朝比奈まふゆはブラコンである(荊棘の道は何処へ…執筆中)   作:エクソダス

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コラボです! やったー!


あと一つコラボはあるのですが…、そっちはまだ待ってください


傍観者のセカイ 参 【コラボ ただの凡人様】



 

「……んぅ」

 

 

 今日は休日で学校はない。

 なのでなつきは勉強をしていたのだが、なんとなくやる気が起きなかったため公園に来ていた。

 

 

「……やり辛い」

 

 

 しかし、来たは良い物の勉強道具は風にあおられ、そして公共の場のため視線が気になると散々で、既に帰ろうとしていた。

 

 ――その時、

 

 

「こんにちは、なつきくん」

「……ぅ?」

「久しぶりね」

 

 

 そんななつきに話しかけてくる珍しい珍客がいた。

 優しげな瞳に長い髪……確か姉の知り合いである雫さん。

 

 

「……あ、どうも」

「知り合いか?」

「ええ、同じ部活の子の弟さんなの」

「姉がお世話になってます」

 

 

 そう言って、なつきは首だけでぺこりと頭を下げる。

そんな雫の隣にいるのは、どこか気の抜けたような男性。多分彼氏と言った所であろう。

 

 

「ところで、そちらの方は……?」

「彼氏です♪」

「違います」

 

 

 その言葉に、一瞬周りがどよめいた。

 まあ、否定が妙に早かったし、腕も組んでいるので彼氏で間違いなさそうだ。

 

 

「初めまして、朝比奈なつきといいます」

「わたしは左てる、よろしくね、なつきくん」

「ねえ、なつきくん。せっかくだから一緒にお出かけしない?」

 

 

 雫のその提案に、なつきはくすりと笑った。

 

 

「ふふっ、自分がデートについていくほど野暮な人間に見えますか?」

 

 

 なつきはそう言った後、再度勉強道具に視線を戻す。

 その勉強道具は山のように積まれており、だからこそ視線を集めてしまっていた。

 

 

「その本は……」

「別に、ただの参考資料です」

 

 

 そんな疑問を問いかけてくる左に、なつきは淡々とそういった。

 

 

「医者……夢なの?」

「夢ではないです、なります」

 

 

 彼の問いに、なつきは迷うことなく断言した。

 

 

「なりますって……もしかして君、本当は医者じゃないものに――」

 

 

 左がそう心配そうに言いかけた瞬間、なつきは左の唇に人差し指を当てて笑う。

 

 

「左さん、でしたっけ? 彼女を差し置いて、別の人と会話の花を咲かせるのは、ナンセンスですよ?」

 

 

 これ以上の会話はなつき的にもナンセンスだ。

 わざわざ勉強の気分を変えるために来たのに……誰かと長々話をして疲れたら本末転倒だ。

 

 

「…………」

「それじゃ、僕は場所を移すので、楽しんで」

 

 

 □ □ □

 

 そして、左と初めて出会ったその数日後の話。

 

 ――ピンポーン。

 

 

「んぁ?」

 

 

 家族が全員出払っており、なつきだけがお留守番をしているそんな時、突如家のインターホンが鳴り響く。

 なつきは顔を少し引き締め、早足で玄関まで向かう。

 

 ガチャ、

 

 

「はーい」

「よっ、なつきくん、元気してる?」

「貴方は……」

 

 

 そこには、先日公園で知り合った少年、左の姿があった。

 

 

「こないだの事で、もう一度君と話をさせてほしい」

「お話、ですか? わかりました左さん。何もない所ですが入ってください」

 

 

 この間の話――とはよくわからなかったが、なんとなく目的はわかるため、とりあえず家に招き入れた。

 

 

 ―― ―― ――

 

「つまらない物しか用意できませんでしたが、どうぞ」

「ありがとう」

 

 

 左は出されたお茶を一口飲む。

 そして、リビングには沈黙が包まれた。

 

 

「……それで、話とは?」

「君の……本当のやりたいことについて――」

 

 

 と、左がそう言い切る前に、なつきも席に座るとため息をつく。

 

 

「あ、そういうの良いんで。ねえ、悪いことはやめましょう?」

「? 何の話かな?」

 

 

 よくわからないと言った様子で目を丸くする左。

 

 

「だって、貴方には彼女さんいるんですよね? いやあの、悪いことは言わないのでやめません? そもそも姉様、そんなに優良物件じゃないですよ?」

「…………」

 

 

 彼の魂胆はわかっている。

 どうせ雫さんからなつきが『あの優等生まふゆの弟』だと聞きつけて、とりあえず弟の方とお近づきになろうという策略だ。

 たまにいるのだそういう人。

 

 

「……なつきくん、私は今四人の女性に――主に性的な意味で迫られている。そんな状況で君のお姉さんに手を出せる訳がないだろう」

「あ……(察し)」

 

 

 その瞬間、窓の外からものすごい視線を感じた。

 どうやらそんなつもりは微塵も無かったらしい、しかしなつきがそんなことを言ったせいで外から殺意のような視線を感じ始めた。

 ――あ、この人の彼女ヤンデレなのか……。

 

 

「え、えと……話題を変えましょう!」

 

 

 なんとも言えない命の危険を感じ、なつきは強引に自分で話題を振った発言をかき消した。

 

 

「今回のご用件は?」

「……すまない、君に今日話に来たのは、君の……君自身の事についての話をしに来た」

「僕の?」

 

 

 予想していなかった彼の要件に、なつきは目を丸くする。

 

 

「あの時と同じ質問をしよう……君、医者になりたいの?」

「……この間も言いましたが、なりたい。ではなく『なる』です。これでも頑張ってるんですよ」

 

 

 なつきは自分の力を誇るように、腕を捲って虚しい筋肉を見せた。

 

 

「それは重々承知している、失礼な質問をしてすまない」

「…………?」

「だがな、君が医者について話している時、君はとても悲しい目をしているんだ。まるでやりたくないことをやらされてる時の、気だるげな人間のような」

「あー、なるほど。そういうね……」

 

 

 ――なんだ、そういうタイプの人間か。

 なつきは何かを理解したように、何処か苦笑を浮かべる。

 

 

「お気遣いありがとうございます、まぁあの時は確かに疲れて目が虚ろだったかもです。あの時は気分転換に外でやろうとしたんですけど……これが視線が辛いわ風が邪魔だわで――」

 

 

 そのようになつきは話を続ける。

 まるでその話題を避けるかのように。

 

 

「……やはりだ」

「何がです?」

「君はこちらが確証に迫ろうとした時、逃げるかのように話を反らす。まるで触れられたくないように」

「…………」

 

 

 しかし、その意図はあちらに気付かれてしまったようだ。

 なつきは観念したかのようにため息をつく。

 

 

「はい、触れてほしくありません。なのでやめてください」

「それはできない。俺は困っている奴は放っておけないからだ」

「さいですか」

 

 

 それを聞くと、なつきはにっこりとやさしい笑みを見せる。

 この手の人間にはこうやって適当に笑顔を振りまき、適度なところで怒って……そのあとそれっぽいこと言えば大体満足する。

 

 

「君は……医者になる事を誰かに強制されてるんじゃないか?」

「……っ」

「図星だな」

「っ、人の神経を逆なでするような事が得意な人ですね」

 

 

 この手のタイプは怒った後に適当な本音をぶつければ『心を開いてくれた』と勝手に満足する物だ。

  そう思い、なつきが怒りを出したその時、

 

 ――がらがらっ、

 

 と、誰かが玄関から入ってきて、ここに顔を出した。

 

 

「あ、母さん……」

 

 

 それは、なつき実の母親だった。

 

 

「あら、お友達?」

「……別に」

「あら……、初めまして、わたしなつきの母です」

「――っ!?」

「……どうかしましたか?」

「……いえ、初めまして、左てるです」

 

 

 左はなにかを感じたようだったが、それ以上に反応を示すわけでもなく挨拶を返した。

 

 

「ごめんなさいね? 今日ちょっとこの子機嫌が悪いみたい。いつもは優しい子だから許してあげてね」

「はい」

「あ、なつき。お母さんね、なつきの良さそうな高校のパンフレットもらってきたの」

「……?」

 

 

 そういうと、母親はパンフレットを五枚ほど差し出してきた。

 

 

「どれも有名なお医者さんが卒業している学校ばかりよ?」

「うん……」

「こういう所に行けば、ちょっとでもなつきがお医者さんになるための手助けになると思うの」

「うー、ん?」

「お医者さんになりたいのよね? お母さん応援してるからっ」

 

 

 

 母親の言葉に、なつきは腕を組んで悩んだ。

 

 ――ぶっちゃけ高校は何処でも良いんだよなぁ……。

 

 自分の為に考えてくれるのはありがたいが、正直何処の高校に入ってもそこまで医者になる難易度は変わらない。

 

 ……学歴マウント取りたいわけじゃないし、進路どうしよう?

 

 それゆえ、なつきは母親にそう言われて初めて進路について悩んだのであった。

 

 

「…………」

「?」

 

 

 怒る演技を忘れ、母親のパンフレットを凝視していると、左の瞳が何処か鋭くなるのを感じた。

 

 

「……すいませんが、息子さんは、いつ頃から医者になりたいと仰るようになったのですか?」

「いつから? うーん、小学校高学年くらいから……かしら、わたしがお医者さんに勧めてそれからだったはず、ね?」

「この人には関係ない」

 

 

 そこまで詮索されたくないと言わんばかりに、なつきは声を尖らせた。

 

 

「なつき、何があったか知らないけど人様にそんな態度取らないの」

 

 

 怒られた。

 

 

「やっぱり……な」

「やっぱり?」

「なつきくんが医者になりたいと話すとき……とても寂しそうな目をするんですよ」

「…………」

 

 

 その左の言葉に、母親は黙り込む。

 

 

「違う、違うよ。そんなわけ……」

「小説家……なつきくんのなりたいもの」

「っ」

 

 

 なつきはすぐさま否定しようとしたが、左のまるでなつきの確信をつくような言葉に、つい言葉を詰まらせた。

 

 

「……どこからその話を」

「予想だよ……君の過去を、君のお姉さんから聞かせてもらった。そこから予想した」

「違う、僕は……医者に……」

 

「無理はしちゃだめよ、なつきくん」

 

 

 そんな時、この家に入ってくる者がいた。それは……まふゆの親友である雫だった。

 

 

「なつきくんが頑張る気持ち、すっごくわかる。でも、嫌な物を頑張っても、嫌な物は嫌なの。なりたくなかったの? 小説家」

「ち、違う……いやなんかじゃ……」

「いい加減にしてください。これ以上この子を追い詰めないで」

 

 

 なつきが否定しようとしたその時、母親がなつきをかばうように立ち塞がる。

 そんな母親に、左は首を横に振る。

 

 

「追い詰めてたのは……お母さん。アンタの方なんじゃないのか?」

「……っ!?」

 

 

 

 

 

「医者になってほしいと……子供の気持ちを蔑ろにし、自分の気持ちだけを押しつけたあんたの責任……違うか?」

 

 

 

 

 

「――――」

 

 

 その言葉で、なつきは完全に理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 ――こいつらは、敵だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―― ―― ――

 

 

「…………」

 

 

 その後、二人は色々話したら満足して帰ってくれた。

 なつきはコップを洗って、冷たい瞳をする。

 

 

「とんだ茶番だ……くそっ」

 

 

 先ほどまでは演技の怒りだったが……なつきは未だ、怒りを隠せずにいた。

 

 

「結局いつもと同じだ、それっぽい本音言ったら出て行きやがった」

 

 

 いつもそうだ。

 なつきを助けたいと望む偽善者のほとんどは母親を毒親だと、敵と認識し……その呪縛を解く! そんな奴らばっかり。

 そして言うのだ、自分のやりたいことをやれと。

 

 

「……ちっ」

 

 

 そいつらは基本自分が正義だと……なつきを不幸だと思い込み他人のくせに口を出し。

 それっぽい御託を並べれば、その状況が一切解決していなくとも『これで解決!』と満足する。

 

 ――結局、『毒親という悪役を作り偽善者面したいだけ』

 

 

「ふざけるな」

 

 

 毒親に育った者の表面上しか捉えず、親が悪いと断罪し……自分が救ってやると無駄な正義感を持つ。

 

 

「クソの他人が……母親を毒親だと貶しておいて、『お前はレールの上を走ってるだけ』だと?」

 

 

 たとえあいつらが正しかったとしても、

 大切な家族を貶されてまでお前らを信じるバカが……どこにいる。

 

 

 ――自分が決められたレールを走るだけの……意思を出せない人間なのだとしたら。

 

 やつらは無差別にレールを破壊し、レールの先……未来を踏みにじるクソだ。

 

 なつきは、つい手に力が入り、コップを割った。

 

 

「……なつき」

「あ、あっ!」

 

 

 母親のその悲しげな声で自分がコップを割っている事に気付き、なつきは慌てる。

 

 

「ご、ごめんっ! 割れちゃった!」

「なつき、なつきのやりたい事って……医者なのよね」

「……っ」

 

 

 その悲しげな母親を見て、なつきは唇をかんだ。

 アンタもか……アンタでさえ医者を嫌々目指しているのが可笑しいと思うのか。

 

 

「違う、僕のやりたいことは小説家」

「……そう、そう感じるようになっちゃったのね」

「…………」

「医者を目指すのに疲れちゃったのね、頑張ってたもの。医者以外に目が向くのは仕方ないわよね」

「ちがう、ぜんっぜん違う!!!」

 

 

 母親のその言葉に、なつきは大声を上げる。

 

 

「『やりたいこと』と『やるべき事』は違う! 確かに僕は小説家を目指したいよ、医者以外にも目を向けてみたいよ」

「…………」

「けど、それじゃあ幸せになれない」

 

 

 なつきはそう言って俯いた。

 

 

「やりたいことはただの理想像、僕のやるべき事は医者になって家族と幸せになること。それ以外なんてない」

「…………」

「やりたいことを勉強より優先してやる? 明らかに愚策。医者になる人にはお金に目が眩んだ人や本当に医者になって人を助けたい人……色々いるんだよ?」

 

 

 なつきのその顔は、何処か悲しそうで辛そうで、しかし何処か真の通った瞳だった。

 

 

「そんな人たちと争うのに、やりたいことをやる暇なんてあるわけない、頑張って医者になろうとしてる人への冒涜だよ……っ」

「……なつき」

「やりたいことをやって成功できる人は本当に一握り。僕は不器用さからそれにはなれない。ねえ、そんなに可笑しい? お母さんが進めてくれた医者になろうとして苦んでる。そんなの当たり前じゃん……人の命を扱う仕事なんだから」

「…………」

「やりたいことをやれ? 嫌なことは嫌といえ? それは現実から目を背けてるだけ……。そんな道理が通ったら、やりたくない勉強をやらなくても幸せになる……頑張った人が不幸になる世の中になる!」

 

 

 そして、なつきは声を張り上げて泣いた。

 

 

「なんでやりたいことを出来る人の方が幸せだとみんな思い込むの!? どいつもこいつもっ! 他人のくせに上から目線で指図して! 苦しんで頑張ってる僕が可笑しいみたいに……っ、勧めてくれたお母さんが悪者みたいに……っ! 何で何で何で何で何で――ッ!!!!」

 

 

 泣きじゃくるなつきを、優しく母親は抱きしめた。

 彼だって幸せになりたい、やりたいこともあるし目指していた物もある。

 

 

 しかし――、それを捨ててでも手に入れたい未来……やるべき事があるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はただ…………家族みんなで幸せになりたいだけなのに。

 

 

 

 

 

 

 

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