爆発オチなんてサイテー!   作:kohet(旧名コヘヘ)

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正義の軍隊

 

美食の町プッチ。そこはグランドラインの中でも美味なる食文化と旺盛なる食への探求心に満ち溢れた町である。

場所は春の女王の町セント・ポプラからやや離れたところにある島にある。

司法の島エニエスロビーの近くにある他の三島に比べてやや外れに位置している。

海軍本部第8支部からも微妙に近くない距離にあり中々手が届かない。

その為か近年ロックス海賊団台頭に伴い、他の三島に比べて治安が悪化しつつあった。

だが…。

 

「人々が食事で楽しんでいる中で暴れようとは、些か度が過ぎる」

パティシエの長を示す背の高い白帽子を被った男。

その男は町で暴れていたとある海賊を片手で胸倉を持ち上げて言った。

 

「す、すげぇ…」

市民からこの町のパティシエの最高峰と絶賛される男への感嘆の声が漏れる。

それも無理はなかった。圧倒的なまでの実力差もそうだが、それは市民達も知っていた。

だが、今回はそれだけじゃない。パティシエ、プッチの英雄と呼ばれる男は海賊の胸倉をつかんだ手が燃えていた。

文字通り、手に火が付いている。だが、プッチの英雄は火をつけたままその手を離さない。

 

「な、何故、パティシエ風情が…」

持ち上げられた海賊がかすれた声を挙げる。キノコそのものとも言える茶色の格好をした海賊だった。

その海賊は胞子のリンギ。懸賞金1億ベリーの大物海賊であった。

そして、一国を滅ぼしたと言われる海賊でもあった。

 

「ノコノコの実の能力者…お前の弱点は既に知っている」

そう言ってパティシエは更に火を伴った手で強く首を締めあげる。

その目はいつも以上に真剣であり、周囲の市民も息を飲む程の剣幕だった。

 

「グェ…」

リンギは潰れた蛙のような声をあげて気絶した。

いつもならばこの後の歓声と共に優雅な礼をするプッチの英雄が見られるはずだった。

 

だが、

「…誰か、海軍を今すぐ呼んでくれ!」

パティシエはいつもとは違い市民に向かって呼びかけた。

それはこれまでで初めてのことだった。いつもならばプッチの英雄は海賊船ごと自分で海軍へ連行しに行く。

 

ふと、目の前の男の手を観衆は見つめていた。至高の料理人の燃えていた手を心配してのことだった。

しかし、プッチの英雄の手に燃えた火は既に鎮火していた。

パティシエの最も大切な手に火傷は一切なかった。

 

「海楼石の手錠を大至急手配するようにも。…こいつは悪魔の実の能力者だ!!」

パティシエは目の前の海賊が海の秘宝、悪魔の実の能力者であると宣言した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

応援要請は全速力でやってきた。海軍本部第8支部ドミニク大佐。

肌黒い3mの背丈が特徴の海兵である。

彼は悪魔の実の能力者との交戦経験が豊富な為選ばれた。

共に来た海兵達も対悪魔の実の精鋭部隊であった。

 

それとやや場違いながら、別の理由で行かされたイタミ大尉の姿もあった。

悪行を続けるロックス海賊団に繋がる海賊を捕縛したことから昨月、少尉から大尉へ昇格した。

なお、同時期に監査対象から外れたプッチの英雄の窓口担当でもある。

ローブスター中将からこれだけはと押し付けられている未だ10代の女海兵だ。

 

そんな彼等がやってきて早々目にしたものは通報されたと思われる海賊団の一味が纏めて拘束された光景。

そしてその海賊団の船長『胞子のリンギ』に火を近づけたり少しだけ離したりしていたぶっている男の姿があった。

 

「あちぃ!…あちぃ!!」

リンギはそう言って必死で逃げようとするがプッチの英雄はリンギから手を離さない。

 

「何しているんですか!?」

イタミ大尉はその光景に思わず声を出す。

誰がどうみても男がリンギを痛めつけて楽しんでいるようにしか見えなかった。

 

だが、

「それで良い。…寧ろ、焼き殺さないで済んでいるのに驚きだ」

ドミニク大佐はイタミ大尉を制するようにして言った。

 

「どうも、話が早くて助かります。…イタミ大尉!早く海楼石の手錠を!!」

プッチのパティシエはドミニク大佐とその部隊に感謝の言葉とイタミ大尉に無茶ぶりを叫んだ。

 

「…え、えぇ!」

イタミ大尉は目の前の光景に気取られるも慌てて手錠を出した。

だが、それは海楼石ではなく普通の手錠だった。

 

「…彼女が持っていないのをわかって言っていない?」

ドミニク大佐はそう言って二人のやり取りを呆れつつ胞子のリンギに海楼石の手錠を嵌めた。

 

「いえ、そんなことは」

プッチの英雄と呼ばれる男はしれっと交わして言い切った。

 

「また、私を馬鹿に…!」

イタミ大尉はガチでキレる五秒前の状態である。

 

しかし、

「この男、ノコノコの実の胞子人間です。下手したらこの町の市民全てが死んでいました。

 私は『聞こえて』いたのでわかりますが、詳細不明の組織的テロです。背景を洗ってください」

男はリンギを指刺して真面目な顔でドミニク大佐達海兵へ言い切った。

 

「何故、それができるとわかるのか…お話を詳しく聞かせて貰えるかな」

ドミニク大佐はそう言ってプッチの英雄に支部までの同行を依頼した。

ドミニク大佐は目の前の男が見聞色の覇気の使い手だと知っていた。

だが、ノコノコの実を最大限の悪意でできることを知っているとなるとまた話は別であった。

 

「構いません。既に自分の店や市長には私が不在になるであろうことを報告済みです、ただ…」

男はドミニク大佐の依頼を素直に受け入れた。だが、やや口を濁した。

 

「こちらも構わないよ。お前達!」

ドミニク大佐は言外の意味するところを悟り、自分の部下達へ声をかけた。

 

「「「ハッ!!!」」」

G-8の精鋭達はドミニク大佐の言外の命令を理解した。

 

「何としてでも市民を守れ。再度敵対組織の行動があれば付近で待機している部隊の指揮官に従え」

ドミニク大佐は自身の部下達に背を向けて言い切った。

 

それはもし、またリンギ並みの実力者が来れば部下達にここプッチまで援軍が到着するまで時間を稼ぐ為に死ねというのも同義だった。

 

そんな命令を聞いた海兵達は、

「「「正義の名の下に最後まで市民を守ります!!」」」

自らが犠牲になってでも市民を守ることを彼等なりに復唱した。

 

「…頼もしい」

プッチの英雄と呼ばれる男は心の底から彼等に敬意を評して呟いた。

 

そんな染みついた空気の中、ドミニク大佐はふと思い出した様な反応をした。

「あ、イタミ大尉は私と部下達の一部と彼に着いて来てね。こいつらを連れて行くのに」

ドミニク大佐は自分が職務以外で面倒に巻き込まれるのは嫌だった。

 

「…ハッ!」

イタミ大尉はドミニク大佐の内心を理解した上で敬礼をもって命令を受諾した。

奇しくも当の男のみ不思議な様子で首を傾げていた。自分の普段の言動や行動を振り返らないのだろう。

イタミ大尉はそれを確信した。…彼女は思わず目の前の男を殴りたくなった。

 




・プッチの英雄
海軍からもはや監視いらねぇとなった犯罪者の敵。
捕まえた犯罪者が軒並み謎の錯乱を発症するので悪魔の実の能力者ではと疑われた。だが、誰も使う素振りを見たことがない。
そうした犯罪者の錯乱以外は純粋に強い以外は特に不振な行動がない。
時には顧客を介して手に入れた様々な本を読んでいるが、それは最早ただの趣味としか言えないので、海軍もスルーしている。
なお、プッチに滞在してから一年以上経過している。
乗っ取った店の元店主である弟子に免許皆伝として店を返した。
懸賞金の2/3は孤児院等に寄付して、余りの金で趣味の読書と町から少し離れた場所に弟子の店の名前で二号店を経営している。
なお、どちらが本家かは良く町の話題になる。
秘密基地を作るのがちょっとした夢だったと語るが詳細は不明。

・ドミニク大佐とその部下達
海軍本部第8支部大佐。百連のドミニク。
悪魔の実の能力なぞ関係ないと言わんばかりの目にも止まらぬ百連パンチを繰り出す猛者。
その拳は大型の海王類をも殴り殺す。
その部下達は海楼石の手錠を使った捕縛術や海楼石の手錠で殴る特殊な拳法をドミニク大佐から叩き込まれている。

・イタミ大尉
監視役が終わったはずなのに面倒臭い某英雄の対応を丸投げされる女海兵。
長い黒髪が似合う美貌を持ち始めたことで新兵からは一目惚れされることが多い。
実態を見て『あっ、はい』となる模様。
大尉に昇進し、更に強くなっているがまだまだ強くなれる才能を有している。

・胞子のリンギ
懸賞金1億ベリーの賞金首。ノコノコの実の胞子人間。
悪魔の実はONE PIECE THE MOVIE エピソードオブチョッパーを参照。
映画ではワポルの兄ムッシュールがこの実の能力者である。
胞子による分身や地面から茸を生やし拘束したり様々なことができるが、一番最悪なのは国一つ滅ぼせる胞子爆弾である。
小説版ではあのイッシー20ですら研究し続けてようやく希少な植物等を使った解毒剤を少量しか作れなかった。
弱点は火であり、ムッシュールは火の国キラウエアで幽閉されていた。
前の実の能力者という設定であり、ムッシュールさながらの実力者ではあった。
だが、弱点を知られていてかつ純粋な実力差から即対応され捕縛された。
海軍的にはリンギを殺害ではなく捕縛できたのは奇跡とも言える為、同行させられることになった。
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