魔海の主に新たな被害者もとい仲間ティアが加わって一か月が経過した。
ティアは男が想像していたとの違い農場の少女達と即馴染んでいた。
男が見る限り、特にサラーと仲良しになっているようだと安心しつつ悪寒を覚えていた。
その間、五老星がただアホなことをしたわけではないとCP0のおじさんが弁明に来た。
世界会議で魔海の主に一部の特権を付与するか否か議論になりそうだという。
聞いた範囲で例えるならば、後の王下七武海的な制度であった。
先日の金獅子のシキの部下を倒した件で魔海の主の後継ができたのが全世界に報じられた。
結果的に魔海の主がフリーハンドになるのを魔海以外の国々が恐れているとのことだった。
男は世界政府と敵対したいわけではないが、特権を条件に全面的な協力する気はない。
だが、首輪無しの魔海の主に恐怖を抱く国もあるというのは自然な流れでもあった。
要するに形だけで良いから飲んでくれないかとのことである。
『ティアの件もあるしね、お願い♡』という五老星の顔が男に浮かんだ。
五人の爺に♡されても嬉しくなかった。…男の言葉にCP0のおじさんもそれに同意した。
ティアという美人局ではないガチに引っかかった男としてはイラつくが、同志達の計画を進めるのにも便利であった。
ノベル辺りから文句を言われそうだと思いつつ、男はそれに条件を付けて同意した。
五老星としては魔海の主が首輪を着けてくれるか賭けであった。
男の同意は取り付けたと議題を追認した。勝手に世界会議で決めて魔海の主と敵対する羽目になれば世界政府そのものが危うかった。
世界会議で世界秩序と平和に貢献している魔海の主に首輪をつけるようなことを不義理と憤る良識派のアラバスタ国王等もいた。
だが、男の同意も事前にあったとしてギリギリで可決された。
魔海の主が五皇として君臨するのを避けることに成功した大多数の世界政府加盟国は安堵した。…それと同時に一部の国々ではそのことに罪悪感を持つことになる。
男の計画は誰にも知られずに世界政府の自滅により速度を上げ、更に拡大していくことになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
〇嘲りの町ジャヤ
七武海(仮)になった魔海の主はジャヤへ足を運んでいた。
嘲りの町ジャヤは毎日、強盗や殺人が多発する治安最悪の町であった。
だが、その住民はそれに慣れており、海賊等の落としていく金で生活する逞しさも身に着けている。
海軍も半ば放置している春島であるが、治安が悪過ぎてある意味秩序がなりたっていた。
また、ジャヤはコーヒーの産地としても有名であった。
魔海の主はティアを伴って高速船クルースニク3号でやってきていた。
男はティラミスやオペラ、他のチョコレートケーキに必要な珈琲豆を求めていた。
男が試行錯誤した結果、ジャヤコーヒーがマッチしたので個人で輸入するつもりだった。
なお、いつもならついてくるイタミ少将はジャヤにて海賊千人斬りをして恐怖の対象となったのでお留守番である。
そんな事で二人の男女は海賊等の荒くれものに溢れるジャヤの町の酒場で一休みしていた。
高速船クルースニク3号の最高速度をもってすれば一日以内で辿り着けた。
勿論、そんな船に乗組員の安全は計算されていない。
「店を継ぎたいと皆が言ってくれて良かったですね」
ティアはプッチのパティシエにそう言った。
男は少女達にパティシエの技術を、特にトレーネとレッツェルに教え込んでいた。
分身の術のような能力を使える二人には男が仕事を任せられるまでに成長していた。
イタミ少将が前に告げたように少女達から男の店を継いでくれると提案してきていた。
「…そうですね。嬉しい限りです」
男はティアに同意した。
イタミ少将と話した自分の夢の一つが叶うと同時に心残りが一つなくなり安堵していた。
なお、ジャヤに滞在する海賊等がティアに悪意を以て絡もうとしたら、男が気絶させるので店の前には懸賞金のついた海賊達が拘束されていたりする。
酒場はいつになく平和な光景が訪れていた。偶にある光景でもあるので店主も気にしない。
…『辻斬り』イタミ少将のように千人斬って山にして持ち帰るようなトラウマは別である。
「チェリーパイとジュース、お持ちしやした!」
店主が男とティアにそれぞれに注文の品を出した。
店が普段と違い落ち着いている上に店の前に賞金首が拘束されているが店主は気にもしていない。店主は立派なジャヤの住人であった。
「…好みが別れそうな味ですね。私はこのジュース好きですが」
男は店主から受け取った品を食べて感想を述べた。
好き嫌いが別れそうな、何とも言えない味の店であった。
「そうですかね?…あっ、私はこのパイ好きです」
ティアは男の言葉に疑問を持ちつつ、自分はジュースよりパイが美味しいと思った。
「まぁ、俺はコックじゃないんで。どちらでも良いんですがね…」
店主は男女の会話を聞き呟いた。
正直、男の方は褒めているのか貶しているのかわからなかった。
女性の方は普通に褒めてくれているようだが。
「しかし、私的な海賊行為を容認するような権利を与えるとか…」
男はティアしかいない故に愚痴を溢した。
店内にいる客は男に関わらないようにスルーしている。
店の前で拘束されている男達の二の舞になりたくなかった。
「…私のせいだったりしますか?」
ティアは魔海の主として世界会議で得た特権に関して愚痴を溢しているのを悟った。
ティアも一か月以上共にいて、男が縛られることを嫌う節があるのを察していた。
同時にティアが辞めた途端、半公認の私掠を認めるような制度を推察して言った。
「いや、そうではないです。そもそも私個人だけでなく強くなり過ぎましたし」
男はティアの懸念を否定した。
世界政府加盟国の世界会議で魔海の主がフリーハンドになるのを恐れての提案であった。
魔海の主に対して遅かれ早かれ何らかの懐柔はあった。
男としては必要ないが周囲からすれば魔海の主の無欲は恐ろしいものだった。
男と慣れ親しんだ関係の不憫なCP0のおじさんもそれに同意していた。
男としては後の七武海を彷彿とさせる特権だったので嫌なだけである。
七武海より自由度はかなり高い上に男が出した条件も飲んでくれたが。
更に言えば、七武海というと大海賊時代が確定しているような物であり嫌だった。
男はロジャーを止める気がないので多分そうなるかもしれない。
それでも改善の為に海賊を狩りまくって芽を摘んでいるつもりではあるのだが。
「…」
店主は目の前の男の素性を確信した。先日の新聞で世界会議の件は読んでいた。
客はその会話を聞いていないが、店主の目の前にいる男があの魔海の主であると察してしまった。
…魔海の主の関係者として、恐怖の女帝イタミがフラッシュバックした。
「イタミ少将は来ていません。安心を」
男は店主にだけ聞こえるように耳打ちした。
ついでに自分達のことを黙っているようにチップを多めに渡した。
「…へへ、ありがとうございます」
店主はチップで気分が幾分和らいだ。千人斬って足りないという血に飢えた辻斬りを目撃した店主は目の前の男は違うと対応を改めた。
トラウマすら忘れて即切り替えるのは、このジャヤで生き抜くコツでもあった。
「ついでに何ですけど、幾つか聞いても良いですか?」
男は店主の切り替えの早さを見てプロだと確信した。
ついでに目的の情報を持っていないか聞いてみることにした。
「へい。なんでしょう?」
店主は気前の良い客に聞き返した。
聞かれたら全部吐いてしまいそうだが、他の客にバレないようになんでもないように装った。
「評判の良いコーヒー農家と…何でコイツ海賊とかやっているんだろうって人知りませんか?」
男はジャヤでの目的であるコーヒーの仕入れ先と別件について尋ねた。
「コーヒー農家は…三つほど。海賊やっているのが不思議…ってなるとこの町でも1人くらいですかねぇ」
店主は男の問に答えた。
店主としても店をやっている以上は珈琲を仕入れているので即答えられた。
どうみても海賊向いていないのに海賊やっているのは一応いた。
この世の中では生きる為に仕方がなくやっているタイプであった。
ジャヤで人を見極める事に長けている住民からすると異端な賞金首であった。
…同時にそれが一人しかいないのがジャヤの世紀末ぶりを体現してもいた。
・世界会議(魔海の主)
七武海(仮)に魔海の主を任命することを取り上げた。
今までは平和の為に魔海に留まっていたが、あちこち動け回れるような後継が生まれたので問題になった。
権利を餌に首輪を付けた。とはいえ形だけのものではあるが。
圧倒的な個人が自由過ぎると怖い上に無欲で何考えているかわからない為。
制度そのものが侮辱ではないかと反対派もいたが、本人の同意もあり可決される。
魔海の主が世界政府の下に着くとも取れるので世界に激震が走った。
ちゃんと内容を読めば形骸化も大概な内容だとわかるが、形だけでも効力がある。
・魔海の主
七武海(仮)とか凄い嫌だが、理性で判断して合意した。
正直、犯罪さえしなければ好き勝手やれるというお墨付きを得ただけ。
世界政府の下に着いたつもりはさらさらない。世間の目もあんまり気にしていない。
・ティア
男とその関係者と完全に馴染んだ少女16歳。自衛できる程度には強い(魔海の主視点)ので連れてきやすい。
農場の少女達の方が桁外れに強いが、CPで学んだ知識や技能は互いの利になるのでお互い切磋琢磨している。
何だかんだで原作の本部中将クラスより強い(ガープ除く)上に男という自分の欠点を埋める存在がいるので隙がない。
五老星から当て馬で送り込まれたが、サラー等の狂信的愛と共鳴しているのもあり意外と大人しい。
・イタミ少将
男とティアが不在の間、遂に海軍辞める決意を固めた。
完全に男がティアとデートしているので泣いた。
だが、男により自由度の高い権限が付与され、自身も別枠で活動できると言われ考え中。
どちらにせよ自身の正義に反しない形で海賊狩りは辞めないつもり。
・五老星
イタミ少将に海軍辞めると言われ、遂に押し倒したかとガッツポーズをしそうになった。
だが、まだ押し倒してないのでガッカリした。
七武海(仮)を与えたので別枠で行動できるよと提案した。
元海軍本部少将と男が結ばれれば政府としても面子が保てるので応援している。
最悪、ティアでも良いと思っているノスタル爺と化している。