ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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嘘を貫き通すのは難しい

 今回の危機感のままでは、また被害者が出てしまうのではないかと不安を抱く冬夜。しかし、冬夜本人も必ず被害者が出るという確証を持てないでいた。今までの『オヤシロ様の祟り』は全て犯人が見つかっており(最初のダム現場監督の主犯格は失踪しているが・・・)、模倣犯が出ない限りは安全と言えるだろう。

 しかし、それよりも思うのは安全に綿流しを運営できることである。自分を受け入れてくれた雛見沢がいわれのない中傷に苛まれる必要性はないと思っていた。だからこそ、警察には必要以上の警備をしてほしかったのだが・・・。

 

 そんなこんなで、村内会議が終了した。初めての参加にしては自身の気持ちを表明できたように思えるが、一介の住民では発言力に欠けるということも明白であった。

 

「冬夜さーん!」

 

 会議が終わり、さて帰ろうかと集会所から出た後に魅音ちゃんから呼ばれた。愛の告白ですか?いやぁ、モテモテで困っちゃうなぁ。

 

「さっきはフォローありがとうございます」

「いやぁ、俺が口を出して良いのか分からなかったけど、そう言ってもらえるなら嬉しいよ」

 

 たはは、と渇いた笑みをこぼす。園崎家というものは色々なしがらみもあるのだろうけれど、そんな村人を脅すような言いぶりをする必要もないのではなかろうか。もう昭和も終わるかもしれないとまで言われている昨今で、ここまで影響力の大きい村も珍しいものだ。

 

「あの、それで・・・」

 

 これまた梨花ちゃんのような何か言いたげな面持ちで魅音ちゃんが見つめる。これは何か困りごとであろうか。

 

「いいよ、遠慮なく言ってくれ」

「はい。じ、実は圭ちゃん、あ、いや前原君のことで相談があるんです」

 

 なるほど。恋の相談だろうか。中学生だものね。年齢の近い子同士なら気になるよね。

 

「違いますって!あたしと圭ちゃんはそういう仲じゃないです!」

「そこまで否定されると前原君が可哀そうじゃないか・・・」

 

 というか、もしかして言葉に出ていただろうか。気を付けなければ・・・。

 

「実は前原君が最近『オヤシロ様の祟り』について聞いてくるんです」

 

 彼女は続けて言う。冬夜は真剣な面持ちで黙って彼女の話の続きを促した。

 

「それで、私たちは前原君が雛見沢を嫌いになってほしくなくて、知らせたくないんです。何回か『知らない』って言ったんですけど」

「それでも聞いてくるんだね」

「はい・・・」

 

 二人で話し込んでいると、魅音ちゃんの後ろ側から梨花ちゃんが真剣な目で冬夜を見ていた。もしや、この事は部活メンバーは周知済みなのだろうか。

 前原君は『オヤシロ様の祟り』について知りたいけれど、周りは知らぬ存ぜぬを決め込んでいるようだ。確かに自分の住んでいる村が、そのような凶悪な事件が発生していると知れば恐怖を覚えても仕方がないのかもしれない。

 

「そこで、一年前に住んだばかりの冬夜さんに助言を貰いたくて」

 

 それは確かに適任と言えるだろう。この村にずっと住んでいる人よりも、前原君と同じように新参の自分であれば良い答えが出るかもしれない。

 

「そんなに知りたいなら言うのもいっそのこと言うのはどうなんだい?」

「それも考えたんですけど、言うタイミングを逃してしまったんです。ここまでいったら綿流しまで待った方が良いと思って」

 

 さて、これはどうすれば良いだろうか。正直下手な噂を言われて信じられるよりも、しっかりと話をした方が良い気もする。最近は三流の記者が聞き込みをしているというし、前原君が少なからず事件について知るのは時間の問題だろう。

 

「魅音ちゃんは、このまま綿流しまで時期を待とうか考えているんだね。それじゃあ、梨花ちゃん。君はどう思ってる?」

「み、みぃ」

 

 小学生に聞くのもどうかと思った。彼女は質問されるとは思わなかったのだろう、少し目を見開いた。

 

「ボクはどうすれば良いのか分からないのですよ」

 

 まるで達観したかのような物言いだった。しかしそれも仕方のないことであろう。そもそも小学生なのだから、うまく答えが出ないのかもしれない。

 

「じゃあ、俺から軽く話をしてみよう。魅音ちゃんも同席するかい?」

「は、はい!」

「確かに事件の事を知れば怖いと思うかもしれない。ただ、それ以上に雛見沢の事が好きになるように部長の魅音ちゃんも遊んでやってくれ」

 

 果たしてこの選択が有っているのか間違っているのか分からない。ただ、こういった悩み事は大人が間に挟まることで中和ができると思ったのだ。

 

「レナも良いですか?」

「うん?竜宮さんが良いというなら、それで良いんじゃないかな?でも、三人で一斉に話すよりも、一つ一つゆっくり話をしていこう。前原君が混乱してはいけないからね」

 

 やはり魅音ちゃんは園崎家のような厳格な雰囲気を出すのではなく、このままの優しい彼女のままであってほしいと思った。恐れられるような園崎家ではなく、愛される園崎家というものを彼女は作っていけるだろう。

 

「そうだ。ばっちゃからです。またいつでも来てほしいみたいですよ」

 

 そう言って魅音ちゃんが渡してきたのは、おはぎであった。お魎さんの手作りなのだろう。お魎さんもこんな優しい姿を皆に見せたら良いのに。

 

「作りすぎちゃって。レナと一緒に作ったんですよ。圭ちゃんも喜んでくれるかなぁ」

「そりゃ喜ぶさ。お魎さんのおはぎは格別に美味しいからね。今度遊びに行くから、お魎さんに楽しみにしててと伝えてね」

 

 どうやら前原君にもおはぎを渡したらしい。友達から好かれている前原君のことである。俺も魅音ちゃんみたいな可愛い彼女からお裾分けされてぇなぁ。

 そう思っていると魅音ちゃんは気恥ずかしそうに手を振って別れていった。若いっていいなぁ。俺も若いのかもしれないけど。

 残ったのは冬夜と梨花ちゃんの二人であった。まるで話はまだ終わっていないかのように、冬夜の帰り道である歩道を仁王立ちで防ぐ。

 

「梨花ちゃんも何かあるんだね」

「・・・」

 

 まるでどう話をしようか悩んでいるようである。相談事というのは初めの一歩が大変だとどこかで聞いたことがある。悩みを打ち明ける時、助けを求める時というのは勇気が必要であると冬夜は持論付ける。

 

「それで運命を打ち破れるとでも言うの?」

 

 いつもの古手梨花が出すような声ではなかった。まるで大人の女性が、いや、それとは違う上司が部下を諭すような物言いで語り始めたのだ。

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