朝比奈まふゆはブラコンである(荊棘の道は何処へ…執筆中)   作:エクソダス

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傍観者のセカイ 二



 

【キーンコーンカーンコーン】

 

「ふぁ……ぁあ……」

 

 

 ようやく授業終わりだ。

 なつきはようやく終わったと疲れて欠伸をした。

 

 

「やっほーっ」

「ニュウ……」

 

 

 その瞬間、なつきの後ろから何かが降ってきた。

 そう、萌奈だ。彼女は欠伸をした瞬間に後ろから抱きしめてきた。

 

 

「ねーねー、今日遊びにいこ? あのゲーセンまでっ」

「また? やだよ。今日は行かない」

「えー、また医者の勉強? そろそろ完全に悪い子になりなよ~」

「ならない、あと勉強のために行かないんじゃないよ」

「え、じゃあなにさ」

「君と遊ぶのがめんどいから行かないだけ」

「むきぃぃいいいい――ッ!」 

 

 

 なつきが二年生になった頃、二人は学校内で『仲良し二人組』として同級生に知られていた。

 元々勉強勉強で、話ずらそうに見えた彼だが……最近は萌奈が話していることもあり、学校の仲間とも打ち解けてきた。

 

 

「そんなことより、萌奈?」

「ん~」

「今日返却の数学、何点だった?」

「…………」

「…………」

 

「「……………………」」

 

 

 萌奈は長い沈黙の後、にぱーっと良い笑顔で答えた。

 

 

「62点だお♪」

「萌奈?」

「はい」

 

 

 なつきが笑顔になり萌奈が危険だと察知した瞬間、萌奈はその場に犬のようにぺたりと座った。

 

 

「君言ったね? 僕をふぬけにするって」

「ハイ」

「そして、お兄ちゃんに褒めてもらうって言ってたね?」

「ハイ」

「勿論、それはとっても良いこと。誰だって褒められたいもんね?」「ハイ」

「でも、君がふぬけになっちゃだめだよね?」

「ハイ」

 

 

 萌奈がなつきに怒られている。

 すでにその光景はこのクラスでテストが返却されたときやその他萌奈がふざけたときなど、恒例行事となっていた。

 クラスメートは苦笑いでそれを見つめる。

 

 

「いい? 僕がどれだけ君にメロメロになってふぬけになっても。君ががんばんなきゃ意味が無いんだよ?」

「ハイ」

「勿論62点は赤点じゃないし、萌奈もいっぱい頑張ったと思う。とっても偉いと思うよ?」

「ハイ」

「けど、もうちょっとだけがんばろ? 君にとってはお兄さんの事以外はどうでも良いかもしれないけど、もっとがんばったらもっと褒めてくれ――」

「ハイ」

「…………ハイって言っておけば話が終わると思ってる?」

「ハイ」

 

 

 ――パシンッ!!!

 

 その刹那、クラス中にハリセンの音が響き渡る。

 

 

「はにゃぁあ……」

 

 

 ハリセンに当たった衝撃で萌奈は身体を左右にだるまの如く揺れた。

 

 

「良い? 良く聞いて。そもそも君はお兄さんに褒められたいんでしょ? お兄さんの役に立ちたいんでしょ? なら頑張らなきゃだめだよ?」

「シズクサンカワイイヤッター」

「そもそもさ、ちゃんと目的があるって素敵なことなんだよ? 愛する人の為に頑張ろうとするって素敵だよ? 僕にはそんなのないもん。とっても萌奈は偉いんだよ? けどね……」

「ハ、ハルカチャンノネコミミー!?」

「……さっきから聞いてる?」

「はあああぁぁあぁあああ!?!!?」

 

 

 なつきがそう問いかけた瞬間、萌奈は怒りで大声を張り上げた。

 

 

「なんで杏たんはヤンデレじゃないわけ!? 処女作だからってふざけやがって! 杏たんもヤンデレにしろ! アンズタンヲヤンデレニシロー・アンズタンヲヤンデレニシロー・アンズタンヲヤンデレニシロー」

「…………」

 

 

 そのなつきが冷たい目で見つめたその姿は、明らかにスマホを持っていてこちらの話を聞いてなかった。

 

 

「……何見てんの?」

「【プ○セカのヤンデレ小説やたら少なくない?】」

「別に題名聞いてる訳じゃない。あと許可取ってないから題名出さないで、怒られるから」

 

 

 そう言って、なつきはため息をついた。

 

 

「小説は後でも見れるでしょ?」

「だって、今度の更新は多分みのりたんか愛莉たんなんよ? 早くみたいもん」

「…………」

「愛莉たんがツンデレながらも無自覚ヤンデレで、雫たんのテクニックに動揺しながらも頑張ってるの早く見たいもん。あとみのりたんがあんなキラキラオメメのはわわキャラでヤンデレたら……最高です」

「………………」

「コラボ誘おっ、【ニー○キャラのヤンデレやるので一緒にかきませんか】――と」

「萌奈?」

 

 

 このような感じで、この頃のなつきは無理に医者に囚われることなく、普通の学生として暮らしていた。

 

 

 ―― ―― ――

 

 そして、学校終わりのある日……、

 

 

「というわけで、小説ランキング入りおめでとう! カンパーイ」

「かんぱい」

 

 

 二人はファミレスで窓から覗く夕焼けを見ながら、ジュースの入っているコップを打ち鳴らした。

 

 

「いんやー、書いていた当初はまさかランキング入りまでするとは思ってもみなかった。全部なつき君のおかげだよ」

「僕は君の書いた小説を校正して推敲しただけ、ほとんど何もしてないよ」

「コウセイ……スイコウ……? なにそれ」

「別に知らなくて良いよ」

 

 

 頭の上にハテナマークを浮かべている萌奈にそういった後、ジュースで唇を湿らせた。

 

 今現在、萌奈は兄を主人公にした小説を書いており、兄の素晴らしさを淡々とえがいている。

 しかし、小説家を目指していた口のなつきからしてみれば明らかに荒い文章だったため、手伝ってあげているのだ。

 

 

「それで、最近はどうよ? 毒親家族問題は?」

「あー、それねー。まあぼちぼちやってる。基本的には良い両親だしね」

「……わたしが見た限りでは、とてもそうは見えなかったけど?」

「他人からはそう見えるだけ、暴力とかは振るわないし僕と姉様の未来の事をいっつも考えてくれてる」

「それは洗脳され、将来を操られてるてるだけだよ、それによって前までやりたいことできてなかったじゃん」

「そうだねぇ……そうかも知れない」

 

 

 なつきはそう言って、背もたれにぐてーっともたれかかった。

 

 

「確かに、子供の未来は子供の物……そういうのを良く聞くね」

「だったら……」

「でも、それじゃあだめ」

 

 

 なつきは彼女の唇に人差し指をぴとっと置いた。

 

 

「毒親が支配しているように見えるのは、それは優しいからだと僕は思う」

「…………」

「子供が変な道に行って、嫌な目に遭ってほしくない。束縛の理由はそれだけだと思う」

 

 

 そういって、なつきは優しい笑みを浮かべた。

 

 

「子供よりも生きて世の中の理不尽を知って、人の内面の恐ろしさも生きてきた中で知っている両親だからこそ。痛い思いをして産んで愛した自分の子供を……過剰なまでに守ろうとしちゃうだけだよ」

「……なつきくんは、そう思ってる……そう思おうとしてるの?」

「そうだね、そう思いたいだけ。でも僕は……最初から両親を毒親だと切り捨てて罵倒なんてしたくない。それだけ」

「……あそ」

 

 

 なつきのその言葉に、萌奈はため息をつく。

 その親のせいで味覚障害までストレス度合いが進行していると言うのに、まだそんなことをのたうち回るか。

 

 

「そんなことよりさぁ、また姉様が一緒にお風呂入ろうって言い始めたの」

「そっか」

「確かに僕は怒ったよ? 『弟にまで虚無の顔貼り付けんな』って。でもさ、隠してた感情がブラコン気質なのは予想できない。最近は一緒に寝るようになってんだよ? 可笑しくない?」

「はいはい、そうだね」

「まあそれが、姉様のやりたいことなら僕は別に良いんだけどさ。もうちょっと抑えてくれない物かなぁ」

「ねー」

 

 

 まあ、今はそれでいいか。

 幸い、聞いての通り最近は姉の方と随分仲が良いようだし、これ以上の詮索は無粋であろう。

 

 

「めんどくさいから別居考えようかな。零花姉あたりに交渉して一日だけでも……」

「ん? だれそれ」

「………………幼馴染みのもう一人の姉」

「幼馴染みのお姉さん……あ、なるほど! いわゆる初こーーっ」

「だまって」

 

 

 それに、今の彼には毒親に忙殺される事は無く、自分の意思で行動を出来るようになり始めている。

 ――大丈夫のはずだ。

 

 

 ―― ―― ――

 

 そんな風に思っていたある日の事だ。

 

 

「まじ? なつきって親にそんな束縛されてんの?」

「マジさいてーじゃん」

「ははっ、そうだね」

 

 

 クラス内での雑談の最中に親への愚痴合戦になり、それになつきも参加していたときの話だった。

 

 

「ほんと、いつも大変だよ。医者になるんだよね? 医者になるんだよね? って。好きでなるわけじゃないっての」

「ははっ、マジうける~」

「大変そうだね……」

 

 

 いつもと変わらない休憩中に響く、クラス少年少女の笑い声。

 そんな何でもない日に……事件は起こった。

 

 

「ほんと、そんな親と一緒にいたら気が滅入るでしょ? いやだよねー自分のことしか考えてない屑親って」

「あ……、うん。そうだ、ね」

「なつきくんはこんなに頑張り屋さんなのにさ、明らかに毒親が邪魔している感じ? ほんっと今すぐ死に絶えてほしい」

「…………」

 

 

 それは、なつきの話になった途端なつきの母親への非難が多くなったからだ。

 勿論、なつきの母親のことを考えれば、それは普通の反応。当然の非難と言えよう。

 

 

「そもそもさ、毒親は子供の気持ちをくめって話だよね、親が自分の物だと勘違いしてさ」

「…………」

「そういう人はホントに地獄を見てほしい、現になつきくんがこんなに嫌な思いしてるんだもん」

「そーそー、明らかに誰にでも嫌われるタイプだよな」

 

 

 しかし、それをその当人の目の前……なつきの目の前で話すのはあまりにバカ。

 

 

「……っ」

 

 

 萌奈はすぐに嫌な予感を察知し、椅子から立ち上がる。

 毒親の子供が愚痴を言うのと、他人の人間が毒親だと非難し罵声を浴びせるのは訳が違う。

 

 毒親だろうと何だろうと、その親は彼にとっては大切な家族。

 

 それを他人が非難して良い理由など何処にもないのだ。

 

 

「ほんっと屑! 今すぐ死ねっってね!」

「ほんとそれ! この世の地獄を全て受けろって感じ?」

「本人のなつきもそう思うでしょ?」

「…………」

 

 

 そして、他人がそうなった場合罵倒には限度がない。

 その親のことを全く知らなくても、毒親というだけで嫌な想像を膨らませ、意味も無くその当人に向かって……それか陰で正義面をするのだ。

 

 

「そんなんだったらお姉さんもヤバそう」

「あー、あの人? 確かに優等生すぎて正直やばいよね」

「多分毒親に完全に手なずけられてんでしょ? 優等生の皮を被ったキチガイって感じ?」

 

 

 それはその子の為に意図を組み、君の仲間だと安心させるためでは断じてない。

 

 

 

 

 

 ――ただ罵倒をしたいだけ、自分の事ではないと非現実なことだと高をくくり、自分は正しいと主張したいだけの偽善正義主義者だ。

 

 

 

 

 

 

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