過去にpixiv投稿した作品です。
それは、瑞鶴の最後の物語 | 暁の瑞雲 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16958461
ああ、これで終わりなのかな。
私の最後の戦いは、艦載機のほとんどない囮作戦だった。
不思議と怖くない。悔いもない。
命が消えそうな今、走馬灯のように瑞鶴の記憶にあの日々が蘇る。
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「やっと来てくれた!」
この身体の最初の記憶は銀の髪の女の人
私のお姉ちゃん。翔鶴お姉ちゃん。
私が鎮守府に来た時には、お姉ちゃんの他に、赤城姉さん、加賀姉さん、飛龍姉さん、蒼龍姉さんがいて、5人は幾千の戦場を戦い抜いた猛者だった。
弓道場では、私はいつも的貼り、矢拾いなどの雑務中心
今思えば、私を戦地に送り出したくなかったのだと思う。
「ねぇ、わたしにもおしえて!おしえてよ!」
赤城姉さんははぐらかしながら相手をしてくれました。
加賀姉さんは、いつもちらりとこちらを見るばかりで話しかけてはくれません。
飛龍、蒼龍姉さんは話し相手にはなってくれましたが、弓の扱い方は教えてくれませんでした。
「瑞鶴、本当にやりたいのなら、見て覚えなさい。」
いつしか、私の心の奥底で、終わりを看取る悲しみの記憶だけが、渦巻いていました。
ひとりにしないで。
私も連れて行って。
だから、私は5人が練習を終えた弓道場で一人残って練習していたんだ。
いつか、一緒に戦えるように。
でも、この世界でも5人のお姉ちゃん達は私をおいて逝ってしまいました。
因縁のミッドウェー海域、慢心などしていなかったはず。
その戦いで、歴史上、まだ生きていたはずの翔鶴お姉ちゃんも一緒に沈んだ。
私がいたら?一緒に戦えていたら?
自問自答を繰り返しながら、ただひとり弓道場で、型も知らずにやみくもに矢を撃つ日々
それに終止符が打たれたのは、鳳翔さんが渡してくれたビデオレターだった。
私は恐る恐る再生する。
ーーー
「貴女がこれを見ているという事は、私達は生きてはいないでしょう。」
こんな優しい顔で、真っ直ぐに私を見てくれる加賀姉さんは初めて。
私は声をあげて泣きながら夢中でビデオを見た。
矢の構え方から、艦載機の発着艦方法などの基本知識、深海棲艦と対峙した時の戦い方、攻め方、引き方などの実践ノウハウを5人が代わる代わる教えてくれる。
それは、一人になった私が空母として生き残るための知識だった。
毎日時間を忘れて修練するうち、私は鎮守府で生き残った空母の中で頂点にいた。
でも、そのころになると、出撃してはボロボロになって帰投する艦隊、いつしか1人欠け、2人欠けと少しずつ鎮守府の艦娘達がいなくなっていった。
そして、今ーーー
私の命は燃え尽きようとしていた。
降り注ぐ爆弾の雨、砲弾、魚雷、少しずつ私の命が削られていく。
すでに旗艦として撤退命令は出した。
私の命の火が消えない限りあの子達と深海棲艦との距離が稼げる。
一人でも多く生きて帰ってね。
視界の片隅に直上から落ちてくる爆弾が目に入る。
ああ、終わりかな。
瞬間、世界が弾けたーーー
「瑞鶴!」「瑞鶴ちゃん!」「情けないわね。」「頑張れ」「あと少しだけ頑張って!」
私を呼ぶその声は、、、。
お姉ちゃん達だ。
「あの時は一緒に戦えなくてごめんね。」
「「「「「でも、今は、今だけは一緒に戦いましょう!」」」」」
足捌きの感覚、弓を引く力強さ、凛とした体幹、敵を見据える眼、みなぎる気力
まるで、みんなが乗り移ったかのように私を支えてくれていた。
死を前にして不思議な気持ちと一体感、、、。
みんな、こんなにも強かったんだ。
「さあ、瑞鶴、いくわよ!」
「うん!お姉ちゃんたち!」
みんなと一緒に放った1本の矢は幾百の光の帯となり、艦載機として顕現する。
それは、実体を持った幻の艦載機
お姉ちゃん達が鍛え上げた数百機の銀色の翼だった。
そしてー
私を抜いて追撃に入った深海棲艦もろともが激しい光に包まれた。
ーーー
ーーー
ーーー
「やったわね。瑞鶴」
「とても立派でしたよ。貴女は私達の誇りです。」
最初で最後のお姉ちゃんたちと一緒の戦いは、私一人の命と引き換えに幕を閉じた。
薄れていく意識の中、声が聞こえる。
「この長い戦いは、おそらく私達の敗北で終わるでしょう。」
「でも、貴女が守った命から、国の復興、発展に繋がる多くの命が紡がれていくはずです。」
「さあ、行きましょう。」
撤退する艦隊は見た。
赤、青、緑、橙の光に導かれた二羽の鶴を。
それは、艦隊を導くように鎮守府の方向に消え去ったという。
ーーー
ーーー
ーーー
彼女達は問う。
あなたは今をどのように生きていますか?
fin