爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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修行(軽作業)

元サイファポール所属だったティアは本当に円満退職してきた。

念のために何か裏がないかと、男はティアへそれとなく見聞色の覇気で過去視を行った。

見聞色の覇気で過去視を出来るのは男が知る中では前世の知識、原作外ではあるがパトリック・レッドフィールドがいた。

世界政府も過去視の見聞色の覇気の使い手を把握していないようなので男も誰にも明かしてはいない。

 

ティアの過去はこの世界で良くある光景であった。

行き過ぎた献身も矯正可能だろうと男はティアを身内に引き入れることを改めて決意した。

…ここまで込みで五老星の策だと思うとイラっと来るが良く人を見ていると感心もした。

 

男はティアを通して世界政府の諜報機関での教えられる六式とその諜報技術を学んだ。

世界政府の諜報機関の内部情報が男に漏れたことになるが、多少の漏れはティアを派遣した時点で許容範囲であると理解していた。

ティア等には覇気に関しての教育はほとんどされていなかった。

新世界と一部の地域を除けば覇気を知らないまま生を終えるのも良くあることである。

諜報の人間にはそこまで重要ではないことも事実だった。

大よそ殺気等がわかれば見聞色の覇気等を取得せず六式のみで十分過ぎた。

だが、魔海の主の身内になると例外である。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〇氷街道

 

その日、男はティアとついでにイタミ少将を連れて来て氷街道にやって来ていた。

男としても少女達といきなり関わらせるのも面倒なので氷街道まで足を運んでいた。

イタミ少将はティアが男と二人きりになるのが怖…心配なので着いて来ていた。

 

ペンギン達が氷の大地を用意し、それを氷山でしっかりと固める。

氷の運搬作業を行うドウモウペンギン達はメルヴィユのI.Qを摂取した結果、トレーネの推測通り筋肉が進化していた。

一部例外的な進化をするペンギンもいたが概ね普段の生活の延長上で進化していた。

男は人体実験として自分にも投与しているが、中々変化はない。

メルヴィユの住民のように腕に羽が生えて飛べるような進化ではないと推測しているが、人体への影響は時間がかかるのだけはわかった。

 

「ティア。実力は推測できるがどれくらい戦えるのか試したい」

男はティアと少し距離を取ってから告げた。全力で魔海の主に攻撃しろということである。

 

「…はい!」

ティアは愛する男からの言葉を反芻し、理解した。

なお、イタミ少将は口を挟まない。武人気質な少将はそういうところは真剣であった。

 

「“剃”」

ティアは足場を10回以上蹴ってから六式の高速移動術を行おうとした。

 

だが、

「あっ…」

ティアは足場が濡れていることに気が付いた。溶ける気配すらない氷が融解していた。

六式の剃は中途半端に終わり、速度が減退した。

 

「こういう戦法もある」

男は減退したティアに追い付き、顔面手前で拳を止めた。

 

「環境を活かすのは基本ですね。圧力だけでも氷は解けますし、常に足場が一定だとは限らない」

イタミ少将はティアの不意を突かれた原因を説明した。

 

「剃ではなく、月歩の方が良かったかもしれませんね。あれなら減退してもリカバリーできますし」

イタミ少将はティアの初手に言及した。氷の大地で戦うのならば歩法は選択が狭まる。

六式なら月歩から嵐脚で様子見が常道だろう。剃は足場の状況を見て使用を判断すべきであった。

 

「剃は人の練度で差がありますが、大体ティアに合わせています」

男は四式使いのティアの習熟度をラーニングし、同じくらいの実力で手合わせしていた。

 

「今のはちょっと反則かもしれませんが、ティアの肉体で可能な範囲でやっています」

男はティアの可能な範囲でやっている。ただし、見聞色や武装色は込みである。

 

「鉄塊と指銃も使いませんし、カチカチの実でティアにアドバンテージがある」

男は改めて宣言した。ティアに出来る範囲で手合わせをする。

本来ならティアに負けるはずがない条件である。

 

「ただし、覇気は使います。ティアの現在の潜在能力的に換算した範囲で」

男はティアに覇気というものを体験させることにしていた。

 

「“嵐脚”」

ティアは男の言葉を聞き、前回の反省を活かして環境を把握しつつ斬撃の蹴りを放った。

 

しかし、

「…」

男に斬撃が当たったのにも関わらず、平然としていた。

 

「鉄塊ではなく武装色の硬化というものですね。ティアが引き出せば今からでも使えます」

男はティアの嵐脚を耐えきってそう断言した。

 

「…私にも出来る」

ティアはただ一人生涯を捧げると誓った男の言葉を信じた。

無茶苦茶な理屈であるが、ティアは本気だった。

 

すると、

「嘘でしょ!…使えている!?」

イタミ少将はティアが武装色の硬化に成功しているのを見聞色で悟った。

ティアは出来るに違いないと思い込むことで自分の鋼鉄の固さに武装色の硬化を纏っていた。

 

「はぁ…はぁ…」

ティアは息切れをしていた。ティアは凄まじい勢いで体力が消耗していくのを感じていた。

 

「お見事!」

男はティアの武装色の硬化を見て取り純粋に褒めた。

出来る、使えると思い込む意志が覇気の引き出し方だと男は思っている。

イタミ少将は違うようだが、どうやら男の覇気の引き出し方とティアは合うようだった。

 

「剃の状態のまま月歩、嵐脚」

男はティアの目で追える速さで空を舞い、斬撃の嵐をお見舞いする。

 

「…くっ!」

ティアは一撃一撃が自分の物の嵐脚より重いと感じながら、カチカチの実と武装色の硬化の相乗効果で痛みを感じないで防ぎきれた。

 

「武装色を纏った嵐脚の連打です。カチカチの実だけでは痛かったことでしょう」

男はティアが武装色を纏ったままで受けきったのを見取って言った。

 

「ティアさんが限界です。…休ませるべきかと」

イタミ少将は男がティアのギリギリを狙っていることを悟り、提案した。

このままだとティアは倒れる。イタミ少将なら初の武装色発動なら感覚を馴染ませた方が良いと思った。

無論、これが二回目なら気にせず続行し、延々と嵐脚を打ち続けるくらいするが。

 

「いや、ここからです」

男はイタミ少将とは違う感覚だった。

そして、ティアの場合は男の方法が合っていると確信したので取り下げた。

 

「剃」

男はティアが体力を極限まで使い朦朧とする意識なのを悟り、剃で分身のように駆け回った。

 

「まだいけます!!」

ティアは男の期待に応える為に叫んだ。

必死になって気配を探る。ティアは初の武装色発動で体力を消耗しきっていた。

自分と同じ速度であるはずの剃が目で追えない。だが、消耗しきった状態で意志のみで立つ。

 

最早ティアの体力が尽きて目が見えなくなろうとした瞬間にそれは起こった。

 

「フッ!」

男の拳が『先』に見えた気がした。ティアはそれを躱そうとして、意識を失った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

男とティアの手合わせはティアの自爆とも言える形で終わった。

初めて使用した武装色の覇気がわからずに体力が尽きるまでそのまま纏い続けていた。

だが、たった一度の手合わせで、男の言葉を心から信じ切って奇跡を二つ起こしていた。

 

「…今のが見聞色の覇気です」

自分の腕の中でぐったりしているティアを見て男は言った。

完全に意識を失う直前、先を見える感覚をティアは得ていた。

通常なら容易く避けられるその拳は消耗しきったティアでは交わすのは不可能だった。

ティアは体力の尽きる寸前でその一瞬だけ最後の力を振り絞り不可能の一撃を躱した。

 

「とはいえ、今のは武装色も纏っていませんし、完全に使えていたら受け止めるのが正解なんですが」

男は聞こえていないだろうティアに無駄な消耗を避けるためのアドバイスをした。

男がティアの立場なら敢えてカチカチの能力で受け、消耗を抑えた分カウンターで殴る。

 

「…彼女は折角の自分の能力を忘れてしまっていた」

イタミ少将は戦う者として自分の手札を管理できていないことを責めた。

だが、武装色と見聞色の覇気を一度の手合わせで引き出したことを踏まえれば圧倒的に+の結果であった。

 

「悪魔の実の能力者でも成りたてです。とっさに非能力者の行動をしてしまうのは仕方がないかと」

男はイタミ少将の言葉に反論する。能力者になったばかりで前後不覚になれば非能力者だった頃の反応が出てしまうのは仕方がない。

 

「…ここに到着するまでに私が覇気無しでティアさんを何度か斬りつけるべきでしたね」

イタミ少将は自分がいながら何もしなかったことを反省した。

軽くトラウマになる程度に斬りつけても無事だとわかっていれば最後の展開も変わっただろうと後悔した。

 

「まぁ、お互いティアに関して理解が足りていませんでしたね」

男はイタミ少将の言葉の真意を読み取り、お互いのすり合わせとティアへの理解が足りなかったことを反省した。

 

「目を覚ましたらどうしましょうか?」

男はイタミ少将に尋ねた。男ならば反省を活かして難易度を上げて覇気の持続を目指す。

勿論、気絶を繰り返すことになるが仕方がない。初日の感覚を身に着けて欲しい。

 

「折角、悪魔の実の能力者なのにそれを活かさないのは惜しい。氷山を拳で壊し続けさせるべきかと思います」

イタミ少将はティアが自分自身を能力者という自覚がないと覇気を無駄に消耗するだけだと思った。

自分の硬さを理解させる為に何度も気絶することになるが、氷山を殴り壊し続けるべきだと提案する。

 

「では、氷山を殴り壊しながら気を抜けば外部からの攻撃で海に落ちるようにしましょう」

男は折衷案を提案した。ティアの能力を自覚し、見聞色の覇気のトレーニングにもなった。

 

「能力者が海に落ちると死に直結しますからね…見聞色の覇気を鍛えるのも、妥当ですね」

イタミ少将は男の提案に同意した。氷の海に突き落とすことになるが、それくらいの危機感がないと育たないとイタミ少将は思った。

 

「取り敢えず、起きてからですね。今だけは寝かせてあげないと…」

男はティアを抱えたまま、片手で指銃を飛ばし氷山に穴を開け、雪室を作った。

 

「そうですね。疲れたでしょうし、起きたら再開しましょうか」

イタミ少将は男の雪室の中に先行し、熱が籠るように整形した。

 

二人とも修行の鬼だった。これでも初日であるため極めて優しい授業である。

ティアは氷点下の海に何度も落とされ、氷山を殴り壊し続ける作業が一日夜通し行われた。

…ティアは同じ被害者として農園の少女達から暖かく迎え入れられることになる。

 

 




・ティア
初日なので魔海の主とイタミ少将からすれば優しい講習会みたいな内容であった。
なお、ティアを認めてくれている証なのでこんな仕打ちを受けても愛は無くなるどころか深まった。
これぞ試練に合格した人々が魔海の主を罵倒する際に使われるDVや洗脳の意味である。
厳しい過ぎる試練を乗り越えると必ず力は身につくので誰もその効果だけは否定できない。
結果だけ見れば、ティアは一日で見聞色の覇気と武装色の覇気を覚えた。
ついでに武装色を纏ったカチカチの実での効率的な破壊(内部破壊の覇気)の基礎を覚えた。
四式は既に取得しているので四皇戦力と戦っても自己防衛は余裕できる。
これを一年以上様々な形で経験していく。折れない心は愛で補っているので前提条件をクリアしている。健気な子。

・講習会
男もイタミ少将もこれくらいは経験するよねという経験則でやっているので今回は意気投合している。
飽くまで初心者向けの講習会だからであり、魔海の主が一人でやらせるのは拷問であるとイタミ少将は責める。
被害者一同からすればイタミ少将も五十歩百歩である模様。

・イタミ少将
ティアとの関係を深める心配よりも鍛えることに頭が行ってしまった。
何だかんだでより効率的な修行や立ち回りをティアを通して男と学んだ。
ティアも大切な教え子のような感覚になってきた。

・魔海の主
イタミ少将が着いて来た時は面倒臭いと思ったが、お互い学ぶところがあった。
5歳で能力を大よそ使い熟していたので、悪魔の実の能力者なのに基礎重視。
その癖、状態異常対策と攻撃を使うのでロジャー級の基礎能力と状態異常を相手に戦わないといけない。
悪魔の実であるカチカチの能力と内部破壊の武装色での攻撃は鍛えれば凄まじい威力になると確信した。
将来、原作のカイドウと攻撃力も守備力も張り合えるようになればよいなと思っている13歳。ティアのスピードだけは要課題だと思っている。
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