パブリク戦記   作:TFTRDH

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本日はア・バオア・クーが陥落した日なので初投稿です。


第六話 星一号作戦

 

 チェンバロ作戦の最終局面で敵将ドズル・ザビの巨大MAによる特攻により作戦総指揮官のティアンム提督を失い、第二連合艦隊も多大の被害を出した。だが、そんなことでは戦争の歯車は止まらない。ソロモン要塞陥落から一週間も経たぬ内に星一号作戦が発令され、我々は慌ただしくコンペイトウと改称したソロモン要塞を進発した。このような短期間では損害の補充や部隊の再編もままならないが、ソロモン陥落により大損害を受けたジオンに対処の暇を与えないために作戦が急がれたのだ。ジオンの宇宙攻撃軍は壊滅、残る戦力はキシリア・ザビ麾下の突撃機動軍とサイド3本国守備隊に過ぎない。一方こちらにはソロモン攻略には参加していないレビル将軍直率の第一連合艦隊が合流、ソーラーシステムの存在も相まって戦力的には十分と言える。ソロモン攻略戦で大損害を受けたパブリク隊の戦力は補充が間に合わないため殆ど回復していないが、私のパブリクはなんとか修理が間に合い星一号作戦に参加することが出来た。次なる目標はア・バオア・クーか、或いはグラナダか、我々将兵はそう囁きながらL2宙域に向けて進発した。

 

 12月30日、レビル将軍率いる我が連邦艦隊は、3個の集団に分かれてア・バオア・クーに対する第三戦闘ライン上に集結した。既に皆感づいては居たが、目標がア・バオア・クーを攻略してサイド3に侵攻することである事が明言され、最終決戦を前に我々は一層気を引き締めた。そんな我々の前に、接近する小艦隊があった。艦隊を阻もうと度々攻撃をかけてきたジオンの遊撃艦隊では無い、グワジン級と護衛のムサイからなる小艦隊だ。戦後知ったことだが、ジオンの敗北を悟ったデギン・ザビが、レビル将軍相手に和平交渉を行おうとしてやって来たのだ。私の知る和平交渉とは、仮にも国家元首が前線指揮官相手に直接行うような物では無い筈なのだが、それだけ切羽詰まっていたのであろう。デギン・ザビのグワジンがレビル将軍の位置する第一大隊に合流して暫く、光の奔流が艦隊を飲み込んだ。ア・バオア・クー攻略を目前にして、我が連邦艦隊は一瞬にして戦力の約3割と総司令官を失ったのだ。

 

 最悪のタイミングで総司令官を失ったとはいえ、組織としての連邦軍は健在だ。個人の能力に頼り切りのジオンとは異なる、地球連邦軍の組織力の勝利である。すぐさま戦艦ルザルが艦隊指揮を引き継ぎ、艦隊の再編成と作戦の再立案が行われた。第一大隊半壊の際に要塞攻略の切り札であるソーラーシステムを失ったが、艦隊司令部は現有戦力でア・バオア・クー攻略は可能と判断した。また、あまり間をおいてはジオンのソーラレイの再照射を受ける可能性もあり、急ぎ要塞に取り付くしか無いと考えたようだ。

 パブリク隊は艦隊中心から離れた位置に展開していたため損害は比較的少なく、指揮官のチェンバレン少佐も健在だ。我々は、ア・バオア・クーのNポイントから侵攻する第二大隊と第三大隊の前衛を務め、ソロモンの時と同様ビーム攪乱幕を展開して主力艦隊を援護するのだ。とは言え、本作戦における真の主力は実は我々Nポイント攻略部隊では無い。我々がNポイントで敵を拘束している間に、ルザルを旗艦とする再編された第一大隊がSポイントからア・バオア・クーに肉薄し、これを攻略するのだ。

 

 作戦開始と同時に、パブリク戦隊は隊列を組んで発進、宇宙要塞ア・バオア・クーに向かって突撃を開始する。艦隊も同時に突撃を開始し、防御陣形を取る敵艦隊と激しく交戦を始めた。先のソロモン戦での手口を既にジオンも承知していると見え、即座にガトル戦闘機が大挙して迎撃に上がって来た。ソロモン戦の時も大概だったが、今回の突入はそれを遙かに上回る苦しさだ。雲霞のごとく押し寄せるガトル戦闘機に、空母ドロスを中核とした敵の戦列は重厚だ。そして、運良く突破してビーム攪乱幕を展開しても、こちらにはソーラーシステムが無いのだ。とは言え、損害を出しながらもパブリク戦隊は敵の迎撃を突破して次々とM弾頭ミサイルを叩き込む。第一次攻撃は取りあえず成功と言ったところか、何とかミサイルを撃ち込んで帰投する頃には、味方のMS隊が発進を始めていた。

 後方の補給艦まで戻ってM弾頭ミサイルを補充し、第二次攻撃の準備にかかる。ソロモンの時よりも少ない数のパブリクで、尚且つ敵も的確に対応してきたため、一度の攻撃だけでは十分な攪乱幕を展開出来ず、反復攻撃を行う必要があったのだ。第二次攻撃のために陣形を組むが、既に残るパブリクは半数ほどになっているように思われた。こんな調子では、あと2回も出撃したらパブリク戦隊は全滅してしまうだろう。補給を終えて再集結したパブリク隊は、再度ア・バオア・クーへの突入を開始するが、敵の迎撃は相変わらず旺盛だ。味方艦隊は敵艦隊に肉薄して激しい戦いを繰り広げているが、Sポイントから敵の増援が繰り出されているようで、どうにも劣勢に見える。逆に言えば、本命であるSポイント攻略部隊の作戦成功の可能性が上がったわけではある。

 Nフィールド方面での戦いはいよいよ激しさを増し、MS隊も艦隊も入り乱れての混戦が行われていた。主戦場を迂回して要塞へ肉薄するが、混戦のおかげで敵の迎撃余力が削がれたのか、先の攻撃の時よりは大分マシに思える。とは言え、前進するにつれて一隻また一隻とパブリクが火の玉に姿を変え、攻撃を終えて帰投する頃には再出撃時の半分になっていた。パブリク戦隊は既に壊滅に近い状態と言って良いだろう。こんな有様では第三次攻撃は厳しいかと思われたが、先のソーラレイ照射に補給艦隊が巻き込まれたせいでM弾頭ミサイルが底を突いてしまったようで、必然第三次攻撃は中止となった。とは言え、最早後がない戦場で優雅に休憩などしていられない、我々は対艦ミサイルを搭載して再出撃に備える。

 戦場の熱に浮かされた様に友軍のマゼランやサラミスが次々に敵艦隊に突入していく。敵は我が軍の勢いに怯んだか、徐々に押し込まれて陣形を崩していくようだ。その内に遂に防御陣形に手薄な部分が生じたのだろう。損傷して自らの運命を悟ったサラミスの一隻が敵火線の手薄な部分を突破し、敵艦隊の先鋒に位置するグワジン級に特攻を仕掛け、諸共に爆散した。中核となる大型戦艦を失い、遂にジオン艦隊の防御が崩れた。Nフィールド方面の敵防御の中核は、巨大なMS母艦ドロスだ。その圧倒的なMS搭載量で戦線を支えていたが、ドロスを守る護衛陣形が崩れて直接攻撃を受けるようになればその能力は失われ、ジオンは最早戦線を維持することが出来なくなる。そこでパブリク隊に命令が下った。MS隊の一部が敵陣を突破してドロスに攻撃をかけ始めたが、何分ジムとボールでは火力不足で埒が明かない。有効な火力を発揮出来るマゼランも数が足りないのと敵MS隊に阻まれ前進が難しい、そこで再びパブリク隊の出番が来た。敵防空網を突破してドロスに対艦ミサイルをデリバリーしてやるのだ。

 

 「つまらない攪乱幕散布も終わりだ。漸くパブリクの本懐を遂げる時が来たな」

 

 ここまで生き残れた事自体奇跡的ではあるが、やはりパブリクの本懐は敵艦を攻撃してこそだろう。再編成を終え、対艦ミサイルを腹に抱えたパブリク隊が今度は戦場のど真ん中を突撃する。目標は敵大型MS母艦、ドロスだ。パブリク隊は、敵味方のMSが入り乱れて戦う中を、最大速度で突破する。大きな対艦ミサイルを抱えているとは言え、ザクやドムでは到底追随出来ず、混戦の中を悠々と突破した。正面に立ち塞がるMSが見えた、ジオンの新型だ。こうも正面に立ち塞がられては回避も出来ない、ええいままよと機銃を掃射すると、まともに回避運動も出来ずに被弾して動きを硬直させた。そのまま対艦ミサイルを一発だけ切り離すと、見事に吸い込まれていき爆散。一体今のは何だったのだ?戦後知ったことだが、ジオンの新型-ゲルググ-に搭乗していたのは殆どが学徒動員の新兵で、生き残りのベテランはザクやドムに乗っていたそうだ。然も有りなんである。

 そうして敵を突破すると、眼前にドロスの巨体が見えた。パブリク隊が一斉にミサイルを発射すると、面白いようにその巨体に吸い込まれていき、次々と各所で爆発を起こした。これでドロスはその戦闘力を完全に失っただろう。ドロスに支援されていた敵MS隊も要塞に引き返さざるを得なくなり、敵防衛線は完全に崩壊した。本命のSフィールド攻略部隊はもとより、Nフィールドの第2,第3大隊も突破に成功したのだ。こうなってはア・バオア・クーの命運も尽きたと言わざるを得まい。味方の艦隊とMS隊は敵を追うように要塞に肉薄し始めた。MS隊は要塞攻略にかかるが、我らパブリク戦隊や宇宙戦闘機隊は残存する敵戦力に対する掃討戦に移行するしか無い。敵も既に勝敗を悟ったのだろう。敵艦隊は妙に浮き足立っており、ア・バオア・クーの抵抗はまだ続いているにもかかわらず離脱しようとする艦まで出ているくらいだ。孤立した敵部隊に攻撃を繰り返し幾許かの戦果を稼いでいる内に、あちこちで信号弾が上がった。遂にア・バオア・クーが陥落し、敵が降伏したのだ。

 翌日、我々パブリク隊の生き残りは補給艦の中で体を休めていた。レビル将軍を失ったとは言え、陥落した宇宙要塞ア・バオア・クーを接収した後は、サイド3を制圧しなければならない。敵の戦力はア・バオア・クーでの決戦で崩壊したものの、残存戦力の抵抗程度は想定しなければならないだろう。そこにワイアット将軍が現れ、我々は即座に起立して敬礼する。パブリク戦隊は壊滅状態で、チェンバレン少佐も最後の出撃で戦死した。部隊の最先任が今や私という有様なのである。ワイアット将軍がこの場に来たのは、偏にチェンバレン少佐との個人的な関係の故に他ならない。答礼の後ワイアット将軍が口を開いた。

 「パブリク戦隊の諸君、ソロモンに引き続きア・バオア・クーでの奮戦ご苦労だった。諸君らの示した勇気と献身と働きは古今に渡り比類無き物として戦史に語り継がれるだろう。今は亡きチェンバレン大佐も諸君を必ずや誇りに思うはずだ。かのアレクサンダー、ヘラクレスと言った偉大な英雄達も、諸君らの戦い抜いた様な過酷な戦場を経験したことは無かった。諸君らはまさに・・・」

 

 チェンバレン少佐の知己だけのことはある。旧世紀の由緒ある貴族らしい深い教養に裏打ちされた見事な演説だった。感極まったのか啜り泣く声も聞こえてくる。男が涙を見せる物では無いが、こういう時くらいは例外だろう。

 

「・・・本日15時を以て、ジオンは正式に降伏した。これも偏に諸君らの奮戦の賜である。諸君らの沙汰は追って下されるが、今は諸君が勝ち取った平和を噛みしめ、体を休めて欲しい。」

 

 宇宙世紀0080年1月1日、こうして一年戦争は終結した。




SフィールドもNフィールドも突破されてちゃ完全敗北よね。
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