〇とある秘境付近の小島
魔海の主は自身で設計・製造した高速船クルースニク3号の最高速度のフルスピードで最初の目的地に到着した。
『最低海軍本部大佐でないと死ぬ』というイタミ少将お墨付きがある高速船の3号機である。
この船で海賊を襲撃するので海賊も気が付いたら隣にいたという恐怖を味わうことになる。
そんなウォーターセブンの造船技術と男の科学力の結晶を、男とイタミ少将はとある小島に隠した。
男は操縦不可になるように鍵をかけ、電子ロックのパスワードを確認した。
この時代には有り得ない技術の塊だが、未来国がある以上はもっと凄いものがあると男は思っている。
「しかし、どういう仕組みで動いているんですかこの船」
イタミ少将は高速船を隠す作業が終わり、理解不能な速度を出す船について男に尋ねた。
なお、イタミ少将はよく高速船の1、2号機のどちらかを借りて海賊を斬っている。
仕組みはわからずとも動かせるので良いと思っているが、雑談ついでに話を振る。
「糖分を燃料にした蒸気機関です。クウイゴスで浮力を保ちつつ、金属で補強しています」
男は前世知識を元に分析したワンピース世界の科学で説明した。
男は前世知識からコーラで1キロ以上飛べるサウザンドサニー号を不思議に思った。
研究の結果、美味な糖分等で凄まじい爆発力を出せることを発見した。その応用だった。
「…何でクッキーが燃料なんですか?」
イタミ少将は良くわからないながらも理解不能な燃料にツッコんだ。
「美味しいじゃないですか。私のクッキー」
男はイタミ少将の問に不思議そうな顔で答えた。コーラも美味いから飛ぶのだ。
男は1週間、万が一の連絡手段であるラウフが現れない限り戻るつもりはない。
イタミ少将もいるが緊急事態ならば許容範囲だとラウフも了解してくれた。
つまり、魔海の主として初めて完全に自由な時間とも言えた。
…8年間ほぼ休まず働いて来た13歳は労働基準法が適応されないかと思った。
というか、今から行くところも計画の範疇ではあった。休みといえるか微妙である。
「どうしました?何かありましたか」
イタミ少将は男の哀愁漂う背中を見て尋ねた。
残業続きで疲れ切った顔のローブスター中将を思い出す。
ロックス海賊団壊滅で引退されたと聞いているが元気だろうかとイタミ少将は思った。
「何でもありません。それより、今から雲より高い秘境の地に行きます」
男はイタミ少将の気遣いに返しつつ、今まで言わないでいた目的地を発表した。
「…?」
イタミ少将は男の言葉の意味がわからず思考停止してしまった。
問答無用でいきなり連れて来られて今から雲より高い秘境に行くと言われたらそうもなった。
「この先に雲まで届く秘境があるらしく、それを見てみたいと常々思っていまして」
男はイタミ少将の反応を無視して説明を続ける。
既に色々と検討がついている以上、一週間もあれば目的を果たせると男は計算していた。
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男はラウフにズマズマの能力で各地の無人島や秘境を調べて貰っていた。
世界各国を飛び回るローズの護衛と緊急時の伝令をしながらである。
相当な無茶ぶりを男はしていたと思っている。
…それ故に、ラウフの要求するイタミ少将と同じことを断り切れなかったのだが。
未知の秘境や無人島は男が立案した計画には重要な存在であった。
計画の為には少なくとも表向きには政府も把握していない秘境や無人島が必要だった。
各海には大まかな位置、グランドラインにある島にはエターナルポースを作って貰っていた。
男とセフィ、他協力者で分散してどこで計画が破綻しても良いようにしていた。
故に男が死んでも問題ないと言えた。男の計画はもはや誰も止めることは不可能だった。
そして、グランドラインに関しては男が最優先で渡されていた。
イタミ少将からマークされてから優先順位を下げたが、男は政府も知らない秘境の地の数々を把握していた。
今回行く島はラウフにエターナルポースを作成して貰った島の一つであった。
ラウフ曰く、手に羽が生えた現地人がいる。独自の進化を遂げた生物がいる等々。
男は前世の知識から雲に届く秘境メルヴィユだと確信した。
男にはその秘境の動植物を用いて金獅子が東の海壊滅を企むという原作知識があった。
金獅子のシキはゴッドバレー事件で魔海の主として軽く戦った二刀流の剣士だった。
その際はシキの方から逃げたので深追いはしなかったし、男としてもそんな暇もなかった。
男はシキに逃げられる直前に一応殺すつもりで攻撃したが、普通に生きていたようだった。
故に、男からすればシキが衰えたとして覇気も使えないルーキーに勝てると思えなかった。
その為、先手を打って対策できるならしておきたかった。
男はゴッドバレー事件を乗り越え生きている以上、自分の手で将来の危機に対策を取っておきたかった。
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そんな内情は一切知らせず、男はイタミ少将に今から自分達が行く予定の地の話をした。
「雲に届く秘境。中々いい響きですよね」
男は政府に知られても最悪大丈夫な範囲で説明をし終えた。
なお、I.Q.等の特殊な植物については隠している。
知り合いから雲の上にある秘境と教えてもらったと説明した。
「ええ、うん、はい」
イタミ少将は男の滅茶苦茶な説明に混乱しながらも理解した。
…要するに航海許可証を用いて探検がしたかったのだとイタミ少将は理解した。
「でも、どうやっていくつもりですか…って、まさか私も登っていくんですか?」
イタミ少将は男ならやりかねないししかねないと思って尋ねた。
天まで届く島を月歩で登るとなると帰り含めても疲れそうだと思った。
イタミ少将は男のせいで感覚が大分麻痺していた。普通は自分で登ろうとか考えないし、できない。
「…?私は飛行できるタイプの動物系悪魔の実の能力者ですよ」
男はイタミ少将を登らせる気はなかった。
バットバットの実の名は兎も角、飛行能力迄説明していなかったかと思い出し、反省した。
「…へっ?」
イタミ少将は男が背中から漆黒の両翼が生えたことに驚いて声が出た。
バットバットの実と聞いていたが、まさかとも思った。
そして、男の端麗な顔立ちとその羽は理想的なまでに似合っていた。
「背中から羽だけ出して飛べるようになったんですよ」
男は驚くイタミ少将に説明した。
『友』の能力を直接お披露目することになるので普通はこうではないことも補足説明した。
「能力は最大限鍛えてあります。それ故か、こういう変化も可能になりました」
男は普段見せない能力を鍛えてあると言い切った。
原作でランブルボールを服用して七形態変化できるようになったチョッパーがいた。
男の能力である幻獣種に適応するのは至難だったが、気合での部分変化くらいはノベルと戦った際にはできていた。
今は覚醒した状態での戦闘も可能になったが今度はそれを振るう相手がいない。
ロジャーとの死闘までは男は覚醒が不十分でその一部しか使えなかった。
死闘の後完璧になったので、男は一番大事なのは戦闘経験だと思っている。
「さて、では失礼して」
男は呆然とするイタミ少将を抱えた。
…男は意識していないが、それはお姫様抱っこと呼ばれるものであった。
「ちょっ…!?」
イタミ少将は赤くなりそうな顔を隠して動揺していた。
この男、気軽に、というか近い近いという具合に脳内で暴走していた。
「一気に飛ぶので、できれば捕まっていて欲しいのですが」
男はイタミ少将の反応よりも飛ぶ高度の計算に思考を割いていた。
一人きりの時は散々練習したが、人を抱えてとなると初めてであった。
「よし!…行きますよ」
男は気合を入れて離れの小島から雲に届く秘境メルヴィユへ飛び立った。
イタミ少将は何も考えないようにしてただひたすら、男にしがみついた。
〇雲に届く秘境メルヴィユ
ワンピースストロングワールドで登場。グランドラインの秘境の島。
ルフィ17歳最後の冒険という触れ込みで、新世界編22年前にインペルダウンを脱獄した金獅子のシキが支配した島。
手に羽が生えた原住民や独自の進化した生物がいる島。
その原因はI.Q.と名付けられた進化を促す花によるもの。
シキはそれを用いて20年もの間、東の海を壊滅させる計画を企てていた。
その計画性の高さからゴッドバレー事件で合った際、魔海の主はついでに仕留めようとした。
シキは何故か生きていた上に原作通り成り上がっているので男としては先に対策するつもり。
・金獅子のシキ
ゴッドバレー事件で魔海の主に殺されかけた。助かったのが奇跡と呼べるレベルの仕打ちを受けた。
魔海の主に復讐しようにも相当の兵力が必要な為、現在は力を蓄えている。
同時に四皇のような関係で自分が気軽に動けなくもなっている。
ロジャーへの対抗心もあるが、魔海の主の強さを取り込む事ができないかとも考えている。
運良く魔海の主の不在を知った。チャンスであったが、嫌な予感も半分あった。
確認の為今すぐ動かせる兵力で様子見をすることにした。
・イタミ少将
男に手をつかまれ船に乗せられ、お姫様抱っこで空を飛んでいる。
大分混乱している模様。多分しばらく海軍とか政府とか考えられる状況ではない。
・魔海の主
マムもだがシキも仕留めておきたかったと思っている13歳。
今回は出来る限り後継に任せたいと考えているので不在を敢えてアピールした。
そこそこ大物が釣れれば収穫だと思っている。ネームバリューのある奴が良いなと考えている。
あんまり深い計略ではなかったが、最適な奴が最適な動きを開始した模様。
イタミ少将へのお姫様抱っこに忌避感はない。嫌がっているなら辞めるがそう言わないし。