爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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『お菓子の人』

 

〇ウォーターセブン近海『Dr.ランプ診療所』別室

 

Dr.ランプの人間嫌いのため、離れに置いて待機していた少女達に会いに行く。

俺は前もって聞いていた諸事情を思い出す。世界政府非加盟国出身の少女13人。

戦災で仲間と共に暮らしていたところに人攫い一味により頼れそうな大人も少年達も死亡した。

人間屋では人間1人目安50万ベリーとなっているが、見た目は良く幼いので売り方によっては数倍にはなるかもしれない。

…人攫いの記憶を読むと毎回反吐が出そうになる。

 

だが、この荒れた時世では良くあることでもあった。

俺は慈善活動により孤児院等との繋がりは深い。だが、特別扱いは『特別』だからできる。

今回のケースだったら空いている各地孤児院に入れて貰う等で精一杯だ。

皆、離散することにはなるが一番確実でもある。だが、仲間と離れ離れになるのは…。

考えていると部屋の前まで来てしまった。気分を切り替え部屋の扉をノックした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〇トレーネ(五歳)視点

 

人攫い一味から強い男の人が助けてくれた。

故郷へ送り届けると言われたその時、故郷はもうない。仲間だけとリーダーが説明した。

思い出して、皆泣き出した。落ち着くまでそこに居てと人数分のクッキー等を置いて行った。

それから魚人のおじさんの治療と色々あり、皆もう落ち着いていた。

 

扉が数回ノックされた。…助けてくれたクッキーの人が入って来た。

 

「そろそろ落ち着いたかな?」

クッキーの人は私達の様子を見てそう言った。

…今度はキャンディを懐から出して皆に渡してきた。お菓子の人である。

 

「…助けてくれてありがとう」

色々、いやかなり遅れたが感謝の言葉をリーダーが代表して言う。

皆で話すとわからなくなるからと年長のリーダーが会話するとお菓子の人がいない間に決めていた。

 

「でも、私達はもうどこにもいけない」

リーダーは私達の結論を出す。バラバラにはなりたくない。

無理なことを言うとわかっているが、それでも言う必要があった。

 

「…言い方は酷いが君達のようなことはこの時代で良くあることだ」

お菓子の人が私達の結論を聞き、そう言い切った。私は思わず睨んでしまう。

 

「こらっ!」

リーダーが私を見て怒る。…お菓子の人が暴れたら皆殺されるのを思い出した。

私は思わず後ろにそのまま飛んで壁にぶつかった。

 

「睨むのは当然だし、それくらいのことを言っている」

お菓子の人は私のぶつかったのを見て、気にしているようだった。

…悪い人ではないのだが、悪い人だ。自分でも良くわからないが取り敢えず意地悪だ。

 

「伝手を使って孤児院には入れるだろう。一人一人ならともかく全員同じところでは難しい」

お菓子の人はそう言って自分の分のクッキーを食べ始めた。…思わず空気を読めと言いたくなった。

だけど、私達が一番良い人に助けられた場合に言われるであろう内容だった。

リーダーは『ひかめいこく』の子どもに構う余裕はどこにもないと言っていた。

 

だが、

「私達にこれ以上…いや、何でもないわ」

そう言ったはずのリーダーが怒りそうになった。

 

「はっきり言って君達を特別扱いする余裕もメリットもない」

お菓子の人はリーダーの様子を見ても優しい言葉をかけたりしない。

いや、物凄く優しいのだと思ったが、何故かは説明できない。

 

「…そうはっきり言うのは酷くないかしら?」

リーダーはお菓子の人にそう言った。リーダーが落ち着いたようで私達はほっとした。

 

「世界は、皆余裕がない。大多数の人々は自身の選択肢の中で生きている」

お菓子の人はよくわからないことをリーダーに言った。

だけど、私にも皆が私達を助ける余裕のないことはわかった。

 

「…言いたいことがわからないわ」

リーダーはそう言った。だけど、お菓子の人の話がわかっているようだと感じた。

 

「…君達が失わないための選択肢を一つ提示できる」

お菓子の人は私達を見てそう言った。お菓子の人はお菓子の人だから余裕がある人なのだろうか。

 

「…!!」

リーダーは驚いていた。私はそれを見て、お菓子の人がお菓子をくれる余裕があることではないようだと何故か思った。

 

「力がない者は死に方すら選べない。そんな不条理な世界での取引だ」

お菓子の人はリーダー。いや、この場にいる13人に向けて話していた。

…理解できないが、まだ皆が一緒に居られる方法があるらしい。

 

「聞かなかったことにして孤児院に行く選択肢もある。ある意味一番平穏な…」

お菓子の人が話を続けようとするが、皆が同じ顔をしていた。

私達はリーダーを見た。

 

そして、

「受けるわ」

リーダーはそれを選ぶとお菓子の人に宣言した。話をしている途中なのに良いのかなと私は思った。

 

「…話は最後まで聞くものだよ。契約書は良く読んでから選びなさい」

お菓子の人はやはり話を最後まで聞いて欲しかったようだ。…リーダーは落ち込んでいた。

 

「とはいえ、理想も妄想も夢も困難ながら現実で叶える方法はあるものだ」

お菓子の人は回りくどい言い方で、だけど私達が一緒に居られる方法があると断言した。

…私はお菓子の人が何だかキラキラして見えた。

 




・お菓子の人
理想だろうが妄想だろうが夢だろうが現実に成り得ると信じている人。
残酷なワンピース世界で、原作前の前座になろうともそれだけは諦めない。
世界が悲鳴を上げている状況でも希望を見出し、望めば施せるだけの素地を三年で作り上げた。
完成するかは気の遠い話だが、不可能ではないと思っている。
今回のように少女達のような諦めない人を常に探している。
なお、個別でも良いなら孤児院に入れば安泰なのはワンピース世界の理不尽が起きない限り本当である。

・リーダー(ルビー11歳)
実はお菓子の人より年上。人攫いの被害者の少女達のリーダー。
子どもながら統率力も知識もあるが、本来生き残れた大人組よりは未熟。
助けてくれたことに感謝しているし、孤児院の件も非加盟国の孤児に対しては相当寛大だと思っていた。
だが、それ以上の提案をされ、つい嬉しくなりお菓子の人の話を遮ってしまい恥ずかしくなった。

・トレーネ(五歳)
人攫い被害者の最年少。潜在的には一番頭が良い。
お菓子の人は優しいが意地悪であることを悟った。
まるで体が大きい子どものようだと認識している。
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