急に思いついたのを書き殴った
シトシトと雨が降る学校の帰り道、私と同じ高校の制服を身に纏った彼は、傘もささず道端に突っ立って居ました。まぁ傍から見れば変人ですよね。
一般社会に置いては、変人には関わらないのがセオリーです。
私もそれに乗っ取り、彼から視線を外しそそくさと彼の横を通過しようとしました。
しかし、彼は変人でした。なのでそれを許してくれません。あろうことか、彼は私に声を掛けてきたのです。
「おはよう太郎君」
「初めまして、私は太郎じゃなくて優花です」
「あれ?パッと見太郎って名前してそうだったんだけど、違ったかー」
「私どう見ても女ですよね?そいで私のことを太郎っぽいと思ったのなら眼科に行くことをオススメします」
「太郎じゃないなら……うーん……あっ、分かった!次郎君だ!」
「優花です。人の話を聴いてください」
何とも奇異な出会いですね。これが私と彼のファーストコンタクトでした。
◆
朝の学校。私が一番乗りです。
「おはよう太郎君」
どうやら違ったみたいです。1年B組の扉を開くと、その場でスタンバってましたと言わんばかりのスピードで彼がぬるりと現れました。
「おはようございます。私は優花です」
「ところで次郎君」
「殺す」
「ところで優花ちゃん」
「はい、何でしょうか」
「僕、童貞を卒業したいんだよね」
「はぁ……で?」
「え、いや、分かるでしょ?」
「分かりません。童貞を卒業したいから何なのですか?」
「えっちしない?」
「殺す」
とりあえず、殺しました。
◆
昼休み、熱心にスマホを見つめる彼と対面しながらお昼ごはんを食べています。
ふむ、私が目の前に居るというのにスマホですか。どうにも気に食わないですね。
「あの、先程からスマホばっかり見てますけど、何を見ているんですか?」
「ん?ああ、僕と優花ちゃんの初めてに相応しいラブホテルを探そうと思ってね。ここなんかどうだい?」
「殺した」
「I'm died……」
「なんですぐ生き返るんですか?バケモノめ」
「どの口が言ってるのかな?ところで、このラブホは優花ちゃんのお気に召さなかったみたいだけど、優花ちゃんはどういうラブホならいいんだい?」
「なんで私があなたとえっちする前提で話が進んでいるんですか……?でも、強いて言うなら私はあまり派手すぎない場所のほうがいいですかね。ラブホじゃなくてお家とかのほうがいいです」
「なるほどね。了解」
「?」
彼は一体、何を了解したのでしょうか?
◆
放課後、彼と私は制服のまま、何故か近場の薬局へと赴いていました。
彼はなにやら悩んでいる様子です。一体どうしたのでしょうか。
「うーん……」
「どうかしましたか?」
「あぁいや、優花ちゃんはゴム001とゼロサンどっちが好み?」
「殺すまでもなく死ね。……やはり、薄いほうがいいのではないでしょうか?……そ、その、生の感覚に近い方が私的には……いいと言いますか……」
「そんなこと言ってるけど優花ちゃん処女だよね?」
「死ね」
「まぁ、了解したよ。優花ちゃん好みの001を買うとしよう」
「? 何故買うのですか?」
「何故って、使うからだよ」
あなた、ゴム使う相手居ませんよね?
◆
時はまたしても放課後、私は何故か彼の家を訪れていました。いや、本当に何故?
ニコニコと嬉しそうな彼、何とも可愛らしい表情をしています。
「ささ、上がっちゃって」
「お邪魔します。ところであの、親御さんはいないんですか?こんな時間帯にメス連れ込んでるのバレたら大変ですよ?」
「え? あー……実は僕、両親居ないんだよね。昔事故って、僕だけ助かっちゃって……みたいな?」
「っ……ごめんなさい」
「いーよいーよ、別に気にしないさ。そんなことより早く部屋に入ろう。玄関寒い」
「あ、はい……」
まさかの地雷を踏み抜いてしまいました。気まずいですね。彼は気にするなと言っていますが、こちらからすれば無理な話です。
「んじゃ、ベッドに腰掛けてもろて」
「失礼します」
「オレンジジュースとコーヒーだったらどっちがいい?」
「えと、じゃあオレンジジュースで」
「はいはーい」
ガサゴソと冷蔵庫を漁る彼を尻目に私は考えました。
地雷をおもっくそ踏み抜いてししまったお詫びとして、彼の言う事を一つ何でも聞くというのはどうか?と。
ふむ、名案ですね。これなら私の罪悪感も晴れることでしょう。なんせ彼のことです。どうせえっちなお願いしてきますよ。
「はいオレンジジュース」
「あ、ありがとうございます。……あの、さっきは本当にごめんなさい」
「だから別に気にしてないって」
「私が気にするんです!……だから、そのお詫びとしてあなたの言う事、一つだけ聞き入れてあげます。そうでもしなければ、私は申し訳無さで爆発してしまいます」
「……マ?」
「マです」
「どんなお願いでもいい感じ?」
「いい感じです。生死に関わらなければ」
「おーけい。じゃあ優花ちゃん。えっち、しようか」
「上等です。かかってきやがれ」
こうして私は初体験を迎えました。予想外の形になりましたが、悪いものではなかったです。……ひとつだけ文句を言いたい点があるとすれば、彼が思いの外ベッドヤクザだったということです。
優しく手解きしてやろうという意気込みで臨んだ初体験、いつの間にか私がアンアンと喘いでいました。
この借りはいつか返してやろうと思っています。
「ねぇ太郎君」
「優花です」
「ねぇじ―――」
「殺す」
「優花ちゃん」
「はい、何でしょうか」
「優花ちゃんは僕のこと好き?」
「重い男は嫌われますよ」
「まじか」
「まじです。……ま、私は嫌いじゃないですよ。重い男。むしろ好きです」
……そういえば、結局あのゴムは何で買ったのでしょうか?使う相手なんて居ないのに。
続かない