【英雄志望の悪役モブ転生者、無自覚に原作鬱シナリオをぶち壊す】~拝啓女神様、俺ってこの世界の主人公ですよね?~   作:歌うたい

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071 レギンレイヴ小隊、結成!

「えーっとぉ、まずははじめましてだねい野郎共!ウチはシャム・ネーシャナ!天下無敵のシャムちゃんだよ!以後よろしくぅ!」

「ね、姉さん声大きい⋯⋯えっと、リャム・ネーシャナです。よろしくお願いします」

 

 片方は空を思わせる蒼いミドルヘアで、片方は春を思わせる桜色の三つ編みツインテール。両方とも互いの髪色が混ざったような瞳の色で、両方とも背がちっこい。でもほんの少しだけ高く見える蒼い方は、聞いての通り活発らしい。なんせ自称天下無敵と来ているぐらいだ。

 

「わっほーい!シュラ姉だ!シュラ姉も一緒の隊だー!」

「わっ、ちょっ、シャム!?」

 

 そんでどうやら活発なのは言動だけじゃないらしい。

 気付けば目を輝かせて飛びついていた。シュラに。ていうか、シュラの胸に。

 ほう。やるな。そら天下無敵だわ。

 

「えへへへへへ!ああ、このボリューム。ふわふわ感。満足感。やっぱりシュラ姉だぁ!」

「ちょ、ちょっとやめ、ぁっ⋯⋯って、どういう確認の仕方よ!」

(⋯⋯な、なんという冒涜的な⋯⋯なるほどこれが噂のうらやまけしからんってやつかなるほどなるほど)

《チッ⋯⋯チッ⋯⋯チッ、チッ、チィッ!》

(凶悪さんや。リズミカルに舌打ちすんのやめて。恐い)

《あァ?!》

(それ俺の口癖だから⋯⋯取らないで。恐い)

 

 いやしょうがないって。あれはもう浪漫じゃん。ロマンシングな(さが)だし。だから凶悪さん精神汚染みたいなのやめてさっきから頭痛がやべーってば。

 

「うん。知り合い、では収まらない仲みたいだね」

「あ、あぁ。シャムは寮のルームメイトなのよ」

「ルームメイトだなんて水臭いなぁ、シュラ姉。ウチとシュラ姉はいわば師弟関係だかんね!」

「師弟だァ?」

「そのとーり!ウチはシュラ姉に惚れ込んだのさ!強いし〜美人だし〜かっこいいし〜寝言かわいいし〜」

「だからアタシは弟子なんて⋯⋯ていうか最後の余計よ剣の錆にするわよ!」

「ご覧の通り、照れ屋なとこもいいよね!」

「シャムぅ⋯⋯!」

 

 へー。つまり俺と同期だったって事か。言われてみれば確かに見かけたかも知れん。でもあの頃の俺はクオリオとひたすら魔術訓練してたし、うろ覚えなのも仕方ないかも。

 にしても、凄い懐きようだな。シュラもまんざらじゃなさそうだし、良いコンビじゃん。てっきりコミュ症かと心配してただけに、なんだか後方師匠面めいた安堵を覚える俺である。

 

 が、そんな折に、くいっと服の袖を引かれた。

 なんだと視線を移せば、桜色カラーの妹さんが俺を見上げていた。

 

「⋯⋯あの、こんにちは」

 

 おお、これはご丁寧にどうも。けどあれ、なんだろう。

 この子のこの猫耳ミリタリージャケット、どっかで見た覚えが⋯⋯あっ。

 

「あァ?⋯⋯、──!テメェは確か⋯⋯あん時の無傷少女じゃねぇか」

「ん。ふふ。はい。無傷です。お久しぶりですね、無敵お兄さん」

 

 最近色々ありすぎて一瞬記憶飛んでたけど、聖冠獣目録探しの時にお世話になった無傷ちゃんじゃん。

 まさかこんな所で再会するとは。結局名前も聞きそびれてただけに、嬉しい再会じゃないか。

 

「ん?ヒイロ、知り合いだったのか?」

「おう。つうかテメェとも無縁って訳じゃねえぜ。あの本探す時に世話焼かれたヤツの話、しただろ。アレがコイツだ」

「⋯⋯あぁ、確かマードック氏とやらを紹介したっていう()か。なるほど。なら僕も世話になったようなものだね。ありがとう、リャムさん」

「あ、いえ。私は大したことしてません。えっと、ヒイロさんががんばったからだと思います」

「⋯⋯チッ。ガキが謙遜しやがって」

「おや。まさか照れているのか、ヒイロ?君の人相で照れられたって気味が悪いだけだよ、ぷっくくく」

「あァ?!照れてなんかいねえわクソが!」

「⋯⋯よく分からないけど、アンタとその子じゃ絵面的に危険過ぎるでしょ。よく通報されなかったわね」

「ぐっ、このアマが⋯⋯テメェはそっちの姉と乳繰りあってやがれや!」

「してないわよ馬鹿っ!」

 

 わーわー!ぎゃーぎゃー!

 恩赦や謙遜、売り言葉に買い言葉。

 戦場の銃声みたく飛び交い過ぎて、追いかけるにも目が回りそうな騒ぎようだった。

 

「──総員、静粛にっ!」

「「「「!」」」」

 

 けれどもシドウ隊長の一喝は、さながらロケットランチャーの着弾音である。冷水をぶちまけられたように、気が付けば全員が背を伸ばし、整列していた。

 

「うむ。積もる話もあろうが、順序を間違えるな。まだ貴様らに全てを言い伝えた訳ではない。話は最後まで聞くように⋯⋯よいな?」

『ハッ!』

 

 このおっかなさだよ。有無を言わさない隻眼の迫力。

 でもこの人が隊長ならっていう感じも凄い。多少の苦手意識も拭えそうな信頼感は、俺も憧れを抱かざるを得なかった。

 

「よろしい。では先にも言ったが、私が隊長を務めるシドウだ。そして⋯⋯『リャム・ネーシャナ』」

「は、はい」

「『シャム・ネーシャナ』」

「はいさーい!」

「『クオリオ・ベイティガン』」

「はい」

「『エシュラリーゼ・ミズガルズ』」

「ええ」

「『ヒイロ・メリファー』」

「おう!」

 

 同時に込み上げる奇妙な高揚感。

 てんやわんやだったスタートから、遂にもぎ取った精鋭の位置。階段のひとつを踏み締めた感覚に、俺は無意識に頬を吊り上げていた。

 

「本日よりブリュンヒルデ本隊所属として任命された、以上の隊長一名、隊員五名。これより我らは一個の小隊として、アスガルダムの平穏の為に任務に励む。また、小隊にはそれぞれに名称がつけられるのが決まりだ。

 我らがこれより名乗る小隊名は【レギンレイヴ】。

 各員⋯⋯しかとこの名を胸に刻むように」

 

 レギンレイヴ。

 それが俺達の始まりを冠する、隊の名だった。

 

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