爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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密談

〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』カウンターテーブル

 

ロジャーとの死闘によりその主が大怪我を負い、一時期荒れそうになった『魔海』と呼ばれるその一帯。

だが、魔海に突き落とされた新しい海賊達の人柱により、周辺海域が落ち着き出した。

魔海の主は健在であることが証明されたことにより、世界情勢はともかくとして魔海周辺は比較できない程平穏だった。

その魔海の主は本職にようやく落ち着いて取り組めるようになっていた。

…依然として海のゴミ掃除は辞めないし、魔海の範囲外に進出してきていたが。

 

店のマスコットになりつつあるペンギンが店主の頼んだ白い箱を手渡す。

男はペンギンの頭を撫でて奥へ行くように指示を出した。

男に敬礼をして即座にてとてと歩いて帰って行くペンギン。

愛らしい光景だが、その正体は氷山を力づくでぶつけて狩りをするドウモウペンギンだ。

店にいる一匹だけで並みの海賊相手に嘴で身体を貫き、歯で肉を食いちぎる獰猛さである。

その羽、フリッパーでのビンタは海賊船も破壊する威力だ。

 

そんな猛獣を数百匹下僕にしている店主はわざわざ貸し切りにした店内で四年以上の付き合いになる海兵と話していた。

 

「昇進おめでとうございますイタミ少将」

店主はそう言って、ペンギンが持って来た白い箱を横に置く。

店にやって来た女海兵と向かい合うように座る格好になっていた。

 

「しかし、肩書の臨時特殊官というのは何です?」

男は何かよくわからない昇進の仕方をした女海兵に疑問を投げかける。

 

「…」

イタミ少将は男に聞かれて少し考え込んでいた。

つい先日、任命された意味不明な役職については目の前の男のせいだった。

だが、どう答えてよいのか判断に迷った。

 

「この辺の海賊騒ぎも落ち着きましたし。まぁ、イタミ少将が昇進はまあ順当というか」

男はイタミ少将の沈黙を無視して言葉を続けることにした。

男は本人が答えられないのなら整理してあげるのが優しさだと勝手に思い込んでいる。

 

「海軍は実力主義。普通なら中将。特殊部隊長辺りだと特任少将になるのが通例だったかと」

男はイタミ少将の実力を見定めてから海軍内の人事について締めくくった。

正直、中将でもやれるが、特殊部隊等は少将に抜擢されることも珍しいことではない。

 

だが、

「何で海軍内の人事にそこまで詳しいんですか!?」

イタミ少将は思わずツッコんだ。一民間人が知り得てよい情報ではない。

というより下士官ですら伝えられない特任少将に関して知っているのはおかしかった。

 

「まぁ、何度も行き来していれば多少は」

男はイタミ少将を宥めるようにしつつ誤魔化した。

この男、大体ツッコミみたさに年若き将官を揶揄っているだけである。

 

「…駄目だ。また流れを持って行かれている」

イタミ少将は男が自分を揶揄っているだけだと知り、自分を落ち着かせようと努力した。

 

「聞いた話だと海軍本部直属かつ本部の支部であるG-8にも所属しているとか。

 何かよくわかりませんが、面倒臭い役職に回されたのでは?…何かやらかしました?」

男はイタミ少将の面倒臭い立ち位置を説明しつつ、窓際に追いやられてないと暗に言った。

 

「貴方にいわ…!いや、何でもありません」

イタミ少将は誰のせいでこうなったと内心思いつつ理不尽に耐えた。

 

「21歳でその強さは噂に聞くガープ中将等を除けば凄いことだと思いますよ」

男は早くロックス海賊団滅ぼしてくれないかなと思っている海軍の英雄(未来)を思い出して言った。

もう既に幾度となくロジャー海賊団と殺し合いしまくっている化け物であると男は思った。

男は自分のことを棚に上げてガープを化け物と認識していた。

 

「…ありがとうございます」

イタミ少将は素直に嬉しい評価で言葉を漏らした。

 

しかし、

「とはいえ、何で私に挨拶しに来たんでしょうか?まさか、この善良な一市民である私が海軍に目をつけられる謂れはありませんでしょうに」

男は自分のことを客観的に見ないで全力で無視した暴言を吐いた。

 

「わかって言っていませんか!?」

イタミ少将はもう限界だと全力でツッコんだ。

イタミ少将はその善良な一市民をどうにかしろと上から役職作られ昇進させられていた。

 

「まだ、ロックス海賊団とか言うイカレがいる以上、落ち着けませんね。お互い」

男はイタミ少将の全力を無視して話題を変えた。

実際、イカレた海賊団が健在な以上、どれほど男が頑張ろうとも世界の海は安定しなかった。

 

「…そうですね」

イタミ少将は生返事をした。何だか頭痛がしてきた。

 

「糖分足りてます?…カボチャプリン作ったのでよかったらどうぞ」

男はイタミ少将が好みそうな甘味を用意していた。

ペンギンに先ほど持って来させた白箱を開けた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』応接室

 

イタミ少将が帰って本日休店の店、その応接室でその店主はまた別の女性と密談していた。

男の慈善活動家としての功績を考えれば不自然ではなかった。

相手の女性の名はセフィ・ローズ。慈善団体の代表であり、シスターであった。

 

「海軍も思い切ったことをする」

男はイタミ少将のことを思い出して言った。

わざわざ中将クラスを自分の監視か何かに当てるとは思わなかった。

 

「わかっていたでしょうに。英雄さんも」

ローズは男に向かって言う。どうしてそうなったのかはわかっているはずだった。

 

「ロジャーとかいうのが来たのが悪い」

男は一番の原因を挙げた。嫌いではないし、寧ろ好きな部類の人間だったが。

それはそれとして来たらその人柄等を確かめずにはいられなかった。

男の知る未来である大海賊時代。後の計画からしても面倒なことになるのは確定だった。

 

「まぁ、そうね。ロジャー海賊団、まだ政府は甘く見ているようだけど…」

ローズはロックス海賊団という強大な組織を除けば放置できない海賊団の名に同意した。

男が何かを見据えて言っているように感じたがそれには触れない。

 

「ああ、はい。絶対何か大きいことを仕出かしますよ」

男はローズに何かを悟られたと思いつつも大事ではないので肯定した。

 

未来等本来はどうなるかわからない。だが、この世界は予言されているような世界だった。

一繋ぎのように。最適な未来かもわからない。だが、その過程で多くの悲劇が生まれる世界だ。

 

「…必要かしら」

ローズは男の行動からそれの排除を仄めかす。…男の大怪我はローズ達にとって衝撃だった。

 

「不要です。今はアレがのさばっていますし」

男はローズの意見を却下する。そもそもそんな物騒なことをする為に行動をしていない。

 

「ロジャー達とやったら全滅しかねない。…被害は出さない方針と言ったはず」

男はローズの目だけを見る。約束と違うことを言い出したことを訝しんだ。

 

「あなたらしくもないですね。それくらいは飲み込むかと思っていたのですが」

男は自身の怪我のことなら気にしないと思っていたと返した。

理性的な女性だと思っていたが、今日は随分感情が濃い。

この時世に世界的な慈善活動をやるガンギマリである。

その感情が時として判断を狂わせないことを危うんだ。

 

「…次からは無茶してはいけないわよ」

ローズは男の目を逸らさずに、だがせめてもの想いから注文を付けた。

 

だが、

「いやだ」

男はまるで子どものように拒否した。

最悪、もう計画に自分がいなくても回るようにしてあった。

流石に自分から死ぬ気はないが好き勝手にやらせて貰うつもりである。

 

「はぁ、全く我儘なのだから」

ローズは男にむかってため息を吐いた。実に我儘な子どものようであると思った。

 

 




・イタミ少将
自称善良な市民を名乗る男の面倒を見ろと昇進させられた可哀想な女海兵。
中将クラスの戦力だが、特任少将として昇進させられた。
権限として世界政府から男の行動が犯罪でなければ認可する判断を与えられた。
先日の春の女王の町セント・ポプラでの作戦行動等であれば、現地海兵をその権限で一時徴兵可能になる。
世界政府的には男と敵対することになるのは避けたい為、裏であるCPではなく表の存在かつ男と親密な少将に丸投げした。
その権限で各地の海へも行けるようになった。極論、里帰りもできるが男同伴でないといけない。

・セフィ・ローズ
男の計画に乗っている世界的な慈善活動家。
復興事業その他の影響力は世界規模である。裏も表も担当している。
男がCP0から報告を受けていたにも拘わらずにロジャーと交戦し大怪我したのは衝撃を受けている。
最悪、男がいなくとも計画は進むがそれはそうとして頼むから生きていて欲しい。

・お菓子屋
ロジャーと関わってから面倒なことばかりで嫌いではないが疫病神だと思い始めた11歳。
最悪でもロックス海賊団が滅ぶまでは死ぬ気はない。落ち着いたら旅をしたくなってきた模様。
自身の建てた計画は死んでいても完遂可能である。死ぬ気こそないが正直好き勝手やりたい。働き過ぎの為、今世で適応される少年法が欲しいと思っている。
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