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その日トレセン学園の一室で二種類の悲鳴が上がった。一つは純粋な驚き、そしてもう一つは……
「ライスシャワーさんがいっぱい……、かわいすぎる、尊すぎる……」
嬉しさによる悲鳴である。
「ちょっとデジタル君!?」
アグネスタキオンは、立ったまま気絶し倒れそうになったアグネスデジタルの体を慌てながらも支えた。
私は思わずその光景を横目で眺めながらもため息をつき、視線を真っ正面に戻した。そして、思わず苦笑してしまった。目の前の十体の小さなライスシャワーを見つめながら。
始まりはひょんなことだった。
最近特にハードトレーニングを課していたライスは少し寝不足になっていた。そして、寝不足を解消するため、アグネスタキオンの部屋まで訪れ――
「まさかこうなるとは」
「……私の薬が迷惑をかけて申し訳ないが、こうなるとは予想もしていなかった、一応、私、モルモット君、デジタル君、スカーレット君、カフェにも飲んで貰ったのだがこんなこと起きなかったんだ。初めての症例でね、私も混乱している」
アグネスタキオン曰く成分におかしな物は入っておらず、こんな現象を引き起こすことは考えられないらしい。
「もしかしたらウマソウルとされるものがこの薬に作用するのかもしれない、特にストレスがかかっていると防衛機能みたいなものが働かずこうなった可能性がある。この薬は廃棄もしくは……まあ今はいいか。……大変興味深いが、まずライス君を元に戻さないとね」
アグネスタキオンは目を手で覆いながら呟くとちらりとライスシャワーの方を見た。
「ついてくついてく」
「ついてくついてく」
「ついてくついてく」
「……懐かれているねえ」
「……アグネスタキオン、ライスに今までの記憶はないんだよな?」
私は歩く度にピョコピョコと後についてくる小さなライスを見おろしゆっくりとかがみライスを撫でる。そうしてアグネスタキオンに尋ねた。
「小さなライス君の反応からしてそのはずだよ。おそらくだが記憶はなくても感情は引き継いでいるのではないかな」
「……なるほど。この顔だから記憶ないなら泣かれるか逃げられると思ったんだが、感情は共有しているのか」
「ふふ、君意外と顔にコンプレックスでもあるのかい?」
「……子供には大体泣かれる」
「まあ、確かに少し強面だね。でも接していく内に懐かれそうな感じも君の場合するがね」
「……ああ、そういうこともあったな。アグネスタキオンって未来予知もできるのか?」
「……まさか、今ライス君を撫でていることから簡単に推察できるよ」
なるほど。確かに簡単に推察できることだった。私は間抜けらしい。
「まあ、ストレスが少なくなれば解消されると思うからライス君を構いまくってほしい」
「言われなくてもそうするよ」
私はアグネスタキオンの言葉を聞きながらゆっくりと小さなライスたちを撫でていく。弱い力で丁寧に。この優しい子たちを傷つけないように。
そうして撫でていくと小さなライスたちは目を細めて頭を私の方に寄せてくる。私は頭を寄せてきたライスたちを撫でていく。小さなライスたちは次々に私の方により寄ってくる。そんなことを、小さなライスが寝るまで続けていた。時計を見ると数時間は経っていた。体感は十分ぐらいであったが。
「……寝たか」
「そうだねえ、おそらく疲れたのだろうねえ。まあ、一番疲れているのはライス君の撫でリレーを数時間続けた君だろうけどね」
「撫でリレー?」
「さっきの現象のことだよ。名前をつけた方が分かりやすいからね」
「使うか? 撫でリレーなんて単語」
「使わないだろうねえ、まあ、適当に言っただけだよ」
私は思わずため息を吐いた。そうしてライスに布団を掛けようと思ったそのときだった、小さなライスたちの体が光ったのは。
「え?」
「なるほど。やはり寝ることが鍵か」
私は驚きながら、アグネスタキオンは頷きながらライスたちが光る光景を見ていた。
ライスたちは最初は淡く、見れる程度の光を放っていたが、徐々に光は増していき、最後には目を開けられない程に光っていた。そして――
「あれ? お兄様? ライス何して――」
「ライス!」
「えっ、お兄様!?」
私は思わずライスを抱き締めた。
「ふええ、ど、どうなってるの?」
ライスの声がアグネスタキオンの部屋に響いた。