深海棲艦が提督に恋をしたら?
最後に仕掛けがあります。
あなたの好きな艦娘を思い浮かべながら読んでみて下さい。

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深海からのチョコレート | 暁の瑞雲 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16984385

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深海からのチョコレート

私は深海棲艦

 

 自分が影の存在である事は自覚していた。

 

 あの戦いで抱いたやり場のない怒り、無念、恨みを持ち続けて顕現すれば、深海棲艦になるのは当たり前だ。

 

 私たちとは違う光の存在にいる艦娘が羨ましい。

 

 私は長い間、彼女らの存在が許せなかった。

 

 だから他の仲間達と一緒に彼女らと戦った。

 

 闇に囚われた気持ちで居続ければいつまでも闇の中だ。

 

 なんの進歩もなく、ただ憎しみを原動力に戦うだけならば、力を増していく艦娘達の艦隊をいつまでも退けられるわけがない。

 

 だから、負けたのだ。

 装甲は完全に破砕。

 

 艤装はズタズタで投棄せざるを得ず。

 

 暗い夜の波間をただただ漂い、力なく命が尽きるのを待っていた。

 

---

 ---

  ---

 

「君、大丈夫か? 君!」

 

 ふと気がつくと、人間の男に介抱されていた。

 いつのまにか、陸地に打ち上げられていたらしい。

 

 真白な制服に白い海軍帽

 

 ああ、いつだったか、艦娘どもといた男がこんな格好をしていたな。

 

 提督、と呼ばれていたか。

 

 なら、こいつを殺せばやつらの戦力を削ぐ事が出来るな。

 

 男の首に手をかけようとする。

 しかし、陸に上がった深海棲艦の力は人間の女性と変わらない。

 

 しかも大怪我だ。

 

 意思とは反して男の首筋に抱きつくだけになってしまう。

 

「気がついたようだね。大丈夫だよ」

 男はゆっくりと私を離しながら言う。

 

「君は深海棲艦だろう?」

 

 こいつ、何故わかるのだ?

 

「何故? といった顔をしているね。深海棲艦はね、瞳の奥に海のような揺らぎが見えるんだよ。目を見れば分かるのさ」

 

「今日は勤務を終えて時間外、しかも君は大怪我を負い丸腰だ。戦う理由はない」

 

 私は戸惑っていた。私は艦娘を沈めた事もあるのに。

 

「ほら、高速修復剤だ。艦娘と深海棲艦は体組織が同じだ。必ず助かる。ただし、立場上ここで回復されたら困る。私の船で沖合いまで連れて行くから、そこで使いなさい」

 

 結局、その男に助けられた。

 回復後、艤装がなくとも男の船を沈める事が出来たかもしれないが、そんな気分にはなれなかった。

 

 手を振りながら去って行く男の顔が眩しかったからだ。

 

 私の心に、ゴミ屑のような存在だった人への興味が生まれたのはその時だ。

 

 艤装なしで人の街を見に行く。

 

 沈んだ船の中や、海の底にたどり着く硬貨を集めて人の食べ物を買い食べる。

 

 人が着る衣服を買い、見様見真似で着てみる。

 

 仲間の目を盗み、そのような行為をしていれば、怒りや無念など薄れもしよう。

 

 いつか、艦娘になれたら、人間になれたらと思うようになっていた。

 

 そして、人の営みには何かしら儀式めいたものがあり、寒い冬に仕事をせずに3日間ほどのんびりする時や、豆を投げ合ったりする日などが一年をとおしてある事を知った。

 

 私が興味を持ったのは、女から男へ贈り物をする日だ。

 

 一年に一度、見た目は良くないが甘い食べ物を贈る。

 

 それがやってみたかった。

 

 なぜなら贈る女が、男に受け取ってもらう時に、その顔が眩しいほど光り輝いているからだ。

 

 美しいと思った。

 

 ある日、あの時に自分を助けてくれた男を戦いの海で見つけた。

 

 深海棲艦の中でも、ある程度位が高い私はそこそこに戦って撤退命令を出した。

 

 殿を務めると説明した後、徐々に艦隊を離れて男の後をつけた。

 

 そして、男の鎮守府を突き止めた。

 

 あの儀式は2月14日

人の世界で少しづつ学んだ私はバレンタインデーという名の1日に全てをかけた。

 

 可愛いハートのケースに入ったイルカの形のチョコレート

 

 集めた硬貨でそれを買い、誰もこない無人島の洞窟に隠した。

 

 男が毎朝海岸を散歩するのも知っている。

 

 2月14日が待ち遠しい。

 

 そして迎えたその日の早朝、陽が登る前に私は出立した。

 もちろん艤装はしていない。

 お気に入りの服も着て来た。

 

 仲間は誰も知らないはずだった。

 

 洞窟からチョコレートを持ち出し、男が散歩する海岸で待っていると……

 

「来た!」

 思わず口に出してしまう。

 

 思わず駆け出す。

 

 男がこちらに気付く。

 

 言うんだ。あの時はありがとうと。

 

 嬉しかったんだと。

 

 そして、これを受け取って欲しいと。

 

 あと少し、あと数メートル

 

 パン! 銃声が聞こえた。

 

「あれ?」胸元が赤い。

 パンパン! 視界がぼやける。

 

 男が駆けてくる。

「大丈夫か?早く物陰に!」

 

 近くの岩陰に私を背負って連れて行ってくれる。

 

 やがて岩陰にたどり着こうとした時……。

 

 パン!

 

 男も倒れた。

 

「フフフ、ニンゲンのブキで死ぬのは屈辱ダロウ。オマエは用済みダ。深海棲艦の恥晒しガ! その男と陸で死んでイケ!」頭に声が響く。

 

 つけられていたのか。

 

 私が殺した。私が彼を殺してしまった!

 

 と、その時「つっ痛ててて」

 

「あ、ああ!」私は思わず叫ぶ。

 

「大丈夫だ。防弾チョッキが役にたったよ。君はあの時の深海棲艦だね。君の方が重症じゃないか。」

 

 良かった! 本当に良かった!

 

 そう思った瞬間、彼が素早く私を抱えて走る。

 

 走りながら通信機らしきものに「大淀、応援を頼む! 敵は深海棲艦1人! 空母、戦艦含む艦隊をすぐに寄越してくれ!!」

と叫ぶ。

 

 ここは彼の鎮守府近く。ものの数分で彼女らは来るだろう。

 

「大丈夫かい?」

 

「何故助けてくれたの?」

 

「君は丸腰じゃないか。戦いに来たのではない事くらい分かるさ」

 

「あの時の御礼が言いたかったの」

「それから、これ」

 血に濡れた小箱を彼に差し出す。

 

「これは?」

「貴方にあげたかったの。人の世界では今日、これを受け取ってもらえた女の人は幸せになれるのでしょう?」

 

「ああ、今日はバレンタインデーか」

 彼は真顔で応える。

「ありがとう。君の気持ち、いただくよ」

 

 受け取ってくれた?

 受け取ってくれた! 嬉しい!

 

「ありがとう。嬉しい」

 

 あの時は、首を締めようとして意図せず抱きしめた形になったが、今日は違う。

 

 彼を抱きしめた。

 彼も抱きしめてくれた。

 

 ああ、願いが叶った!

 

 その瞬間、光の粒子になって身体が消えて行く。

 

 弾丸は私の核を貫いていたのだ。

 薄れゆく意識の中で、この気持ちが何なのか、少し分かったような気がした。

 

 次に生まれてくるときも、貴方に会えたらいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 散りゆく光の粒子はやがて一層光り輝くと、また収束しはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、人の形を成していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また会えたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「○○艦 ○○です。これからも貴方とともに」

 

 艦隊は新たに着任した艦娘を快く迎え入れる。

 

 影は光になった。

 

 いつか全ての影が光に変わりこの戦いが終わりますように。

 

fin

 

 


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