拝啓、私の日々の善行で多分天国へ行っているであろう今世の両親へ。
私は毎日のように来る海のゴミを処理しつつ、救われない人々の為に働いています。
前世の知識はその際、大変有用になっております。地産地消…実に素晴らしい。
私が新規開拓した『マストダイ農場』は理想的な地産地消と呼べるものだと思います。
手を差し伸べた子ども達はお金になるゴミを政府に引き取ってもらい、それ以外を肥料にしています。菓子の原料となるカカオ等を栽培して貰っています。
特に私の後継である予定の子どもは能力者になって、畑の警備から作物の品種改良までできる逸材です。
人々を笑顔にする素晴らしい職場で私も嬉しい今日この頃です。
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〇美食の町プッチ近郊『マストダイ農場』
人攫いから救われた後の悪魔の取引から5か月が経過した。
悪魔の言う通り私達は自分達の居場所を手に入れた。
この時世ではどれ程恵まれているかわからない。悪魔には感謝しているが、悪魔である。
私達は今、『マストダイ農場』とかいう悪魔の名付けたイカレた農場で働いている。
悪魔はホームタウンであるプッチのお菓子屋さんを自称している。
私は初め悪魔が薬でもキメているのかと思った。だが、本当に世界最高峰のパティシエだった。
悪魔は『プッチの英雄』と呼ばれているらしい。
悪魔は周辺国の海を守るように懇願されるくらい強い。私達は身を以て知っているが。
悪魔の守る海は『魔海』と言われ海賊から恐れられ、この時世で平穏を保っている。
結果、平和を求める人間が外界から押し寄せる状況になっていた。
悪魔は海を守るので精一杯なので、子どもの私達に町を守れという無茶ぶりをしてきた。
だが、悪魔の取引に応じれば三か月で出来るようになると言われた。
それは事実だった。
定期的な洗脳染みた悪魔の拷問を耐え、その店や近隣の農家の手伝いをした。
そして、農学を始めとする学問を悪魔の用意した教師から叩き込まれる。
本当に三か月で悪魔との取引によって独り立ち出来るようになった。いや、そうされた。
「リーダー!」
仲間の一人が私に声をかけてきた。…仲間達は町で賞金首を捕まえたようだった。
ズタボロの大男をまるで収穫した野菜のように掲げて見せびらかしてくる。
やせ衰えた以前とは比べ物にならない健康的な笑顔だ。
身内びいきになるかもしれないが皆、将来美人になると思う。
悪魔がアイドルグループ結成とかできないかなどと呟いていたのを思い出す。
…そんな真似は絶対お断りだが、私がもし第三者なら悪魔に頷いたかもしれない。
「トレーネ!無力化をお願い!」
私は畑に向かって声をかけた。
トレーネなら悪魔の実の力で聞こえているであろう。
「ウボァ!」
賞金首の男はトレーネの能力により、土に引きずり込まれて首まで埋まった。
同じく首まで埋まった犯罪者達が十数人になった。
そろそろ収穫の時期かと私は悪魔の店に行くことを考える。
…市民の中に低額の賞金首が紛れていることがある。
平和な町で暮らしたい犯罪者が罪を捨てて来ることも多くなっていた。
そいつらが元々の治安を悪化させ、町の人々の余裕を奪っていた。
『大多数の人々は自身の選択肢の中で生きている』
取引の時、悪魔の言ったことだが、今ではその真の意味が理解できた。
人は悪い個人を見て、全体を選択してしまう。
「取引…か」
私は思わず呟く。確かに孤児に犯罪者を捕まえさせて、治安回復と町の人々が持つ移民への印象を良くするのは理に叶っている。
だが、どう考えても釣り合わない。私達の幸福とその対価として得た物と比べれば。
「リーダー?」
仲間が私を心配して声をかけてくる。
…恐らく、いや同じ想いでいる。同胞だからこそよくわかる。
「いや、何でもない。そろそろ『収穫』した方が良いかなってさ」
私は仲間にそう返す。…私もイカレている。
纏めて犯罪者を畑に埋めて、溜まったら政府へ引き渡すなど。
だが、どうしようもなく…あの男に対して何か、尽くしたい気持ちに駆られてしまう。
ああ、あの男は悪魔だ。もし、そうでなければおかしくなってしまいそうになる。
「…うん!」
仲間が笑顔でそう言い返すのを見て、私達がイカレてしまったことを再認識した。
〇美食の町プッチ
世界情勢的に戦災等で国が亡びる中で移民を受け入れることが多くなりつつあった。
プッチの英雄は周辺国の要望で不在が多くなったが、世界的に見れば治安が良い。
だが、平時と比べれば比すまでもなく悪化していた。
その為、移民排斥運動も起こりかねない現状だった。
そんな中、英雄が連れて来た13人の子ども達は可愛らしく地元のアイドルみたいに可愛がられていた。
そうやって誤魔化すつもりかと移民排斥派が思っていたら、糞強い幼女たちだった。
犯罪者や低額の賞金首を刈っていくのでアイドル兼英雄として祭り上げられてしまって移民排斥派も黙るしかなくなった。常識的に考えて幼女が糞強いとか思うわけがなかった。
今では移民排斥でも言おうものなら他の町人に袋叩きにされる状況。
・マストダイ農場
糞強い女の子が営む農場。町の英雄の活躍でも海運が一部しか回復していない現状、商品作物の需要を狙っている農場。
トレーネ(5歳)の能力は秘密だが、悪魔の実の力で即席栽培や品種改良も行える。カカオ等を主体としてプッチの町で流通している。
プッチの英雄が定期的に見張りに来るのでシマを荒らすアホはいない。
少女達は段々強くなっているが、年齢もあり無茶なことはやらせていない(男視点)。
・元非加盟国孤児13人
仲間とバラバラにならない想いで三か月の研修(悪魔命名)を全うした。
週一のペースで男の能力を使って、ギリギリの範囲で強引に強化させた。
並みの大人よりは強いが、本部佐官まではいかない程度。それでも年齢からすれば異常な強さである(カイドウやマム除く)。
実務として海賊狩り研修までさせた。その際、詳細不明の悪魔の実を発見された。
見つけたトレーネに換金するか食べるか男が委ねたところトレーネは即食った。…吐きそうになった。
農場に最適な植物等を操る能力だった。悪魔の実に意志でもあるのかという程都合の良い能力だと皆思っている(男除く)。
なお、犯罪者を埋めれば力を奪えて植物の養分にできる。その為敢えて畑に埋めている。
モリモリの実ではない謎の悪魔の実。トレーネ自身は自然系特有の状態ではなく、人間のままなので超人系と一先ず認識されている。
男にどう考えても恩を返せていないのと色々されたので頭がおかしくなっている。
・プッチの英雄
幼女だろうが容赦しない卑劣な男。加減を覚えろ。
とはいえ、力ない少女達では移民排斥派の恰好の餌食になる上に受け入れ先もないので男からすれば仕方がなかった。
平穏に暮らして欲しいが、後継ともいえるトレーネの存在もあり一際目にかけている。
今では自分より年上のリーダーのルビー含めて可愛い我が子みたいに想っている。
前世に農業系アイドルとかいたはずと必死に思い出しているがプロデュースする時間がないのが悩み。
移民の中にプロデューサー経歴の持ち主がいれば頼みたいくらいには本気で考えている。
なお、少女達の意志が前提なので男の夢は叶わない。相変わらず馬鹿である。