もう限界なので休ませてください。。。   作:オティヌス

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王国崩壊編Ⅶ

「ギャハハハハ!! どうだこれでお終いか!! ジャスティスレッド!!」

「くっ、このままでは......!」

 黒い烏賊と蟹を複合したような怪人が、地面に膝をつく赤き戦士ジャスティスレッドに向かって、巨大な鋏状の右腕を向けた。

 その鋏の中から青白い光が明滅しており、エンジン音のような唸りを上げている。

「さあ! 今までやられてきた同胞たちの怒り、得と味わうが良い!!」

 青白い光の明滅が最大になり、その極光がジャスティスレッドを包みこむ。

「くそっ! 頼む、動いてくれ!」

 力を入れて立ち上がろうとするが、ジャスティスレッドは既に限界が来ていた。

 このまま動けなければ確実にやられてしまう。

 その時であった。

 

 

「みんな〜! このままじゃジャスティスレッドが負けちゃう! 力を貸して欲しいの!」

 

 

 ジャスティスレッドと怪人の動きが止まり、その2人の前に一人の女の子が表れた。

 赤を基調とした衣装に身を包んだ彼女はそう言って、こちら______つまりはステージ前の観客たちへ呼び掛けた。

「あたしの”頑張れ〜ジャスティスレッド”の後に続いてみんなもジャスティスレッドを応援して!」

 せーのと言って彼女は声を発した。

「頑張れ〜ジャスティスレッド〜!」

『頑張れ〜ジャスティスレッド〜!』

 彼女に続いて観客席からは子どもたちを中心とした応援の声が、ステージ上のジャスティスレッドへ掛けられた。

「う、うおおおお! 力が! 湧いてくる!」

「な、なんだと!? どうして立ち上がれる!?」

 ジャスティスレッドはその声援のお陰か力を振り絞り、立ち上がる。

 その姿に驚愕した様子で、怪人に隙が生まれた。

「はっっ!!」

「ぐっ!?」

 ジャスティスレッドの蹴撃が直撃し、怪人は後ずさる。

「喰らえ、必殺......!」

 そしてジャスティスレッドは深く腰を落とし、左腕を前に、右腕を後に溜めて構えた。

「ジャアスティィィィス......イン、パクトォォォォ!!!!」

 裂帛の気合によって放たれた赤き炎の拳が怪人の鳩尾を容赦なく抉り貫く。

 赤い龍が拳に乗って怪人を貫く姿が見えた気がした。

「グアァァァァァァァァ!!!?!!?!」

 爆発四散。

 爆煙に包まれた怪人は跡形もなく消え去った。

 見事ジャスティスレッドは怪人スクアクラを撃滅粉砕したのだった。

「やったああああ!みんなジャスティスレッドが見事怪人スクアクラを倒したよ!!」

 そして、その様子を見て感極まった彼女、小宮果穂は飛び上がり喜んだ。

 それに続くように観客席の子どもたちも大きな歓声を上げて喜んでいた。

 

 

「ううっ、果穂。見事よ、完璧よっ!」

 

「おいおい、泣いてんじゃねえよ....グスッ」

 

「果穂さん、流石です。見事、やりきりましたね......凛世はとても、嬉しいです」

 

「みんな、感極まり過ぎだよ.....というかジャスティスインパクトの時、龍みたいなのが見えた気がするんだけど」

 

 

 観客席の一番後ろ、その端に4人の目立つ客がいた。

 最初の号泣している女性は有栖川夏葉。

 その彼女に突っ込むも涙が溢れている少女、西城樹里。

 果穂のやり切った笑顔を見て、目を伏せながらハンカチを目元に当てている着物の少女、杜野凛世。

 そんな彼女たちとジャスティスレッドに冷静にツッコミを当てている少女、園田智代子。

 彼女たちは283プロダクション所属のアイドルユニット『放課後クライマックスガールズ』であり、同時に仲の良い友人同士でもあった。

 今日彼女たちは休みであったのだが、果穂の仕事である『ジャスティスV〜孤軍奮闘赤龍死闘編〜』ヒーローショーの司会にお忍びで見学に来ていた。

 皆最年少である果穂に甘いのもあり、案の定ではあるが感動の渦に巻き込まれていた。

 ツッコミを入れていた智代子も内心では彼女の雄姿に喜んでいた。

 ちなみに変装(サングラス・帽子・マスク)は一応しているので恐らくバレてはいないと思われる。

 逆に目立っているとも言えるが、まあバレていないのであれば良しだ。

 

 

「みんなの応援のお陰であの凶悪な怪人に勝てた! 本当にありがとう!!」

 

 

 そんな彼女たちを他所に、ジャスティスレッドの熱いお礼が観客へ向けられると子どもたちは沸き立っていた。

 

 

 

 

 

 そして場所は変わってヒーローショー会場から少し離れた喫茶店。

 住宅街の中にある隠れ家的なお店で店内には落ち着いたボサノヴァ調のBGMが流れていた。

 そんな喫茶店の奥にあるテーブル席、そこに放課後クライマックスガールズのメンバーが集まっていた。

 ショーが終わった後、果穂はそのまま上がりだったため一緒にこの喫茶店へ来たということだ。

「ジャスティスレッド最高でした!」

「ふふ、嬉しそうで何よりよ」

 興奮気味に言うのは先程までヒーローショーの司会をやっていた果穂で、どうやらまだあの興奮が収まっていないようで、それを聞く夏葉は微笑ましそうに眺めていた。

「でもよ、最近のヒーローショーってあんな凄いのな」

「はい......爆発も、まるで本物のようでした......」

「あの、龍が見えたのは......勘違いですよね、うん......」

 感慨深そうに言う樹里と凛世であったが、智代子はあの時見えた龍は何だったのか引っかかっているようだったが、どうやら考えるのは辞めたらしい。

「果穂、それで足りる? 成長期なのだからもっと食べても良いのよ」

 それにたくさん食べても消費すれば良いだけのことだしと、夏葉は言う。

 彼女たちの前には飲み物と軽食が並んでおり、少し遅い昼食も兼ねてのようであった。

「はい、ありがとうございます。でもお腹いっぱいなので大丈夫です!」

 オムライスを平らげた果穂はオレンジジュースを飲みながらそう答えた。

「でもプロデューサーも一緒に来れれば良かったのに.....」 

 紅茶を飲みつつ、残念そうに夏葉は言った。

 今日の果穂の仕事にプロデューサーがついていた。

 合流した際に、一緒にと夏葉が誘ったのだが、次の仕事があるということで果穂のことを頼むと言ってすぐに行ってしまった。

 電話をしながら少し速歩きで次の仕事場へ向かうプロデューサーの背中を見て、メンバーは少しの寂しさを感じていた。

 

 

「はい......とても、とても残念です......最近直接お話する機会も減って.....」

 

 

 しょんぼりんぜと凛世は悲しそうに少し顔を伏せている。

 それはまるで仕事が忙しい彼氏とすれ違う彼女のような態度であった。

 勿論凛世とプロデューサーは恋人関係にない。

 しかし彼女の出会いを鑑みればプロデューサーへの思いが強くなるのは当然かもしれない。

 外出中、彼女の履いていた下駄の鼻緒が切れてしまったのをたまたま通りかかったプロデューサーが直した、というものである。

 古典的、少女漫画的と言われても仕方のないそんな出会い。

 

 

 凛世の心は完全にぶち抜かれていた。

 

 

 それはまるでツイ◯バ◯ターラ◯フルを撃たれ爆散したス◯ース◯ロニーのようであった。

 彼女の趣味は少女漫画を読むというもので、そのシチュエーションと重なったこと、さらには凛世のフィルターを通したことにより只でさえ容姿の良かったプロデューサーは最早ナルキッソスみたいな容姿になっており、結果徹底的に落ちた。

 落ち切った。

 確かに彼女は家が老舗の呉服屋の娘で、多少世間知らずなところがあり、通っていた学校も女子校で異性への耐性がなかった。

 そんな彼女が王子様と運命的な出会いをしたら恋に落ちても仕方のないことだろう。

 そこからの彼女の行動力は凄かった。

 彼からその流れでアイドルにスカウトされすぐに承諾。

 連絡先を聞いた後、すぐに帰宅して両親を説得し、アイドル活動の許可を得た。

 勿論両親からは大反対を喰らった。

 騙されているのではないかとそう思うのは当然であった。

 大事な大事な愛娘がどこか世間知らずなところがあるのを分かっていた両親はなんとか考え直して欲しいと言うものの、凛世の考えは変わらず、そんな彼女に根負けしアイドル活動を了承したのだった。

 その後、すぐに両親から承諾も取れましたとプロデューサーへ連絡した凛世。

 電話を受けたプロデューサーはかなり驚いていた。

 なぜなら後日、アポイントを取ってアイドル活動について説明をした上で承諾を貰おうと思っていたのだ。

 勿論、後日に説明をしに行った上で改めて承諾は貰ったのだが。

 このようなことがあって晴れて凛世はプロデューサーの元でアイドルになったのだった。

 今ではファンの喜ぶ顔もそうであるが、プロデューサーが喜ぶ顔を見るのが彼女にとって最も嬉しいものの1つになっていた。

 

 

「でもプロデューサー、最近いつにも増して忙しそうだよな」

 

 

 人には無理すんなって言う癖にさ、と呟くように続けたのは樹里だ。

 彼女の表情はかなり不満げに見えた。

 樹里は最初プロデューサーにアイドルとしてスカウトされた際も一度断っていた。

 自分はそんなの柄じゃないと。

 ぶっきらぼうな口調と不良と勘違いされることもあってあり得ないと、そう思っていたのだ。

 しかしそんな彼女にプロデューサーは寧ろそのままの姿でいてくれた方が有り難いとそう言ったのだった。

 曰く、それは個性であるし欠点ではない、寧ろ強みであると。

 そんな彼の態度に興味を持ってスカウトに了承したのだ。

 それを聞いた彼はとても嬉しそうな顔をしてなんだか調子が狂った樹里であった。

 連絡先を聞いて両親に後日説明に行かせてもらいたいと連絡先を交換し、スケジュールを調整。

 そして、プロデューサーと樹里とその両親の4人で話しをすることになった。

 意外にも彼女の両親は否定的ではなく、きちんとアイドル活動の説明をし、了承を貰うことが出来て安心した樹里。

 そこから彼女のアイドル活動は始まったのだが、プロデューサーは忙しいのにも関わらずそれを顔に一切出さずいつも笑っていた。

 樹里のこの性格で他の事務所のアイドルと軋轢が生まれてしまった時も仲裁に入ってくれた。

 状況的には完全に言いがかりに近いものだったが。

 そんなこともあって彼女は怒られるのを覚悟した。

 いくら自分が悪くないとは言え、相手の挑発に乗ってしまったのは良くないと。

 だがプロデューサーは彼女を怒らなかった。

 彼曰く、話しを聞く限り樹里は全く悪くないからと、それだけ。

 ワタシが嘘を言っているかもしれないだろやもっと怒るべきだろと、何故か樹里が怒ったのだがそれに対してもプロデューサーはこう言った。

 

 

『信じてるからね、樹里は真面目だし嘘は吐かないって。それに悪くないのに謝るなんて嫌でしょ? そんなのもっと大人になってからでも良いよ』

 

 

 でも本当に悪いことをしたときは別だよと、苦笑して言った彼の言葉がひどく耳に残った。

 そこから彼女はさらにアイドル活動に力を入れ、レッスンも熱心に取り組み、あの言いがかりをつけてきた他事務所のアイドルより上へ行った。

 ある意味であの時の子供だった自分から脱却するためのようなものであったが、これで漸くプロデューサーと同じ大人の立場になったような気がした樹里。

 守られる立場ではなく対等で。 

 今では率先してまとめ役を買ってくれることもあって、プロデューサーに頼りにされることを喜んでいる姿を目撃されることがあるようになった。

 

 

「確かにそうだね、なんか何かに追われているような感じっていうか」

 

 

 そう樹里の言葉に心配そうな表情で頷いたのは智代子だった。

 彼女とプロデューサーの出会いはオーディションであり、合格はしたのだが、実は当初そのオーディションも受ける予定はなかった。

 元々彼女の友人がそのオーディションを受ける予定であったのだが、土壇場でその友人が体調を崩し、代わりに受けて欲しいことで受けたという変わった経緯があった。

 面接予定だった子と違う人物が来たということでプロデューサーも最初はどうしようかと思ったそうだが、彼女の親しみやすく明るい性格を見て直感的に合格を出した。

 まさか受かるとは思っていなかった智代子はとても驚いた。

 アイドルとして活動がスタートして智代子は1つの悩みを抱えることになった。

 それは自分にはこれといった強みがない、ということだった。

 平凡であり、そもそも本来であればアイドルになるはずなどなかった自分に一体どんなことが出来るのか。

 そんな彼女にプロデューサーは1つの提案をした。

 好きなものを教えてほしいと。

 その質問に対して一瞬考えて智代子はチョコレートと答えた。

 更にどれくらい好きなのかを聞かれ、智代子は休日は食べ歩きをしてますと答えた。

 じゃあSNSはやっているかと聞かれ、それもしていると答えた。

 するとプロデューサーは良いねと笑顔で言うと、それに智代子にはお誂え向きだねと言った。

 

 

『じゃあチョコレート好きアイドルで行こうか』

 

 

 そう言われて一瞬クエスチョンマークが頭を過る智代子。

 歌やダンス、演技力などではなくそんなことで良いのかとそう思ってしまったのだ。

 その様子の智代子に対して、プロデューサーは優しく語りかけた。

 

 

『智代子の一番凄いところはその親しみやすさだよ。だから取っ掛かりって言い方はあれかもしれないけど君を見てくれる人たちにもっと親しみをもってもらうために、ね』

 

 

 智代子は愛されるよ、そうプロデューサーは続けた。

 彼のその言い方に少し顔を赤くしてしまう智代子ではあったが、その言葉を信じてみよう、そう思ってその路線で行くことを決めた。

 結果的にそれは成功することになる。

 彼女の名前もチョコに語感が似ており、元々友達からはチョコやチョコちゃんと呼ばれていた。

 名前と似ているチョコレートをただ利用しているだけかと言われればそうではなく、きちんとチョコレートに関する最新のトレンドも追ってSNSでの情報発信や、他のキャストと軋轢を生まない性格から見ている人たちからの好感度は高くなった。

 家族や学校の同級生など応援してくれる人を身近に感じ彼女にとってそれは大きな自信へと繋がったのだ。

 本来オーディションを受けるはずだった友人も彼女のこととても応援してくれて、どころかライブがあったら絶対に行くねと言ってくれる程で、智代子はそんな彼女のためにもさらに頑張ることを決意した。

 

 

『本当に良かった、智代子の魅力がちゃんとみんなに伝わってくれて。それにお友達には負けちゃうかもしれないけど俺だって智代子のファンなんだ』

 

 

 そう言って彼女を支えてくれたとても真面目で頑張りやなプロデューサー。

 それはずっと一緒に活動をし続けたことによって真に理解することができた。

 自分がいくら大変でも決してその様子を見せようとしない。

 智代子はそんなプロデューサーのため、少しでも元気をあげようと彼にお菓子の差し入れをした。

 その時の彼の嬉しそうな顔が智代子の頭に強く残っていた。

 だからこそ、今の辛そうな姿を見せようとしないプロデューサーのことを智代子はとてもとても心配していたのだ。

 

 

「そうよね、そこは私も心配していのよ」

 

 

 夏葉はコーヒーを一口飲みながらそう言った。

 仕事終わりの果穂を誘ったのは本心ではあったが、実際のところ今日はプロデューサーを誘うという目的が彼女の中にはあった。

 彼女は友人に連れられたアイドルライブを見て衝撃を受け、そこからオーディションに来たという経緯がある。

 そしてオーディション当日、彼女の自信満々なその様子に光るものを感じたプロデューサーは採用を決めたのだ。

 彼女は世界的な車メーカーの社長令嬢で超のつくお嬢様である。

 有栖川の家に恥じないよう常に全力でトップアイドルを目指す彼女の姿はプロデューサーにとってみても好感が持てるものであった。

 そんな全力で突っ走る彼女をプロデューサーは全力で支えた。

 彼女のトレーニングに対して、最良の結果になるように色々なところで手を回していたのだ。

 その介あって彼女はアイドルとして大きな成果を残せた。

 テレビやラジオ、雑誌の撮影など様々な仕事が舞い込んできて、とても順調にアイドル活動が進んでいた______はずだった。

 ある日のこと、撮影が終わり、夜一人で自宅へ帰ろうとしてして近道の人気のない道を歩いていたときだった。

 謎の人影が表れたのだ。

 突然表れたその人影に恐怖を感じ声がでなくなる夏葉。

 するとその人物、男は静かに語り始めた。

 

 

『お前の親の会社で働いていたがクビになった』

 

『ムカつく同僚を殴っただけなのに』

 

『あいつが悪いのに』

 

『だから復讐してやる』

 

 

 夏葉はこの男の言っている意味が分からなかった。

 全部自業自得なのを周りのせいにして逆ギレしているだけだと。

 夏葉はそれに怒りを覚え、言い返してしまった。

 しかし、それが男の神経を逆撫でしてしまう。

 

 

『うるさいうるさい! 全部お前らが悪いんだ!』

 

 

 男の手にはナイフが握られており、そのまま走って向かってくる。

 夏葉は動くことができなくなっていた。

 咄嗟なこと、夜なこと、多少鍛えているとは言えこちらは女なこと、様々な状況が重なり彼女は恐怖という感情で支配されていた。

 このまま私の人生は終わってしまう、まだトップアイドルになれていないのに。

 そう思ったそのときだった。

 

 

『何やってんだ馬鹿野郎!!』

 

 

 次の瞬間、目の前の男は吹き飛んでいた。

 何が起きたか分からなかった。

 気づいたら男は数メートル先の電柱にぶつかり完全に伸びていた。

 

 

『大丈夫か!? 怪我はないか夏葉!?』

 

 

 目の前にいたのはいつも夏葉を支えてくれていたプロデューサーだった。

 彼が横から入って、ナイフを持った男を蹴り飛ばしたのだ。

 夏葉はバクバクする心臓を抑えながらどうしてここにと言う。

 

 

『たまたま営業の関係でこっち来ててさ、そしたら夏葉の後ろ姿が暗い路地の方入っていくからさ。ごめん、ちょっと気になってつけさせて貰った。そしたら変な男にナイフを突きつけられている夏葉がいて』

  

 

 本当に良かった夏葉が無事で、そう安心した表情で言うプロデューサーの顔を見て夏葉は抑えていたものが開放されてしまい彼に抱きつきその胸の中で泣いてしまっていた。

 当たり前だろう、もしかしたら殺されていたかもしれない状況だったのだ。

 プロデューサーはそんな夏葉を見て一瞬迷うも、彼女に大丈夫大丈夫と声を掛けながら抱きしめ返した。

 そして当たり前だが結果的に男は逮捕。

 夏葉の両親から何とお礼をすればいいかと深く頭を下げられた。

 もし彼がいなければ大事な愛娘を失っていたかもしれないのだ。

 さらに言えばどうやったかは分からないがプロデューサーが根回しをしたお陰で大々的なニュースにならず会社のイメージダウンしないで済んでいたところもあり、両親はそれも含めお礼を言った。

 

 

『いえ、彼女を守るのは私としては当然のことなので気にしないでください』

 

 

 しかし彼はその一言でお礼は良いので、夏葉さんと今度家族旅行にでも行ってあげてくださいと言ったのだ。

 

 

『夏葉さんは少しの間活動休止させました。今必要なのはメンタルの回復なので何よりも彼女を気にかけてください。私も微力ではありますが尽力いたします』

 

 

 その言葉を聞いた両親はその後彼女と一緒に過ごし、プロデューサーもその様子を気にかけて、どうにかメンタルも回復した夏葉はアイドル活動に復帰し、今を全身全霊で頑張っている。

 さあ、ここまで来たら分かると思うがそんな強烈な出来事があった夏葉はプロデューサーに対して特別な思いを抱いていた。

 吊橋効果と言われればそれまでであるが、あの状況を華麗に助けられれば仕方のないことだろう。

 さらに言えば普段見せない荒々しい口調も男というものを感じさせ、その思いを増加させた。

 そう彼女はプロデューサーを男として意識してしまっていたのだ。

 この件で彼女の両親も娘を庇い助けてくれたこと、さらにその仕事の手際、その性格(あと容姿)を見て彼であれば私たちは何も文句はないよと言わしめる程に気に入ってしまっていた。

 つまりは両親公認になっていたのだ。

 勿論、アイドル活動は全力で頑張りトップアイドルを目指す。

 そしてもう一つ、プロデューサーとそういう関係になるという第二の目標。

 これが夏葉の今欲しいもの、であった。

 

 

「......あれ、プロデューサーさんじゃないですか?」

 

 

 すると果穂が喫茶店の窓を指差した。

 その先にはスーツ姿のプロデューサーが歩いているところが見えた。

 それを見た彼女たちはお会計を済ませ、すぐに彼を追いかけた。

 何か予感がしたからだ。

 追いかけた先、オープンテラスの喫茶店でプロデューサーは誰かを待っているようだったが、数分後目的の人物が彼の前に表れた。

 

 

 女性。

 

 

 二十代後半から三十代前半であろうお洒落で綺麗な女性。

 彼はその女性と親しげな様子で話しをし始めた。

 彼女たちはそんな2人の話しを聞くために少し近くの席に座るが、距離があってその声は上手く聞き取れない。

 そしてその会話の中、ある決定的な言葉が聞こえてしまい彼女たちの時間は止まった。

 

 

 

「______今より先、深い関係を私は望んでいます」

 

 

 

 とても真面目な表情で女性へそう告げるプロデューサーの言葉が耳から離れなかった。




あれ果穂は?
彼女は最大の良心なので。

そもそも小学生に手を出すなんて最低だろ!
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