男は一応の平穏を取り戻した世界で自身の店を営んでいた。
先月のゴッドバレー事件の際、魔海の主はロックス海賊団の本隊にその力を見せつけた。
結果、ロックス海賊団の残党も男が守る一帯には暴れないで主を避けるようにしていた。
…稀に力を示すために暴れようとする輩もいるため、魔海の主はまだ海賊狩りを続けることになっていた。
つい先日、大物海賊レバティーノが自身の名を上げる為に魔海で暴れようとした。
しかし、魔海の主の持つ異常な見聞色の覇気で即発見され、イタミ少将と共に討伐された。
イタミ少将は海賊を狩っている時はまともなので男は海賊が暴れるのを期待するような精神状態に陥っていた。
それ以外の時のイタミ少将が男を見る目がリンリン(後のビックマム)と違う意味で怖い。
…実年齢12歳である男は鈍感ではなかった。
同年代の文通相手、ペロス君にその事を相談したら『それはもう責任取れよ』とか帰って来た。
だが、どうしてこうなったのか男にはわからないでいた。
海軍の男達からはもう殺される勢いで嫉妬されているのも怖かった。
嫉妬は実力を凌駕すると男は感心した。新兵でも佐官クラスの勢いで襲い掛かって来る。
毎日鍛錬も欠かさずやっているが、イタミ少将が必ずついて来る。
毎日プッチの郊外で空が割れている。町はもうその光景に慣れて来た。
慈善活動家のセフィ・ローズといつものように密談しようとしたら、凄い目で見られた。
農場の子ども達からはもう諦めたらとか言われた。
果ては五老星から祝いのメッセージカードが届いた時はその場で破り捨てそうになった。
実年齢12歳は生まれて初めて恐怖した。イタミ少将の件は既成事実に成り果てていた。
〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』カウンターテーブル
その日、魔海の主は仕事を完璧に終わらせた昼過ぎ、店のカウンターテーブルで新聞を読んでいた。
手際が良すぎてどんなに頑張っても昼頃には仕事が終わってしまう。
新商品を開発するのも前世の知識で再現した創作菓子も。男の技量はカンストしていた。
原作で9m近くあるマムよりも巨大なウェディングケーキをサンジが有り得ない早さで作っていた。
男は菓子限定ならばそれ以上の速さで作れると断言できた。
元々同じことが出来たがあらゆる角度で試した結果、パティシエとして世界一だと堂々と言える。
…それがイタミ少将と会いたくないが為の時間稼ぎという形で実るのは皮肉であった。
「東の海に新加盟国、戦う農夫達の町『コンタディーノ』バオアー市長」
店主はカウンターテーブルでジャヤコーヒーを飲みつつ、世界経済新聞の記事を読み上げる。
東の海は平和だが、ロックス海賊団の事もあり計画に反映していた。
店主は南、東と計画が進んでいることを喜んだ。
そして、選挙で選ばれた見知った顔の『バオアー市長』を改めて見た。
プッチの店主しか知らない前歴は、懸賞金のかかっていない元海賊の武装色の覇気使い。
行き場のない者達の居場所を作りたいと願っていた男である。
市長の顔写真を見たところで同じ元ロックス海賊団でもわからないように店主がした。
このご時世、国を喪った者達と仲間達の為の国家を築く為のローズを介して支援をしていた。
「新しく加盟国入りもそうですがまたまた武闘派的な人ですよね!」
イタミ少将が自分の故郷である東の海の話題と飛びついて来た。
…イタミ少将の勢い良すぎて顔が近い。
男はここまで積極的なイタミ少将を知らない。元に戻って欲しいと願った。
「市長の弟子達も武闘派揃い。…東の海で突出して危険視とかされていませんか?」
男は記事内容を見て、機密ギリギリのところを尋ねる。
他の客前でどれ程話せるのか。男はイタミ少将を落ち着かせるため頭を無意味に働かせていた。
「…弟子が海賊になったら他全員が殺しに行くとか言っていたそうですよ」
イタミ少将は少し考えたが自分の権限で話して問題ない範囲で答えた。
イタミ少将は男がギリギリのラインで機密を聞いて来たりするため慣れてしまった。
頭の回転が以前よりも倍以上になっていた。
「そうですか。農業主体で町に来る賞金首を狩る平和な町で良かったです」
男はそう言って、安堵したように笑みを見せた。
バオアー市長の望みと合わせ、居場所を守る事を主眼においた平穏な国作り。
そのコンセプトが守られているようで何よりである。
「そうですね。平和なのは良いことです」
イタミ少将は男に同意した。実に平和な町であると東の海の平和さを誇らしく言い切った。
「…なぁ、賞金首を狩る町のボスと舎弟達と考えると平和と言えるのか」
店に並んでいた客の一人が知り合いに話かけた。
プッチの町基準でも英雄がおかしいだけでまともな感性を持つ市民ならおかしいと思った。
「…怖くて皆市長に投票したとか言っても驚かないぞ俺は」
知り合いの問に頷くように客が答えた。
武を極めた男とその舎弟が怖くて選挙したけど、実質王みたいなものではないかと思った。
「それより!私の故郷が今日の新聞に載っているんですよ。『新しい加盟国についての反応』で」
イタミ少将は客の声が聞こえないため、男に話を続ける。
勢いで押して押す。イタミ少将は色々恥ずかしいので男を監視するような仕事をする為にはこれしかなかった。
「『この町の野菜を食べると一気に元気になるんです』…これ、通販の広告みたいな内容じゃないですか?」
男はイタミ少将の示す故郷からの声を読み上げつつ、感想を述べた。
もはや反応というか町の宣伝みたいになっている。宣伝の為に金でも貰ったのかと男は思ってしまった。
・イタミ少将
悶々として高熱を出した。男に会いに行けば治るので医者からは匙を投げられた。
何をしたら良いかわからないが積極的に話かけている22歳(21歳)。
意外と男の周りに美人多くないかと思っている。ローズからよくわからない応援をされた。
農場の子ども達から落ち着いた方が良いと宥められた。
しばらくしたら元の距離感に戻るが、それまでの行為を思い出して黒歴史と化す模様。
・魔海の主
平和になった魔海で仕事をしつつ、次世代へのバトンタッチを目論んでいる12歳。
マストダイ農場で13歳となったルビーを見て、15歳くらいになったら計画を更に加速させるつもり。
だが、イタミ少将がグイグイ来ていて非常に困っている。凄い疲れて頭がおかしくなりそうに感じている。そもそも頭がおかしいので問題ない。
魔海のみならず世界的に平穏になりつつあるのでローズと相談しつつ未来の行動を考えている。
・五老星
魔海の主にイタミ少将を押し付ければ安泰ではないかと思い始めた。
その障害を排除している無駄な働きをする五人組。男からすればただのお節介おじさん達である。