魔海の主は自分の店である『フォーザデッド2号店』を後継の少女達に任せてみることにした。
期間は交代制で一週間。勿論、その間も鍛錬は継続している。
見目麗しい少女達が作ったケーキ等が話題を呼び初日から大盛況となっている。
本来の店主であるはずの男は客から邪魔だということで追い出されていた。
ペロス君に少女達が作ったチョコケーキであるオペラを送りつつ、自分の扱いが酷くないかと手紙を書いた。
ペロス君からはオペラの感謝と『それは贅沢な悩みだ』と返事を貰った。
男もそれはそうだなと納得して残りの期間もそのまま任せてみる事にした。
それ故に男は店の閉店時間まで外海への海賊狩りや鍛錬、寄稿や勉強等に費やしていた。
要するに魔海の主は割と暇であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
〇美食の町プッチ『カフェ・アビス』店内ラウンジ
男は少女達が作ったオペラを食べつつ、コーヒーを飲んでいた。
なお、向かい側には当然のようにイタミ中将がいる。
カフェ・アビスも男が一応経営している店であり、オーナーであった。
普段からバリスタや店員達に任せているので深くは関与していない。
ジャヤコーヒーの販売や密談用の地下室などもある為、関与していないわけでもないが。
「『世界の破壊者』とは随分な通り名だ」
男は世界経済新聞と同封されていた賞金首の手配書を見て言った。
バーンディ・ワールドという海賊の手配書は以前から知っていたが、更新額に目が行った。
「ワールド海賊団船長バーンディ・ワールド、懸賞金が5億ベリーに更新された海賊ですね」
イタミ中将は男から分けて貰ったオペラを食しつつも男の話を補足した。
ワールドはその脅威から海軍で話題になっていた。
触れた物の大きさや自身のスピードを百倍に出来るモアモアの実の能力者であった。
遮る物は超巨大潜水艦グローセアデ号にある巨大砲台で島ごと吹き飛ばすこともあった。
「2億から飛んで5億。もう既に色々暴れまわっているようで」
3億以上の賞金首は余程暴れないと更新されないことを思い出しつつ男は言った。
島一つ消し飛ばすのは脅威であるし、現れたら捕まえたいとは思っていた。
だが、目の前に現れないことから行動原理その他を推測し、余程がない限り放置する予定だ。
「潜水艦で移動するので海軍としても後手に回る厄介な海賊として有名ですよ」
イタミ中将は男の内心を知らないのもあり説明を続ける。
他の客にも聞こえるかもしれないが、機密でもないので問題はなかった。
「…海軍の見立てでは、ワールドはいずれ魔海で暴れるのではと予想しています」
イタミ中将は男の障害になるのではと懸念を示した。
海軍の見立てで機密に該当するので声を抑え、他の客に聞こえないように注意していた。
だが、
「来ませんよ。多分」
男はイタミ中将に気にしないように言った。
この返事だと機密には触れていないのでセーフであった。他の客も二人の会話に怪訝な雰囲気になったりしない。
魔海の主とイタミ中将の世間話程度としか思っていなかった。
「…どうしてか尋ねても良いですか?」
イタミ中将は男の意見と海軍の見立てが大分ズレているのを察して尋ねた。
後継の少女達を信頼しているのもあるだろうが、根本的に男がワールドに関しては心配していない理由が知りたかった。
「副船長のビョージャックが止めるでしようし…何よりワールドの行動原理を海軍は間違えています」
男はイタミ中将に仕事した感じになれば良いなと思いつつ言い切った。
正直、男が調べた範囲ではワールドの兄である参謀役のビョージャックが弟との仲が良好な限りは計画の障害足り得ない。
…最も、世界政府には最悪の海賊だろうことは間違いないので答えるつもりであった。
「聞いても良いですか。私、海軍将校なので」
イタミ中将は男が説明する気があると察して続きを求めた。
男の推理や考えだけでも海軍としては値千金の価値があった。
厄介な能力者の攻略法や不穏な事を企てている海賊等をイタミ中将に男は語っていた。
他の四つの海で海軍がイタミ中将伝手に入手した推理で解決した事件が数多く存在した。
男の断片的な情報から推理を構築する頭脳は間違いなく世界最高峰であった。
その為、五老星は男が空白の百年に興味を示さないか危惧していた。
五老星は以前CP0を使い男の歴史への興味を調査させたことがあった。
基本的に独学でできる範囲で全て取り組んでいるが特出して歴史に興味があるわけではないと結論が出た。
古代の食と医学に関する歴史には興味を示している程度であり、五老星は安堵していた。
そんな魔海の主はイタミ中将に世間話をする感覚で推理を垂れ流していた。
「巨大砲台で威嚇し、無用な争いは避けつつ潜水艦で自由に航海するのが彼等の目的です」
男はワールド海賊団の気狂い並みの行動から推理した行動原理をイタミ中将に語った。
ワールド海賊団が目の前に現れたら当然のように魔海の主と戦闘になる。
しかし、偶然でない限りそれは起きないと男はほぼ確信していた。
「…はっ?あの、ワールドが?」
イタミ中将は男に聞き返した。
根っからの海軍所属ではなくなったのもあり、その場で否定するようなことはしなかった。
だが、海軍将校として自分が知る海賊ワールドの印象とはあまりにも違い過ぎた。
「海賊だから邪魔な海軍は倒すし、邪魔する世界政府も同様」
男はイタミ中将に淡々と説明した。
偶発的な遭遇での規模が大きいが、世界政府を邪魔だと考えているので戦闘になるだけであると言い切った。
そして、
「魔海の主は一応治安維持が行動原理ですので敵対する理由が現在はありません」
男はイタミ中将に断言した。
ワールドは、少なくとも海賊団の総意としては魔海の主と敵対する理由がなかった。
「…会ったこともないのに断言しますね」
イタミ中将は男の断言にやや思うところがあり、一応苦言を呈した。
だが、海軍や世界政府でなければ海賊を見逃すこともあると海軍中将として知っていた。
「新世界に入る前にここを通れたはずなのに暴れていないでしょう?」
男はイタミ中将に証拠を挙げた。
ワールド海賊団は魔海を通っても良いはずなのに敵対行動を取っていない。
ウォーターセブン等から魔の三角地帯へ行き、シャボンディ諸島でコーティングして魚人島へが通常の海賊が通る新世界への航路だった。
それ以外もあるにはあるが、大多数の海賊にとってこの航路が安全だった。
それを魔海という海賊の死地にした故、魔海の主は恐れられていた。
余程の外道をしていなければ通れるが、それ以外は絶死絶命に等しい海路だ。
「後、潜水艦で移動されるとこちらも把握が難しいので捕まえるのも困難過ぎる」
男はため息を吐いて言った。
高速船クルースニクに備え付けたソナーに引っかかりでもすれば対処のしようもあるが、それでもなお逃げられる可能性が高かった。
男は海に潜れるわけではない。潜水艦は製造したが使う機会は現在はほぼない。
潜水艦を使うにしても残り半年の後継達の鍛錬が終わってからだった。
更に言えば、ヒエヒエの実の能力者でもない男は潜水艦に届くまで海を凍らせられるわけではなかった。
現にロジャーとの決闘では氷が割れて海水が湧き出たりもした。
「そうですよね。見逃す理由もないですね貴方的には」
イタミ中将は男がワールドと遭遇したら戦う気があると知り、ホッとした。
イタミ中将は目の前の男が戦う気がなく、男にとって問題ある場合には報告しないつもりであった。
「はい。危険な存在なのは変わりないのでキチンと戦いますよ」
男は不良海兵の内心を汲み取って、報告して問題ないと伝えた。
こういう適当な会話を報告するだけでイタミ中将は十分以上に仕事をしたことになると男も理解していた。
男としても島を消し飛ばせるワールドの存在は危険だった。
ワールド海賊団と戦う機会があれば容赦する気はなかった。
潜水艦で移動するのでどこにいるかわからない為、本当にただ動かないだけである。
・イタミ中将
魔海の主の監視(ほぼ意味無)、発見したら海賊狩り、定期報告が主な仕事。
要するにほぼ自由に動ける自由人である。
魔海の主から借りた高速船クルースニクで魔海以外でも圧倒的な成果は出すので海軍の英雄と扱われるくらいには働いている。
魔海の主からもたらされる推測や推理を報告するだけでも仕事としてカウントされる。
魔海の主は、四つの海等での事件やその海賊への打開策や解決法を世間話のように垂れ流すので大変重宝されている。
イタミ中将が特別扱いされる理由の一つでもある。
世間話をするだけでもたらされる情報は下手なCPよりも重要な情報であり、海軍等で役立っている。
・魔海の主
本当に世間話程度の感覚で安楽椅子探偵をやっている男。
あらゆる分野に精通しているのもあり、断片的な情報のみで諜報員よりも圧倒的な分析や解析が熟せる。
実は空白の百年にそこそこ興味はあるが、リスクとリターンが見合わないので避けている。
イタミ少尉の時から世間話のついでに世界中の事件の真相を推理して話している。
自分に利する事件等の真相しか話さない。興味を持つとヤバい類になりそうなことは絶対言わない。
・五老星
魔海の主の戦闘力だけでなく頭脳も高く評価している。
並みのCPよりも圧倒的な分析と解析能力があるため一時期は警戒もしていた。
だが、イタミ中将以外にほぼ話さないで自分の心に留めていることが判明し放置している。
男が空白の百年に興味がないかだけは念入りに調査した。
オハラ発行の月刊誌等を購読していたり、ユーカリ文字等のマイナーな古代語を読める可能性はあるがポーネグリフだけは避けていると断言できるので安心している。
正直、イタミ中将と結婚でもして政府と敵対しないことだけが望み。
確かに危険性はあるが有益性が遥かに上回っているので、今日も恋愛シュミレーションゲームを五人で相談してる。