パブリク戦記   作:TFTRDH

7 / 8
短いです


最終話 終戦

 

 宇宙世紀0080年1月1日15時、地球連邦政府とジオンとの間に終戦協定であるグラナダ条約が結ばれた。つい昨日ア・バオア・クーが陥落したばかりだというのに、翌日には終戦とは幾ら何でも早すぎる。恐らく、ソロモンが陥落した辺りから既にジオンは敗北を見越して連邦政府と終戦交渉を始めていたのだろう。ア・バオア・クーでの戦いでジオンが形の上だけでも勝利出来れば、多少は有利な内容で講和することが出来る。そう思って最後の決戦を挑んだのであろうが、結果としては連邦軍の完全勝利。後はほぼ無防備のサイド3に攻め込むだけとあっては無条件降伏になるだろう。私のみならず、皆その時点ではそう考えていた。

 

 数日後、公表されたグラナダ条約の内容を知って私を含む全連邦将兵は激怒した。ジオンの自治権承認に賠償請求権の放棄だと?全人類の半数を虐殺し、スペースコロニーを壊滅させ、地球にまで大打撃を与えたジオンに何の賠償も求めず、さらには事実上の独立を認めるとはジオンの勝利と何も変わるところが無いではないか!地球連邦軍の将兵は、何のために血を流して戦ったのか?それは、人類統一政体の維持という大義とジオンへの復讐である。主なザビ家の連中は皆戦死したとのことだが、責任を負わねばならない者はまだまだ沢山居る。彼らを軍事裁判で血祭りに上げ、サイド3は解体し、ジオニスト共にはこの戦争で生じた被害を完全に補填させなければならないはずなのだ。サイド3の分離主義者共は、自分達の事実上の勝利に戸惑いながらも歓声を上げているに違いない。全く、連邦政府の官僚共は、どれだけ無能だとこのような条約を締結出来るというのか。或いは、ジオン共和国の首魁ダルシア・バハロは連邦政府の閣僚共を魅了する魔眼でも持っていたのだろう。

 憤懣遣る方無いが、食って掛かることが出来た上官は既にこの世にいない。今は自分が部下を抑えなければならない立場なのだ。如何に不満があろうとも、我々は民主主義国家の軍人である。政府の統制には服さねばならない。そう自分と部下に言い聞かせながら、殆ど残っていないパブリク戦隊を取り纏めてコンペイトウへと帰投する。

 今後サイド3の監視を考えれば、旧ソロモン要塞が連邦宇宙軍の主たる拠点になることははっきりしていた為、ア・バオア・クーの占領とサイド3進駐を担当する部隊以外には、コンペイトウへの帰還命令が下された。熾烈な決戦を生き残り帰還していく部隊はどれも満身創痍である。壊滅したパブリク隊を形だけでも再編し、散っていった戦友達の遺品を整理したり、遺族への手続きをしたり(尤も遺族が存在する将兵はそれほど多くは無いが)と、戦いが終わった故の業務が山ほど残っていることを頭の隅に追いやり、コンペイトウへの帰途についた。兎にも角にも戦争は終わったのだ。

 だが、このような欺瞞的な平和が長続きするとは思えない。いつの日か、恐らくはそう遠くない内に再びジオンとの戦いが起こるだろう。その時こそは完膚無きまでにジオンを殲滅するために、連邦軍を再建し次の戦争に備える事こそが、この戦争を生き残った者達の未来に対する義務なのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編者後書き

 

 此の後、筆者の所属するパブリク戦隊は連邦軍再編後ルナ2に移動して、主に哨戒をその主任務とした。一年戦争中のパブリクの働き自体には特筆すべき物があったが、戦争後半に於ける損害のあまりの大きさに運用は大幅に縮小され、連邦軍再建計画に於いても再び規模が拡充されることは無かった。

 ソロモン戦とア・バオア・クー戦の激戦を生き残った数少ないパブリク乗り達はニュータイプの可能性があるとしてオーガスタ研究所で調査を受けたが、結果としては彼らはただ運と実力で生き残ったことが明らかとなったのみであった。




短いですがこれで完結です。
長い文章を読むのは良いが、書くのは難しい事を実感しております。
お読み頂き有り難うございました。
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