樹里亜がラーレの四人にとあるネコを探すよう依頼するお話です。
★場所:LALEオフィス
【妙花】
「なぁ柊一郎。手前は何を買ったんだ?」
【柊一郎】
「……? なんの話?」
【妙花】
「あぁ? ほら、あれだよ。漫画」
【柊一郎】
「漫画? ……どういうこと?」
【妙花】
「……知らねぇのか? 某サイトでいくつかの漫画がシリーズ一括で60%OFFになってんだよ」
【柊一郎】
「それなら知ってるけど。期限がたしか月末ぐらいまでだったから、まだ買ってない」
【妙花】
「はぁ……!? 明日までだぞ! なんで知らねぇんだ!?」
【柊一郎】
「えっ、明日――!?」
【伊栖未】
「どぉ、どうした? なんか騒いでるけど」
【ノア】
「痴話喧嘩ならよそでやってください」
【妙花】
「いや、それが柊一郎の奴……例の6割クーポンをまだ使ってねぇんだとよ」
【ノア】
「えっ。マジですか」
【伊栖未】
「早く買ったほう、いいぞ。きぃ、期限、そろそろ」
【柊一郎】
「期限が早まってたの知らなかった……」
【ノア】
「そういうのはSNSでこまめに確認しといたほうがいいですよ。なにがあるかわかりませんから」
【柊一郎】
「どうしよう。なに買おう」
【伊栖未】
「巻数の多い漫画、おすすめ。人気作とか」
【ノア】
「そのほうが普通にお得ですからね」
【柊一郎】
「みんなは何買ったの」
【ノア】
「妙花は?」
【妙花】
「GA〇TZ」
【伊栖未】
「いいチョイスねぇ」
【妙花】
「ちなみに9000円で買えた」
【柊一郎】
「安い」
【ノア】
「私はアイシー〇ド21です。6000円で買えましたよ」
【妙花】
「元の値段を考えたらやっぱ安いよな」
【柊一郎】
「伊栖未は」
【伊栖未】
「花より〇子」
【ノア】
「意外なチョイス」
【妙花】
「へぇ、そういうのも割引の対象だったのか」
【柊一郎】
「う~ん……」
【ノア】
「別に無理して買えとは言いませんけど、またとない機会ですからね。どうせなら何か買っといたほうがいいと思いますよ」
【妙花】
「難しく考えるほどのことでもねぇだろ。シンプルに読みてぇと思ったモンでいいんだよ」
【伊栖未】
「……わたし、追加でまた何か買おっかな。えへっ、えへっ、えへっ」
【ノア】
「これ以上は予算オーバーなので却下です」
【伊栖未】
「うぅ……」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「…………決めた」
【妙花】
「へぇ、どうすんだ?」
【柊一郎】
「う〇るちゃん」
【妙花】
「マジか手前」
【伊栖未】
「でも懐かしい」
【柊一郎】
「あとエム×ゼ〇」
【ノア】
「なるほど。元々低価格のパックを複数買う戦略ですか。めちゃアリですね」
【柊一郎】
「あと九龍ジェネリックロマ〇ス」
【妙花】
「調子に乗ってきたなコイツ」
【伊栖未】
「でもチョイスのセンスが絶妙。さすが柊一郎」
【ノア】
「言うほどそうか?」
●SE:玄関のドアが開く音
【樹里亜】
「――どうもこんにちはぁ♡」
【伊栖未】
「あ、シスター」
【妙花】
「ちっ、こんな忙しい時に……!」
【ノア】
「……何かご用ですか? あいにく立て込んでて忙しいんですけど」
【柊一郎】
「オレの買う漫画選んでるだけじゃん」
【樹里亜】
「実はちょっとみなさんにお手伝いしていただきたいことがありまして。少々お時間もらえませんか?」
【柊一郎】
「とりあえずもう購入しよう」
【伊栖未】
「まぁ、待って。……うそつ〇リリィ、おすすめ。主人公の彼氏、女装が趣味。おもろい」
【妙花】
「くっくっ、アタシらの身近にもそんな奴いたな」
【ノア】
「さて、誰のことでしょうね」
【柊一郎】
「……趣味ではないし」
【樹里亜】
「あのぉ、無視だけはやめていただけませんかぁ?」
◆
【柊一郎】
「――で、話とは」
【樹里亜】
「私はべしゃ〇暮らしを購入しました♪」
【柊一郎】
「そっちでなく」
【ノア】
「この人も漫画とか読むんですね」
【妙花】
「んなこたぁどうだっていい。用件はなんだ。さっさと話せ」
【樹里亜】
「……実はですねぇ、ネコを探しておりまして」
【伊栖未】
「ね、ネコ。ネコって、ど、動物の?」
【樹里亜】
「はい。でもただのネコではありませんよ? それも――全身が金色に光っているとても珍しいネコです」
【柊一郎】
「金色のネコ」
【ノア】
「なんですかそれ。めちゃ胡散臭いと言っても過言じゃありませんね」
【樹里亜】
「それがですねぇ、この青藍島で見つけたという目撃情報があるんですよ。おそらく本当かと」
【妙花】
「この島にそんな奇怪な猫がいる、だと……? んなモン聞いたことねぇぞ」
【樹里亜】
「そこまで有名な話ではありませんからねぇ。たまたま私がその情報をキャッチしただけですので」
【ノア】
「あぁ……! ネコだけに!」
【ノア以外】
「…………」
【ノア】
「ね…………!」
【柊妙未亜】
「…………」
【樹里亜】
「……話を戻してもよろしいでしょうか」
【伊栖未】
「そ、そんで、目撃したと言っても……青藍島の、どこで、ですか」
【樹里亜】
「たしか山の……森林の中で、という話でしたねぇ。ほら、この島にある学園のおとなりにあるでしょう? たぶんあそこですねぇ」
【妙花】
「だろうな。この島で野生の動物が生息しているとしたらあの森ん中ぐらいしかねぇ」
【柊一郎】
「そもそもなんのネコですか」
【樹里亜】
「マヌルネコです」
【柊一郎】
「…………」
【樹里亜】
「…………」
【柊一郎】
「マヌルネコ」
【ノア】
「中の人が好きなネコですね」
【柊一郎】
「プロフィールにも書いてるくらいだし」
【伊栖未】
「いい加減中の人いじるのやめたほうがいいと思う」
【妙花】
「……で、そのネコを探すのを手伝えってか」
【樹里亜】
「そういうことですねぇ! とても珍しいので是非とも写真に収めてイン〇タに投稿したいんですよぉ! あっははははははっ!」
【柊一郎】
「いい歳してなにやってんですか」
【樹里亜】
「はぁ?」
【柊一郎】
「誠にごめんなさい」
【伊栖未】
「いまのは柊一郎が悪い」
【ノア】
「しかし見つけ出すのは難しいでしょうね。マヌルネコは準絶滅危惧種と言われるぐらいの野生希少動物です」
【妙花】
「そんな希少の中でもより希少なネコ……ってわけか。こりゃ骨が折れそうだねぇ……」
【柊一郎】
「正直あんまりやる気にならない。面倒くさそう」
【ノア】
「そうですよ。だいたいこんな重労働、なんの見返りも無しに――」
【樹里亜】
「成功報酬は焼肉のご馳走――というのはいかがでしょうか」
【ノア】
「お前たち! 早速ネコ探しへ出発といきましょう! もたもたしてたら日が暮れちゃいますよ!」
【柊一郎】
「任せてください。絶対に見つけ出してみせます」
【伊栖未】
「カルビ……! ハラミ……! ホルモン……!」
【妙花】
「…………」
【樹里亜】
「わかりやすくて助かりますねぇ」
【妙花】
「ぐぅの音も出ねぇ」
★場所:青藍島 森林
【伊栖未】
「……はぁっ……はぁっ……! ……ぜぇっ……ぜぇっ……!」
【妙花】
「くっそ……ぜんぜん見つかんねぇ……! どこに居やがんだ……?」
【ノア】
「ちょっと休憩しましょう。……ふぅっ、さすがに疲れましたね」
【柊一郎】
「けっこう探索したけど……それっぽいの、ぜんぜん見つからない」
【妙花】
「金色って話だから特徴としてはわかりやすいはずなんだがな……そもそもネコ自体ほとんど見ねぇぞ」
【伊栖未】
「そぉ、それ。イノシシとかならいたけど」
【ノア】
「え。鐘さん大丈夫でしたか」
【伊栖未】
「平気。木の陰に隠れて、やり過ごした。ふすぅ……!」
【樹里亜】
「――――」
【柊一郎】
「……なにやってるんですか。スマホをかざして」
【樹里亜】
「――……あぁ、これはですねぇ。ネコを自動で検知するアプリを使って辺りを見回していたんですよぉ」
【柊一郎】
「なんですかそれ」
【樹里亜】
「スマホの内蔵カメラを通して、アプリの中のAIがネコと思われるものを探してくれるんです。便利でしょう?」
【妙花】
「おい。そんなモンがあんだったら先に教えろ。無駄に時間を喰っちまったじゃねぇか」
【伊栖未】
「そうだそうだ。そういうアプリがリリースされてたなら、わたしたちも使えた。情報共有、大事」
【樹里亜】
「リリースはされていませんよ? このアプリは私が独自で開発したものなので」
【柊一郎】
「そういやこの人って情報工学出身だった」
【妙花】
「まぁ、電子ドラッグなんて下衆な代物を作れるくらいだからな。そのくらいできて当然か」
【伊栖未】
「でもじぃ、自分だけずっこいぞ……!」
【樹里亜】
「あははっ。ごめんなさいねぇ?」
【柊一郎】
「でも困った。このままじゃ日が暮れる」
【妙花】
「あぁ。暗くなったらこの辺りは危険だからな。さっさと見つけ出さねぇと……」
【ノア】
「――――」
【妙花】
「……どうしたノア。さっきから黙り込んで」
【柊一郎】
「具合悪いならいったん会社に戻ろうか」
【ノア】
「――――いいことを思いつきました」
【伊栖未】
「……ぇ?」
【妙花】
「おいノア。何を思いついたって?」
【ノア】
「ネコの効率的な探索方法です。私のアイディアを実装すればおそらくすぐに見つけ出すことが可能ですよ」
【樹里亜】
「……その方法、教えていただけますかぁ?」
【ノア】
「まず、あなたのスマホ――正確にはネコ探索アプリ――をお借りしたいのですが」
【樹里亜】
「……構いませんが、どうするつもりです?」
【ノア】
「――念のために、これを持ってきて正解でしたね」
【妙花】
「! ……それは!」
【柊一郎】
「ドローン……!」
【ノア】
「えぇ。これにアプリを起動したままの状態で、スマホを……こんな感じでくっつけます」
【ノア】
「で、アプリ画面を私のスマホと同期させれば……」
【樹里亜】
「なるほど。そのドローンを飛ばすことで、この森林に生息するすべてのネコを探し出すことができる、ということですね?」
【ノア】
「はい。それと私のスマホにアプリ画面が映るので、ネコの存在を検知すればすぐに確認できます。完璧な作戦です」
【樹里亜】
「へぇ……やりますねぇ?」
【ノア】
「まぁ、私天才ですので」
【伊栖未】
「そ、そっか。このふたりには情報処理が得意って共通点があったんだ」
【柊一郎】
「そういう意味では実は相性いいのかも」
【妙花】
「あんま歓迎したくねぇけどな……」
【ノア】
「――――! 2時の方角、約150m! 早速1匹見つけました! 行きましょう!」
【四人】
「はぁーい」
◆
【ノア】
「――……はぁっ……はぁっ、ここが、ラストですね」
【伊栖未】
「えっ、ここって……岩穴? こんなとこに……いんの?」
【妙花】
「どうだ、いたか――!?」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「――――! いた! たぶんこれだ!」
【金色のマヌルネコ】
「…………」
【妙花】
「どうやら眠ってるようだが……本当に全身が金色に光ってやがる。すげぇな……」
【伊栖未】
「ピカピカしてんねぇ……!」
【柊一郎】
「マヌルネコってあんなにもふもふしてるんだ」
【ノア】
「……しかし、なぜこんなところに――」
【樹里亜】
「マヌルネコは基本的に夜行性なので、日中はこういった岩穴に潜んでいることが多いんですねぇ。知りませんでした?」
【柊一郎】
「いや知らないし」
【妙花】
「だからそういう情報は先に教えとけっつってんだろうが……!!」
【樹里亜】
「すっかり言うの忘れてた♡」
【妙花】
「――――っ!!」
【伊栖未】
「おぉ、落ち着け妙花……! ネコが起きちゃう、ぞ……!」
【ノア】
「ですね。撮るなら眠っている今がチャンスじゃありません?」
【樹里亜】
「それもそうですねぇ。ではスマホを返していただけますかぁ?」
【ノア】
「あぁ、はい。……こちらです」
【樹里亜】
「はいどうも。ありがとうございます」
【妙花】
「……なんにせよ、これで依頼は達成だな」
【柊一郎】
「腹減った。早く肉食いたい」
【伊栖未】
「それ」
【樹里亜】
「柊一郎ちゃん? 記念にネコちゃんとご一緒に写真、いかがです?」
【柊一郎】
「じゃあせっかくなのでお言葉に甘えて」
【樹里亜】
「はい、じゃあ撮りますよ? ――――はい、アへ顔ダブルピース」
●SE:シャッター音
【樹里亜】
「あ。フラッシュが――――」
【金色のマヌルネコ】
「…………んぅぅっ」
【柊一郎】
「? ……あれ、起きた?」
【金色のマヌルネコ】
「きしゃぁーー!!!」
【柊一郎】
「うわっ! 危なっ――!」
【金色のマヌルネコ】
「ぐるるるるっ…………!!」
【伊栖未】
「えっ、なんかすごい怒ってる、ぞ……?」
【樹里亜】
「言い忘れてましたけど、マヌルネコって実は結構獰猛なんですよぉ。気をつけてくださいねぇ?」
【柊一郎】
「今更すぎる」
【妙花】
「だから肝心なことは先に教えろって何回言わせんだこのバカ修道女が!!! 柊一郎がケガするとこだっただろうが!!!」
【樹里亜】
「おぉ、こわ♡」
【ノア】
「そういえばうちにも凶暴なのが一匹いましたね」
【伊栖未】
「もふもふはしてないけどな」