ひぐらしのなく頃に 巻込編   作:ポロロン

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綿流し=梨花ちゃんの巫女服姿という真実

 今日も暑いというのに毎日学校に行っている自分を褒めてあげたいと思う今日この頃。冬夜は寝不足であった。おはぎ事件の後に帰宅した後も結局眠れなかった。決して魅音ちゃんから貰ったおはぎを食べたせいではない。決して辛い食べ物を食べたせいで脳が覚醒したといわけではない。

 10個中3個とか罰ゲームとかそういうものではないでしょうが。お尻ぺんぺんしたろうか。中学生のくせに大人の魅力を出しやがって、許さんぞ。

 

「地田さん。寝不足ですか?目が虚ろですけど」

「あ、大丈夫です。ちょっと昨日の会議が気になってしまって」

 

 職員室に入ってすぐに知恵先生に寝不足を指摘された。おやおや?すぐに分かるだなんて毎日顔を合わせてないと普通に気づかないもんでしょう?あ、毎日学校で会ってますもんね。そりゃ分かりますよね。

 寝不足で少々理性がブレブレの状態ではあったものの、とりあえず教室で生徒たちの勉強を教えていく。前原君も今日は無事に教室に来れているようだ。てっきり休んでしまうかと不安だったのだが、これは昨日前原屋敷に行って正解だったかもしれない。

 魅音ちゃんにはタバスコ入れすぎと小言を入れる。ふくれっ面なのは何故なのか。梨花ちゃんはどこか大人梨花ちゃんの時のような目で冬夜と前原君を見ているような気がする。

 今日も高校受験に控えている園崎魅音に英語をみっちりといつも以上に教えた。地頭は良いのに勉強していなかったのだろうか。彼女の性格から見て一夜漬けをしていたタイプだろうけれど、高校受験の範囲はそれなりに多いのだから、なるべく早めに勉強していくしかない。

 いつもは給食の時間(雛見沢分校は弁当持参である)は職員室でいつも食べていたのだが、やはり前原君たちが気になって教室で食べることにした。子ども達は冬夜の弁当が気になるらしい。と言っても最近採れた野菜中心になるのだが、それでも気になるのだろうか。

 部活メンバーと一緒に食べることになった。魅音ちゃんが誘ってくれたのである。前原君は魅音ちゃんにおはぎの事を言ったのだろうか。俺の前では何も喋っていなかったとは思う。

 

「魅音ちゃん、これをあげよう。昨日おはぎをお裾分けしてくれたお礼だ。自信作の卵焼きをどうぞ」

「冬夜さん。この卵焼き赤色してますよ」

「自信作の卵焼きだよ」

「・・・」

「自信作の卵焼きだよ」

 

 魅音ちゃんは目をギュッと閉じて勢い付けて卵焼きを食べた。ガハハ、俺は食べ物を粗末にしない男である。

 

「あれ?辛くない」

「ケチャップ混ぜただけだからね。まさかタバスコを入れるわけがあるまい」

 

 ガハハと笑って見せると、ブーブーと顔を真っ赤にして魅音ちゃんが抗議してきた。俺は辛いのはそこまで食べられないのでケチャップで色付をしたのだ。赤色着色料があればもっと赤くできたのだが、そんなものは我が家にはない。

 

「前原君のおはぎにもタバスコを入れたのかい?」

 

 そう和やかな雰囲気を出してから本題に入る。結局は針事件のお膳立てである。今思いついたわけではない、断じて。

 

「そうですー!すみませんでしたー!」

 

 魅音ちゃんはふくれっ面で言い捨てた。やはり針は見間違いか?そう思案しかけたその時、前原君が恐る恐る声を出す。

 

「針が入ってたんだよ」

「針だなんて入れないよ!?」

 

 その声に園崎魅音が素早く反論した。針を入れたかどうかについて、竜宮レナ、古手梨花、北条沙都子ともに驚きの顔を見せる。

 このまま勘違いを正せたら良いのだが。しかし、このまま前原君の意見を譲らない場合どうすれば良いだろうか。あれだけ探した針も見つからなかったわけだし、やはり勘違いだとは思うのだが。

 

「だけどよ、針が入っているのを見たんだ!」

「まぁまぁ、前原君落ち着いて。あの時俺も探したけど見つからなかったじゃないか」

「先生、俺を信用してくれないんですか!」

 

 うぅむ。これは少々厄介だ。彼は本当に針が入っていたと信じている。やはり目で見た?いや、針を入れるだなんて魅音ちゃんがするわけがない。有り得ない。

 

「みぃ、圭一」

「り、梨花ちゃん!梨花ちゃんは信じてくれるだろ?」

「最近圭一は寝不足で大変そうだったのです。どうだったのですか?本当に針が入っていたのですか?」

 

 梨花ちゃんの言葉に少し落ち着いたのか、前原君は一つ一つ思い出すかのように頭を抱えた。そして梨花ちゃんは前原君のおでこを手で触る。

 

「熱い熱いのです。圭一、熱が出ているのではないですか?」

「え?そうかな・・・?」

「そうなのです。一度診療所に行ってみるのですよ」

 

 そこで話は打ち切りと言わんばかりに古手梨花は前原圭一の頭を撫でた。それは同時に冬夜の不甲斐なさを咎めるかのようで、いたたまれない気持ちが増していく。これでは講師ではなく人として良くない行為だったといえる。

 その後は通常通りとはいかない微妙な雰囲気の給食時間となってしまった。その後昼休みに梨花ちゃんに呼ばれ、物置小屋へと向かった。

 

「あれでは余計ダメでしょ」

「申し訳ない。完全に失敗だった」

 

 梨花ちゃんは部下に叱るような物言いで冬夜に話す。言い訳のしようがなかった。今の梨花ちゃんは大人のような雰囲気を出している。話し方もあの日の夜のようだった。

 

「今の圭一は、疑心暗鬼に囚われている」

「疑心暗鬼・・・?」

「地田は壁の黒いシミを見たとき、ゴキブリだと思ったことはある?」

 

 それが前原圭一の疑心暗鬼と関係あるか分からないが、とりあえず頷いた。確かにシミを見て虫か何かかと思って驚いたことはある。

 

「普通の人であればすぐにシミだと気づくけれど、今の圭一は虫だと思ったら、例えどれだけ凝視しても虫としか思えない状態」

「それだと、針だと思い込んだら・・・」

「そういうこと」

 

 それは何かしらの精神的な病気なのではなかろうか。そう訝しむ。

 

「入江診療所の入江は、そういった精神的なものに対して得意だから、あとは医者に任せましょう」

「・・・すまなかった」

「いいのよ、どうせこの世界ももうじき終わるのだから」

 

 それは哀愁に紛れた本音のように思えた。まるでこれから死ぬことが確定しているかのような言葉に戸惑う。なぜそのような悲しい顔をするのだろうか。なぜ自分はその顔をみて心が締め付けられる思いになるのだろうか。

 

「今日はここまで。私は教室に戻るわ」

 

 そういって梨花ちゃんは教室へと戻っていった。これは彼女の信頼を損ねてしまったということだろう。次というチャンスは訪れない。これが現実なのであるということをまざまざと思い知らされた。

 ただ、このままというわけにもいかない。まずは職員室に戻って知恵先生に協力を求めないと――――――

 

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