ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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真相の一端

「どちらなのかと聞いているのです」

 

 畳みかけるかのように聞いてくる古手梨花に地田冬夜は観念したかのように目を伏せた。

 

「どちらとも言えるけど。君たちの知っている『地田冬夜』は眠っているよ」

「え・・・?」

 

 地田冬夜が言った内容に園崎魅音は驚愕の顔をした。それに対して古手梨花は言葉の意味を十分に理解した顔をして、北条沙都子は現状の流れについてきていない様子だ。

 

「具体的に言うと竜宮さんに頭を殴られた瞬間に地田冬夜は眠ってる」

「と、冬夜さん。一体何を・・・?」

「驚くのは無理もない。でもこれはいずれ起こることだったんだ」

「記憶を全て思い出したのですね」

 

 古手梨花から最後の確認と言わんばかりに問い詰められる。決して騙そうとしていたわけではない。それは誰もが分かることだ。

 

「思い出した・・・。まぁ説明も大変だからそういうことにしよう。全て思い出したから俺が出てきた、ということで」

「その説明を知りたいのですけれど・・・」

「地田冬夜が知りたくないこともある。これは俺が墓場まで持っていくことなんだ」

 

 それ以降青年は話そうとしない。それ以上の説明はしないという意思を前面に出していた。そこまでして知られたくないことなのだろうか。

 

「それならどうするのです?私たちを守ってくれる冬夜じゃないなら、あなたはこのまま帰る?」

「いや、俺は彼の生き方を見ていたからね。彼が俺に対して恥じない生き方をしようとしたなら、俺も同じように恥じない生き方をしないとね」

「と、冬夜さんは戻ってくるんですか!?」

 

 園崎魅音が心配そうに青年を見る。姿は同じでも中身が違う。それは園崎魅音にとって衝撃的なことであり、早くいつもの彼に戻ってほしいと願うのは無理もない話だった。

 

「今は殴られて眠ってるだけ。まぁ今回みたいなことは3回目だけど。数日後には戻るんじゃないかな。もう俺は表舞台に出ないよ」

「3回・・・?」

「1回目は初めて前原君に襲われた時。2回目は警察に刺された時。まぁ『彼が雛見沢で戻ってくる寸前』ぐらいの大まかな時かなぁ」

「・・・」

「もちろん『地田冬夜』は知らないから。このことは黙っていてほしいんだけど」

 

 青年はおどけた表情で話し続ける。いつもの冬夜の顔であるのに、表情はまるっきり違っていた。中身が違うだけでここまで印象が変わるのだろうか。

 

「この話はこれでおしまい。やることがあるだろう?」

「あなたの人格は犯人を知らないのですか?」

「知らない。初め前原君に襲われてからは、知らない作業服の男に連れ去られてね。そこから記憶は無いから」

 

 使えない。そう思われるのも仕方がなかった。もう二重人格とかどうでもいい。いつもの冬夜に早く戻れと梨花ちゃんは思っていた。

 ここで争っていても話が進まない。このまま青年を含めた4人は地下施設へ向かう。青年は決して地下施設へ向かう。地下施設には監視カメラで外の様子を確認できることから、犯人の顔が見れる。地下施設へ向かい、逃げ道を確認する。それと同時に明らかに日本にあってはいけない物もある。

 

「敵が来る前に使い方を教えてくれ」

「・・・はい」

 

 魅音は未だ複雑な顔で青年を見る。それを青年は無視をする。それは今までの冬夜であれば有り得ない行動であった。魅音は銃の扱い方を教えるが、青年も一般人。あまり理解はしていなさそうだ。

 

「必要最低限には扱えそうですね」

「あまり使いたくはないが・・・。背に腹は代えられないか」

「皆さん。どうやら敵が来ましてよ!」

 

 沙都子が声を荒げて言った。監視カメラに映るのは園崎家の関係者と謎の作業服の男たちが争っている姿。銃も使っているのだろうか。よくそんな大きな物を使って住民に通報されないものである。

 

「敷地内に入ったなら私服警官は殺されたかもしれないです」

「熊谷さん・・・」

 

 敷地内に敵が侵入しているということは、つまり外にいた警官は殺されたということだろう。

 

「梨花、知っている顔は有りますか?」

「みぃ・・・。一人いますです」

「誰だ?」

「小此木・・・」

 

 小此木という男性は初めて聞く名前だ。どこの誰にあたるのか。

 

「鷹野の部下なのです」

「・・・その本人は行方不明。だけど小此木という男が犯人グループの一味だということは分かった。この地下施設、抜け道はあるかい?」

「あります。井戸の中に横穴が有りますので・・・」

「じゃあいつでも出られるようにしててくれ」

 

 青年の言葉に促されて3人は井戸近くまで行く。青年は監視カメラで様子を確認していた。状況としては良くない流れだということは分かる。このままでは押し切られて敵が地下施設まで来るだろう。ここまで来て負けたくはない。

 

「さぁ!いつでも逃げられるように降りてくれ!俺も後で着いていくから!」

「分かりました!」

 

 嘘だった。もう後を追いかけることはできない。園崎家の人数不利が祟ったか、すぐに敵に押し切られてしまった。想像以上の速さで侵入してくる。地下施設は分厚い鉄壁であるが、敵もなりふり構わないらしい。爆弾らしき物を設置し始めた。

 青年の手に力が入る。想像以上に思い銃がカタカタと震えた。その時、監視カメラに映る人影が青年の目に映る。鷹野三四。黒い服に包まれた彼女はまるで悪魔の様相だった。それとあの後ろにいるのは誰だ・・・?

 

ドゴオオオオオオォォォン!!!

 

 響き渡る轟音に鼓膜が揺れた。先ほど仕掛けた爆弾が爆発したのだろう。竜宮さんの仕掛けた爆弾よりかは威力が低いのかもしれない。

 それにしても園崎家と警察の力が有っても負ける組織とはどれほどの大きさなのか。大きな組織だとは理解していたが、その認識は甘かったということか。村そのものを消し去るほどの力ならば国が相手だということか。

 

「!!!」

 

 青年は扉の先が煙で見えない状態であるものの、手に持つ銃を乱射した。誰かを当てて殺すというわけではない。牽制をして敵が止まればそれでいい。

 井戸方面から誰かの声がする。青年は振り返ることなく犯人の名前を叫んだ。聞こえたかどうかは分からない。銃の乱射音と敵の怒号が混じり、もはや自身の喋っている言葉が何かすら分からない、

 

「っ!!」

 

 肩を撃ち抜かれた。彼らの弾幕の嵐が肩に当たり、その反動で銃を落とす。決着はすぐに着いた。身体を拘束され、黒幕の元へ連れてかれる。

 

「鷹野・・・!」

「あら『オヤシロ様の代弁者』様じゃない」

「・・・隣の女は見たことないな」

 

 鷹野三四の隣にいたのは、見知らぬ女性だった。紫色の長い髪。目元はツリ上がっており、まるで威圧的な雰囲気を醸し出している。まるであの時カケラの世界で見たような少女のような服装を着ていた。しかし圧倒的に違う要望をしている箇所がある。それは角だ。

 カケラの世界であった少女の角は黒くて太いものだったのだが、今目の前にいる女性の角は白くて細い。どうやら角持ちの違う人物だったらしい。

 

「あら、あなたも見えるだなんて想定外だわ」

 

 青年は地に伏せられる。その様子が滑稽だったのか、鷹野と謎の女は高笑いをした。それが異様で気味が悪い。

 

「富竹さんも入江先生も。皆お前が黒幕だったってことか」

「大正解。あなたは『唯一の敵』。油断できないのは分かっていたわ」

「何を・・・?」

 

 鷹野は隣の女を見る。どうやら鷹野と青年の二人にしか見えない存在らしく、周囲の作業服を着た男たちは気味が悪そうに見ていた。

 

「でも私の勝ち。あなたにはもう話すことが無いわ。死になさい」

 

 淡泊に言われた言葉と共に青年の冬夜に銃弾が撃ち込まれる。死の間際、何を思ったか。それは誰も知ることはできない。しかし、青年は最後に不適に笑って死んだ。

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