死にたくないので映画の展開を変える事にしました。
歌声が聴こえる。
「確かに凄いわねぇ……ウタちゃん? だっけ。あら、どうしたの? 顔が真っ青だけど」
最初に白状しておこう。僕は転生者だ。ここエレジアに生まれて母親と父親と3人で平穏に暮らしていただの一般市民。
この歌を聴いて全て思い出しただけのただの一般市民。
まずい。何がまずいってこの後すぐ国が滅ぶ。この素晴らしい歌声に魅せられたトットムジカがやってくる。
結果は国民全滅だ。
父さんも母さんも僕も、全員消し飛ぶ。
かの赤髪海賊団が相手をして尚国が滅ぶなんてどうあがいてもバケモノ。有り得ない。
「ちょっと行ってくる!」
「え? 何処いくのよ!」
これはただの賭けだ。
そもそも式典は警備が厳重で、僕なんて一般市民が入り込める場所じゃない。今外にいる人であそこに入れそうな人なんてシャンクスしかいない。
シャンクスが式典に参加していたら全て詰むが、あの式典に赤髪海賊団及びシャンクスが参加しているとは思えない。国賓が招かれるあの場所にいるよりもこの国中に響くウタの歌声を肴に宴でもしていそう。
幸いにも我が家は港に近い。確か港の外れに位置していた筈だ。
ああ、騒いでる声が聞こえてくる。
シャンクスは、赤髪海賊団は僕の話を聞いてくれるだろうか。
……いや、聞いてもらうしかない。
聞いてもらわなければ全てが不幸になる。
エレジアの国民も、赤髪海賊団も、そしてウタも。
止めよう。止められるのなら止めなきゃ。
何より、トットムジカに殺されたくなんてない。
その結果、みんなが救われるのならその方がいいだろう?
「聞いてください!!! 赤髪海賊団!! 今すぐにウタを連れて国を出てください!! 理由は説明できませんが、このままだと国が滅ぶ! どうか! どうか、お願いします!!」
僕に出来る事なんて船の前で必死に頭を下げる事くらいで。
それであの結末を変えられるのなら構わない。
頭ならいくらでも下げる。だから、どうか届いて欲しい。
ザッ、と。僕の前に誰かが立った音がした。
「ふむ、嘘を言っているような感じではないが……」
「タチの悪い冗談じゃないんですかい?」
「わからない。が、俺はこの子を信じてみようと思う」
「……ッ! じゃあ!」
「ああ、一緒に来てもらうぞ」
「え?」
こんな荒唐無稽な話を信じて貰えたと顔を上げればシャンクスに小脇に抱えられ、空気の塊にぶつかったかのような衝撃を受けた。
「ぐええええええっ!」
「ちょっと我慢してくれよ。急ぐんだろう?」
なんで連れて行かれているのかわからないけれど、流れに身を任せよう。
取り敢えず眼を瞑った。
ウタの声が聞こえなくなった。
拍手の音が響く。
「マズイ、急いでください!」
もし、あの通りであるならば、休憩中のウタの元にトットムジカの楽譜が現れる。
「ああ」
ウタがいるはずの広場に辿り着く。
そこには、ソファに座って休憩しているウタの手には楽譜が。
「止めて!!」
「悪いなウタ。緊急事態らしい」
ゾッ、と悪寒が走る。
また急激な圧がかかって一瞬のうちにウタの元に移動したシャンクスは覇王色によって気絶したウタを抱き抱えていた。
ザワつく講堂。
集まる注目。
この後の事は全く考えてなかった。どうしましょ。
「……悪いが、俺の娘はやっぱり海賊をやりたいらしい」
なんて書いてるかわからない楽譜がそこにある。
シャンクスから降りて取り敢えず楽譜を回収するとまた掴まれて、
「俺たちゃ海賊だ!」
欲しいものは奪っていくとそう宣言して国を後にした赤髪海賊団の船には何故か俺も乗せられていた。
え?
なんで?
「さて、詳しく聞かせてもらおうか」
勢揃いした赤髪海賊団に囲まれて、ちょっとチビりそうになった。いやチビったかもしれない。
圧。圧が凄い。ただの一般市民にはこの圧は怖すぎる。
取り敢えず吐くしかないようだ。
「これが……国を滅ぼす楽譜だと?」
「……はい」
ウタウタの実を食べた能力者によって呼び起こされる魔王、トットムジカによってあのままだと一夜にして国が滅ぶ事を伝えた。
「……俄には信じ難いが」
「証明する方法はありません。ですが、あなた方がいたとしても尚国が滅ぶ程の厄災なのは確かです」
「まあいい。こうして戦利品も手に入った事だしな」
戦利品?
お宝を入手する様子はなく出港したはずだけど、と首を傾げていると指を指される。
僕?
「え? 僕?」
頷かれた。
具体的に向こう12年は何が起こるかわからないし今こうして僕がいる事で僕が知っている未来が変わる可能性があるし、そもそも僕って何の力も持ってない一般市民ですし、あ、お母さんが心配してるので帰らなきゃ。え? もう進路的に戻れない? なら泳いで行きます。だって海賊とか海軍に狙われたら僕死んじゃう。そりゃ貴方方は何されても死ななそうな雰囲気ありますけど、僕は小突かれただけで死ぬ自信があるんです。さっきのだって死ぬほど勇気を振り絞ったんですから死にたくなかったんで。そう、死にたくないんですよ。死にたくないからあんな行動に出たんです。結果的にエレジアが助かりましたけど何をおいても僕が死にたくなかったんで……え? 海賊を利用したからにはそれ相応の報いがある? それはそうかもしれませんけど、じゃあ僕を殺しますか! 出来ますか! そうじゃない? 取り敢えず雑用係として色々やってもらう? いやでも、せっかく滅びなかったエレジアでぬくぬくと世界情勢眺めつつ安心安全の生活をするという野心がニョキニョキと生えてきまして……
「つべこべ言うな」
すみませんでした。誠心誠意働きます。
あ、お母さんが心配するので手紙だけ書いてもよろしいでしょうか?
そして12年が経って。
「よし、行くぞ! ウタ、ハル!」
「ん〜! 楽しみ〜!」
「え?」
赤髪海賊団雑用係として海に出て12年経ったら何故かルフィとウタと一緒に海に出ることになっていた。
なんでこんな事になった?
こんな短い短編が人気出るわけないので続きません。
既出のネタだったらごめんなさい。