萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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新作ショートムービー、良かったですね。
半ばギャグとはいえたきなさんの狂犬ぶりに磨きがかかっていて俺も鼻が高いよ……。

(公式やとハワイ行きの一件はそんなに詰められてる感じじゃなかったけど)どないする?
まぁ(この作品の設定と展開はしょせん二次創作やし)ええやろ



#16 Enigma(5/n)

 

 甜壱村里神坐之地訓戒

 

 一、甜壱ニテ生マレシ児数エ十五ヲ過ギル(まで)御山降リル()カラズ

 

 一、四ツ半ヨリ七ツ半(午後11時7分から午前5時10分)ノ外出ヲ禁ズ

 

 一、猫ト(むじな)ト鷹ト百足(むかで)ノ殺生ヲ禁ズ(該当する動物種の正確な一覧は別途参照)

 

 一、刺九砂(イラクシャ)(やしろ)ニ踏ミ入ル()カラズ

 

 一、年ニ一度ノミ上ノ禁ヲ解キ祭リヲ開キ社ニテ(シュ)ヲ捧グ当シ(儀式の方法は同神社にて管理)

 

 一、ソノ他████(ゴラマシ)様ヘノ(あら)ユル不敬不徳ヲ禁ジ、(また)御望ミアラバ疾ク叶エ、篤ク奉ル当シ

 

 永禄七年 第四代保志谷(ホシヤ)家当主 保志谷河次郎(ホシヤカジロウ) 著

(昭和二十一年 内務省指定災害調査室第七係 猿楠(サグス)██ 改)

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「ゴラマシ様?」

 

 村の各所で見られる読めない漢字の正体がわかった。

 甜壱村には戦国時代から続くという土着の信仰があり、その対象となる古い神格の名前だったのだ。

 

「そうそう。お宿でもお話があったでしょう? ここらは遅くなるとどこのお店も開いてないって。田舎だからっていうのもあるけどねぇ、夜更けはゴラマシ様の時間だからなのよぉ」

 

 時刻は午後3時。地元の喫茶店でお茶の時間にするついでに、店員のお婆さんから話を聞いている。

 特にニコルの足跡や『(オウル)』の正体に近づくヒントになるかはわからないけれど、まぁこういう伝説について知るのは面白い。

 

「へ〜……たきな、“むじな”ってなに?」

 

「アナグマ……タヌキみたいな動物です。カズラさんの受け売りですが」

 

「おほほ、近頃は滅多に見かけなくなりましたけどね。猫や鷹なんてそうそう捕まるものじゃないし、気をつけるべきなのは百足くらいかしら」

 

 そういえば、ニコルを追ってやってきた私たちは把握していなかったのだが、明後日“村の掟”にある『祭り』が執り行われるらしい。

 甜壱村は民俗学の世界やマニアのコミュニティではそこそこ有名な土地で、ここ10年ほどは村を挙げた地域振興にも取り組んでおり、この時期はいつも観光客で賑わうという。

 

「『(シュ)』とは何ですか?」

 

「その年のお祭りの主役になる子のことよ。毎年占いをして選ばれた村の女の子がね、刺九砂(イラクシャ)のお社で舞を奉納するの」

 

「わぁ、素敵なお祭りですね! 神楽ってやつかなぁ、私そういうの見るの初めてかも」

 

「……千束。今日から真面目に働くという話では?」

 

「いいじゃんいいじゃん。あ、旅館で浴衣とか借りれないかしら? ふふ、楽しみ〜♪」

 

 秘匿コード『(オウル)』───得体の知れない怪物を相手にしているというのに、まったくこの現役最強は……。

 ……地域振興に取り組んでいるだけあって、村には地産のお肉や野菜を売り出している店が多くあった。立ち並んでいた屋台もお祭り絡みだったか……浴衣を着るなら、食べすぎないようにしなきゃ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 千束たちが村の喫茶店で過ごしていたのとほぼ同時刻、朝から温泉を堪能し、昼食を済ませ宿に戻ってきたクルミが呟いた。

 

「致命的な問題がある」

 

「何よ。またぞろカウンターハックでも喰らったんじゃないでしょうね」

 

「そういうことじゃない。ついでに先回りしておくと、(ここ)にはネット回線が無いという話でもない。念のため中継用ドローンは持ってきてるし、そもそもケーブル通ってないとか基地局が遠いわけでもない。というかこの宿もWi-Fi飛んでるだろ」

 

「……あ、なんか当たり前すぎて気づいてなかったわ。確かに田舎にしちゃ快適だ」

 

「そう。そしてこの今どき大変素朴なデザインの市町村公式ホームページにも、当たり障りのないことしか書いていない。甜壱村の祭りはそれなりに有名らしいが、その手のコミュニティにも大した話題は転がってなかった」

 

「まぁ、実に平和でよろしいこと。ネットが通ってたところで『ラジアータ』も監視し甲斐が無いわね」

 

()()()()()()

 

 クルミの碧眼はじっと細められ、愛用の携行式情報端末の画面を睨みつけている。ここ数十分ほどはずっとそうだった。

 

「集落がある。旅人が来る。電子的な情報網さえ備わっている。なのに、悪い噂のひとつもない」

 

「あのね……」

 

 ミズキは呆れた様子のまま湯呑みと給湯ポットを手に取り、部屋に置いてあったパックの梅昆布茶を淹れつつ言う。

 

「そりゃアンタの性根が陰険だから何でもそんな風に見えんの。小さい町なんてどこも同じよ、刺激的な話題なんてそうそうあるもんじゃない。情報部やリコリコで5年と10年勤めた経験から言ってこれは間違いないわ」

 

「世界の裏側で12年と3世紀過ごしたウォールナット(ぼく)の勘はそう思ってない。……クラスⅨ機密案件……ラジアータは───いや、日本政府は何を隠してる?」

 

「いよいよ陰謀論者じみてきたな。まぁアンタがそこまで言うからには実際何かあるのかも知れないけど、程々にしときなさいよね」

 

 ───最高のセキュリティとは、『存在しないこと』だ。

 どんなに優れた登攀力や鍵開けの技術を持ち合わせた盗賊だろうと、門も扉も無く、指を掛けられる歪み凹みすら存在しない壁を乗り越えることは出来ない。

 地上全土が電子ネットワークによって繋がれた時代にあるからこそ、世界最高のハッカー(ウォールナット)にとって最大の敵は、常にこの“情報の真空”だ。

 

「……星谷ニコル、か」

 

 かのアラン機関の手と目にも捉えられることの無かった現代の異能、天才という言葉ですら説明できない()()の故を、誰も知らない。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 郷土資料館に併設された村内唯一の図書館には、司書の男性と2人の客人(まろうど)の他に動く影も無く、静謐な時間が流れている。

 よって、書冊が擦れる無機質な音に囁き声が混じっても、それを気に留める人間は限りなく存在しなかった。

 

「驚いたな。もうその量を検めたのか」

 

 冨加宮カズラの眼前の机に積み上がった膨大な書物と新聞のバックナンバーを見て、エージェント・ゲンティウスは素直な感想を零した。

 カズラは眼鏡の下の瞳と紙面を手繰る指を止めないまま、同じく囁き声で答える。

 

「成績上位の赤服(ファースト)なら誰でも出来ることですよ。我々が追っている相手に比べれば───、……いえ」

 

「『(オウル)』……いや、星谷ニコルだな。知己だったのか?」

 

「……千束さんほどではありませんが、東京の古参で彼女の名前を知らないリコリスは居ないですね。リリベル部隊(そちら)でも有名だと聞いて、少し驚きました」

 

「まぁ、な。リコリス部隊(そちら)日本(この国)の免疫ならば、俺たちは予防薬だ。滅多に無いことだが主戦場は()()()になる……。“赤帽鬼(レッドキャップ)”、極東の悪夢と言えば、海外の非合法組織の間でも語り草だ」

 

「なるほど。彼女らしい」

 

 言って、カズラは眼鏡のつるを押さえるとやおら立ち上がり、机に広がった書物を片付け始めた。

 

「何か───いや」

 

「はい。千束さんたちとも合流したいですし、続きは場所を変えて」

 

 二人は気づいている。

 つい先刻まで、玄関からすぐの受付カウンターで所在なさげに座り込んでいた司書の男が、唐突に書棚の掃除を始めたことに。

 

 カズラとゲンが去った後、図書館に独り残された男は、首に下がった古い携帯電話のボタンを押した。

 

「───……、はい。あのー、アレっすよね? 誰か見たヤツが居たら報告しろって、新聞……。えぇ、背の高い男子と眼鏡の女子の二人組で。赤と黒の制服で……学生かな? 若ぇのに変な趣味っすよねぇ。えぇ、はい。んじゃそういうことで……」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 夕刻、宿に帰投して全員集合。

 

「何か報告のある方は?」

 

「今日からお祭りなんだって! あとね、村の色んなとこにあるあの変な字は……」

 

「残念ながら、こちらは特に何も……。クルミは?」

 

「場末のネット掲示板にオカルト話がいくつか。古い怪談や昔の事件を面白おかしく誇張してるだけの眉唾物ばかりだ、この手の与太話はどこの地域にもある」

 

「では───私たちからひとつ」

 

 言って、カズラさんは1台のタブレット端末を取り出した。

 画面に映っているのは……古い新聞記事だろうか。かなり小さく報道されているように見えるけれど───。

 

「平成元年、甜壱村を訪れた40代の男性1人が失踪しています。それが警視庁捜査一課から転身した職業探偵、という異色の経歴の持ち主だったことで少し話題になりましたが……独身で親族も名乗り出ず、同年冬に捜索が打ち切られてそれきりだったようです」

 

「あーね、その事件ならアタシも目つけてたわよ。ここ来る直前にDAのお偉いさん───普段警察とよろしくやってる人の名前で村の駐在所を強請(ゆす)ってみたけど空振り。もう半世紀以上前の話だし、そもそも当時のこと知ってる人間すら珍しいんじゃないかしらね」

 

「……ミズキお前、今回ただの荷物持ちじゃなかったのか。ぼくのアンテナには引っかからなかったぞ、そんな……」

 

「待った。アンタの次の台詞を当ててあげる───『なんで教えてくれなかったの?』。答えは聞かれなかったから、そしてもう調べられることがなかったからよ」

 

 ミズキさん曰く───日本の行方不明者通報はD()A()()()()()()()()()()()()()年間8万から9万件にのぼるが、そのほとんどは認知症の高齢者の徘徊によるもので、また遭難や家出といった原因を問わず全体を見ても95%以上が帰還しているという。

 

「こういう山の中だと遭難なり獣害で……ってこともあるんじゃないか、なんて思うかもしれないけどね。そっちも統計的に特別不自然って件数じゃなかったわ。つまりシロよ、少なくとも外様の人間から見える範囲じゃ」

 

「……ミズキ、やっぱ禁酒したほうがいいよ。これ前に楠木さんが愚痴ってたんだけど、DAの内部スタッフってやっぱ職場恋愛多いらしいからさ。ほら、うちにはもうクルミやたきなが居るし」

 

「おうそりゃどーゆー意味だァ小娘ェ〜!?」

 

「あいだだだだだだグリグリはやめろグリグリはーっ!!」

 

 大変微笑ましい光景を披露してくれた千束とミズキさんのことはさておき。

 

「それで結局、この事件のどこが怪しいんですか? そもそも、私たちの追っている『(オウル)』と何か関係が?」

 

「えぇ。ラジアータにこの失踪した男性について照会したところ、彼はD()A()()()()()()()でした。当時はまだラジアータの本格稼働以前……情報部の捜査と、公安警察や内閣情報調査室との連携だけが頼りの時代。件の探偵が警戒(レッド)リストに載っていた理由は、記録が残っていませんでしたが───」

 

「つまり、重要なのはこの(ばしょ)のほうで、ニコルの素性を探ろうとしたDAの人間が消えてたのは偶然……いや、村やその周囲について嗅ぎ回るヤツを消すための力がどこからか働いてるってわけだ。その探偵とやらが握っていた何がしかの情報こそ、『(オウル)』の正体に繋がる手がかりになる」

 

 クルミの言葉に、ミズキさんのダブル拳骨グリグリから解放された千束が、何やらぽやっとした表情で曖昧に頷いた。

 戦闘中の機転もさることながら語学にだって堪能だし、千束とて頭脳は人並み以上のはずだが……まぁ今回は相手が悪いか。

 

「しっかし、情報っても一体なぁ〜んの話なのかねぇ? こんな辺鄙な田舎に、DAを鉄砲玉として顎で使えるような()()()()()()()()の種になりそうな政治的爆弾が眠ってるなんて考えにくいし。そもそも、半世紀以上前のスキャンダルなんか掘り起こして今更どーなんのよ……まぁ、それを守ってそうな『(オウル)』にも言えることだけど」

 

「あるいはだからこそ、でしょうか。当時を知る人間も少なくなり、恨み辛みも薄れる年月の経ったいまだからこそ、過去を清算すべき機会と判断されたのかもしれません」

 

「ねぇたきな、もしかして今回私の出番ない?」

 

「そうと決まったわけではないと思いますけど」

 

 あまりにも正体不明すぎて忘れかけていたが、『(オウル)』はDAの人員にも被害を出している立派な攻撃者だ。

 私たちがその標的にならない保証はない……というより、ニコルと甜壱村についてこうして調べ回っている以上、あるいは既に目をつけられている可能性が高い。

 

「これは私の勘ですが、かなり核心めいたものに手をかけている感覚はあります。今後は『(オウル)』の襲撃を警戒し、なるべく固まって行動するようにしましょう」

 

「ん、それは賛成。特にミズキとクルミは要注意だね」

 

「よろしく『英雄』殿。初めて会った時を思い出すな」

 

「あ〜、あの時! いやもうホンット大変だった、私ら危うく三枚下ろしになるとこだったんだから! もう二度と敵に回したくないわ〜」

 

「ということは、差し当たって───」

 

 差し当たって、そうだ。

 長期滞在を見越して、宿は朝食だけ出るプランで取っている。昼と夜は改めて予約するか、自分たちで都合しなければならない。

 そして、今夜の夕食は予約していないから……。

 

「おっ? たきな〜、ひょっとして楽しみだった?」

 

「……いえ、違います。千束は言い出したら聞かないので、どうせこうなるだろうなと。調べたら浴衣の貸し出しサービスがあったので予約しておきました、公民館まで受け取りに行きましょう」

 

「相変わらずこういう時の手際良いわね。ま、たまには郷土の地酒ってやつも悪くないかしら? 働いた分、飲むぞ〜♪」

 

「おい、程々にしとけよ。ゲンが居るからって、毎度毎度おんぶに抱っこじゃいざって時まずいだろ」

 

「問題ない、重量のある物資の護衛を想定した訓練も受けている。淑女を守るのは男児の務めだ」

 

「あはは、頼もしいですね。それじゃあ───千束さん」

 

 会議の時間は終わりだ。

 屋外からは既に、笛と太鼓の音が聞こえ始めている。そこに集まった人々の喧騒も。

 

「しゃあっ! 喫茶リコリコwith委員長チーム、甜壱村祭りに出撃だーッ!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  これのかむどこにまし あめつちにひろくおわす おんあるじ

 

  かけまくもかしこき ████████

 

  ほのたかやまのいしのやうなり たかひかるみすがたにておひでたまふ

 

  をろがみたてまつりもうしあげる

 

  まなこのひのやを かかげたまふ

 

  やをよろずのまがごと けがれをたきあげ

 

  はじめのまろかれに おかえしたまふ

 

  かしこみかしこみもまをす

 

  かしこみかしこみもまをす

 

 

 

 

 

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