とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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PCが二十~三十分起動してるとフリーズする様になってしまった……
幸い予備のPC生きてるから執筆は続けられるが……うぉぉぉん、Falloutのやりすぎだとでもいうのか

というわけでリハビリ兼ねての繋ぎ回です。



201:

 出航前日の夜、黒猫に占(・)領(・)されているアラバスタ西側の港町エルマルには、多数の軍艦が並んでいた。

 船種そのものはバラバラだが、皆揃って大砲が同じ間隔で並べられており、同じ制服を着た兵士や魚人達が中身によって色分けされている箱や樽を運び込んでいる。

 

「ペローナ、積み込み作業は順調か?」

「おお。今の所問題なし。航路はハンコックの奴が制圧して代官置いてきた島いくつも挟むからそこで随時補給するからな。一度に大量に積み込む必要なくて楽なモンだぜ」

「ま、ここではな」

 

 一応いくつかの島は直接見て来たけど統治に問題はなし。

 いや、正確には速やかに対処が必要な問題がないだけで手を入れる必要は山ほどあるんだけど。

 

「クロ」

「待たせたな」

 

 聞き慣れた靴音が二つ。

 すっかり大きくなったロビンと、最近ヒゲを伸ばし始めたミホークの二人だ。

 

「おぉ、そっちも終わったか」

「ええ、モモンガ准将を挟んで、このまま海軍は東部の守りに専念する事に合意してくれたわ。つまり、西部は我々黒猫の支配圏であることを黙認すると」

「緊急時を除いて、だろう?」

「……仮に政府から緊急事態宣言が発令されたとしても、判断は必ず海軍で行うと一応言ってはくれたわ」

「ん、ならばよし。いざという時はクロコダイルが応対するだろうし、念のためキカの部隊を残すから大丈夫だろう。ミホーク、ロビンを前にして海軍に動きはあったか?」

「ない。強いて言うなら政府寄りの人間がざわついたがそれだけだ。動くに動けんのか、あるいはどう動けばいいのか判断すら出来なかったか……だな」

「……質が落ちたな。政府も」

 

 やはり、海軍がそうであるように政府側にも戦力が不足している。

 その上で恐怖政治を強行している。

 引こうとする気配が全くない。

 

 つまり、だ。

 

「クロ、やはり奴らにはなにかしらの札があるぞ」

「ああ。そして今現在、連中はその札を使えない」

 

 元より隠し札の存在は予測していたんだ。

 それを使う気があるのかだけでも、ロビンをあえて表に出す事で相手の動きを見ていたが……連中にとって大きな意味を持つポーネグリフの解読者を前にしても荒事無しか。

 

「……クロ、海軍の施設で兵士達がち(・)ょ(・)う(・)ど(・)い(・)い(・)位(・)置(・)で立ち話をしていたのが聞こえたのだが」

「ああ」

「最近、私掠艦隊が占領していた島で不幸な事故死があったそうだ」

 

 ……処分か?

 

「死因は?」

「ガス中毒だ。占領した島に地殻変動が起きて、毒性のガスが島を覆ったと」

「……ガス」

 

 真っ先に頭をよぎるのはあのガス人間だ。

 ワンピース世界の中でも天竜人に並ぶカスの中のカス。

 

「…………化学処理部隊、作っておいてよかった……念のために予算の割り振り順位上げておこう」

「やはり人為的な物か」

「断定はできないけど、ここで対策取らないのは馬鹿のやる事でしょ。仮に誘導のための見せ札だったとしても」

「違いない」

 

 最近ウチやアラバスタの『重要人物の護衛』兼『精鋭兵士の剣術指南役』兼『農林水産担当役』が板についたウチの最大戦力がニヤリと笑う。

 

 本当に教える事が面白くなってきたのだろう。

 最近ではとうとうあの『ツメゲリ隊』に武装色のみとはいえ覇気を覚えさせることに成功したと嬉々とした報告をしてきやがった。

 

 なんてことをしてくれたのでしょう。

 

 ついでに、ビビからも将来戦い方を教えてくれと頼まれて、よりによってコブラ陛下の目の前で快諾しやがった。

 

 なんてことをしてくれたのでしょう。

 

 未来の麦わら海賊団、大丈夫か?

 バロックワークス事件は発生しないだろうが、代わりにトンデモ王女がインしたりしない?

 仮にビビが覇気扱いこなすようになったらもう手が付けられんぞ。

 

 メマーイダンスとかふざけた技やる事にはならなそう……いや、そもそもアレはなんだったんだ……。

 

「だが、毒ガスなどの生物・化学兵器そのものは確かに危険だが、我らに致命打を与えるものだろうか? 事実お前は先んじて対策を打っている」

「多分、ヤバイ切り札は他にあるんだとは思う。だが、それを使う為の何かが足りていない」

 

 人か、資材か、あるいは……能力の線もあるか。

 動かせば勝てるという代物ならば、相応に何かしらの対価が必要になるはずだ。

 

「ならば政府に時間を与えるのは悪手ではないか? 連中がその切り札を用意してしまう可能性がある」

「どうしてもこちらに準備が必要だ。聖地攻撃ともなればなおさら。だからどうしてもかかってしまう時間を利用して、政府に出(・)血(・)させる」

 

 実際、仲間にするかどうかはともかくドラムの制圧とチョッパーの保護と説得が必要になる。

 あの元気な婆さんから受け継いだ医療知識もそうだけど、なによりサウスバードやその他動物との通(・)訳(・)として。

 

 それも踏まえて開戦に踏み切るにはもうちょっとだけ時間が欲しい。

 

「……なるほど、レッドポート封鎖作戦のようにか」

「そうだ。兵をぶつけ合うのではなく、兵を動かす事で土台が揺らいでいる政府を更に揺さぶり各種資材を回収する動きを鈍らせる。食料、建材、鉱物から木材、ついでに人材。ただでさえ消(・)費(・)が多いせいで土台が脆いアイツらだ。さらに崩せる」

 

 各海の反政府活動はかなり本格的だ。

 

 基本となる食料が聖地に届かず、原作革命軍のようなまとまった対抗戦力がないにも関わらずそれを阻止できていないとなると尋常ではない。

 

 だからこそ、俺達が東の海で活動してみせる事には大きな意味がある。

 

「ロビン、今日はもう上がっとけ。明朝には出航だ。イッショウらも今日はもう休んでいる」

「ええ。クロは?」

「ハンコック待ちだ」

「? あら、そういえばハンコックさんは?」

「授業中」

「……授業?」

「九蛇の連中にな」

 

 九蛇海賊団の面々は、正直戦力としては破格の存在だ。

 手塩にかけた親衛隊やハンコックの所の黒刀持ちには届かないが、それでも元海兵よりも戦力としては安定している。

 

 ただ――

 

「『悪魔の実』の能力についての講義だよ。全五回の予定で今日は三回目。残りは女ヶ島海域に着くまでの間にだな」

 

 所々で知識がない。

 おかげで定期的に講習会を開く事になってしまった。

 

 ちなみに栄えある初回の講習会は『男と女の違いについて』だ。

 アミス達女性幹部勢による全六回の講義は非常に人気だったが、アレはなんつーか『保健体育』みたいな授業になっていたな。

 

 ほんと、アミスら親衛隊には足向けて寝られねぇ。

 特に見本役にされたトーヤ。

 ホントマジゴメン。

 

「……たしか、呪いと思っているのだったかしら」

「その認識でも大体間違っちゃいねぇけど、ある程度の方向性を知らないと戸惑うからな。『悪魔の実図鑑』と実際の能力者を教科書にして勉強中ってわけだ」

「それでダズ?」

「妹らもな」

 

 今日は動物(ゾオン)系の特色についての授業だから、今頃妹らが変身しまくってるんだろう。

 ちなみにロギアの説明時にはクロコダイルに教壇に立ってもらった。

 

 クソ、トーヤに写真撮らせるんだったな。

 絶対面白かった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「――と、先日教えた自然(ロギア)系や超人(パラミシア)系とは違い、この動物(ゾオン)系の特徴として、とにかく身体強化が主だったものになるという点じゃ」

 

 出港準備で忙しい中ハンコックがこうして教師役をやっているのは、彼女が黒猫海賊団第一艦隊提督であるのと同時に九蛇海賊団を率いる女帝でもあるためだ。

 

「すでに妹らと交戦した者は身に染みて分かっておるじゃろうが、動物(ゾオン)は三種類の変身を持つことになる。通常の『人』の状態。文字通り『動物』の状態。そして――双方の特性を兼ね備えた『獣人』の形態。食べた実にもよるが、基本的にこの形態が最も厄介じゃ」

 

 女帝の左右を固める少女らが姉の言葉に合わせて体を変化させ、その突然の変身に九蛇の戦士たちが改めてざわめいている。

 

 蛇になる実を食べた二人は覇気を扱う九蛇の戦士らを相手に戦い抜き、姉の元に殺到する戦士ら全てを足止めしてみせた実績を持っている。

 

 その上で、『海の呪い』を受けた存在への接し方が未だに分からないだろう。

 

「早く、硬く、重く――そして力もある。さらには種族特性……妹らは蛇の柔軟さとその巨体。このアラバスタの近衛であるペル殿は隼(ハヤブサ)、世界でもそう多くない飛行を可能とする力を持つ」

 

 内心、先のアラバスタ戦で戦ったサングラスの男を思い出して『いや無理やりではあるが空飛ぶ奴多いな』と思ったハンコックだがそれを顔には出さない。

 

 無言で口にチャックする。

 

 説明が面倒なので。

 

「そしてこれらと戦い勝利を得るには、覇気を鍛えるのは当然じゃが基礎となる身体を作っておかねばならぬ。まぁ、戦士ならば当然の話じゃな」

「……あの、姫様」

「なんじゃ」

 

 戦士の一人が、恐る恐ると言った様子で手を上げる。

 

 出来るならばクロから任命された役職である提督と呼んで欲しいのだが、いわば傘下となった九蛇海賊団をまとめるのには便利なので受け入れている。

 

「船長……じゃない、総督や『死の教師』は、本当にその『呪いの果実』を食べていないんですよね?」

「うむ。主殿は水練の訓練にも出ておるし、先日ミホークの奴など普通にビビ殿下を背に乗せて海を泳いでおったじゃろう」

 

 テゾーロの思い付きで作った海水浴場の視察に来たクロとミホークについて遊びに来たビビと、その後を付けて来た王様一行の対応が面倒くさ()かったのだ。ハンコックは今でもよく覚えている。

 

「……呪いを受けずに、どうやったらあそこまで強くなれるんですか?」

「体を鍛えて覇気を鍛えよ」

「本当にそれだけであれになれるんですか!?」

「うむ」

 

 九蛇の戦士にとって、未だ少女の身で女帝の座を勝ち取ったハンコックは敬意の対象である。

 

 その敬意の対象が『自分の知る最強の一人』と言い今も挑み続けている最強の剣士『死の教師』は、そして女帝自ら『主殿』と呼び敬愛を以って忠誠を捧げている『総督』の存在は特別かつ複雑な物である。

 

「練兵で戦ったアミスやトーヤを見よ。元々は覇気どころか剣すら碌に握った事のない者であったらしいが、それが主殿に恩を返すためにと鍛えた結果、九蛇を越える戦士となった。……あの者らから一本でも取れた者はいるか?」

 

 ハンコックの問いかけに、場はざわめく。

 

 

――刀三本使う女に意味分からないうちに握っていた剣を弾き飛ばされた……。

 

――あの料理人の腕を狙って木刀振り下ろしたと思ったら気を失ってた……。

 

――五人がかりでリヒャルトという痩せた男に切りかかって一瞬で全員木刀を失った……。

 

――小刀だから間合いで優位を取ろうとしたらもう踏み込まれていた……。

――ミアキスという女だろう。私もやられた。槍で横薙ぎに払ったら飛んで槍の穂先に立っていた。

 

――剣を放り投げたと思ったら三人まとめて吹き飛ばされた……。

――あれ意味わかんなかったよね。いや今もわかんない……。

 

 

「あぁ、うむ……。やはり全員ボコボコにされたか」

 

「私達はギャルディーノと一緒に見てたけど……ボコボコのボロボロだったわ、姉様」

「特に魚人空手使いとはちょっと相性悪かったみたい」

 

 九蛇は確かに偉大なる航路(グランドライン)屈指の海賊団ではあるが、それでも楽園側に属する一団である。

 原作知識を元に最も重要かつ過酷な戦場となるだろう『新世界』での活動を見越していたクロの方針と、ミホークとレイリーという世界最高の人材に鍛えられた親衛隊は常に研鑽を続けている。

 

 結果、『楽園』で畏れられる九蛇の戦士ですら歯が立たない程に親衛隊――特に古参は強くなっている。

 

「……そうか、親衛隊と同じように鍛えれば……」

 

 レイリーはいないがミホークはいる。

 散々親衛隊やダズ、なによりクロに斬りかかり、叩き潰し、吹き飛ばして来た男が。

 

 幸い、九蛇海賊団の面々は第一艦隊の主力が東の海に向かう間は主に女ヶ島を含めた『楽園』での活動が主となり、ミホークはクロコダイルと共にアラバスタの守りに着く。

 

「よし、わらわが不在の間お主ら……」

 

 

「存分に空を飛んで来ると良い。なに、慣れれば着地も受け身も上手くなる」

「「「「さっき飛行は希少な能力って言いましたよね姫様!!!!!????」」」」

「大丈夫じゃ、問題ない。やれば分かる」

 

 なお、後ほど話を聞いたミホークは練兵場の拡張をクロコダイルに申請し、クロコダイルは笑みを浮かべて承認した。

 

 後日――

 

 アラバスタにて多くの女戦士たちが宙を舞い、砂の大地に突き刺さる事が確定した夜であった

 

 そして――

 

 

 黒猫海賊団、東の海へ出航。

 その手を遂にまた新たな海へ伸ばし、

 

 

 

 

 

――ぶわっはははははははははは!!!!!

 

 

 

 

 

「…………テゾーロ君。リーク情報ではあの人、本部に召集されてたよね?」

「そのはずですが……」

「裏取りもしたハズなのじゃが……」

 

――やっぱり面倒な命令を投げておいて正解だったわい!

――ガープさん、それ海兵が言っちゃダメな奴です!!!

 

「……やべぇ、デジャブだ」

「しっかりせよ主殿。実際に前にもあったことじゃろう。わらわも心当たりがある」

「こんなヤクザな海兵、いる?」

「これヤクザって言っていいんですかね?」

 

――……?? なぜじゃ??

――なぜって……

 

――おぉーーい黒猫! 止まれ! 止まってくれ! 頼む!!

――交戦の意思はないしそもそもこっちもこの人の勘でこの海域に来ただけなんで!!

――連絡旗急げ! 交渉(パーレイ)!! 交渉(パーレイ)を!!!

 

 いや聞こえてるし。

 誰とかではなく、クロが乗る本船に居合わせた全員がそう思った。

 

 数々の島の視察を兼ねた補給を繰り返し、女ヶ島を介して凪の帯(カームベルト)を越えたクロ達を待っていたのは。

 

 クロ的に今一番会いたくない海兵だった。

 

――なんじゃ、返事がないのう。聞こえておらんのか。よし、儂ちょっと行ってくる。

 

「うそやん」




次回は六章まとめを書き上げてからの同時投稿を目指しているので少々遅くなります
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