イタミ少将は帰って来て男の修行という名の少女達への拷問を目撃した。
男はその場で正座を強いられた。そんな出来事から半年が経過した。
男が13人の少女に模擬戦としてイタミ少将に嗾けて一瞬で葬られる事件もあったが概ね平和であった。なお、男はイタミ少将に断じて謝らなかった。
男の拷問にイタミ少将のしごきが加わり、魚人達から厳しいと評判のナマズマ師範代の魚人空手の指導が優しく感じる少女達にとっても平和であった。
億越えの賞金首を狩った時が一番楽に感じる程には麻痺した少女達も今や率先して海賊を襲うようになっている。
勇ましい後継の姿に魔海の主も喜んでいた。…まだ足りないとは思っているが。
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〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』厨房
基本的に魔海の主と呼ばれる男はいつも一人で菓子作りを行っている。
クッキーやチョコレート、マフィン等は男が7年間研鑽を重ねた機械によって従業員やペンギン達によって稼働し、大量生産を可能にしている。
店主の手作り菓子が売り切れても拘り抜いた大量のクッキー等を買い求める客は多い。
もし従業員で菓子職人になりたい者がいれば厨房に入れて一通りの技術を教えて元弟子の営む1号店に預けている。
結果的にプッチの町以外にも支店ができる程に菓子屋である『フォーザデッド』は広まっていた。
男の営む店は飽くまでロックス海賊団等の被害で職を失った者優先で雇っており、二年後旅立つのもあって厨房で教える従業員はいなかった。
だが、例外に二人、男の厨房に入っていた。…悪魔の実の研鑽という名目で。
「トレーネ、レッツェル。スポンジケーキにこのシムシムホイップクリームを塗ってください」
男はそう二人の少女に言った。
高さ3mのスポンジケーキを30個、二人で15個ずつホイップクリームを塗るように言う。
簡単なようで繊細な作業であった。ここで失敗すると後のデコレーション他で商品としては売れなくなってしまう。
その場合、男とイタミ少将、子ども達で食べることになるが、それは本当に最後の手段であった。男は菓子作りに関しては真剣であった。
「…」
二人は頷いた。しかし、正確にはそこに本人達がいるわけでなかった。
二人とも悪魔の実の能力作られた分身であった。
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きっかけはレッツェルの食べた自然系悪魔の実、メタメタの実であった。
液体金属人間となったレッツェルは自らの分身を作り、物量攻撃を可能としていた。
本体ではない分身が覇気を使い攻撃してくる。実体のある影分身は研鑽すれば無限に増やせる可能性があった。
その能力で分身を作成し、同時並行で違う修行ができるのをトレーネは悟った。
そして、トレーネは植物を操る能力を3年近く研鑽していた。
自分にも同じようなことができるはずと思い込んだ結果、擬態した植物が自分の分身となって操れるようになった。
更に、あらゆる場所に無数の大砲を作れるウテウテの実の能力者エリーゼと三人で物量攻撃を研鑽していた。
魔海の主はそれを見て、トレーネとレッツェルの分身の精度が甘いと指摘した。
エリーゼの無数に操る大砲の良い的であると言い切った。
そして、分身を男の菓子店で修業させることにした。
やや強引ではあるが、二人とも自分の分身を働かせることになった。
なお、エリーゼを除く10人は無限に等しい一定以上の強さを持つ物量攻撃をどう対処するか日夜研究していた。
ちなみにイタミ少将はお手本として飛ぶ斬撃の一撃で全て薙ぎ払う事で対応してみせた。
少女達は理不尽の権化を見て鍛錬により力を入れた。
男もイタミ少将と同様に一撃で全部破壊して対応した。二人とも大概脳筋であった。
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〇美食の町プッチ『フォーザデッド2号店』カウンターテーブル
店は閉店時間となり、男は少女の分身二名の失敗作をイタミ少将に半分押し付けて食べていた。
塗るだけでなく様々な作業を行わせており、プロでも厳しい高度な技術も指導していた。
故に、未だに数個は商品として出せない仕上がりとなっていた。
逆に言えば、大多数は成功しているということでもある。
二人は離れた地で修行しながらの作業で、一流以上の高度な作業が出来ていた。
実際、高度な分身を量産できるようになり、ウテウテの能力者であるエリーゼも当てる技術が高まっていた。
狙撃技術が高いエリーゼでも無数の砲弾を同時並行で処理する厳しさに堪えていた。
他の面々は一撃で制圧できる力の研鑽と六式剃等による各個撃破の研鑽をしていた。
今や、全員が能力無しで本部大佐以上の強さになっていた。
修行を初めてまだ半年である。能力ありなら五人は既に中将クラスだった。
能力無しで中将クラスはまだムラっ気はあるがサラーとイコーナの二人、連携ありならリピとジモのペアだと男は分析していた。
男の求める水準には未だに満たなかったが、それは準ロジャー基準という滅茶苦茶である。
男は13人の少女達の半数以上が海軍本部中将クラス程度では満足していなかった。
「美味しいのに…どこが失敗って言うんですか」
イタミ少将は店主に文句を言う。
自分がいない間にまだ幼い少女達に悪魔の実を食べさせた上に滅茶苦茶な修行をしていた。
更には分身を作って自分の店で働かせてまでいるのだから未だに男を叱っている。
なお、ムラっ気があるとはいえ中将クラスの13人を瞬殺できるイタミ少将は自分でも自覚がないが強さが狂っていた。男と大概同類であった。
「特製プリンの弾力を間違えてはみ出しています。工程で0.5g余計に力が入ったせいです」
男はイタミ少将の文句に対して店に出せない理由を言う。
繊細な作業が出来るようになっているが男が求める水準は超一流である。
世界最高峰のパティシエにとっては有り得ないミスだった。
「…彼女達に店を継がせたいんですか?」
イタミ少将は男の滅茶苦茶な注文を見て感じたことをそのまま言った。
男は2年後居なくなるというからにはそういう結論にもなると思った。
「能力の精密動作を極めれば良いと思っていましたが…何でしょうかね?」
男は自分でも心の整理ができていないのか逆にイタミ少将に尋ねていた。
「休暇の時に他の子にも菓子作りを教えていますよね。それが答えでは?」
イタミ少将はこの半年、海賊を狩りつつも菓子作りを教える男に答えを提示した。
「…一流以上ではあるんです。皆、飲み込みが早い」
男は少女達の菓子作り技術を総評した。
自分には未だ至らないが追い越してくれないかと期待していたのかもしれない。
男は少女達に夢を押し付けていないかと言葉を落とした。
「聞かなくても…いいや、あちらから言ってくれますよ」
イタミ少将は珍しく落ち込んでいる男に優しい口調で言った。
男がどこまで少女達を想っているかをイタミ少将は3年以上見て来ていた。
頭のおかしい修行と自分にも詳しく知らされない悪魔の実。
これらもまた男なりの愛情表現なのだとイタミ少将は理解していた。
…それはそれとして目の前の男は世界でもダントツで狂っていると断言できたが。
・魔海の後継
13人ともムラっ気はあるが原作中将クラスになっている。
今のロジャー世代と比較すると流石に落ちるが原作中将クラス並みには至っている。
リーダーのルビーは強さよりも指揮能力に秀でている。
トレーネ、レッツェル、エリーゼは無限に等しい物量で攻撃できるチートである。
三人とも遠隔での物量攻撃が可能であり、既に大将に届き得る片鱗を見せている。
カーメルは古代種アエピカメルスと魚人空手を融合した超威力の水大砲で下手な島なら貫通してしまう威力を放てる。
リピとジモは魔海の主の冷気を操る技法を成功しており、魚人空手と併用した冷気による攻撃は水中で大型海王類も仕留められる。
他の面々も似たように頭のおかしい進化を遂げている。
後、まだ伸びしろがあり、1年半修行を続けるのを世界政府はまだ知らない。
・イタミ少将
帰って来て半年が経過した。もやもやは男が少女達に課す拷問を見て怒りに変わった。
自分の修行も拷問といえる程度には酷いことに気が付いていない23歳(21歳)。
男の課す修行は少女達が独り立ちしても良いようにしている善意とは理解している。
ちなみに、市民が修行しているだけなので海軍等には報告していない。
正確には報告したが信じて貰えなかった。
・世界政府
イタミ少将は嘘でもマシな報告しろと思っている。
それよりも早く色仕掛けしろとCP0に嗾けるように指示を出しそうになった。流石に冷静になって辞めた。
・魔海の主
13人全員が年内に平均中将超えはできそうと確信している12歳半。
だが、ガープ中将という滅茶苦茶な存在は自分の修行だけでは超えられないと思っている。
そこを基準にしてはいけないという発想がないアホ。
少女達に四皇幹部クラスとの死闘の経験を積ませられないのが悩み。
ペンフレンドのペロス君に相談したら「馬鹿なの死ぬの?」的な返事が来た模様。