〇ウォーターセブン近郊海域
ゆったりとした海上都市ウォーターセブン。
毎年アクア・ラグナという高潮が襲うが、それに耐えられる造船業が盛んな町である。
そこに新世界からとある大物海賊がやってきていた。
コツコツとヒールの音を鳴らして悠々と歩く女海賊。
船に乗っている勇猛で名を馳せた海賊達が傅く道を歩いていく。
「ここらが、うちの雑魚共が次々と捕まっている海域だったかんね?」
歴戦の顔とも言うべき傷跡を残しつつ端麗な顔立ち。
その女海賊は赤を基調としたコートを身に纏い、側に控える側近に尋ねた。
「へい、もう少し先だったと思うのかい」
5mの長身の側近がそれに答える。正確にはまだ先だがこの辺りだと調べていた。
「嫌だね、雑魚狩りで嘗められんのは…」
女海賊ノベルは露骨に嫌そうな顔をする。
この二年で計画が狂いっぱなし。使い捨ての雑魚とはいえ楽園から補充しにくくなっていた。
爆殺のノベル懸賞金7億8千万ベリー。新世界でも名を馳せた大物海賊であった。
今は一応ロックス海賊団に所属している。
「しかし、ノベル様。本当に勝手にこちらに来て良かったんですかい?」
側近がロックス海賊団から勝手に抜け出してきたことに改めて疑問を投げかける。
…もう作戦中止で本命に移るとロックスから言われたばかりだった。
「いいんだよ、どうせあいつはあたしゃらのことなんて考えてやいやしない」
ノベルはロックス海賊団が糞の集まりだと理解している。
故に自分が何をしようが気にはしないと確信している。
最悪、ノベルが死のうが気にしないで本命を進めるだろう。ノベルは別に死ぬ気はないが。
「とはいえ、それはお互い様。あたしゃらにも言えることだけんど」
肩をすくめるようにしてノベルは失笑した。もうロックスがどうなろうが正直どうでも良い。
「まぁ、そうですかい」
側近はノベルの側でロックス海賊団の仲間殺しを見過ぎていたので同じく失笑して返す。
周囲のノベルについてきた馬鹿共も同じ思いなのか、全員失笑する変な空気に包まれた。
…ノベル的にはこれからの大花火に付き合う連中がしみったれているのは嫌なので空気を変えることにした。
「…あんたのその語尾。あたしゃらには疑問なのか、普通に話しているのかわかりづらいよ」
ノベルは話に詰まると側近へ言う愚痴を溢した。
この側近、『~かい』と語尾が疑問なのかそうでないのかわかりづらいのだ。
だが、
「ノベル様の主語も複数系なのか単数形なのかわからないですかい」
側近もノベルの愚痴をいつもの軽口で返す。
場の空気が和んだ。いつもの調子に戻ったことを全員が共有する。
「…学があるのに海賊とはねぇ」
ノベルは世界の不条理に思わず呟く。側近は極めて優秀な奴だ。
ここにいる連中全員が自分の好みではない。
だが、自分自身常日頃から感じて来た悩みを共有する仲間達だった。
ノベル達は世界を変えるというロックスの思想に惹かれた。
しかし、やることは大義も糞もない大量殺戮とも言うべきものだった。
自分達はもうついていけないが、最後の一発は悪党らしく派手にやる。
「まぁ、これだけしかできなかっただけですかい」
側近は軽口で返す。自分の人生は非加盟国に生まれ、これしかできなかった。
ノベルという覇者にも変えられぬ不条理を変えられそうな男ロックスはただの殺戮者の王だった。
「あたしゃらも同じだね。…あの島で良いか」
ノベルは最後の義理を返す大殺戮を簡単に決めた。
ロックス海賊団の仕事が終わったら…仲間の奪還を名目にインペルダウンまで行き攻め滅ぼす。
「ノベル様、『アレ』をここでやるんですかい?」
側近は雑魚達が呼ぶ始まりの悪夢、美食の町プッチまで行く予定をノベルが変更したのだと悟る。
ノベルはプッチの英雄だかはどうでも良く、インペルダウン襲撃が遅れるのを避けたいのだと確信した。
「そうさよ。自然系悪魔の能力ニトニトの実。その覚醒を雑魚狩り共に魅せつけてやるんだよ!!」
ノベルはそう言って、海をある物質に変質させて自分の支配下に組み込んだ。
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ウォーターセブン近海にアクア・ラグナ級の津波が襲い掛かる。
それを遠方からノベル達は観察していた。
やりようのない想いが沈黙となる。だが、これでロックスへ義理は返した。
後は、インペルダウン…世界政府へ宣戦布告を勝手にするだけだ。
「ただの津波だと思って逃げてますかい」
側近は双眼鏡でウォーターセブンの状況を報告する。
それは津波ではない。触れたら爆殺。どこの誰にも止められない。
側近はノベルを止めるべきだったかと内心後悔していた。
だが、
「…何か来るよ」
ノベルは想定外の『化け物』の気配を感じ取った。
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〇???視点
「ニトログリセリンの自然系能力者…この津波を通したらウォーターセブンはおろか全てが終わる」
大津波のど真ん中を陣取った。海で溺れたら死ぬ男は淡々とこの現象を観察していた。
三年間、男はこの海の平穏を守り続けた。それが一瞬で消え失せる。
「新世界の誰だか知らんが!俺『達』の平穏を壊すんじゃねぇ!!」
男は津波の先にいる誰かに向かって叫んだ。
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〇ノベル視点
覇王色の覇気が船全体を包み込む。これだけの距離でこの威圧感。
…倒れる者も中にはいた。死ぬ覚悟で着いてきている猛者たちも。
だが、
「ノベル様!?」
側近はノベルに思わず叫ぶ。
それは覇王色の覇気のことを言っているわけではない。
間違いなく新世界でも上位層に入る存在が単騎でこちらを攻めて来る。
しかも、この包み込む闇と影は…
「ああ、わかるよ」
ノベルは側近に生返事で返す。そして、その悪魔の実の正体も悟った。
「あれは…バットバットの実だ」
ノベルは動物系悪魔の実バットバットの実、それも幻獣種だと確信した。
自分が知っている種類ではないかもしれない。
だが、この闇と影の入り混じった光景をノベルは忘れるわけもない。
「しかし…ニトニトの大津波を氷漬けにするのは一体どうなっているんだい?」
ノベルはそう呟いた。作り出したニトロの大津波は氷漬けになっていた。
「…そんな能力は幻獣種にはなかったよ」
飛べる、闇と影の一部を捻じ曲げ、催眠も可能な理不尽さ。
そして何より…ある意味で永遠の命を手に入れられる。
ノベルは動物系の身体能力に加えて超人系の能力も使えるような理不尽の権化を思い出す。
ルーキー時代に痛い目にあった極悪非道の能力。だが、そいつは既に死んでいる。
それが再度、目の前に再度立ちはだかっていた。
…しかし、前とは違う形で。敵は正義の味方のようにノベル達に立ち向かってきている。
「どちらにせよ厄介な能力ですかい」
側近はノベルと共に受けた恐ろしい悪魔の力を思い出しながらも言葉を紡ぐ。
そして、
「あいつ!こっちに来ますかい!?」
凍らせた津波を遠方からの衝撃波で壊した『敵』が爆風に乗って飛んでくる。
見えないであろうこちらへただひたすら真っ直ぐに。
「六式使いの覇気使い?CP0の誰かだんね?」
ノベルは六式のような体術と覇気を見て取って呟いた。
軽く見ただけで推測した有り得そうな所属だが、六式にしては随分変則的と言えた。
…独学で六式を模倣して自己改良しているというのが今のノベルの結論だ。
「…CP0が態々表に出てきますかい?」
側近はCP0があんな風な覇気を出さないと直感で感じ取った。
あの覇気の主は怒っている。CP0ならば島の一つ二つ滅んでも任務を遂行できれば良い。
…自分達を奇襲した方が効率的だったはずであるのに津波を止めて手札を晒した。
だが、どちらにせよやることは変わらない。それは全員が共有した。…迫りくる敵は化け物だ。
「野郎共、あいつに触られんな!命を吸い取られるぞ!!」
ノベルは間もなく来る敵の一番ヤバい能力を端的に叫んだ。
そして、男が勢いそのままノベルの船の乗組員数人を吹き飛ばして着陸した。
「初めまして、皆々様。そして、久しぶりだな私の友よ」
男が挨拶と誰かに向けて呟いた。
その姿は蝙蝠のようでありそして違った。
目元を覆い隠す黒い何か、鋭い牙と爪、そして飛んできた漆黒のマントのような羽があった。
「…友?」
側近は何のことかわからずに言葉を漏らす。
目の前の男はただ一人だ。…友軍がいたのだろうか?
「独りぼっちの怪物がこの船になんのようだい?」
ノベルは男が単騎で乗り込んできたと確信した。
故に友というのは抽象的な何かで戦闘に意味があるものではないと看破した。
「私にも友達がいるんですよ。レディ」
男はノベルの方を見返して言った。羽等蝙蝠に見える部分を元に戻した。
どうやら自身へ向ける嫌悪を感じ取り、敵である自分に合わせて自身の戦闘力が下がらない程度に動物部分を戻したらしい。
…ノベルは目の前の男が忌まわしい敵でなければ自分の好みのタイプだと感じた。
同時に凶悪なバットバットの実を前任者より遥かに使いこなしていると悟った。
「そうかい…じゃああたしゃらには言葉はいらないね!!」
ノベルは自身のホームグラウンドに来た敵を迎撃することにした。
ニトニトの実をフル活用しても壊れない大船に来た闇ごと爆殺の手を使った。
・爆殺のノベル
懸賞金7億8千万ベリーの大物。原作だと倍以上の額になる怪物。
四皇で言うとマムのカタクリ、カイドウのキングクラス。
見た目と年が合わないと有名な女海賊。
多めに見ても20代だが懸賞金をかけられた時から換算すると最低50代にはなる。
自分達に立ちふさがった謎の人物の先代の悪魔の実の能力者は嫌という程知っている。
故に、男の使う能力が異質なのに勘付いた。
自然系悪魔の実ニトニトの実の能力者。ワンピースプレミアムショー2015参照
同作中ではビュルストが能力者だった。なお、ナミ狙いの科学者。
映画で狙われることが多いナミを計算で導き出したという理由で狙う変態。
自然系?と疑問に思うかもしれないが公式でそう扱われている。
自然系特有の大規模な攻撃範囲が覇気無しの攻撃を受け流せるのが特徴。
ノベルはニトニトの実をフル活用できる自身の船を所有しており、グラグラの実でも壊すことが至難な金属製で出来ている。
・ノベルの側近他
ノベルの下に集まった非加盟国でまともな教育も受けられなかった行く当てのない孤児達。
同様の境遇だったノベルの下で教育を受ける機会を得るもノベルから離れず死ぬまでついて来る覚悟の持ち主達。
ロックス海賊団の題目に惹かれやって来たノベルの失望を全員同情している。
ケジメとして作戦を遂行し、島一つ消し飛ばすというノベルを止めるに止められなかった。
・???
自分の手札が大分割れていることを悟るが、戦う前からメンタルダメージが入っているノベル達も悟る。
所行自体は激昂しつつ、何となく彼らの境遇を察した。
現体制で二年以上戦ってきたが、今回は海軍に連絡入れる暇もなかった。
それくらいヤバい強さの連中なので仕方がないが、人目にさらされるのも承知で悪魔の実の能力を解放して戦うことにした。
・バットバットの実
詳細はゲーム媒体を。ただし、???は自身の前世でより発想の幅を広げている。
基礎能力でノベルが回想した能力が手に入る。食したばかりで凄まじい強さを発揮する悪魔の実。???の見聞色で奪い取れる物も幅が広くなっている。
・『水の都の決戦』
偶然にもロックス海賊団とは無関係に発生した為、消し去れなかった後に伝説となる戦い。
戦略クラスの実力者である『爆殺のノベル』対『海軍の』名もなき英雄との戦いとして刻まれることになる。
女海賊ノベルに関しては兎も角、海軍側の存在は一切不明の為、後世では裏に何かあるのではと勘繰る者も多い。