パブリク戦記   作:TFTRDH

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地球降下作戦からチェンバロ作戦まで、基本的には宇宙での戦いは間が空くんですよね。今回が独自設定タグ回です。


第四話 ジオンの後方を攻撃せよ

 

 我が戦隊は、総司令部より特別な作戦の実行を命じられた。作戦名は、旧世紀の類似作戦にあやかってシャングリラ、驚くべきことにサイド3直接攻撃が目的だ。今のところ負け続きの連邦軍としては、サイド3直接攻撃によりサイド3の住人を動揺させ、ザビ家の指導力に対する疑念をもたらし、連邦市民の士気を高めたいのだ。軍事的にも、今のままジオンの兵力が次々と地球に送り込まれるのは望ましくないが、本土攻撃の懸念が有れば多少なりとも戦力を本国に張り付けなければならなくなり、地球に対する圧力を少しは弱める事が出来るだろう。特に、地球制圧作戦はキシリア・ザビ率いる突撃機動軍が主体となって進めていることから、ドズル・ザビ率いる宇宙攻撃軍との間に楔を打ち込む効果も期待できよう。まさに一石二鳥の作戦と言う奴だ。

 本作戦にあたって、特別な機材が用意された。通常のパブリク突撃艇では、ルナ2から地球を挟んで反対側の月の裏側に位置するサイド3まで直接往復することは出来ない。しかも、今回は奇襲作戦であることから、地球スイングバイを使った航路は使用できない。裏切者のサイド6方面も、サイド3と行き来する船が多いことから不適当だろう。すると、サイド1・4方面から大きく迂回しながらデブリに紛れて接近するしか方法は無い。サラミスでやるには些か目立ちすぎるだろう。とは言え、本作戦の為だけに専用の器材を開発するような余裕は無い。そこで急遽でっち上げられたのが、ツイン・パブリクだ。名前の通り、パブリク突撃艇を2隻横並びに連結して作られた長距離作戦専用の宇宙突撃艇である。運動性は大きく落ちたが、加速力は変わらない、操縦の仕方はパブリクと全く同じだ。だって、パブリクだもの。

 「司令、弾頭は核でありますか?」

 「君は南極条約を忘れたのかね?弾頭は通常だ、但し大型の物を使う」

 さすがに核兵器を使うわけにはいかなかったが、堅牢な密閉型コロニーに損害を与えるため、通常の対艦ミサイルよりも大型の専用ミサイルが準備された。保管されていた旧世紀の弾道ミサイルを改造して造られたものだそうで、ツイン・パブリクでも搭載できるのは1発だけだ。作戦目標は、ジオンの軍事用コロニーである。連邦軍はジオンのようにコロニーごと住民を滅ぼすことを目的とはしない。とは言え、実際は当たれば何でもいいというのが暗黙の了解だ。精密にジオンの軍事用コロニーを狙うのは困難を極める上、必要なのはサイド3が直接攻撃を受けたという事実だけなのだから。

 

 遂に我々”ツイン”・パブリク隊は、歓呼の声に送られてルナ2を出港した。ジオンに一矢報いるこの作戦には大きな期待がかかっているのだ。連邦側の哨戒線を抜け、破壊されたサイドの残骸漂う暗礁宙域に向かう。ここから先はルウムでの敗北以来連邦軍の目の届かぬ領域だ、いつの間にやらジオンが拠点を作っているかも知れないし、ジオンの哨戒部隊と鉢合わせするかも知れない。皆監視を厳にしながら進んでいく。結局の所、旧サイド1・4宙域までは何にも遭遇せず順調に進むことが出来た。ジオンの眼はルナ2に向いており、しかもルナ2の艦隊は基本的には貝のように引き籠もっているのだ。ジオンの連中は、ルナ2だけ監視していれば十分だと思い、まともに哨戒などしていないに違いない。これならサイド3を突くのも容易かと思われた矢先、姿を現したのは金平糖のような形をしたジオンの小惑星だった。

 「少佐、あの小惑星は?」

 「宇宙要塞ソロモン、未完成で機能していないとの情報だったが・・・時間の問題だな。各艇は撮れるだけ写真を撮っておけ。」

 宇宙に浮かぶ金平糖の周囲には沢山の補給艦や作業艇が浮かび、そこかしこで突貫工事が行われているようだ。望遠で確認すれば、スペースゲートはほぼ完成し、砲台群も既に機能している状態のように見える。この宇宙要塞が完成していれば、月周辺のジオンの警戒網は強化され、奇襲は難しくなっていたかも知れない。このタイミングで作戦が実施出来、また要塞の偵察も行えたことは僥倖と言えるだろう。ジオンの連中は完全に安心しきって作業に没頭しており、こんな所に連邦軍が潜んでいるとは思いも寄らないだろう。今抱えているこのミサイルを、あのスペースゲートにぶち込んでやりたいとの衝動に駆られる。

 「ミッターマイヤー少尉、今すぐこのミサイルをあそこにぶち込んでやれば、ジオンの連中を慌てふためかせてやれると思うのだが」

 「そうですね中尉殿、しかしサイド3に撃ち込んでギレン・ザビの心胆を寒からしめてやったほうが余程効果が大きいかと」

 「ぐぬぬぬぬ、ここは辛抱の時か」

 仕方がない。今ここに撃ち込んだら作戦は露呈して失敗、要塞の工事が数日遅れ、それで終わりだ。我々は、戦略的な任務を負ってここに来て居るのだ。そのまま進むと、宇宙に浮かぶ空き缶のようなサイド3の密閉型コロニーが見え始めた。何の障害もなくここまでたどり着けるとはまさに奇跡、二度とこのような機会は無いだろう。気負いながらも攻撃目標を確認する。情報部が特定した軍事用コロニーの位置情報だが、正直どれも同じ形をしたコロニーの見分けなど付かない。命令一下、割り振られた攻撃目標に対して突撃を開始した。エンジン全開だ!まずはサイド3外縁部に近い目標を攻撃した連中の攻撃が着弾、大きな花火を咲かせた。だが、パブリク隊はそのまま奥へ奥へと突撃し続ける。進路上にある目標を攻撃しながらサイド3を突っ切って抜けるのだ。この頃になると、漸く敵の侵入に気がついたジオンの防衛部隊が押っ取り刀で出撃してきた。流石にジオンも本国を空にするほどの間抜けでは無いらしい。だが今回の我々の相手はでかいコロニーで、艦を相手にする時ほど近づく必要は無い、今頃出てきたところで遅いのだ。私に割り振られたコロニーは多分これだろうと腹に抱えた大型ミサイルを切り離すと、軽くなった艇はさらにぐんと加速する。サイド3を突っ切った我々は、月軌道を離脱してサイド6宙域を掠めて帰投するルートに入った。何隻かはジオンにやられたのだろう、煙を噴きながらサイド6への不時着を選んだようだが、生きてさえ居れば連邦政府がなんとか手を回して回収してくれるだろう。そのまま進み、漸く連邦軍の哨戒圏にたどり着くと、緊張が解けたのかこの数日分の疲れが一度にどっと押し寄せてきた。我々はやり遂げたのだ!

 数日後、シャングリラ作戦の成果は些か誇張されて全地球圏で報道された。連邦政府や軍の高官達はご満悦だ。一方ザビ家の連中は顔を真っ赤にしていたことだろう。

 

 さて、シャングリラ作戦の後、我々は引き続きツイン・パブリクに乗り続けることになった。今後の反攻作戦に備え艦隊戦力を回復・温存する方針に変更は無いが、パブリクやサラミスの小部隊をばら撒いてジオンの後方を攻撃し、嫌がらせを続けるのだ。新しく編制されたパブリク戦隊はルナ2や地球軌道周辺での通商破壊を担当するが、足の長いツイン・パブリクを装備した我々の戦隊は、サラミスなどと同様より遠いサイド3周辺にまで進出して作戦する。何度か行われた地球降下阻止作戦の為もあり、地球軌道上にはジオンのパトロール艦隊も配置されており、ジオン側の警戒も比較的強めだ。だが、本国に近い宙域ではどうしても気が緩みがちと言うもの、その油断を突くのだ。コロニーや艦艇の残骸に紛れて監視を続け、有力な艦艇が通りかかればこれを偵察してやり過ごし、輸送艦が単艦でやってこよう物ならたちまちエンジン全開で飛び出していき、これを屠る。その繰り返しだ。サイド3強襲こそ二度とすることは無かったが、ソロモンやグラナダといったジオンの重要拠点への攻撃や偵察任務も何度かこなすことになった。何度かは発見されて迎撃されたのだが、流石はパブリク譲りの加速力で、敵に追いつかれることは一度も無かった。そろそろ時効だろうから白状するが、一度などは過去の戦史にあやかって、「我に追いつく敵機無し」とジオンに発光信号を送ってやったこともあった。あの時のガトルのパイロットはさぞ悔しがっただろうに違いない。

 

 




MS IGLOOでグラナダに陽動に来たサラミス戦隊が月一周してますけど、月軌道周回出来ると言うことはサイド3を直接攻撃出来ると言うことだぞ・・・
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