もう限界なので休ませてください。。。 作:オティヌス
「なーちゃん、どうしたの......?」
283プロダクションは事務所とは言うが作りは住宅のようになっていた。
そこのリビングスペースと皆が認識しているその場所に二人の少女がいた。
大崎甜花と大崎甘奈の双子の姉妹アイドルである。
姉妹でアイドルというのは昨今珍しくもないが、双子ともなれば希少性は増す。
そんな彼女達はオーディションで採用され、今はもう一人のメンバーと『ALSTOROMERIA(アルストロメリア)』というアイドルグループに所属している。
そんな二人は現在、ソファに並んで座り、そのもう一人のメンバーを待っていた、のだが。
どうもなーちゃんと呼ばれた少女、大崎甘奈の様子がおかしいようで、姉である大崎甜花は心配そうに妹を見ていた。
「......あっ! ううん、何でもない。大丈夫だよ」
ごめんね甜花ちゃんと、甘奈は明らかに大丈夫ではない様子でそう言う。
その様子を見た甜花はあわあわと両手が行き先を探して宙を泳いでいた。
今の甜花にこの状況を打破する方法はあるのだろうか、そう考えているとピコンと頭上で何かが光った。
「お、お菓子食べようか......」
何だそれは、その手は弱すぎる。
それで何を打破できるのだろうか。
この姉、生まれて十数年、妹に介護されてきた女である。
「ごめんね、甜花ちゃん、お菓子持ってくるね」
逆に妹に気を使わせてしまったと甜花はソファに転がることになった。
甘奈はお菓子を取りにソファから立つと、キッチンへ向かう。
甜花はその様子を無力にもただ眺めることしかできなかった。
「なーちゃん、どうしたんだろ......」
しかし、大事な妹がこんな様子なのは本当に心配である。
今日は朝、甘奈に起こされて甘奈の作った朝食を食べてその後甘奈に髪のセットと化粧をしてもらい服の選定をされ甘奈と一緒に家を出て事務所に行って時間を潰してプロデューサーに車で撮影スタジオ(女性ティーン向けファッション雑誌の撮影)に連れて行ってもらい撮影が終わってタクシーで事務所に帰ってきたところだ。
今日は一応朝食を最後まで一人で食べられたので頑張ったはずである。
あ、もしかしてと甜花は閃いた。
「......プロデューサーさん、途中で帰っちゃったから、かな?」
本来ならば今日の撮影は最後までプロデューサーが一緒のはずだったのが、途中で別の仕事ができてしまい抜けることになってしまった。
それを告げられた甘奈が、儚げに大丈夫と笑っている顔が甜花には印象深く残っていた。
強がっているのが明らかに分かる程であったが、プロデューサーがごめんの後に一言。
『俺はいつも甘奈には助けられてる。そんな甘奈だからこそ安心して任せられるんだ』
だからお願いなと、そう言われた甘奈は少し頬を緩めて微笑んだ。
『甘奈に任せて、プロデューサーさん』
そんなやり取りをしていたなと甜花は思い出す。
甘奈ちゃんは相手に尽くす自慢の妹だなと、改めて自分は恵まれていると思った。
しかしそこでふと甜花は思った。
このやり取りをしている可愛い妹のどこに曇る様子があるのだろうか。
思い返してみても思い当たらなかった。
「うーん......」
甜花が唸って考えていると、両手にお菓子を抱えた甘奈が戻ってきた。
最後までチョコたっぷりなやつに太陽神の名を冠するやつ、コアラの行進曲など他にも様々なお菓子があった。
「にへへ......なーちゃんありがと」
お菓子が大好きな甜花は先程のことを一瞬忘れて笑みを零す。
この姉は。
「お菓子は皆食べるからたくさんストックしてるんだー」
この事務所は基本的に十代半ばの女の子がほとんどを占めている。
かつ事務所自体居心地が良いのか、よく屯してお喋りをしていることが多い。
お硬い事務所ではないので余程の事がない限り、それを注意することもないので、彼女達の中では家みたいな感覚で過ごしている。
社長も特に何も言わないのでプロデューサーも許しているどころかそれを利用して、アイドル達とのコミュニケーションを深め信頼を積み重ねている。
例えばここにあるお菓子は色々な人物達が買ってはストックしてを繰り返しているが、実は最初に始めたのはプロデューサーであった。
アイドルからの信頼を勝ち取るために様々な施策を講じている彼であったが、アイドル同士のコミュニケーションも重要である。
なぜなら彼女達の仲が悪いと、この事務所の居心地までもが悪くなってしまい、それはプロデューサーにとって一番忌避すべき事であったからだ。
故に円滑に仲を深めるためのサポートとしてお菓子を置いていたのだが、今ではアイドル達がたくさん持ち寄るようになったため、プロデューサーもその頻度は減っていった(それでも置いてはいるが)。
「......それ珍しいね」
甘奈が持ってきた多数のお菓子群の中にはドラ焼きがあり、青い猫型ロボットが食べているイメージが甜花の脳内に浮かんでいた。
「うん、プロデューサーさんがお仕事先で貰って来たんだって」
そう言いながら、甘奈は徐ろにスマートフォンを取り出し操作すると、それを甜花に見せる。
「......にへへ、可愛いね」
そこにはプレゼントの箱を差し出すユアクマが描かれたメモが写真に収められていた。
相変わらず上手だなと、甜花は前にデビ太郎の絵を描いて貰った事を思い出す。
あれはまだプロデューサーとそこまで仲が良くなかった頃、事務所でたまたま一人になってしまった時だった。
不安を抱えながらソファでじっとしていると、そこにプロデューサーが帰ってきた。
かなり気まずかったのを覚えている。
挨拶をした後に少しの沈黙。
するとプロデューサーはメモ用紙に何やら書き始め、それを甜花へ見せてきた。
『じゃーん。見て見て』
メモにはデフォルメされた可愛いデビ太郎が描かれていた。
思わず可愛いと呟いた甜花。
プロデューサー曰く。
『可愛いぬいぐるみ持ってるなって思ってさ。デビ太郎って言うんだろ? けっこうグッズとか出てるのなー』
そう言ったプロデューサーに思わず、デビ太郎のことを力説してしまったのだが、言ってすぐに後悔していた。
いくら話を振ったのがプロデューサーとは言え、1を振って10が返ってきたらドン引きされるのではないかと、そう思っていたのだが。
『ううん、寧ろもっと聞きたいよ。だって甜花さんが居なかったら俺はデビ太郎について知らなかったかもしれないしさ。あと甜花さんともう少し話してみたかったんだよね』
そう言ったプロデューサーは少し恥ずかしそうにしながらも笑っていた。
それを見た甜花も釣られて少し笑った。
最初のイメージがかっこいい大人のお兄さんというイメージだったのだが、可愛いところもあるんだなと甜花は認識を変えることになったのだ。
そんなきっかけから甜花のプロデューサーへの壁は少しづつ崩れていき、今ではプロデューサーとは二人きりでも問題なく話せるようになったどころか、甘奈と変わらない距離感で接せられるようになった(?)。
ちなみに現在プロデューサーのデスクの上にはデビ太郎にユアクマ、エン次郎(デビ太郎の弟)のマスコットが置かれている。
「......はぁ、ほんと可愛いなぁ」
写真を見る甘奈の表情は恍惚であった。
これは可愛いと認識しているのはユアクマの絵ではなくそれを描いているプロデューサーに向けてのものだろう。
現に彼女のスマートフォンの写真フォルダにはプロデューサーのメモシリーズが何枚か収められている。
これもちなみにではあるが、甘奈と同じことをしているアイドルは他にも何人かいたりする。
「ごめんね、待たせちゃって」
するとガチャリとドアが開く音がする。
そこには二人よりも歳上の女性がいた。
桑山千雪、二人が待っていたアルストロメリアの最後のメンバーである。
「千雪さん、ごめんね。お休みだったのに」
甘奈は千雪へ謝るとお菓子どうぞと言ってお菓子群を指した。
「あらこんなにたくさん.....ドラ焼き? 珍しいわね、しかも◯屋......」
「プロデューサーさんが、貰ってきたんだって......」
甜花がそう言うと、甘奈がスマートフォンを千雪に差し出す。
「ふふふっ、可愛いわね」
千雪の表情が緩み、微笑んだ。
やはり思う感想は皆一緒であった。
しかし千雪の感想は、ユアクマとプロデューサー、どちらに対してなのだろうか。
どちらもなのか、そういったことに疎い甜花には分からなかった。
「それで、甘奈ちゃん。どうしたの? 話って」
各々お菓子を食べつつ(皆ドラ焼きを最初に食べていた)、少しお喋りをしていると、本題を千雪が問うた。
そう、今この時間事務所に集まっているのは甘奈の提案であった。
本来仕事も午前中の撮影で今日は終わりであり、千雪も休みの日であったのだが、甘奈が大事な話があるとグループCHAINにメッセージが来たのだ。
あっと甜花は思った。
その件で甘奈の様子がおかしかったのかと。
「うん、あのね。実はプロデューサーさんのことなんだけど......」
「プロデューサーさんのこと?」
ゆっくりゆっくりと話す甘奈。
あのいつも明るい甘奈の様子から見てただ事ではないと思った千雪は慎重に問いかける。
「これを見て欲しいんだけど......」
差し出されたスマートフォンには先程のユアクマのイラストではなく、別の写真が表示されていた。
「これって......」
「な、なーちゃん......?」
衝撃があまりに強かったのか二人の表情が困惑で染まる。
甜花に至っては持っていたコアラの行進曲を落とす程であった。
そこに写されていたのは______
______プロデューサーが女性と町中を歩く姿であった。
「うん、甘奈もびっくりしちゃって......」
甘奈の表情が曇る。
そう、甘奈の衝撃は相当なもので、それは休日たまたま一人で買い物をしていたときだった。
スーツ姿ではあるが知らない女性と楽しそうに街を歩いているの見かけてしまったのだ。
思わず写真を撮ってしまったのは仕方のないことだった。
甘奈はプロデューサーが好きなのだ。
勿論恋愛的な意味で。
本気で恋する5秒前とかではなく本気で恋して31536000秒後(実はそれ以上)と言ったところである。
多感な年頃の女子高生で普段は姉の面倒をたくさん見ていて頼られる側だった彼女が、アイドルになって出来た頼れる歳上の男性。
しかも容姿端麗で身長もかなり高く、物腰も柔らかでたまに出る子供っぽいところまで甘奈にとってみれば最高に突き刺さっていた。
どストライクどころか貫通した弾丸は地球を一周していた。
きっかけは何だっただろうか。
出会いから蓄積していったものはあっただろうが、引き金を引いたのは学校の同級生にプロデューサーと一緒にいる所を見られた事がそうかもしれない。
夕方からの仕事で学校にプロデューサーが車で迎えに来た時だ。
プロデューサーは気を遣って校門から少し離れたところに車を停めて待っていたのだが、それでも見られてしまうのはどうすることも出来なかった。
たまたまプロデューサーが近くの自動販売機に飲み物を2つ購入しに行き、車に戻ったときに甘奈が居た。
時間より少し早い到着ではあったがプロデューサーはごめんと謝って鍵を開けた。
そこで一言二言会話をしたのだがそれを見られていたようで、後日同級生からは追求を受けた。
同級生の評価はカッコいいや頼りになりそうなどの良いものばかりであり、甘奈はその時何故か自分のことのように嬉しかったのだが、その後爆弾を放り込まれた。
『あんなカッコいい人が近くに居たらそりゃ学校(うち)の男子はガキにしか見えないよね』
そう言われて気づいてしまったのだ。
甘奈の人生において男子に告白されたことは結構ある。
しかし一度も告白を受けたことはなかった。
勿論嬉しい気持ちはあったが、それでも何か違うと感じていた。
そこで甘奈は告白してきた男子をプロデューサーに置き換えたことで答えを見つけてしまったのだ。
妄想の自分はその告白に対しオーケーの返事を即答していた。
なぜ、と思ったがプロデューサーとなら付き合ってみたい、それどころか一緒に住んで料理を食べてもらって一緒に寝て両親に挨拶をして結婚をして家族が増えて______先の先まで妄想が止まらなかった。
それ以降、甘奈はプロデューサーへの好意を完全に自覚したのだ。
故に甘奈が街でプロデューサーを見かけたときの絶望は尋常極まりないものであった。
「み、見間違いってことは、ないのよね......?」
そう訊く千雪の表情は何かに縋るような危うさがあった。
「甘奈がプロデューサーさんを間違えることはないから......うん」
「なーちゃん......」
甘奈がもし恋心を自覚していなければ見間違いの可能性はあったのだが、自覚したことにより常日頃彼の姿を追いかけてしまうようになってしまった。
だからこそ向上した認識能力はかなり精密なものになってしまっていた。
それ故の"確定"という悲劇。
その日、甘奈は枕を濡らした。
「でも、まだプロデューサーさんとこの人がそういう関係とは言い切れないんじゃないかしら。お友達の可能性もあるわけで」
千雪の言葉は間違いではない。
何なら甘奈の状況判断が尚早過ぎるのだ。
確かに好意を抱く甘奈だからこそ最悪の方向へ考えてしまうのは仕方のないことかもしれない。
「でも、多分だけど仲良さそうに歩いていたし」
「そうだとしてもこれだけでプロデューサーさんに恋人が居るって判断は難しいと思う」
ただ街を異性が一緒に歩いているだけで恋人と断定するのであれば私達はどうなるのと、その千雪の発言で甘奈はハッとした。
プロデューサーとこの事務所のアイドル達の距離感はかなり近い。
それは傍から見ても明らかで、楽しそうに会話しているのを見て少しモヤモヤするアイドルも多い。
そう、そうなのだ。
確かに仲良さげで歩くだけで恋人になれるのだとしたら、とっくに甘奈とプロデューサーは恋人同士じゃないかと。
しかしその事実はありえない(今の所)ので______とどのつまりそういうことになる。
甘奈の瞳に少しではあるが光が戻ってきた。
「......千雪さん、す、すごい冷静だね。か、かっこいい」
甜花は自身の妹を闇から引きずり出してくれた千雪に羨望の眼差しを向ける。
流石、大人の女性だ。
あるアイドルが事務所に所属するまでは最年長であっただけあると、めちゃくちゃ失礼なことを考えつつ。
願わくば千雪に読み取られないことを祈るのみである。
「そんなことないわ、甜花ちゃん。私も実際にその場面に遭遇したら多分甘奈ちゃんと同じこと考えていたかもしれないし」
甘奈が焦燥しているのを見て逆に冷静になった千雪。
彼女の言うことは本当であった。
友達などのグループでお化け屋敷に入った時に、周りが凄い怖がっていたら逆に怖くなくなるあれである。
そもそもであるが、プロデューサーに恋人がいるという事実は千雪にとって今一番恐れていることである。
想像するだけで気持ちが落ちていってしまうが、ある意味甘奈のお陰でそれは防がれた。
ここまで来たら分かると思うが、桑山千雪はプロデューサーに好意を抱いている。
勿論、恋愛的な意味でだ。
初めて会った時、スーツのボタンが取れかかっているのを見かねて直した時から千雪はプロデューサーに対して一目惚れをしていた。
そもそも普通に考えて初対面の男性のスーツのボタンをその場で直してあげるなんてありえないだろう。
人間というのはそこまで出来た生き物ではないのだ。
逆に考えればそこまでしてあげたいという気持ちの表れといってもいいだろう。
そして千雪からしてみれば年齢的にも近く、互いに成人していることもあり歳下のアイドル達の面倒を見るという点でも共通事項が多い。
そしてお酒を飲めるという点でも成人組はたまにプロデューサーと飲みに行くことがある。
以前、どうにか個室の居酒屋で二人で飲むという状況まで持っていき、酒類をどんどん頼んでいったことがあった。
完全に女を喰うヤリ◯ンと同じ手法である(お酒は用量用途をきちんと守って楽しく飲んでください)。
こちらの好意に気づかないプロデューサーへのある種の奥の手であったのだが、結果はまあお察しの通りである。
アルコール耐性がランクAくらいあったのだあのプロデューサー。
最終的には酔いつぶれた千雪を自宅まで一緒にタクシーに乗ってきちんと送り届け、終電も終わっていたので徒歩で2時間程かけて帰った男だ。
なんだこいつは、据え膳を知らないのかと罵倒されてもおかしくないが彼は真性のプロデューサーであった、それが答えである。
後日ひたすらプロデューサーに謝り倒したのは言うまでもない。
今思えば、あそこまで積極的だったのは自分が少しおかしくなっていたのかもしれないと反省する千雪であった。
しかしである。
前述の通り、千冬は未成年のアイドル達と違ってかなりのアドバンテージを有している。
有しているのにこの鉄壁ぷりなのである。
千雪の容姿は一言で言えばかなりの美人だ。
スタイルもよく巨乳である。
並の男なら秒でノックアウトされるのは必至であるのだが、そんな手法が通じない鉄壁のプロデューサーだからこそ、ある意味逆の信頼感があった。
この人の恋人になるのは並大抵のことではない。
故にプロデューサーに恋人がいない理由付けになっていた。
勿論確定ではないのだが。
「でもこの女性が誰なのかは気になるわね。一体誰______」
「戻りましたーって、あれ?」
さあ件のプロデューサーである。
「あ、プロデューサーさん! おかりなさい!」
「にへへ、お、おかえりなさい」
「プロデューサーさん、おかえりなさい」
3人は先程まで会議をしていたとは思えない様子で彼に対して挨拶をしていた。
表情は笑顔である。
「撮影終わったら直帰じゃなかったっけ? それに千雪は今日休みだったよね」
プロデューサーは当然の疑問に帰結する。
確かに居心地が良いのかたまに休みなのに事務所に来てお喋りしているアイドル達を見るが、それでも疑問には思うのだ。
「あ、うん。それは______」
「この後、二人とお出かけする約束をしてたんです。なので事務所集合にさせてもらいました」
すみませんと、甘奈への千雪のナイスアシストが炸裂する。
これによりプロデューサーの彼女たちへの疑問は消滅した。
甜花は心の中で拍手を贈る。
「それなら大丈夫だよ。ただびっくりしただけだから」
はははと笑いながらビジネスリュックを置いて、持っていたペットボトルの飲み物を飲む。
クラフト◯スのブラックコーヒーであった。
「あとはづきさんはお出かけ?」
「......郵便局に行ったよ。出すものがあるって」
オーケーありがとうとプロデューサーはお礼を言うと、ぽんぽんと甜花の頭を叩くように撫でた。
これもきちんと距離感を理解しているプロデューサーだからこそできる芸当である。
少し嬉しそうにする甜花とそれを見て羨ましそうにする甘奈と千雪であった。
「あ、ドラ焼き食べた?」
そこから始まる雑談に花を咲かせていると、プロデューサーのスマートフォンが鳴った。
ごめんと言って、少しその場を離れるプロデューサー。
仕事モードのプロデューサーは相変わらずカッコいいなと改めて思うアルストロメリア。
短時間ではあるが彼女達の視線がプロデューサーの方へ注がれる。
「はい、そうですね。その件に関しては既に話を進めておりまして」
プロデューサーがめちゃくちゃ仕事が出来るというのはこの事務所の共通認識である。
この事務所で彼の仕事に文句を言うものは誰一人としていなかった(表面上は別であったりするが)。
「......はい。ああ。その件につきましては既にメールで関係者全員に送っておりますので詳細はそちらをご確認いただければと」
いえいえ大丈夫ですよと返すプロデューサー。
どうやら順調に仕事の話は進んでいるようだ。
そんな様子を見て安心する3人であった。
言い方はあれだが、多忙なプロデューサーなら恋人を作る時間は無さそうだなと、あの女性とはそんな関係ではないと、そう自分達の中で一つの区切りとして”確定”させた______はずだった。
「______え? ああ、はいとても順調ですよ______まあ恋人みたいなものです」
はははと楽しそうに笑うそんなプロデューサーに対して、3人は上手く笑うことが出来なかった。
こいつ誰にでも同じこと言ってそうだな。