ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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入江診療所へ行こう!

 話は戻りますが、そう『オヤシロ様』は言う。じゃっかん呆れたような目で冬夜を見ているのだが、その顔はやはり梨花ちゃんそっくりだ。

 

「あなたは綿流し前日。早朝に目を覚まします」

「なかなか無茶なのでは?」

「えぇ。そうですね」

 

 綿流しが始まる前に、あの角の女性を倒さなければならない。しかも簡単には殺せないようになっているとは無理難題だろう。

 

「ハイリューンのカケラに触れたあなたであれば、目的の物を見つけた時に直感的に理解できるでしょう」

 

 正直に言えばハイリューンだとかカケラだとか、よく分からないことが多い。しかし、結局はその真実を知ることなく生活を送るのかもしれない。そのような直感めいたものがある。

 最後の決戦ともいえる黒幕鷹野に戦いを挑めないというのもどうなのだろうか。梨花ちゃん達に頑張ってもらうしかないのか。

 

「・・・」

「どうしたのです」

「何か忘れている気がする」

「・・・」

 

 何を忘れているのかすら分からない。気味が悪い状態だ。心の何かを失ったような感覚すらある状態で、俺は本当に『魂』を見つけられるのか。あれ?そもそも『魂』を見つけてもどうすることもできないのでは?

 

「梨花であれば鬼狩柳桜(おにがりのりゅうおう)を使いこなせるでしょうが。しょせんあなたはただの人間。その力を使いこなせないでしょう」

「それがあれば『魂』を壊せるのか?」

「そうです。しかし、あなたにも意思を継ぐ存在なら、その時が来れば自ずと導かれていくでしょう」

 

 まるで神様みたいな言いぶりだ。いや、雛見沢では神様扱いなのだけれども。ずいぶん投げやりな話をされてしまったが、これが梨花ちゃんの役に立つというのならどうにかするしかない。

 そう、いつも場当たり的な行動ばかりしてきたのだ。どうせなら最後まで自分らしく行動していこう。

 

「それでは行きなさい。人の子よ・・・」

「あ、ちょっと待ってくれ」

「・・・?」

 

 おそらく大事な場面であるというのに冬夜は話を止めた。冬夜は両の手を広げ、『オヤシロ様』の周囲をぐるぐる周りながら手を広げたり狭めたりする。

 まるで寸法を測るようだ。

 

「うん、よし!」

「・・・はぁ」

 

 絶対次に会ったら俺好みの巫女服を着せてやる。その巫女服がプレゼントだろうが何だろうが、俺には関係ない。この巫女服を超えてみせる!あ、ちょっと待って。まだ細部まで確認を―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう雛見沢」

 

 いつもの雛見沢の風景。そこはいつも巫女服を作り上げていた冬夜の部屋。太陽の光が眩しいものだ。これが最後のループ。何がどうしてループできたのか分からないが、今はこのチャンスを掴むしかない。

 祖母はまだ眠っているらしい。まだ太陽が昇り始めたばかりなのだ。もうそろそろ起きる時間なのかもしれない。冬夜はそっと外に出てポストの中を確認する。新聞紙。確認をすると、綿流し前日の日にちだった。

 

 今がどういう状況で進んでいるのか分からないが、今は『魂』を探すしかない。まずはどこから探すべきか。鷹野三四が黒幕ならば入江診療所とかだろうか。鷹野とつるんでいるならば、大事な『魂』を隔離している可能性がある。

 黒幕が根城にしている場所だ。最悪殺される可能性があるが、どうしたものか。いや、時間は残り少ない。まずは行ってからだ。

 

 

 

 

 蝉の声が五月蠅い夏。まだ6月だというのに暑い日が続いている。数度のループで冬夜は蝉が憎らしく思えてしまった。それを梨花ちゃんは何百回と繰り返してきたのだろう。それはまさしく地獄だ。

 

「・・・」

 

 声を抑えて入江診療所へ向かう。朝方なこともあって、今の雛見沢は静かなものだった。それは時間帯の話でもあったのだが、冬夜には嵐の前の静けさを思わせる恐怖が押し寄せていた。そういえばどこまで近づけば、『魂』を直感的に理解できるのだろうか。入江診療所近くまでいるが、まだ分からない。

 

「・・・?」

 

 どう中に潜入しようかと考えていると、足音がしてきた。敵か?まさかもうバレてしまったというのか!?

 

「せ、先生?」

「園崎さん・・・?それに葛西さんと入江先生も」

「先生、一体どうして・・・?」

 

 珍しい組み合わせに、少しばかり思考が止まる。葛西と園崎詩音のセットは理解できたものの、そこに入江京介がいることが不思議であった。いや、診療所だから医者がいるのは普通なのだが・・・。

 なぜ3人が一緒にいるのか、ということ。それは・・・。

 

「・・・」

 

 あ、まだ頭が働いていないらしい。しかし、園崎さんなら今の雛見沢の現状を知っている可能性もある。どうしよう、下手な事を言って雛見沢症候群を発症させたくないのだが。

 

「地田さん、どうしたんです」

「いや、病院に用が有ったんですよ」

「今の入江診療所は患者さんたちが多くて大変でして、興宮の病院へ向かった方が良いでしょう」

「その患者さんは山狗だというなら、俺は引けないんだけども」

「冬夜さん・・・?一体なぜそれを・・・」

 

 なぜかは分からないが、どうやらこの3人。入江診療所に用が有るらしい。なぜか入江先生はケガを負っているが、まさかもう戦いが始まっているのだろうか。そう思い、いっそのこと言ってしまおうと考えて山狗の名前を出す。園崎さんと葛西さんは反応しなかったが、関係者である入江先生は十分な反応を示した。

 

「先生は今回の件に絡んでいるんですか?」

「俺は梨花ちゃんの味方だ。3人はどうなんだい?」

「梨花ちゃまは園崎家地下施設から、今は沙都子のトラップ満載の山にいます」

「相手は鷹野三四と山狗部隊か」

 

 どこまで追い込まれているのか分からない状況であるが、山にいるのか。早いうちに『魂』を探さなければ・・・。

 

「俺は梨花ちゃんのために、入江診療所にあるかもしれない物を探しに来た。今の入江診療の状態は?」

「今の診療所は山狗部隊に占拠されています。裏から回り込んで制圧します」

 

 まぁ葛西さんがいるなら大丈夫だろ。相手は銃を使ってくるだろうけどね!俺は死なないように立ち回っていくしかない。

 3人は冬夜が味方であることを理解したのだろう、すぐに状況を説明してくれた。梨花ちゃんは警察と富竹さん達と手を組んだらしい。そうか、俺がいなくても彼女が惨劇を乗り越えるのは確実だったのだろう。それを邪魔してしまった責任を取らなければならない。

 冬夜は決して『魂』について説明をしなかった。それを訝しむ3人であったが、物として存在しない『魂』を説明できるほどの語彙力が無かっただけであることは一生知られてはいけないことなのである。

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