魔海の主と呼ばれる男は合法的に手に入れられる範囲のあらゆる情報媒体を購読している。
…勿論、非合法のものもあるが、それは徹底的に足のつかないようにしている。
合法的な情報媒体には政府の情報規制が入っている。
出版社や新聞社で働く記者がウンザリするような程には検閲が激しい。
だが、規制の中の真実を読み取ったりすることも可能なギリギリをついてくる記事も多い。
新聞社も競合があり、海ごとの地方紙等も存在する。
例えば東の海ならブルーベリータイムズが有名である。
東の海出身のイタミ少将がその新聞を毎日購読していることを男は知っていた。
どちらにせよこの海において情報は力である。
男は自分の強さ等に過信することなく表の情報も裏の情報も集めていた。
その関係で、魔海の主の店にはお客さんも読めるように様々な情報媒体が置いてある。
テイクアウト専門店が故に待ち時間の時間つぶしに読まれており、誰が読んでいるのかわからないようなマイナーな雑誌も置いてある。
結果的に男の店は売れるかもわからないマイナー紙の宣伝場になっていたりもする。
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〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』カウンターテーブル
海賊を殲滅することで有名な店主は海賊を狩るのではなく、その日は店を営業していた。
だが、テイクアウト専門店故に接客等は店員他に任せていた。
毎日の菓子の仕込み等のパティシエの仕事を除けば、客と新聞等を読みながら雑談したり、農場で子ども達と鍛錬したり、町で暴れる犯罪者を捕獲したりしていた。
そして、最近少将に昇進したイタミ少将との雑談が多くなってもいた。
「月間・船大工はわかるんですよ。船大工の町ウォーターセブンが近くですし…。
でも、この季刊・ハードボイルド、月刊ロボ&サイボーグとか一体どんな理由で購読を?」
海軍イタミ少将は目の前の店主に疑問を投げかけて来る。
イタミ少将の注文はチョコレートケーキ。それに合うジャヤコーヒーを店主が用意した。
イタミ少将はテイクアウト専門店でカウンターテーブルを使用する図々しいお客様の一人である。
なお、男がそれらを店に置いているのは情報媒体を乱雑にすることで真意を誤魔化す為である。
木を隠すなら森の中というやつだ。他にも様々な雑誌があるが買っている。
そのまま捨てたりするのは勿体ないので、超高速で全部読んでそのバックナンバーも別に保管している。
…それは男が持つ純粋な金の力であり、趣味である。本職とも計画とも関係ない。
なお、イタミ少将が挙げた『月刊・ロボ&サイボーグ』は男も作品を投稿したりしている。
店主はお客様の純粋な疑問を無視して今日の世界経済新聞を読んでいた。
新聞の最大手であり、海賊も海軍も民間人も皆読んでいる。
その為、いつも欠かさず目を通している。だが、今日は男にとって特別な日であった。
「『南の海の世界政府新加盟国、鍛冶の国エレロ国のバスラル国王』か…」
男は記事の内容を読み上げる。
記事の写真には男が見覚えのある若々しい国王と幼い王女がそこにいた。
「エレロ王国。南の海ですが、今どき非加盟国から加盟国になるのも珍しいですよね」
イタミ少将はチョコレートケーキを食べながら男の読み上げた内容に言葉を述べる。
ロックス海賊団という脅威で世界が荒れている今の世界。技術力とその武力で加盟国になった珍しい国であった。
イタミ少将も気になって昇進した権限を使って調べた国でもあった。
世界政府が今の世で健在であることを喧伝する為、破格ともいえる条件で加盟を認めた国だ。…天上金等は当然発生するし、徴収されたが。
だが、国民の大多数は滅んだ周辺国の避難民であり、そのせいか国への帰属意識が高いらしい。
世界政府への伝手も亡国の貴族等が行っており、建国までに怪しいところは今の所はない。
ただ、世界政府の庇護を受ける加盟国入りの為、国民総出で賞金首を狩りまくった逸話があったりする。
そして、一番懸賞金を稼いだ功労者を王族として祭り上げたらしい。
イタミ少将は目の前の男のようなことをする滅茶苦茶な国だと思った。
「大丈夫かな。この国…」
男はイタミ少将の話を半分聞きつつ、思わず呟いた。
男は再度新聞記事の写真を見た。
…自分は世界政府に協力しないと散々わめいていた元海賊、現王女を思い出す。
セフィ・ローズから南の海での計画を早めると報告を受けていた。
しかし、どういう心情の変化だろうか。そもそも体制側ではなく補助に徹するはずではなかったのか。
男はローズを通してその事実を追認はしたが少し気になっていた。
「亡国の避難民達が起こした国で国民皆兵、海軍と連携して治安維持に努めている国らしいですよ」
イタミ少将は男の心配も最もだと思い、機密でない範囲で話した。
やはり目の前の男の国家版とも言える所行である。
「…月刊・ロボ&サイボーグを取って貰えますか?私の作品が最優秀賞を取ったんで」
男は話題を逸らす為、イタミ少将が積んでいる月刊誌を寄越すように言った。
なお、普通に他の客もいたが、この光景に客も大体慣れていた。
店にいるペンギンと店員による注文受付、テイクアウトを受けながら二人の会話をスルーしている。
それにはちゃんと理由がある。
店主であるプッチの英雄はイタミ少将と組んで『魔海』の外の治安維持もするようになっていた。それこそ世界経済新聞に載る程である。
一昨日、合計賞金額5億越えのリコピン海賊団を討伐する等の活躍していた。
魔海の治安維持との兼ね合いもあるが海軍と連携し、グランドライン前半の海で暴れる海賊を討ち取っていた。
結果的に連絡調整役としてイタミ少将がプッチの町に住んでいるような状態であった。
そして、何より年若い女准将はその美貌と長い黒髪。新聞等で大変人気であった。
イタミ少将もマストダイ農場の女の子達に訓練をつけたりしてプッチの町に馴染んでいた。
ちなみに、イタミ少将は男が運営に携わっている農場にいる6歳の女の子が海軍本部大佐並みの強さを持つと海軍本部に報告した。…当然のように信じて貰えなかったが。
「未来型全自動サイボーグ『クッキーグランマ32号機』…また、クッキーですか」
イタミ少将は男に手渡す前に最優秀賞だけ軽く開いて読んだ。
四年前、自分が少尉であった時もそうだが、異様にクッキー量産に拘り続ける男に呆れた。
・ブルーベリータイムズ
From TV animation ONE PIECE トレジャーバトル!にて登場する東の海の新聞。
ロッキー・ハッタリーが所属するが、時系列的に生まれているかどうかも不明。
海賊御用達の新聞とされているが、政府の検閲されまくっている新聞。
・月間・船大工、季刊・ハードボイルド、月刊ロボ&サイボーグ
ONE PIECE novel 麦わらストーリーズの本屋バイトの子視点で登場した謎の雑誌達。
フランキーやセニョール・ピンクが載っていたりする本当に誰得な雑誌。
・世界経済新聞
本編にも登場した新聞最大手。本編では色々問題ある世界で一番自由な新聞王が社長。
新世界政府加盟国『鍛冶の国エレロ国』について店主が記事を読んでいた。
蛮族国家みたいなことをしているが原作同様に南の海に相応しい技術力を持っている。
亡国の貴族や亡国の国民が『偶然』にも統治機構を整え、国家体制を整えていた。
元々そこで避難生活をしていたが三年前から急速に加盟国入りできるまでになった。
世界政府への伝手も元貴族と慈善活動家セフィ・ローズの尽力により取り付けた。
フシギダナー(棒)
王女は現状にイラついているが、国王が宥めている模様。
・イタミ少将、魔海の主
魔海の主的に戦力過剰なので、魔海を守りつつ突然、奇襲のように他所の大物海賊を討伐しに遠征する。
瞬間移動を疑う程の速度で帰って来る。
男の船に乗ったイタミ少将曰く、『全速力は最低本部大佐以上じゃないと確実に死ぬ』とのこと。