パブリク戦記   作:TFTRDH

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第五話 チェンバロ作戦

 半年ほどツイン・パブリクでの後方攪乱戦に明け暮れていたが、遂に戦局は動いた。ルナ2に潜入したジオンの工作員にマゼランを破壊されるというハプニングなどもあったが、待ちに待った反攻作戦の開始だ。勢いを失い、戦力も物資も消耗させたジオンを打ち倒す時が来たのだ。思えば、北米に居たガルマ・ザビが突然戦死したのがその前兆だったのだろう。11月にはオデッサ作戦が実施され、連邦地上軍はジオンに勝利、その勢いまま占領地を奪還し始めた。攻守交代だ。ジオンを完全に地球から掃討する間もなく、宇宙での反攻作戦も計画された。突撃艇乗りの中尉如きには知る由も無いことだったのだが、ビンソン計画によりジャブロー地下で大量に建造されていた宇宙艦隊が打ち上げられてルナ2の艦隊と合流、ジオン宇宙攻撃軍の本拠地たる宇宙要塞ソロモンを陥落させるのだ。

 作戦に合わせて、再び部隊が再編された。パブリク戦隊はワッケイン司令の第三艦隊の指揮下に入り、突撃攻撃隊を編制して要塞攻略作戦の先鋒として参加する。今度乗るのはパブリク突撃艇D型、この戦争での戦訓を全面的に取り入れて開発された新造艇である。ミノフスキー粒子散布下での戦闘に完全に対応し、センサー類や装甲等も強化されている。ツイン・パブリク613号艇に別れを告げ、新たに受領した617号艇は私が乗った最後のパブリク突撃艇となった。

 作戦はこうだ。パブリク戦隊は部隊の先鋒として突撃し、敵要塞の長距離砲を封じる。空軍で言うDEAD(敵防空網破壊)任務だ。続いて第三艦隊の主力が突撃し、ジオン軍を誘引している間に、第二連合艦隊本隊が対要塞兵器を使用して打撃を与え、総攻撃により要塞を陥落させる。敵要塞に突撃して要塞砲を潰すのは、非常に難易度の高い任務だ。対艦攻撃に比べ目標が非常に小さく、さらに専用の徹甲弾頭を直撃させなければ無力化は見込めない。まして敵火線に向かってまっすぐ突っ込まなければならないから被害が嵩む上に、チェンバロ作戦の為に増員されたパブリク乗りの半分は練度も当てにはならないだろう。そこで今回使用されることになったのが、M弾頭ミサイルだ。発射されると一定距離を進んだ後に、要塞砲のビームを反射するビーム攪乱幕を周囲に散布するミサイルだ。これならば要塞砲に直撃させる必要は無いので発射距離も比較的遠くて良く、練度不十分な連中でも効果的に敵要塞砲を無力化することが出来るだろう。

 

 12月14日、ティアンム提督率いる第二連合艦隊がルナ2を出撃した。ルウムでの敗北から早1年が経とうとしている今、復活した宇宙艦隊の錚々たる艦列に思わず涙がこぼれた。遂に復仇の時が来た、今度は我々がドズル・ザビを捕らえて動物園の檻に入れてやるのだ。先に出撃したティアンム提督の本隊は、大きく迂回してサイド1の暗礁宙域に向かった。囮となる我々第三艦隊は少し遅れて出撃し、その存在を見せびらかすように真っ直ぐサイド4の暗礁宙域に向かった。道中、サイド6方面から特異な艦艇が合流してきた。全身白く塗装した目立つ艦、かの高名な第13独立戦隊のホワイトベースだ。何でも地球では随分と戦果を挙げた精鋭部隊だと言うことだが、連合艦隊打ち上げの援護任務を終えて、今度はチェンバロ作戦に参加するべく第三艦隊に合流してきたのだ。第二連合艦隊にも多数のジムが配備されているが、MSでの戦闘は初めてで新兵同様、そこにきてMSに熟練した精鋭部隊が合流してくれるとは実に心強かった。

 

 12月24日、遂に眼前に見えるソロモン攻略戦の開始だ。第三艦隊は身を隠していたサイド4の残骸から横隊で正面攻撃をかけ、ジオンの注意を引きつける。先鋒であるパブリク戦隊は第三艦隊の前面に展開し、攻撃隊形を整えた。200隻ものパブリクが隊列を組むのは戦争が始まって以来初めてのことで実に壮観だ。ワッケイン司令の通信が第三艦隊全将兵に響き渡る。

 「諸君達は15分だけ持ちこたえれば良いんだ。その間に本隊が対要塞兵器を使用する」

 「攻撃開始。マイナス8。パブリク各機、3、2、1、0、発進!」

 命令一下、パブリク隊は巡航用ブースターを切り離し、流星のように白い尾を引きながら突撃を開始した。パブリク隊が突進していく様は、まるで宇宙要塞ソロモンに降り注ぐ流星雨のようだ。突撃が開始されたら時間との勝負だ、ブースターを全開にして遮二無二突撃する。流石に敵も総攻撃に気がつくはずだ、ソロモン要塞全体が戦闘態勢に入り本格的な迎撃が始まる前に、射点に到達してミサイルを発射出来れば理想的だ。だが、流石にそう都合良くいく物では無く、じきに敵要塞砲が火を吹き始めた。こうもミノフスキー粒子が濃ければそうそう当たりはしないが、真っ直ぐ要塞砲に向かって行けばそのうち射撃を修正されて落とされてしまうから、時折サイドスラスターを吹かして射線をずらしてやりながら前進を続けるのだ。そのうち、敵のガトル宇宙戦闘機も迎撃に出てきた。MS部隊が出撃するのはビーム攪乱幕の展開後要塞にとりつく段階で、パブリク隊には護衛は付かない。振り切ってしまえばどうということはないが、交差する合間に何隻か落とされたようだ。だが、パブリク隊の突撃は止まらない、第三艦隊の射撃に援護されて距離5000ー通常より遠いが、動かない要塞砲相手にはこれで十分だーまで接近すると、要塞砲からの砲撃に当たり爆散する艇も出始めるが、各艇は次々に砲台にM弾頭ミサイルを叩き込んだ。私も抱え込んだミサイルを発射すると即座に反転、退避に移る。背後を確認すると、要塞砲のビームが乱反射してあらぬ方向に飛び散ってるのがあちこちで見えた。ビーム攪乱幕展開作戦は成功のようだ。第三艦隊の後方に控える輸送艦までたどり着くと、隊長のチェンバレン少佐のパブリクが無事戻っているのが見えた。第二次攻撃の可能性に備え推進剤とM弾頭ミサイルの補充を受けるが、どうも戻ってくるパブリクの数が少ないようだ。要塞攻略の激戦の上、過酷な任務、増員された連中は練度も低いとは言え、半分近くが帰ってこないことに流石に衝撃を受けた。

 「まさか半分も帰ってこないとは、第二次攻撃は大丈夫なのか?」

 思わずこぼしたが、ミッターマイヤーは随分楽観的だった。

 「第一次攻撃はほぼ成功、要塞砲はほぼ無力化出来ましたから次は大分楽ですよ。それに、MS隊も発進しましたから」

 確かにそうだ。第一次攻撃で取り零した砲台を潰すだけだ、第一次攻撃の様に大きな損害を受けることも無いだろう。補給を受けつつそんな話をしていると、ソロモン表面に巨大な光が輝いた。本隊が対要塞兵器とやらを使用したのだ。光は周囲の敵部隊を巻き込みながらソロモンの表面を焼いて消え、あまりの威力に我々は思わず言葉を失った。

 「これは、第二次攻撃の必要は無いな」

 「ええ・・・」

 ともあれ、パブリク戦隊は本作戦における任務を無事果たした。だがソロモンでの戦いは終わっていない。ミサイルをM弾頭から通常の対艦ミサイルに積み替えると、宇宙突撃艇本来の任務に戻るべく、一路ソロモンの戦場に飛び出した。第三艦隊のMS隊は大きく崩れた敵の防衛線を突破してソロモン要塞に取り付き始めたが、外の敵が全滅した訳ではない。今度の目標は先のソーラーシステムによる攻撃を生き残り、健気にも未だに防衛線を維持している残存ジオン艦隊だ。此の期に及んで健気なことだが、味方のボールやジムに取り囲まれて満身創痍で対空砲火も既にまばらになっている。だが、沈めきるにはジムやボールでは少々火力不足のようだった。

 「これは我々が手を貸してやらねばなるまい。突入するぞ!」

命令一下、パブリク隊は散開して猛然とジオン艦隊に襲い掛かった。私が狙ったのはチベ級重巡洋艦、ジオンの主力であるムサイに比べ些か旧式だが、より強力で頑丈な艦だ。易々と接近して小隊単位で一斉に対艦ミサイルを叩き込むと、半分程がその頑強な船体に吸い込まれ、それが止めとなり派手な爆発を起こして爆散した。あれでは生存者は殆ど居ないだろう。そのまま離脱すると、先に攻撃を終えて帰投に入っていた味方のパブリクが爆発するのが見えた。復仇に燃えるジオンのガトル戦闘機にやられたのだ。

 「戦闘機隊は何をしているのだ!」

思わず叫び、機体をそちらに向かって加速させる。次の目標を定めたか、あるいは逃げようとしたのかは分からないが、ガトル戦闘機が飛び去って行くのを全力で追いかける。ミサイルさえ切り離してしまえばこちらの方が速力は上だ。たちまち照準器にガトル戦闘機を捉えると、機銃を一連射、ガトル戦闘機はバラバラになって飛び散っていった。私の撃沈スコアに戦闘機が初めて加わった瞬間だった。

 

 二度目の補給を受けていると、新たな命令が下った。ソーラーシステムによる被害を受けていないソロモン要塞背面のスペースゲートから敵の予備戦力が出撃し、主力である第二連合艦隊への逆襲を企てていたのだ。次なるパブリク戦隊の任務は、集結中の敵艦隊に攻撃をかけ、逆襲の出鼻をくじくことだ。パブリク隊は補給を済ませると、突入隊形を整えながらソロモンの戦場へ再び出撃した。今度は第二連合艦隊から合流してきた護衛のセイバーフィッシュ隊も一緒だ。敵MS隊の迎撃を排除しながらパブリク隊は突入し、もうそろそろ敵艦隊を捕捉・攻撃できる位置に到達しようという時に、隊長のチェンバレン少佐からの攻撃中止命令が入った。

 「もう敵は目の前だというのに引き返すとは一体どういうことだ。」

私の疑問には、ミッターマイヤー少尉が答えてくれた。

 「暗号通信を受信しました。敵艦隊に向けてソーラーシステムの第二射が行われる模様。」

 「もう一回あれが撃てるのか、それは巻き込まれてはたまらんな。」

 間も無く二度目のソーラーシステムの照射が行われ、第二連合艦隊に向けて進撃していた敵艦隊は壊滅した。これで勝敗は完全に決した。敵将ドズル・ザビも観念したのだろう、しばらくするとあちこちで退却の信号弾が上がり、残存ジオン部隊はソロモン要塞を放棄して撤退し始めた。こうなったらやるべきことは唯一つ、追撃戦である。私の目線の先に見えるのは、全速力でソロモン要塞から遠ざかろうとする敵輸送艦パゾク級だ。連邦最速を誇るパブリクに対して、その航行速度はあまりにも遅すぎた。たちまち追いつくと、対艦ミサイルを1発お見舞いしてやる。ミサイルは推進器がある後ろ側の船体ユニットに綺麗に吸い込まれてゆき爆発、これでこのパゾクは航行不能、漂流している前半分の船体は後続の友軍が適切に処理してくれるだろう。どうせやるなら敵戦力を直接削りたいものだと思いさらなる獲物を求めて前進すると、逃走するムサイとザクの集団を発見した。ザクはどれもこれも武器を失い、ノーマルスーツのジオン兵がしがみついたロープを牽引しながら退却を続けている。正直やりづらいが、貴様らのするべきことは撤退ではなく降伏である。武器を失い、撤退する兵を文字通り抱えてまともに動けないザクなど唯の的だ。一番近いザクに接近、速度を合わせて照準して機銃を掃射。さすがに殆どが弾かれるが、数回連射すると推進器に命中したのかバックパックが爆発、牽引していた兵も巻き込んで吹き飛んだ。さすがに見かねたのか、まだ戦闘能力を維持していた白色のザクがヒートホークを振りかざしながらこちらに向かってきた。ノーマルスーツのままの兵を巻き込むことを避けたいのだろう、流石にザクマシンガンは撃ってこない。

 「中尉殿、3時の方向、白色のザクが向かってきます。」

 「色付きか、エースとは厄介だな。だが、追いつけまい。さっさとムサイを片付けて帰ろう。」

他のザクとジオン兵を始末するのを断念して、残った対艦ミサイルをムサイに撃ち込むべく、方向を変え加速を開始する。しかし、驚いたことにそのザクは、こちらがミサイルをまだ搭載していて重い状態とはいえ、パブリクを追撃してきたのだ。

「中尉殿!ザクが振り切れません!」

「馬鹿な!ジオンめ、又新型を作りおったか。」

仕方なく十分接近出来ないうちに対艦ミサイルをムサイに向けて発射し離脱にかかるが、一足遅く白い速いザクに捕捉されてしまった。さすがはエースと言ったところか、見事にこちらを散布界に捕らえた射撃をしてくる。曳光弾がパブリクの艇体を包み込み左舷エンジンに被弾、パブリクは緩やかにスピンしながら戦場から弾き出された。急ぎ左舷エンジンを切り離し姿勢を立て直す。幸い爆散には至らず、白い新型ザクもこちらを撃破したつもりなのか撤退する味方の護衛に専念するためなのかは分からないが、それ以上の追撃はしてこなかった為、命拾いしたようだ。片肺であるが、優秀なフライ・バイ・ワイヤシステムが操縦を補正してくれるおかげで、なんとか帰投して友軍に回収して貰うことが出来た。こうしてチェンバロ作戦は終わりを告げたのだった。




パブリク乗りの主人公がこれだけ活躍して生還ているあたり、やはりチート無双系主人公なのではないだろうか。
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