし始めた。何をしているのかは分からない。
「レナ、お前の持っていたライターも爆弾も全て解除した。もう自首しよう!」
「それは無理な話だよ圭一君!私は成し遂げないといけないの。この雛見沢を宇宙人から救うために!」
鷹野三四の手帳。あれが原因だということは分かっている。梨花はあのオカルト好きの女性がこのような惨状へ持っていったことに対して複雑な思いだった。入江も富竹も死んでしまった今、一番の候補として挙がるべき女性が行方不明なのだ。
「ここは俺が説得する。梨花ちゃんは魅音たちの所へ向かってくれないか?」
「無理な話なのです。圭一を一人にはできないのです」
「いや、魅音たちが何もせず離れたのが気になる。もしかしたら・・・」
「分かったのです。ふぁいと、おーなのです」
いつもなら梨花がレナと対峙をして、その間に圭一が爆弾を処理しようと奮闘していた。まさか圭一に頼まれるとは思わなかった。彼の目は熱い炎が燃え盛っていた。今の彼ならばレナを任せても良いのかもしれない。そう思えるほどの力強さがそこにあった。
梨花は二人が対決している姿を見届け、沙都子たちの所へ向かった。
魅音と沙都子は学校の入り口である靴箱の近くにいた。雛見沢分校は狭い学校のため、すぐに見つけることができた。何をしているのか、沙都子は靴箱近くに置いてある掃除用のロッカーを開いた。
「!?」
「やっぱり思った通りですわ。あと1ヶ所があるとするならば、あそこしかないでしょうね」
ロッカーの中にあったのはタイマーキッチンのようなもの。それに強烈なガソリンの臭いがした。まさか爆弾だというのか。バケツの中にはガソリンが入っている。
「これだけでは学校全体は爆発しないんじゃ・・・」
「魅音さん、私たちガソリンを被っているから分からないかもしれませんけれど、今この学校全体がガソリン臭いのですわ。ガスか何か分かりませんけれど、この学校そのものが火薬庫みたいな状況かもしれませんわよ」
それはレナが隠していた物の一つであった。冬夜が全て調べて爆弾を解除したはずだが、なぜ仕掛けられているのか。
「私ならもう一つ設置しますわ。冬夜さんが解除したのが屋上なのであれば、桟伝いに爆弾を置くはず・・・」
そういいながら沙都子は慎重に爆弾を解除する。何が反応して爆発するか分からない以上慎重になるのは仕方がないだろう。沙都子はそのまま靴箱から外へ出る。
「沙都子ちゃん!」
「あら冬夜さん。あそこのロッカーに爆弾が有ったので解除しておきましたわ。はいこれ」
「あのロッカー確認したはずなんだが・・・。それよりも竜宮さんは!?」
「今は圭一さんとデュエット中ですの。二人っきりにさせておくのが男の嗜みですわ」
冬夜は複雑な顔をしている。そもそも学校内は今爆弾と化しているのだ。あの二人の持っている武器が合わさることによる火花で爆発してもおかしくない。今爆発していないのがおかしいのだ。
「冬夜、あとは二人の好きにさせてあげてほしいのです。圭一もそれを願っていると思うのです。それにこれはボクたちが解決するべき問題なのです」
圭一は魅音とレナを殺めてしまったことを悔いている。例え被害者である二人がそのことを覚えていなくても、当の本人には強い後悔が渦巻いていた。それに部活メンバー全員が犯罪に加担したこと。あの時ダム現場で部活メンバーが背負った罪を最後まで成し遂げる必要がある。
「・・・分かった」
その覚悟を受け取ったのか、冬夜はゆっくりと頷いた。頭に巻かれた包帯が目立つ。冬夜の後ろには警察と救急隊員だろうか、多くの人がいた。
「それでは学校の裏手に参りますわよ。おそらくそれで最後の爆弾が見つかるはずですわ」
沙都子がそう言って学校の裏手へ向かった。夏が近づいてからというもの、学校の裏手は雑草が伸び始めている。沙都子はその雑草の中を真剣にかき分けながら爆弾を探し始める。
「なるほど、これは着火装置ですわね。よくこんな物を作れますわね」
そういって沙都子はそれを簡単に解除する。なぜ簡単に解除できるのだろうか、そう冬夜は呟いた。彼女の鍵開け技術もそうだが、爆弾解除に対する度には目を見張るものがある。
「それではこれを警察の方へ」
「分かった。皆も避難してくれ」
沙都子は爆弾のような物を平然と冬夜に渡した。学校内は今も二人が戦っているのか金属音がする。そろそろ離れるべきだろう。
「それにしても二つも見逃していたなんてな・・・」
「学校で立て籠もりをする前に仕掛けたのではなくて?この二つは爆発目当てではなく火災を起こすことを重点に置いてますわ。火災が起こることで学校内に充満している気化したガソリンが爆発するのかもしれませんわね」
「・・・」
「とりあえずここから離れるよ。あとは圭ちゃんに任せよう!」
うまく歩けない冬夜を魅音は支えながら警察の元へ向かう。もう冬夜の身体は限界なのだろう。鞭打って動いているのはすぐに分かった。
これ以上は圭一に任せるしかない。今の圭一であれば困難な壁であろうが簡単に解決していくだろう。そう信じることができる。その心持ちができることに梨花は少し自身の変化に驚いたのだった。