ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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丸腰という名の盾

 園崎さんと葛西さんの二人は背中に何か背負っている。冬夜は初めそれが何か分からなかったのだが、華麗な二度見によって、それが何かを理解した。

 銃である。やっぱり園崎家って・・・。葛西さんはまだしも園崎さんが使うというのはいかがなものか。

 

 どうやらこのまま入江診療所へカチコミをするらしい。あらやだ想像以上に強行突破らしい。冬夜も含めて4人の内2人が丸腰なのだが、それは良いのだろうか。入江先生が、診療所内に入る時は拉致されたように装って入り込むらしい。なるほど、それは妙案である。まぁ初っぱなから戦闘が始まると、真っ先に危険なのは冬夜と入江先生になるのだが、深く考えてはいけない。

 冬夜と入江は両手を頭の後ろに組み、葛西さんと園崎さんが作業服に着込んで変装をする。ガバガバな潜入で少しばかり不安であったが、何も問題が起こらなかった。そう、相手もまさか入江診療所へカチコミをしてくるとは思わなかったのだろう。相手は完全に油断をしていたのだ。

 しかし、それも時間が経てば話は変わる。冬夜一行が診療所の地下施設へと侵入し、監視室(診療所内全体を監視できる部屋があるらしい)へ向かう直前、なぜバレたのかは知らないが、山狗部隊数名がその監視室の中に立て籠もったのだ。

 

ぷしゅうぅぅぅ

 

 陳腐な音と共に白い色のガスのような物が冬夜たちのいる部屋を満たそうとしはじめた。

 

「毒ガスか!?」

「いえ、これはおそらく催涙ガスでしょう。皆さん、気休めですがハンカチを口に覆って!」

 

 冬夜たちがいる場所は、入江診療所の中の地下施設の一角。冬夜は素早く出口の扉を開けようとするが、全く開く気配が無い。いつの間にか鍵を閉められていたのか。

 冬夜を除く3人はハンカチで口元を覆う。残念ながら冬夜はハンカチを持っていなかった。そういうズボラな所は社会人としてどうなのかという話は置いておこう。袖で口元を覆った。

 このままでは全滅してしまう。誰しもが思った時、あの強面の男が動いた。

 

「てめぇら!さっさと止めねぇか!」

 

 その言葉と同時に響く銃声。銃声は相手の監視室の部屋の扉を貫通し、そこから向こう側の慌てる声も聞こえる。

 冬夜には銃の見分けは分からないが、以前冬夜が使用していた銃とは見た目が違う。それに、あのような威力は無いはずだ。

 

「スラッグだ!」

 

 もう一発大きな銃声。完全に向こうの景色が見える。

 

「この葛西辰由がてめぇらを生かしてやると言ってんだ」

「・・・」

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

 あまりの衝撃音にチビりそうになる。と言うか若干漏らしたかもしれない。そんな呆けた瞬間に、葛西さんは相手の立て籠った部屋に入り込み、堂々と鎮圧をする。

 それは一瞬の出来事だった。相手は武装した人間だと言うのに、まさか掌握できるとは・・・。

 さすがに機を逃すことはできない。葛西さんに遅れて、3人も部屋に入り込み、武装した人の武器も没収していく。いつの間にか解除されていたガスも、二度と使えないように銃で配線ごと粉々にしていく。

 

 そこからは呆気ないものだった。完全に武装解除され、手足を拘束された山狗部隊は何もすることができない。途中、園崎さん、葛西さん、入江先生は用事が有るということで、少しばかり部屋から離れることになった。残される冬夜。冬夜には知られたくない真実があるのか、ここまで事情を知っている冬夜を巻き込みたくないという思いが有るのか。それは分からない。

 しかし、これで冬夜も思いのまま目的の物を探すことができる。冬夜は何か『魂』の手掛かりになるものがないか、慎重に探し始める。

 

 

 

「手帳・・・?いや、日記か」

 

 ある部屋の一室。まるで会議室のような場所に置かれた黒い手帳を冬夜は発見した。手帳の手記は誰の物か分からない。

 

「冬夜君、それよりも助けて欲しいんだが・・・」

「あぁ、思わず手帳が目に入ったもので。それよりも、富竹さん。あなたどうしてここに?」

「番犬を呼ぶ時に捕まってしまったのさ」

 

 会議室にいたのは、あの富竹さん。まさかこの人ずっと捕まっていたのか。先に黒い手帳に目を惹かれてしまい、富竹さんを見落としてしまっていた。

 どうやら縄で縛られていたらしい。これなら簡単に縄をほどくことができる。いそいそと富竹さんを解放した。

 

「いやぁ、すまない。ぼくはこれから近くの公衆電話に向かうよ。早く番犬部隊を呼ばなければ」

「えぇ、頼みます」

「その手帳も貸してくれるかな?」

「元々鷹野さんの物ですから貸す物ではないですけどね。少し読ませてもらいますよ」

 

 はてさて、富竹さんが異論を言うのを遮って、冬夜は手帳を読む。日記として書かれているが、特に物珍しい内容は書かれていないように思える。

 ペラペラとページを捲ると、折り畳まれた紙が床へ落ちる。拾ってみると、どうやら写真のようだ。

 

「これは・・・祭具殿か」

「ぼくが撮った写真だね」

 

 適当に捲ってしまったためか、どこのページから写真が落ちたのか分からない。ただ、この祭具殿。そういえば、鷹野さんは強くここに興味を抱いていた。

 この入江診療所には『魂』が無いように思える。次に向かう場所が決まったということか。

 

「はい、これは鷹野さんに返してやってください」

「・・・あぁ」

 

 どこか真剣な顔をしている富竹さんに、冬夜は不審に思った。その答えは富竹さんの問いにある。

 

「君は鷹野さんを許すのかい?」

 

 この手帳をぞんざいに扱わなかったことか、それとも返してやれという言葉に対してか。

 

「許す許さないは俺が決めることじゃない」

「・・・」

「一番の被害者である梨花ちゃん次第だ。俺はしょせん部外者。俺が決めることじゃない」

「君自身がどうなのか、を聞いたんだけどね」

「・・・俺個人で言うなら、鷹野さんも被害者かもしれない。なぜこんな事をしたのか、それは本人しか知らないことです」

 

 しかし、冬夜は数回のループで知っている。本人の意思ではなく、病気によって凶行へ走った生徒たちを。冬夜は自身の経験から、『人殺し』という大きな枠組みで捉えることができなくなっていた。

 

「ありがとう」

「なんで富竹さんが感謝するんですか」

「いや、嬉しくてね」

 

 その感謝の言葉が、本心からのものだということを理解して、冬夜はニッコリと笑みを溢す。

 

「じゃあ、後の事は頼みます。私はやらなければいけないことがありますから」

「分かった。相手は武装した優れた部隊だ。一人で立ち向かわないでくれ」

 

 まさか一人で立ち向かうわけないじゃないか。丸腰なのだから。

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