〇美食の町プッチ『マストダイ農場』奥地
魔海の主がその後継に託すための修行を開始して一年半が経過した。
新世界の番人と評され、五皇とも言う者もいる魔海の主。
男が見込んだ少女達へ3年半の間、鍛錬と実践を積ませた成果は凄まじい物となっていた。
「皆、海軍本部大将にも見劣りしない程強くなりました」
魔海の主が少女達13人の成長具合を見て言った。
少女達の二、三人で挑めばイタミ中将にも勝てると男は確信していた。
イタミ中将は今日、男の行動を察して魔海での海賊狩り等を代わってくれた。
なお、イタミ中将は日々強くなる少女達に戦士として危機感を抱いていた。
イタミ中将は男の手が空いた時、男と共にこれまでにない規模での鍛錬を行うことにした。
お互い強くなりすぎて戦闘の余波が危険になった為、場所は近隣の無人島で行われていた。
…男が気を利かせて途中から加わった少女達やティアも含めた鍛錬とはほぼ本気の殺し合いに等しいものであった。
その為、男が建てていた二年の育成計画が一年半で完了していた。
男が思うように実戦より優る経験と成長はなかった。…戦闘経験がやや偏っているので修正の必要も感じてはいたが。
故に、残り半年をどうするかに関して男は改めて少女達へ話していた。
「残り半年は強さを維持、向上する術。そして、下剋上も有り得る悪魔の実の能力等への対処法を学んでいきたいと思います」
男は少女達に更なる研鑽とビギナーズラックもあり得る悪魔の実等への対処法を叩き込むことにした。
「悪魔の実の弱点を思いつく限りで良いので…カッツェ、答えてください」
男は取り敢えず目についたカッツェに尋ねた。カッツェの得意分野は見聞色の覇気である。
範囲は流石に原作のエネルより劣るが能力無しで比較対象になる程であり、未来視は原作のカタクリ並みだと男は見積もっていた。
「見聞色の覇気での未来視、過剰な覇気を纏う、海楼石、海…」
カッツェは思いついた物を上げていった。初期の授業で学んだことであった。
男が連れて来た教師等による武器術や武術、動植物等で有効打足り得る物も加えていく。
西の海から流れて来た武術家の八衝拳は後にツィーゲが模倣して見せた。それ等も加える。
カッツェが出来ることで言えば、見聞色の覇気で先読みすればどんな能力か判別がつく。それから弱点を突けばよかった。
更に能力を打ち消す程の過剰の覇気を出せば状態異常系は無効化できると皆が知っていた。
カッツェもある程度はできていたが、不完全なので更に鍛えなければならない課題である。
海楼石は非能力者全員が仕込み武器として携帯している上に、全員が習得している魚人空手の海流一本背負い等で海に能力者を引きずり込めた。
「ありがとう。大体は合っています」
男はカッツェ達に叩き込んだ知識や経験が生かされていることを喜んだ。
だが、
「ですが…完全に能力を無効化できるかと言うと難しい」
男は悪魔の実という物の恐ろしさを改めて後継に教えることにした。
カッツェ達は身内にいる能力者であるフルーフ、レッツェル、エリーゼ、カーメルに視線をやり断言した。
「フルーフが敵にいるとなると…能力を知らない場合、厄介過ぎる」
カッツェは男の視線と意図を察した。フルーフはペトペトの実の能力者である。
フルーフは生物をペットとして操り、その潜在能力を引き出し操れた。
フルーフに首を触られた場合、耳を塞ぐ以外は本人の無力化か過剰な覇気くらいであった。
だが、過剰な覇気で無効化する前に大変屈辱的な命令されたりしたことがあった。
そうなると動揺して覇気を纏えなくなったりもした。…慣れた今では対応できるが。
「ホビホビの実の玩具化やホロホロの実のネガティブ状態等、覇気を使う意志そのものを削る能力もあります」
男は初見殺しの悪魔の実を例に挙げた。覇気に必要な意志そのものを封じられては対応が至難であった。
「また、悪魔の実の能力者が自分よりも圧倒的な覇気の持ち主の場合もです」
男は少女達より格上、四皇クラスになると覇気そのものが強すぎて耐性を貫通しかねない事実を述べた。
「詳細は伏せていましたが…私も悪魔の実の能力者なのは知っていますよね?」
男は本題に入ることにした。今日は格上の能力者が全力で能力を使用した場合、どうなるのか。
少女達全員にその体験させることにしていた。
その瞬間、闇夜が農場を覆い尽くした。見聞色の覇気ですら見取れない正しく闇であった。
その闇から段々と何か出でて来た。その存在が覇気の感覚から自分達が良く知る男であると少女達は断言できた。
今まで感じたことのない圧倒的な覇王色の覇気を纏った、闇夜の支配者たる幻想そのものが顕現した。
少女達は男が自分達に一度たりとも見せなかった完全な変身を目の当たりにしていた。
…男と長い付き合いであるイタミ中将ですら、その部分的な変身しか見たことはなかった。
そして、現在は少女達以外、その姿を目撃した者はいなかった。
見た者は敵であり確実にこの世からいなくなるような奥の手である。
魔海の主の最初にして永遠の『友』の完全な姿を後継達の前に晒していた。
少女達は異形に化ける男をその場でただただ見ていた。
だが、その目には一切の恐怖はなかった。
…少女達には自分達を救ってくれた男が自分達を認めてくれた証に見えた。
恐怖ではない涙が頬に流れたのを感じ取った。そして、同時に全員が身構えた。
これは試練であった。男と自分達がした最初の時と同じ、それを上回る漆黒の試練である。
「同格ではない格上の能力というものを見せてあげます。…全員でかかってきなさい」
男だった怪物は少女達の反応を見て、戦闘開始の合図を出した。
…世間で忌み嫌われる怪物は自ら鍛え上げた少女達の反応にやや困惑した。
想定していた魔王に立ち向かう勇者ではない。だが、全く動揺も感じられなかった。
男は少し教育を誤ったかと思いつつ、どんな理由であれ立ち向かう姿に対しての敬意は変わらなかった。
男は想定通りとは少し違う物の、自分が使える能力で少女達を仕留めることにした。
闇夜の怪物が天高く舞う。闇夜の王に次々と攻撃が襲い掛かる。
水、光、氷、炎…あらゆる手段で天まで届く一撃を各々が持つ最大を打ち込んだ。
だが、それはまるで生気を吸い取られるかのように消えて行った。
「やはり。皆、強くなった!!」
男は歓喜の声を挙げた。男が感じた全ての攻撃に意志の力が満ちていた。
攻撃を吸収した男はそれらの意志に対して、更なる敬意と共に全力で示すことにした。
「“カオス”」
闇夜の怪物、その悪夢の化身とも言うべき闇が少女達を包み込んだ。
少女達は研鑽した見聞色の覇気が通じない絶望的な差を感じつつ、武装色等で各々全力の防御を取った。
皆、これから来るであろう攻撃を避けようにも闇に飲まれて身動きが取れなくなっていた。
「“ナイトメア”」
男の声だけが闇夜に響いた。その瞬間、全員の全身に悪寒が走った。
脳そのものが生命の危機を発した。そのまま全員が本能に抗えずに意識を手放した。
…本来ならば冷たいはずの闇夜に暖かさを感じながら、少女達は溶けていった。
・魔海の主
想定より早く少女達が強くなった。だが、四皇クラスが直接来るとまだ不安だった。
イタミ中将と無人島で何でもありの鍛錬をしていたが、成長した少女達やティアも巻き込んでのサバイバルゲーム(男目線)を開始した。
結果的に成長目標が半年早くなった。
今回は初見かつ男の最大の力を使用したので少女達を数瞬で制圧できたが、経験を積まれればここまで圧倒はできない。
持ち前の覇気と能力のゴリ押しである為、ネタがバレれば少女達でも勝てなくはない。
攻撃そのものを吸収し、強くなる糞みたいな技を編み出した。
全盛期白ひげのグラグラの能力への対策である。グラグラの実は本気で世界を破壊できる糞みたいな能力であると思っている。
ヤミヤミの能力のように無力化はできないため、吸収して強くなるというインチキ技を完成させた。
なお、ちゃんと対策や攻略法は存在する。その為、何度も使用するわけにはいかない本当の意味で奥の手。
・魔海の後継達
2年の予定を半年も早くほぼ完了した。
イタミ中将を本気で超すつもりで研鑽していたら、それを悟られて全力で差を空けられそうになった。
段々女の戦いになってきたが、男が空気を読まずに鍛錬の場に投下してきた。
剣術だけでなく何でもありの戦いの経験を積んだ結果、海軍本部大将級の強さを得た。
男が真の姿とも言える能力を解放してくれたので嬉しかった。
・イタミ中将
男から奥の手を見せて貰っていない人。
…というよりも男から数回程度で攻略法を見つけてしまうと思われている。
ある意味、誰よりも信用しているからこそ見せられない。
少女達、教え子が女として敵であるとようやく気が付いた。
正直、イタミ中将が押し倒せば良いのだができない。
戦闘力でぶっちぎり少女達に手出しさせないという大変大人気ないことを目論んでいる。
自分からの告白以外なら何でもできる完璧超人。五老星は泣いて良い。