拝啓、天国にいそうな両親へ。
つい先日、12歳で空前絶後とも言える大戦争を体験する羽目になりました。
本当に勝って良かったのかわからないですが、一時の安寧と平穏を手に入れました。
同年代の友達もでき、嬉しく思うのですが何か面倒臭いことになりつつあります。
12歳に重いです。日々の善行もありますし、救いの手があっても良いと思うこの頃です。
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〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』応接室
後に歴史の闇に葬られるゴッドバレー事件から二週間が経過した。
ロックス海賊団壊滅という事実は世界を駆け巡った。
魔海の主は今までの人生最大の戦いが終わり、五老星との合意を得て平穏を手に入れた…はずだった。
「今日は閉店しました。…イタミ少将」
男は先日の戦いで戦乙女とも言うべき活躍をした女海兵に声をかけた。
イタミ少将がずっと空元気で見ていられないので態々二人きりの場を用意した。
「…はい」
イタミ少将は男が店の応接室に招いた意味を流石に理解していた。
この部屋は防音や海楼石で覆われている等対策が施された部屋だと男から説明された。
男の店にこんな部屋があると知らなかったが、ここで話した内容は漏れることはないと断言できた。
「五老星から私が悪魔の実の能力者と言うのを口止めでもされましたか?」
男は勘だが、五老星が約束を守っていた場合一番気になるだろうことを挙げた。
というかこれしかないと確信していた。
「…」
イタミ少将は海軍将校として沈黙を貫いた。…同時にそれが答えだった。
「イタミ少将にも関係あるので一部明かします」
男は沈黙を貫く海軍将校の鑑を見て、勝手に喋ることにした。
「私の能力は理論上、不老になれる能力です」
男は寿命や年齢を奪ったり与えたりとまでは言わない。
明かした能力だけでも大問題だが、これでも軽いジャブだ。
「…えっ!?」
イタミ少将はとんでもない能力であったことに思わず言葉を漏らす。
…世界から狙われても不思議でない能力であると即座に悟った。
「未来永劫、この能力を持つ限り私には『死』を除いて完全な平穏は来ないわけです」
男はイタミ少将に自虐を込めて笑いながら言った。
死を克服する能力を得るには常に死を覚悟しなければならない。
男がこの『友』を完全に受け入れられた最大の理由であった。
「そんな…」
イタミ少将は一人の人間として、生きる者として形容しがたい感情に襲われた。
そのような恐怖、否、孤独に耐えていた男の苦悩は想像を絶するものであった。
だが、男はそんな空気を許さなかった。
「まあ、バレたものは仕方がないですし。というかイタミ少将にも関係あるんですが」
男は別に同情して欲しくて話したわけではなかった。
空気を変える為に茶化すようにイタミ少将に話を振る。
「え、え…えっ?」
イタミ少将は動揺を隠せない。
完全に空気を誤魔化す為に話を替えられたとわかるのだが、自分に関係あると言われて流石に混乱した。
「苦ヨモギのワームウッドって覚えています?2,500万ベリーの」
男は淡々と話を続ける。何でもないように問題の出来事を挙げた。
混乱しているイタミ少将を見て男は空気を壊すことに成功したと確信した。
「ええ、猛毒を…ってまさか」
イタミ少将は男の言いそうなことを察した。猛毒を受けて死にかけたのを思い出す。
男はその時の命の恩人であるが、まさかそこまでしたのかと正気を疑う。
「猛毒を解毒する方法がなかったので一か八かで私の能力を使いました。…多分百年くらい不老です」
男は糞みたいな事実を突きつけた。やったね!イタミ少将、人間辞めたよ。である。
「ええー!?」
イタミ少将は驚きというか混乱して叫んだ。
その叫びは部屋が防音でなかったらプッチの街中に響いていたであろう程大きいものだった。
イタミ少将が機能停止してから十分後、男は声をかけることにした。
「というわけです。イタミ少将これからどうしましょう?」
男は生涯の共犯者に声をかけた。その顔は愉悦の笑みで満ちていた。
…イタミ少将はとりあえず、グーでその綺麗な顔を全力でぶん殴った。
・プッチの店主
嫌いな事は変な空気。好きな事は愉悦。
とりあえず変な空気を壊すために最悪の形でネタばらしした。
なお、それでも全容は明かしていない。自分でも元に戻せないからしょうがないと開き直った。
・イタミ少将
100年は21歳のままと言われた女海兵。
ぶん殴ってから冷静になり、男が自分を救うためにそれしかなかったことを悟った。
だが、殴ったことは後悔していない。
最悪なことを自分の家に帰ってから思い出した。
男が戦場へ行く前の五老星との会話である。
『この戦いの後もどうか敵対しないでほしい』
この言葉の真意が男が死んでイタミ少将が生き残った場合、自分を守るために念押しした言葉でもあったと悟ってしまった。
男が自己保身の為に、それが世界最高権力者である五老星相手だろうとただその能力を明かすわけがないとイタミ少将は知っていた。
イタミ少将は余計寝られなくなった模様。男は完全に負けた。