爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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魔海の後継者

〇美食の町プッチ『マストダイ農場』

 

男はイタミ少将が不在の日、自身も関わる子ども達が運営するマストダイ農場を訪れていた。

自分の店をその日は休店にし、男はその農場を改めて視察していた。

 

カカオやココナッツ、リンゴ、オレンジ、みかん、落花生等様々な食用可能な畑を子ども達から案内される。

その場で摘みたての果実を食べたりしながら更に進んでいった。

 

次に、農場奥の食用以外の畑や森へ入る。

竹、梅、松、杉、浮力が凄い木『クウイゴス』、太陽光のように発光する花『エレガントフラワー』、大抵の毒の特効薬となる『邪含草』、幻覚作用を起こす『メスカルサボテン』等々。

通常の木材から特殊な木々や花々、薬草から毒物まで幅広くある。

なお、最後の方はイタミ少将も知らない植物ばかりだ。

 

最年少8歳トレーネの能力によりマストダイ農場は第二の魔海と言える程に混沌としていた。

ここへ攻め込んだ者はトレーネの能力もあり、相手が大将クラスであってもただでは済まない。

 

子ども達の教育と自分の好奇心から、慈善活動のついでに送って貰ったりした植物だった。

それでもポップグリーン等の未発見の植物はないし、西の海にあるホラー梨等の現地の固有種等は少ない。

トレーネの能力で犯罪者からエネルギーを搾取し、植物は年中鑑賞可能となっていた。

子ども達が狩る賞金首達と魔海の主が持ってくる海賊等の一時保管により広大なプッチの森とも評される程に成長していた。

なお、万が一、火災等が起きてもナマズマから学んだ魚人空手による水の制御により一瞬で鎮火可能となっている。

 

そんな森の奥でいったん休憩を取り、男は子ども達へ大事な話をすることにした。

初めの時の取引のようにクッキーとキャンディーを人数分渡す。

皆それだけで勘付いたようで空気に緊張感が走った。

イタミ少将がいない今、かつて対等に秘密の取引した男と子ども達の関係に一瞬で戻った。

 

「私は二年後、魔海の主を引退します」

魔海の主と呼ばれる男は先に結論を述べた。

取引の内容は絶対秘密、代わりに子ども達へ独り立ちできる環境と居場所を与える。

男は子ども達へ最初の五か月でそれを為し、与えていた。

3年近くも男がここプッチに留まり続けたのはある種の治安維持の為だった。

 

「そう、ですか」

年長のルビー13歳は自身が声を落とすのを悟る。

この海の脅威を守るための取引とその関係。それが後二年で終わってしまうと感じた。

その場にいる全員が目の前の男を引き留めようにも止められる理屈は一つもなかった。

 

「…ここがホームなのは変わりませんが」

男はしんみりした空気を嫌い、一応訂正を入れた。

 

「帰って来るってこと?」

トレーネは男の言葉から完全にいなくなるわけではないと推測して尋ねた。

 

「私はここにそもそも流れ着いた身。故郷は別にありますが、そこに居場所はない」

男は自らの経歴を軽く示唆した。

男は5歳で地雷処理の為に歩かされ、吹き飛び、挙句射殺されそうになった身だった。

…孤児の兵士として居場所すら残っていない。

 

「故郷での私は味方に殺された。使命を果たして生き残って、不要な存在として処理された」

男は事実を語る。実年齢12歳なのだが、その辺は素で抜けていた。

子ども達は故郷が滅んだが、目の前の男は故郷に殺されたと察した。

 

「言わないでくださいね。まぁ、言われたところで故郷でも誰そいつ?ってなりますが」

男は故郷を失った子らを自分と重ねていた。故に感じ方の差にも気が付かない。

 

「ここは私の第二の故郷だ。帰って来る場所だ」

男は自身の胸の内を明かした。

毎日のように来る犯罪者達にイラついたこともあった、大規模テロを察して止めたこともあった。未来の海賊王と決闘したりもした。

 

7年だけ、だが男にとっては半生以上を過ごした町と海だった。

 

「…」

子ども達は男の想いが痛い程わかった。魔海の主の本音を子ども達だけが聞いていた。

…トレーネは目の前の男から子どもの叫び声を聞いた。

 

「イタミ少将が22歳だからあの人、当時15歳だったか」

男は沈黙に耐えられずに話を替えた。男は今更ながら当時のポンコツ本部少尉の凄さを悟った。

 

「私も二年後は15歳…」

ルビーは最年長である自身の年齢13歳と比べた。

ルビーはここでイタミ少将の名が出るのはズルいと思った。

赤い髪の少女はその琥珀色の目で無意識に男を睨んだ。なお、他の面々も同じく睨んでいた。

 

「他意はないんです。当時を思い出してつい…。いや、本当に偶然です、はい」

男は少女達から睨まれ、慌てて訂正した。

相手が子どもでも女性の前で他の女性を引き合いに出したのはマナー違反だと悟った。

なお、男の年齢は12歳である。子ども扱いしているが、ルビーの方が年上である。

 

「2年後までに貴方達に更に強くなっていて欲しい。…この町を出来れば守って欲しい」

男は取引外のことを言った。否、取引の範疇ではあるが我儘を言った。

同時にそれは男の本音だった。最年少のトレーネが15歳になるのは待てない。

だが、それでも自分がいなくとも戦えるようになって欲しかった。

 

なお、全員本部佐官以上、トレーネに至っては本部大佐以上の強さを持つ。

男の基準は準ロジャーである。

…どう考えても頭がおかしいとツッコむ者はこの場に不在だった。

男が何もしなくとも、将来的に13人全員が後の四皇幹部クラスになり得る逸材だった。

 

男の心配は絶対に過剰だと指摘できる唯一のイタミ少将は不在だった。

そして、子ども達もそれをわかっていたが、男の願いを叶えてあげたかった。

 

「海戦等の実践。私の体術に覇気の習得、場合によれば海賊船から巻き上げた悪魔の実も提供します」

男はその自覚がないまま、自分の基準で話を続ける。

魔海の主の名は伊達ではなく数え切れぬ海賊船等を襲撃し、男は既に悪魔の実を複数手に入れていた。

何ならゴッドバレー事件でロックス海賊団の船長達が持っていたのを巻き上げてもいる。

当然、イタミ少将も世界政府もこの事実を知らない。

セフィ・ローズに渡した物もあるが、子ども達全員が求めても配れる個数が手持ちにあった。

 

「才能の差はあれど魚人空手を取得しているのに悪魔の実というのもおかしいですが…。

 水中戦の神髄こそ使えなくなる。しかし、魚人空手は陸でも十分使えます」

男は子ども達の才能をいつも見ていた。

魚人空手の得手不得手で初歩しか出来ていない子どももいた。

剣術の才能がある子もいた。体術の才能はあれども魚人空手には向かない子どももいた。

 

「…覇気を取得した上で悪魔の実を覚醒までというのは二年では厳しいですが」

男はとても悲しいという表情を隠さずに言う。本当は覚醒まで鍛錬を見てあげたい。

だが、期限を設けないと惰性でいつまでも居続けてしまう。男はそれを危惧していた。

求める力の過剰さをツッコむ者は誰もいなかった。

 

「貴方達の一部が覇気を取得し、特訓しているのは知っています」

男は常に限界まで鍛えている子ども達の努力を称賛する。

もう既に頭がおかしい程の成長なのだが、誰もツッコまない。

そして、子ども達は男の話を真剣に聞いていた。

 

「二年後、いなくなる前に。どうか…頼む」

男は子ども達へ深々と頭を下げた。最低でも子ども達が立派に強くなってから旅立ちたい。

男は本気でそう思っていた。なお、その基準値は後の準四皇クラスであった。

 

「頭を下げないでください!」

そんな男を子ども達は慌てて止めに入った。

 

子ども達が思い出すのは、二年前、故郷を失い居場所を求めた最初の日。

男の悪魔の如き手法により引き出した自分達の才能と力、男と同じ自分達の第二の故郷。

海賊相手に放り込まれ皆が死を覚悟して戦った最初の日。その船の中で見つかった悪魔の実を食べたトレーネの雄姿。

その後、町を荒そうとする犯罪者や賞金首を狩る日々、男が農場に持ってくる様々な綺麗な花々や劇物達。

男の限界ギリギリを狙う地獄のスパルタ教育、イタミ少将という子ども相手にも容赦しない稽古、ナマズマ師範代の優しい稽古。

一日たりとも忘れられない輝かしい記憶だった。

 

…人はそれを洗脳という。

 

「二年間で私達、絶対、絶対強くなって見せます。だから…」

少女達はその日、男の意志を継ぐ為に全力で応えることを決意した。

…後に、この世で一人の男を除き誰も手が付けられない13人が誕生した瞬間であった。

 




〇マストダイ農場
故郷を失った少女達に男が不在の間プッチの町を守って欲しいと与えた居場所。
取引の延長上で本来は男が頼まなくても少女達は守ってくれる。
それはそれとして男的には自由にさせてあげたくなり、少女達に途中から無理強いは辞めた。
それがかえって少女達にとって大切な場所になっている。
例えるなら男は最低限必要な『魚を釣る術』でなく、漁港の整備や魚町の建設と運営等に至るまでのあらゆる術を叩き込んだ。誰がどうみてもやり過ぎである。

・魔海の後継
後にそう呼ばれる13人。
男が旅に出る二年間で武装色・見聞色の覇気の習熟とそれぞれの才能を活かした鍛錬をすることになる。
今までは様々な角度から広範な教えだったが、今までの二年で得手不得手がわかったので長所を伸ばす方針で行く。
もう既に海軍本部佐官以上はあり、放置しても四皇幹部クラスに成り得る才能を有していたが、ロジャーと互角に戦える戦闘強者から本気で鍛え上げられる。
必要なら悪魔の実まで提供すると言われてもいる13人が鍛えた先はどうなるのか(遠い目)

・魔海の主
自分がいなくなると自動的にイタミ少将もいなくなるのでか弱い少女達を残して行くことに不安な男。頭がおかしい。
実際、魔海の主が不在になると荒れると思われるので海軍を始め対策はしてくれるが不要な程強くするつもり。
更に少女達へ渡す予定だった自分が製作した戦闘兵器もある。クッキー兵器グランマ33号等、合計35体になる。
パシフィスタには流石に至らないが前世の知識とワンピ世界の法則を取り入れた過剰戦力である。

・イタミ少将
自分の行いが恥ずかしくなり、休暇を貰い一人で海賊を斬りまくっている。
現在ジャヤ近郊で無法者を壊滅させた(空島スカイピアの下付近)。
ジャヤは無法地帯過ぎるのでしばらく経てば元に戻るが恐ろしい女海兵として人々のトラウマになる。
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