【英雄志望の悪役モブ転生者、無自覚に原作鬱シナリオをぶち壊す】~拝啓女神様、俺ってこの世界の主人公ですよね?~   作:歌うたい

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075 魔法のランプと精霊モクモン

「まずは満足、といったところか」

 

 結論だけ言えば、レギンレイヴの初任務は圧倒的勝利でもって達成出来た。

 

「しかし、やはり連携面はまだまだであるな。特にメリファーとミズガルズ。ミズガルズは後方のカバー意識が足りておらず、メリファーは縦横無尽に動き過ぎだ。カバーする意識がなければ後方が伏兵に襲われた際に対処が遅れ、矢鱈に動けば後衛に攻撃魔術を躊躇らわせる要因となる。注意せよ」

 

 新顔のネシャーナ姉妹の活躍も大きかったし、負けじと俺やクオリオも張り切ってる内に、気付けば魔獣は掃討し終わっていたぐらいだ。

 

「良いな。メリファー。ミズガルズ」

「チッ⋯⋯あいよ」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 けれど今回の任務で一番スコアを叩き出したのは、俺達でも姉妹でもない。鬼神の如き勢いで魔獣達を葬り続けていた、アッシュ・ヴァルキュリアだった。

 

「では本日はこれにて解散とする。各々、英気を養うように」

『ハッ!』

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「うんうん、やっぱりシュラ姉はすんごいなぁ。ウチもリャムと頑張ったんだけど、シュラ姉には全然敵わないや」

「⋯⋯経験の差もあるわよ。アンタがそこを補えれば、全然なんて事はないと思うけど」

「そーかなぁー」

 

 現地集合、現地解散。無駄のない敏腕上司感溢れる隊長様の指示で、現在帰路についてる俺達である。

 ドンパチやった後には思えない美少女師弟の背を追いながら、俺は少し考え込んでいた。

 

「リャム。少しいいかい?」

「は、はい。なんでしょう」

「さっきのことだけど。君が黄色のみならず、青の魔術を使えていたのはどういうことだろう。四原色の適正属性は、一人につき一色までのはずなんだけど」

「う」

 

 どうやら俺の考え事はクオリオと同じだったみたいだ。

 そう、四原色は一人一色までが基本。いかに優秀な魔術師であっても、特異な才能でもない限り他属性に手を出すことは出来ないらしい。

 俺もそう教わってたから、流石にひっかかっていた。

 

「う。そ、そうです。おかしい、ですよね?」

「おかしい、とまでは言わないけどもだね⋯⋯」

「でも、私にも分からないです。最初から二色使えましたし、どっちかに偏ってるって事もなくて」

「⋯⋯」

 

 やっぱ適正属性が二色あるって事で間違いないのか。

 アンブロシアの林檎齧ったら断面どうなんだろ。黄色と青だから緑色?それとも別々なのかねえ。

 なんて悠長な思考も、疑いの眼差しを向けるクオリオを見て引っ込んだ。科学者気質ってやつだろうか。こいつは疑問があれば、すぐに知りたい調べたいってなりがちだ。

 そんな視線に晒されてか、リャムがフードを深く被る。クオリオに悪気はないんだろうけど、少し良くないな。

 

「おいおい嫉妬してんのかァ、クオリオくんよ」

「なっ。どうしてそうなるんだよ。普通に気になったから聞いてるだけで⋯⋯」

「ンならその目は止めとけ。ガキが恐がってんぞ」

「⋯⋯あっ。す、すまない、つい!」

「あ、いえ、慣れてますから」

 

 すんなり謝る辺り、無意識の癖だったらしい。けど、慣れてるか。やっぱり特異な才能ってやつは、周りから変な目で見られるもんなのかね。

 才能からっきしな俺からすれば羨ましいけど、人それぞれか。

 ならばここはいっちょ、重くなった空気を払拭するという主人公の才能を発揮してみようか!

 

「だが驚いたぜ。まさか川を凍らせるなんざな。ちんまい癖にテメェもやるじゃねえか」

「ふぁ!あ、あくまで一部ですし川だから青の魔素が豊富でだからあのその」

(うーん。なにもそこまで謙遜しなくたっていいのにな)

《謙遜ってより、そんな風にワシワシ撫でてるからだよね?》

(⋯⋯あ。これひょっとしてセクハラ案件か?!)

《マスターったら幼気な少女たぶらかしてー、悪いんだぁー》

 

 いやいや、悪いってさぁ。凶悪も感じろよ、この途端に和らいだ空気感を。仲間同士のギクシャクもフォロー出来てこそ主人公。これぞ俺の才能よ。

 ほらクオリオ、お前も俺に感謝の一言くらい⋯⋯あれ。

 なんかクオリオに白い目向けられてんだけど。ついでに振り返ったシュラにまで。

 げ、解せぬ。でもなんかいたたまれないし、ここは話の流れを変えよう。

 

「そういやテメェ、あのエプロンと箒はどうしたよ」

「えっ?」

「ああ。『シルキーの献身』の触媒か。そういえばいつのまにか着替えたみたいだけど⋯⋯エプロンはともかく、箒はどこにしまったんだ?」

「う、それは、そのう⋯⋯」

(え。なにこの反応。もしかして地雷だった?!)

《わー。マスター泣かせたー。やーい極悪チンピラー!》

(泣かせてないから!すこーし涙目になっただけだから!)

 

 でもなんでだ。リャムはどうしてこんなにオロオロしてんだろう。聞いちゃまずい事だったとは思えないんだけど。

 つい首を傾げてみると、リャムは考え込むように黙った。その穏やかじゃない様子に、俺達も押し黙るしかない。

 

「⋯⋯⋯⋯うん、信じて、みる」

(?)

 

 だがふと前を歩いていたシャムが、俺達の方をちらっと見た時だった。

 ぽつりと呟いたリャムが、意を決したように顔をあげる。

 ミリタリージャケットの懐をまさぐり、そして。

 

(なんだこれ。ランプか?)

「あの、驚かないでくださいね」

 

 取り出されたのは、ランプだった。

 といってもインテリアで使うようなやつじゃない。

 いわゆる"魔法のランプ"と呼ばれるのと同じデザインのそれを、リャムは一言添えると同時に擦って。

 

「モクモン、出ておいで」

 

 なにかに呼び掛けた。

 するとランプの口からモクモクと、紫色の綿飴みたいな煙が浮かび上がって。

 

〘モクモクーッ!〙

 

 喋った。

 

「あァ?」(は?)

《わぁ》

「なにっ⋯⋯!」

 

 ええ。なにこの、なに。

 紫色の煙が喋ったし。

 しかもこの煙、なんか手足っぽいのあるんだけど。

 細く黒い棒が腕で、黒棒の先にある白い丸が掌みたいな。それが四つ、手足っぽく生えてるし。なんだこれ。

 その内ひとつがフリフリと揺れてる。あ、やっぱ手だよこれ。挨拶してるよこれ。なんだこれ。

 

「ええと、紹介しますね。わたしの友達の⋯⋯モクモンです」

〘モクモック!〙

 

 ペコッと頭を下げるリャムに(なら)って、片手をビシッとやる紫のモクモク。

 

 俺は、思った。

 ファンタジーってすげえ。

 

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