奮闘セヨ! 枯渇鎮守府!   作:ゼンギョドン

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トレジャーハント with 猫さん

 今日の天気は晴れ。

 今日も今日とて平和である。

 

 提督と雷は仕事の合間に、花壇に腰掛けて海風に当たっていた。

 

 …………否、正確には腰掛けているのは雷だけで、提督は彼女の膝に頭を乗せて寝そべっていた。

 当の雷は満更でもない様子なのはやはりと言うべきか。

 

「……うむ、良い」

 

「ふふっ。辛かったらもっと甘えてもいいのよ、司令官?」

 

「甘えます。お仕事辛い」

 

 真顔でそんなことを言う提督の頭を、雷は微笑みながら優しく撫でた。

 

 ふと、雷の視線が提督から逸れる。

 つられて、提督も彼女と同じ方を見た。

 

 2人の目の前には、道のど真ん中で眠る子猫の姿があった。

 

「そういや、家は作ってやったのか? 犬小屋ならぬ猫小屋」

 

「ううん、まだ。一応今は私達の部屋に入れてあげてるんだけど、いつも気づいたらいなくなってて、あんな風に外で寝てるの」

 

「猫はやっぱり自由だな」

 

 そんな会話をしているうちに、子猫は目を開けて起き上がり、大きく欠伸をした。

 

「あ、起きた」

 

「寝床を変えるのか」

 

 尻尾を振りながら歩いて行く子猫。

 提督はなんとなくその姿を目で追っていた。

 

 すると……。

 

「……ねえ、司令官。何か光ってない?」

 

 雷が急にそんなことを言い出した。

 

 彼女の言う通り、先程まで子猫が眠っていた場所が光っている。

 ひび割れた地面の下にある何かが、太陽光を反射しているようだった。

 

「……何かな?」

 

「よし、待ってろ」

 

 提督は立ち上がると、懐に隠し持っていた銃剣を取り出して地面を叩き始めた。

 

 数秒後、提督が何かを持ち上げる。

 銀色の光沢を放つそれは、枯渇鎮守府に不足しているもののひとつ──鋼材であった。

 

「こ、鋼材だあああーーーっ!」

 

「地下資源だあああーーーっ!」

 

 僅かな量ではあるが、鋼材であることに違いはない。

 雷と提督は手を取り合って飛び上がった。

 

「やったわ! これで備蓄が増え……」

 

「新装備の開発ができるな!」

 

「…………仕方ない人!」

 

 何故か満面の笑みになる雷であった。

 

「…………ねえ司令官。それにしても、奇妙だと思わない?」

 

「……ああ」

 

 2人の視線は、自然と子猫の後ろ姿に向かった。

 

「あの猫が寝ていた場所から、何故か地面の下に眠っていた鋼材が出てきた。単に偶然と言っちまえばそれまでたが……」

 

「もし、"猫さんが寝た場所から宝物が掘れる"んだとしたら……」

 

 手元の鋼材と猫を交互に見比べる2人。

 

 猫が眠った場所を掘って、資材を手に入れる。

 これを繰り返せば、やがて…………!

 

 財政難、解決ッッッ──!

 

「出撃もし放題! 資源開発もし放題ッッッ!」

 

「みんなで南の島まで遠征(バカンス)も夢じゃないわ!」

 

「南の島で雷にお世話されるのも良いな!」

 

「でしょ⁉︎」

 

 再び手を取り合って飛び上がる提督と雷。

 

 そんな2人を尻目に、子猫はどんどん遠ざかっていく。

 

「はっ! しまった、追いかけねえと! 見失うなよ雷!」

 

「わかったわ! 行きましょ、司令官!」

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 暁、響、電は不思議な光景を目にしていた。

 

 眠そうな顔でとことこ歩いていく子猫。

 その少し後ろを、匍匐前進でついていく提督と、彼についていく雷。

 何故か、提督は銃剣を持っていた。

 

「司令官さん達、何してるのです……?」

 

「……新しい遊びかしら?」

 

 考えても考えても、暁達にはわからなかった。

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 しばらく鎮守府の敷地内を歩き回っていた子猫だったが、とうとう工廠の近くで足を止めた。

 

 提督と雷が陰から見守る中、子猫は体を丸めるようにして眠り始めた。

 

「おっ! 眠った! 早速──」

 

「ダメよ、司令官! 起こしちゃ可哀想だわ!」

 

「……まあ、確かに」

 

 待つこと約20分。

 

 提督も雷の膝枕でウトウトし始めた時だった。

 

「あ、起きた!」

 

「何⁉︎」

 

 彼女の言う通り、子猫は起き上がって歩き始めていた。

 

 提督と雷はすぐに猫が寝ていた位置に駆け寄り、嬉々とした表情で発掘を開始する。

 

 燃料か。

 弾薬か。

 ボーキサイトか。

 またしても鋼材か。

 

 穴が大きくなるにつれて、2人のワクワクは大きくなる。

 

 ……しかし、出てきたのは大量の黒い鳥だった。

 しかも、かなり見覚えのあるやつ。

 

「…………失敗ペンギンの大群⁉︎」

 

「んなアホな!」

 

 興奮と期待は一瞬にして落胆に変わる。

 

「……でも、どうしてこんなに?」

 

「…………」

 

 1匹の失敗ペンギンを持ち上げて首をかしげる雷。

 一方の提督は居心地の悪そうな表情を浮かべるばかりであった。

 

(この前こっそり大量開発したことで生まれた産物であることは黙っていよう)

 

 

 

 その後も、提督と雷は寝床を探す子猫を追跡し、地面を掘り返し続けた。

 

 しかし、見つかるのは奇妙な形の石ころやガラス片、果ては白いモコモコの謎の物体など、とてもお宝とは呼べない代物ばかりであった。

 

 ガラクタの山を見つめながら、2人は嘆息した。

 

「…………夢見過ぎたな」

 

「…………そうね……」

 

 肩を落とす2人を尻目に、子猫は歩いて行く。

 

「…………えーい、諦めきれん!」

 

「え⁉︎」

 

「止めてくれるな雷! これでラストだ……! 次こそ、お宝を掘り当ててみせる……!」

 

 そう言い残して、提督は走り出した。

 陸上選手にも匹敵するであろう猛ダッシュであった。

 

「ま、待ってよ司令かぁん!」

 

 雷は慌てて彼の後を追った。

 

 

 

 やがて、2人は海岸に建てられた錆だらけの建物に辿り着いた。

 

 子猫はその建物の屋根の上で眠っている。

 

「……何ここ? お化けでも出てくるんじゃ……」

 

「世界に艦娘が現れる前に使われてたドッグ……だったと思う。俺も入ったことないからよくわからん」

 

 雷と提督は顔を見合わせ、子猫の寝床の下──建物の中に足を踏み入れた。

 

 埃っぽい匂いが2人の鼻をつき、雷は思わず咳き込む。

 

 が、その直後、雷と提督の視線は建物の中に眠っていた()()に釘付けにされた。

 

「…………うっそだろ?」

 

「…………船?」

 

 ボロボロの船が、そこにあった。

 

 小さくて細長く、のっぺりとした船体だが、錆びついた大砲や魚雷発射管から軍艦であることがわかる。

 赤錆や蜘蛛の巣だらけのその船は、乾ドッグに放置されているも同然の姿であった。

 いや、実際放置されていた。

 提督ですら、知らなかったのだから。

 

「軍艦…………しかもこいつは明治時代の骨董品だ」

 

「お、お宝よ! ついに見つけたわ、司令官!」

 

「あ、ああ! この船を解体して資材にしよう。何ヶ月かは持つはずだ!」

 

 またしても、手を取り合って飛び上がる2人。

 

 ぴょんぴょんとはしゃぐたびに、埃が舞った。

 

「ところで、この船なんて名前なの?」

 

「ん? 何だったかな……何となくこの形見覚えが……」

 

 細い船体。

 4本の煙突。

 小さな艦橋。

 魚雷発射管。

 

 …………最近読んだ、金塊探しのバトル漫画。

 

 ──提督の頭の中で、全てが繋がった。

 

「この船の名前はわからんが、確実に言えるのは……これは雷型駆逐艦だな」

 

「…………雷型駆逐艦……?」

 

「ああ。明治時代の帝国海軍が使ってた駆逐艦だ。もうとっくに全部退役して解体されてると思ったんだが、まさかこんなところに残ってたなんてな。ま、これからバラして有効活用──」

 

「ダメーっ!」

 

 突然、提督に雷が飛びかかった。

 

 慌てる提督だったが、肩にしがみついた雷はバタバタと暴れる。

 

「やっぱりダメ! この船はダメなの!」

 

「えー……やっぱり、"雷"だからか?」

 

「そう! だからダメ!」

 

「…………あーあ、しゃーねえ」




 その後、工廠の近くに溢れていた失敗ペンギンの群れが暁達に見つかり、こっぴどく叱られた提督であった。
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