拝啓、天国にひょっとしたらいると思われる今世の両親へ。
私は日頃の行いが良いため、海軍のイタミ少尉に美食の町プッチへ護送して貰いました。
私は涎を溢しそうな淑女の為に店に押し掛け店の暖簾を懸けた勝負に見事勝ちました。
今では私が店の主人となり、元主人は弟子として扱き使っております。
最近はアーモンドの入った生地にコーヒー風味のシロップを染みこませた生地を何層にも重ねたオペラというチョコレートケーキを作成販売しております。
無論、お世話になった方々を忘れることなく、偶に暴れる海賊を鎮圧しては報告ついでに届けています。大体、週一くらいのペースで。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
海軍本部第8支部(G-8)
私の名はイタミ。二刀流の女海兵だ。
自分で言うのも何だが十代にして支部から見込まれ引き抜かれた海軍将校である。
東の海から本部への栄転は珍しいらしく、同じ海兵として誇らしいと言われた程だ。
世界で最も弱い海。そんな風に蔑まれることもある平和の象徴の海。
だが、私は文字通り格が違う環境に身を置くことで日々新鮮な気分で職務に励んでいる。
励んでいるのだが…。
「また来たのか…」
私はこのG-8に来て唯一後悔している職務に当たろうとしていた。
就寝前の苛立ちを隠し、無駄とわかりつつも最低限の身支度を整え真っ直ぐ歩く。
背面に「正義」と書かれた白いコートを羽織ってなるべく悠々と歩いている。
…そのつもりなのだが、通り道の男性海兵が引きつった表情で敬礼をしているのがわかる。
一応、将校で支部内でもそこそこ偉いのだが、やや心外に感じなくもない。
息を吐くのも無駄なのでその勢いで海賊引き渡し所の扉を勢いよく開けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私のイラつく原因、それは
「ご機嫌用。イタミ少尉、最近ストレスでも感じてらっしゃいますか?
先ほどあなたとすれ違った海兵さんがあなたのことを怖がっていましたよ」
この男の戯言である。否、存在そのものだ。
この海軍基地に場違いな胸当てエプロンを纏った…否、この男の本職ではあっているのだが。
「また、街で無銭飲食していた海賊です。懸賞金3500万ベリーの食い飽かしデーポ」
チャイナドレスを着た肥満体の男海賊が虚ろな目でぐったりしている。
エプロンのまま海賊の懸賞金と異名を淡々と説明する男。
…この男が連行してきた海賊や犯罪者は全員虚ろな表情で影を異様に怖がるようになる。
そして、犯してきた悪行を自供する代わりに自分を牢屋から出さないように懇願するのだ。
更に、エプロン姿の男が後ろ指刺した先には…
「また、海賊船ごと持って来たんですか!!」
私は思わず叫んだ。海賊の船を解体するのは資源として再利用できるから良い。
だが、週一回は多すぎる。私達にこの船をどうしろというのだ!
最近では余所の資材不足の支部に配布することを検討しているとローブスター中将から直々にお言葉をいただいた。
要するにお前の担当だから何とかしろという意味である。
「良いじゃないですか。資材も略奪品もほぼいらないので全部収めているわけですし」
目の前の男はしれっと私の心からの怒声を無視して言い切った。
…実際、略奪品や装備で渡すはずの懸賞金の倍以上は政府に渡っているのが余計に腹が立つ。
「これもイタミ少尉があの店を乗っ取れとのアドバイスのお陰、故に本当は懸賞金もいらないんですけどね」
エプロン姿の男は私が言っていないでっち上げの恩をいけしゃあしゃあと語る。
…美食の町プッチに降ろした私が愚かだったのだろうか。
だが、この男は過去に戻っても同じことを別の形でするだけのような気がする。
「今や私は美食の街プッチを代表するパティシエですよ。アハハハハ!!」
自分の言葉に大爆笑している目の前の男を牢屋にぶち込みたい。
…だが、牢屋にぶち込むともっと酷いことになるのでどうしようもない事実に私は肩を震わせるしかなかった。
この男は美食の町プッチの英雄と呼ばれているのだ。…まだ要監視対象の癖に。
・馬鹿
美食の街プッチで降ろされて速効で店を合法的に乗っ取った男。
海軍将校がいる前で犯罪等しないと宣う野郎。
腕は超一流なのが性質が悪い。事実、こいつの乗っ取った元店主は喜んで弟子入りしている。
月一の報告で済ませる予定だったが、想定外に犯罪者が多く面倒臭いのでナバロンに直送するようになった。
・イタミ少尉
東の海で僅か10代で本部に栄転した実力者。
本人の言う通り二刀流の剣士。原作東の海編のゾロくらいの実力。
東の海ではほぼ敵なしだったが、本部では格の違う環境でメキメキ強くなっていた。
甘い物に目がなく、馬鹿に菓子で釣られたり利用されたりしている。
なお、ローブスター中将に馬鹿に関しては丸投げされた。
〇美食の町プッチ
原作では海列車で繋がれている町。
美食の町だが、原作前なので船で来ないといけない。
その関係から荒くれものの客が良くやってくる。
海賊も蔓延り始め市長が打つ手を諦めかけたその時、メシアがやってきた。