オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル
タグ:オリ主 神様転生 残酷な描写 アンチ・ヘイト 転生 クロスオーバー 見方によってはコメディ ダーク バットエンド アンチ転生者 転生者多数 チート 俺TUEEE
このまま死を受け入れて、好きなチートをもらって別の世界に異世界転生するか? はたまた神の出す課題と向き合い、今の世界でもう一度生を掴み取るか?
死にゆく者の前に現れて、そう選択肢を突き付ける自称“元”神。
どちらを選ぼうとも、ディーは観客としてその様を面白おかしく見守るだけ。
これは、どこまで行っても“元”神の暇つぶしの物語。
久々の新作ですが、今回これまでの作品とは少し毛色が違います。
物語が、全て順風満帆ハッピーエンドだと思うなよ。
キキ~ッ!
車が急ブレーキをかける音が響く中、一人の男が死を迎えようとしていた。
それは雨でハンドル操作を誤った車による、毎日世界のどこかで起きている程度の事故。
男と車の距離はもう僅か。避けるのも間に合いそうになく、あと数秒もすれば男は間違いなくぶつかるだろう。
男は善人と言うのは憚られるが、極悪人というほどでもない。いわばどこにでもいる小悪党というべき者だった。だが、一つだけあまり見ない特徴を挙げるとするのなら、
『ちょっと失礼? 少し話をさせてもらっても構わないかい?』
それは人……少なくとも人型の何かだった。
背丈は小柄で子供のよう。どこかエコーがかかったような不思議な感じの声。体型は白いローブのような物を纏っていて不明だが、一番印象に残るのは顔の上半分を覆う金属製の仮面だ。
『と言ってもこの状況じゃ落ち着いて話も出来ないか。なので……ストップ』
何かが軽く指をパチリと鳴らすと、突如として
猛スピードで動いていた車も、近くを歩いていた通行人も。風にざわめく葉や丁度降っていた雨に至るまで、
『大丈夫かい? 生きてる? まあほっとくとこのまま死んじゃうんだけどね!』
「……な……なっ!?」
この状況を引き起こした何かと、本来死ぬ筈だった男の意識以外が。
『さ~て。これでゆっくり話が出来るね』
何かはゆっくりと男の前に立ち、そのまま口元だけにっこりと笑いかける。
『僕はディー。これでも“元”神様だよ。まあ短い付き合いになるかもだけどよろしく。ところで君……
ディーと名乗った何かが、時の止まった世界で男に語ったのは妙な話だった。
生きていたいという男に対し、ディーは二つの選択肢を提示した。
一つ目は
ただしそれはこの世界においての死というだけであり、死後の魂を多少弄って別の世界に送る……いわゆる異世界転生というものをさせるという。
『別に魔王を倒せとか世界を救えなんて強制はしない。君が望むならチート……まあ好きな能力でもあげようか! それで無双しても良いし、可愛い女の子を侍らせてハーレムを作っても良い。その善悪に関しては……そうだね。
それを聞いて男は小躍りした! 何故なら男は異世界転生系統のライトノベルを幾つか読んだことがあるからだ。
それによると、総じて主人公達は異世界で強大な力を手にし、自分にベタ惚れの女性を侍らせて幸せに暮らしていた。
『もう一つの選択肢は、
その言葉を聞いて、男はそんなの選ぶ筈がないだろうと笑った。
どんな課題かも分からない。どんな能力かも分からない。それでいて失敗したらそれまでで、おまけに成功しても今の人生を続けるだけ。チートとは無縁のただの人生を。
一応三つ目の選択肢として、このまま転生せずに普通に死を受け入れるというのもあったがそれは論外。
『最後にもう一度。本当に良いのかい? 能力の事もそうだけど、
どこか少しだけ寂し気に言うディーだったが、男はまるで一顧だにせず異世界転生をする事を選び、迫りくる車による死を受け入れた。
受け入れてしまった。
◇◆◇◆◇◆
そこは真っ白な空間だった。
だだっ広い……いや、広いや狭いという概念すらもよく分からなくなる何もない場所。
ずっと居ると常人では精神にダメージを受けそうなその場所には、
『さ~て。今度の転生者は何を見せてくれるかな!』
ここでは明らかに異質な液晶テレビ。そしてそれを観て笑う光球……という、よく分からないモノがあった。
男を送り出した後、ディーは自分のプライベートスペースに戻り人としての姿を解いた。光球が一番楽な姿だからである。
その空間に置かれたテレビは画面が分割されており、それぞれにディーが観たいと思った人が映し出されている。
そう。ディーにとって転生者の……というより、
自らを観客と称し、誰かの人生を映画か何かのように楽しむ。そして最近は、死にゆく人を異世界に転生、または転移させてその反応を楽しむというのがディーのマイブームになっていた。
といっても、選んだ者自身が今の世界で生きるために課題に挑むというのであれば、それはそれで良いとも思っているのだが。
画面の一つには、先ほど意気揚々と異世界に降り立った男の姿が映っている。わざわざ条件として、最初からそこそこ成長した肉体(なお他の条件としてイケメン、頑強な肉体、格好の良い装備等)を指定しており、すぐに辺りを動き回っている。
『さてさて。最初が肝心だよ』
男が送り込まれたのは、割とメジャーな剣と魔法の世界。よって当然だが、俗にモンスターと言われる生物も存在する。
そして、男の目の前に現れたのは、この世界ではポピュラーなウサギ型モンスター。角が生えてやや大柄な以外は普通のウサギとあまり変わらない。
男は格好良く腰から提げていた剣を抜きはらい、そのままモンスターを両断しようと振りかぶり、
『そりゃそうだよ。素人が剣を振るってもそうそう当たるものじゃないもの』
ディーはくすくすと醜態を見て笑う。
確かにディーは彼の望んだ
だがそれ以外は保証していない。彼自身がきちんと訓練でもしているのならともかく、適当に振るった剣で野生動物に簡単に当たるかというとNOだ。
おまけに装備もカッコいいだけで性能は並かそれ以下。ウサギの角でも当たり所が悪ければ貫かれる。
『……おっ!? 無事だったね! えらいえらい!』
男が痛みに悲鳴を上げながらも必死に立ち上がるのを見て、ディーは喝采を上げる。こんなに早く役者が諦めてしまっては興が削げるからだ。
幸い完全に貫かれた訳ではなく、血は出ているが掠り傷程度。それでも恐慌状態になったのだろう。男は最後のチートを発動させた。それは、
パチンっ!
ディーの使ったような
いくら怪我をしていても、いくら剣の素人だったとしても、限りなく止まっているに等しい相手を攻撃するくらいなら出来る。
こうして男は指を鳴らして止まった時間の中でモンスターを何度も切りつけ、ようやく勝利を得たのだった。ただ、
『良いのかなぁ? こんな序盤でそれを使っちゃって』
ディーは敢えて匂わせるだけで男には言わなかったが、チートにはそれぞれ代償がある。
強力であればあるほど代償も大きく、時間操作などはその筆頭だ。なにせ、
『
画面に映る男は激戦(本人からすれば)を潜り抜け、数分後に
『さあ。がんばれがんばれ! 君の新しい人生は、まだ始まったばかりなんだから!』
その様子を想像し、ディーは僅かに笑みを浮かべながら男の行く末を見守ることにした。
生きるにせよ、死ぬにせよ、精いっぱい動いて少しでも面白くなるようにと期待しながら。
いかがだったでしょうか?
ディーのよく分からなさと悪辣さが伝われば幸いです。
続きを書くかどうかは今の所未定ですが、この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!