〇???の秘密基地
色とりどりのお菓子と無数の本、そして不思議な玩具の数々。
そんな子どもの夢みたいな空間にあたしゃらはいた。
「お目覚めですか?」
上からひょっこりと顔を覗き込む、どこかで見たような男がいた。
「おはようからおやすみまでこんにちは!…私の秘密基地へようこそ」
そう言って男は秘密基地を見せびらかすように闇にキラキラと光を撒き散らしたような…。
星空のように美しい光景があたしゃら…あたしの前にあった。
あたしの子どもの頃に見た星。それだけは美しく…何より愛おしかった。
「あたしゃらは…ん!?」
あたしはようやく状況を理解した。…こいつさっき殺し合いしてた奴じゃねぇか!!
「おい!てめぇ!ふざけんな!!」
敵に情けを懸けられる程落ちぶれちゃいねぇ!ふざけんな!!
だが、
「ノベル様、落ち着いてかい」
側近の、ルスヴンが若いころの姿でそう宥めて来た。
…洗脳ではないのはわかった。あたし達は洗脳の類はかからない。
あの糞のバットバットの実。それの洗脳対策として見聞色を鍛えまくった。
先程の糞男が鏡を見せて来る。見てみた。鏡の中の自分も幼くなっていた。10歳くらいか?
…やっぱりこいつ、バットバットの実モデルバンパイアじゃねぇか!おい!!
「生殺与奪は強者の特権…といいたいところですが自殺したいなら流石に止めません」
糞男がそう言って短剣をポンとあたしの前に置いて来る。
…そう言われると死んだら負けのような気がするのでムカつく。
「ルスヴン…お前の判断か?」
あたしは自身の側近がかつての怨敵の能力者の話に乗ったのだと確信した。
…そして、こいつは政府の人間じゃねぇことも悟った。
「…そうですかい」
側近は気不味そうに頷いた。
…クソの力に屈したわけではない、それだけは顔をみりゃわかった。
「ノ、ノベル様!今回はルスヴンさんだけでなく…」
部下どもも全員無事なようだ。話だけでも聞いてみるべきだと思う。
…でもよぉ、この仕打ち。前任者を思い出して殺したくなるがな!!
「てめぇ…政府の人間ではないのか?」
あたしは念のために糞男に確認する。政府に協力するのは死んでもごめんだ。
だが、
「民間人です。私、こう見えてまだ10歳未満」
…凄いこと言われてどう反応すれば良いのか困った。
ガキじゃねぇか!カイドウのガキといい最近のガキやどうなってやがる!!
「…バットバットの実モデルバンパイアだろ。お前が食ったのは」
あたしは投げやりにそう糞ガキに言った。
実の能力で若返るのならともかく年取るのは多分こいつが初めてではないだろうか。
「あたしゃら、その前の主をぶっ殺したが」
クソガキに一応教えておく。
能力に依存する馬鹿ではないと体験したが、アレは無敵の能力ではない。
「ですよね。何か嫌悪感酷かったですし」
あたしの言葉をしれっと交わすクソガキ。中身を知るとマセガキにしか見えん。
「んで、あたしゃらに何をさせたいんだい?」
あたしは先にガキに結論を求めることにした。
世界を変える力でも貯えてんのか?ロックスみたいに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あたしはしばらくクソガキの、気の遠くなるような『計画』を聞いた。
正直、あたしは頭がおかしくなりそうだった。
…暴れることしかないあたし達はガキの至極当然な結論に至れなかったのか。
いや、知識を全て暴力に注ぎ込んだせいかもしれん。どの道、あたしには決して思いつかなかった。
「…はぁ」
あたしは思わずため息をつく。こいつの秘密基地を改めてみる。
お菓子に玩具、本。キラキラした綺麗なもの。…全部ガキが欲しがりそうなものばかりだ。
このガキの経歴も無理やり聞いたが、それを踏まえてもやはり頭がおかしい。
「醜態さらして負けた身で、幼い子どもに言われてはお終いだね」
あたしはそう言いつつも、このガキの夢の果てを見たくなってしまった。
こいつなら出来る。そういう確信があたしの中にはあった。
「おい、野郎ども!!」
あたしは部下、仲間達に声をかけた。
「「「へい、ノベル様!!」」」
仲間達が明るい表情で返事をする。何だ、そんな顔ができるじゃねぇか。
あたしは…
「こいつの話に乗るぞ。…ガキの秘密基地を作るのを手伝おうじゃねえか」
この子どもの『願い』を見てみたい。
・ノベル
非加盟国で略奪に遭いまくり力を欲した女海賊。
力を見る見るつけて行ったが、かつての夢は悪夢に壊された。
悪夢を殺して、また新しい希望を抱くも失望で帰って来た。
ヤケクソで暴れたら、子どもの夢みたいなことを言われた。そんな経歴。
秘密基地を作るようなクソガキの話に乗ることにした。
なお、海軍と組んでいるヤベーガキなのは理解した。
10歳くらいに若返っている。悪夢を思い出すので凄い嫌だが、ガキの我儘と従うことにした。
・側近(ルスヴン)
実は貴族の隠し子だが、お家騒動で未加盟国に捨てられた天から地に落ちた男。
ノベルに拾われて救われて地獄まで付き合うつもりだった。
『水の都の決戦』が終わり、10歳くらいに若返ったノベルを見て物凄く混乱した。
死なせないからノベルが起きるまで面倒見てろと部下共々秘密基地に入れられた。
死んだとされているかつての仲間から話を聞いてノベルの判断を仰ぐことにした。
・クソガキ
秘密基地に人が集まったが、これから外が騒がしくなるので表向きは動かない。
バットバットの実の能力で酒樽のウィックから年を奪った。
また、三年に渡る更生不可能な犯罪者からちまちま年齢貯金等をしている。
実は今世で累計すると10歳に満たない。その異常な強さにはちゃんと絡繰りがある。