爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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雲に届く秘境『メルヴィユ』

〇雲に届く秘境メルヴィユ 上空

 

「ハハハハ!凄いなこれは!!」

雲を超えた先にある秘境に到達した男は目の前の光景に無邪気に興奮して言った。

 

『友』である能力を存分に活かし、天の更に上から見た景色は圧巻の一言に尽きた。

先ずは男が人生で初めて見る大いなる自然、更に10m以上の動物が闊歩している。

これだけでも人生初なのにも関わらず、そこに円状の集落らしき人々の姿があった。

自然と動物と人の見事な調和。男は本来の13歳の少年に戻っていた。

 

「…」

イタミ少将は男に抱えられたまま男と同じ景色を見た。

だが、それ以上にイタミ少将は男の純粋無垢とも言うべき姿を見たことがなかった。

いつも物事を斜めに見ているような男がこんな顔をするのかと思うと、胸の高まりが激しくなるのを感じた。

 

「ここは…こうあるべきだ」

男は目的を思い出したと同時に本心が漏れた。

金獅子のシキが後に奪うかもしれない光景を見て、己の我儘な、覇王の部分が刺激された。

 

「…イタミ少将。出来ればなんだが」

男は背にある羽を使い、ゆったりと降下しつつ言葉を発した。

正直、海軍がこの場所の存在を知っていれば、後年のシキへの対策になると男は考えていた。

だが、この美しい調和を崩すような不純物となる。I.Q.の存在はそれほどまでに脅威だった。

間接的にでも世界政府が干渉してくるのが男にとって嫌だった。

 

「私は…この一週間、どこか未開の地で迷子になりました」

男に降ろされ地に着いたイタミ少将は男の我儘を聞くことにした。

イタミ少将からしても珍しい動植物に溢れたこの地を誰かが知れば荒れると思った。

場所が場所だけにここに来る存在もそうはいないとも考え、報告より男の感情を優先した。

 

「…迷子になった責任は取ってくれますよね?」

イタミ少将は男に向かって意地の悪いことを言った。男に目を逸らすなと顔をつかむ。

 

「突然、雲の上まで超高速で来させられて迷子になったんですから」

イタミ少将は自分でやっておいて恥ずかしくなった。

男の顔をつかんだ手を離して、顔を隠すように後ろを向いた。

 

「…善処します」

男は以前の押しの強いイタミ少将を思い出し、引き攣った笑みで前向きに検討した。

恥ずかしがっているが、あの勢いで毎日来られると非常に辛い。

実年齢13歳は実年齢23歳に弱みを握られた。少なくとも男はそう解釈した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〇雲に届く秘境メルヴィユ 森林地帯

 

男とイタミ少将は降り立った森から人の住む集落へと向かっていた。

途中に来る動物達を二人して威嚇して人々の気配へ真っ直ぐに進む。

 

「良く考えたら…これ以上は集落にも迷惑がかかるのでは?」

イタミ少将は二人して気絶させた動物達を見て言った。

大型の動物こそないが、3~5mくらいの動物達が気絶してしまっていた。

 

準ロジャー級のイタミ少将とロジャー級の男の威圧に耐えきれる生物はほぼいない。

…二人は虫よけ代わりに覇王色の覇気を垂れ流して進んでいた。

 

「確かに、問題だったかも」

男はイタミ少将に同意した。自分達は生態系を崩さないようにしたつもりだった。

しかし、魑魅魍魎が気絶している光景はやり過ぎた。

 

男は気絶した動物に触って記憶等を一部奪いつつ、見聞色の過去視で普段の生態を覗いた。

ついでに、3mのカハレガという種類の毛虫の毒を自分に投与した。

男が覗いた範囲では気絶している中で一番毒性が強い生物であった。

有毒の上位生物もいるようだが、この中にはいなかった。

 

「…何やっているんですか?」

イタミ少将は男の突然の奇行に対して呆れて言った。

大方毒対策だろうとは思った。イタミ少将は男の考えがある程度わかるようになってきた。

 

「毒を体内で分析しています。この地の動植物の強さ等を測っています」

男はイタミ少将の思考の斜め上の回答をした。

男は最早毒耐性とかそういう次元ではなかった。

 

摂取した毒からその生物の進化と歴史の分析が可能になっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

8年の歳月、男は自分自身にあらゆる毒を投与し、耐性を身に着けた。

男にとって最早この世界に存在するあらゆる毒に耐えられると断言できた。

即死から遅効性まで全てに対応できる毒耐性である。知らない毒でも解毒はできた。

その成果は毒耐性の協力者Dr.ランプが必要ないと匙を投げた程だった。

代わりに男へ医学を教えるようになった。男の医学問題は解決した。

ドラム王国の医学が80~90とすれば、Dr.ランプは70。一流の医師が50~60である。

男は魚人の医師Dr.ランプから本物の医学を教わり鍛えた。

それは男が最も欲していた手に入る学術書だけでは学べない『実学』であった。

男はその医学を元に更に自己改造、生命帰還、バイオフィードバックにより毒の理解を高めた。

一通りの病気に対する知識も得たので未知の病原菌等へのワクチンの生成も可能になった。

 

イタミ少将の毒殺未遂事件と同様の状況なら、彼女の血を自分に投与して抗体を体内で生成できるようになっていた。男は同じ過ちを繰り返さない為に必死だった。

なお、男の師であるDr.ランプからはやはりお前は人間じゃないと断言された。

戦闘では応用で敵に毒攻撃が可能になった。

元々基礎能力にある催眠、盲目等に加え、毒が追加された害悪蝙蝠である。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「…」

男の滅茶苦茶な理屈にイタミ少将は理解の匙を投げた。

男がまともじゃないことを繰り返してきたのはわかったが。

 

「大体わかりました。…この地の動植物を解き放つと下手な国だと滅びますね」

男は原作シキのヤバさを更に確信した。…20年進化させ続けたら東の海も海軍本部が動く前に滅ぶ。

男はイタミ少将が報告しないと事前に約束してくれたので率直に感想を述べた。

 

「まぁ、それはそうでしょうけれども…」

イタミ少将は10m以上ある生物を見て言った。

男の真意こそ悟れなかったが、この秘境の生態系はグランドライン基準でも逸脱していた。

 

「対策できている現地人の秘密を聞くのは野暮ですが…。食用等になりそうな動物は下処理して手土産にしますか」

男は弱肉強食の理を説いた。無意味な殺生はしないが、食用等であれば別である。

男は動物達に行った過去視で人間に狩られる動物を幾つか判別し終えた。

 

「イタミ少将。幾つか血抜きや皮剥ぎやって貰えますか?」

男は剣術の達人に依頼した。自分がやっても良いがイタミ少将の技量を見たかった。

 

「…まぁ、私達もしばらく滞在するなら必要ですか」

イタミ少将は剣士としてどうかと思いつつも、男の見識と行動は理解できるので了解した。

 

気絶した動物達から離れたところで、世界屈指の剣士による大型生物の解体が行われることになった。

人々の集落にバレないように、かつ一瞬で一部の動物達は食用肉や皮へと解体された。

気絶したまま一瞬で逝けた動物達だったが、起きた状態でも痛みすらなく逝けただろうと男が確信する程の絶技だった。

 

一週間分以上の肉を現地調達できた二人は、今度は覇王色の覇気を垂れ流さないように気配を消して人里へと向かった。

 




・イタミ少将
男が菓子以外で子どものようにはしゃぐのを見て意外な一面を見た23歳(21)。
海軍にはメルヴィユのことを基本報告しない代わりに男に貸し一つ作れた。
自分の毒殺未遂の件を未だに気にしていた男が相当滅茶苦茶をやっていると察した。
サバイバルは軍でも自分でも身に着けているので動物の解体も余裕でできる。
男が食えると判断したのなら間違いないという信頼はあり、知識にない動物の解体をした。
動物等への無益な殺生は好まないが海賊は狩る女海兵の鑑。

・魔海の主
本等の知識では知っていても初めて見る広大な自然を見て歓喜した13歳。
自然、動物、人が調和された美しい光景を見て、これがシキに支配されるかも知れないと思うと嫌過ぎた。
支配より自由を尊ぶところはルフィと共通するが、その意識は本人にはない。
イタミ少将の前の猛アタックというべき暴走が軽くトラウマになっている。

毒耐性どころか自分の体内で生成、分析と解析まで出来るようになった。
バットバットの実はそんな能力はないぞと叫びたいが、能力者である主ができると思い込んでいるので実現した模様。
状態異常攻撃をコンプリートしつつあるロジャー級の基礎能力持ちの害悪蝙蝠。

・Dr.ランプ
人間嫌いの医者。元々人間扱いしていない男が自分で毒を作れるようになった。
確かに自分が医学を教えたが、そんなことできねぇよと改めて匙を投げた。
人間ではない魔海の主だから教えたが、当然人間に自分の医学を教えるわけがない。
魚人、人魚、魚類に関しての医術は世界最高峰の医者。
本人は謙遜しているが、一流以上の医師であり、専門医として見れば破格の医者である。
最近では魔海の主というネームバリューを使い、海賊等の被害に遭わないようにしている。
理由は加齢により筋力が衰え、自分自身で自衛がしにくくなったため。
Dr.ランプ的に魔海の主が嫌がるかと思ったが、本人に頼んだらあっさり了承された。
自分が人攫いから救われ、数多くの同胞達を助けられている為、恩人だと思っているが、実際はお互いがお互いを恩人だと思っている。
秘蔵の医学知識を教えてもらい、魚人や人魚等を匿って貰ったりしているので男もDr.ランプが頼めばかなり融通を利かす。
世界政府が把握していない魔海の主の地雷でもある。
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