【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
思ったより早く投稿できました。
荷物がねぇと旅はできねぇ。
人は弱い生き物だ。ひこうポケモンみたいに空は飛べないし、くさポケモンみたいに太陽光じゃあ生きられない。そして何より自衛手段がへなちょこだ。
残念ながら、現代人ではポケモンみたいに裸一貫でワイルドエリアに住むのは難しい。
そんな貧弱人間様だからこそ、道具を使って生き延びてきたのだ。つまり、荷物がねぇと旅はできねぇのである。
寝床に衣服に灯りに食い物。
人の旅には必要なものが多い。多い荷物にゃ金がかかるし、荷物が多いと嵩張ってしまう。ガラル製の高性能バックパックとて限界があるのだ。
もっと沢山荷物が持てりゃあな、と思った事など何度もある。
そうでなくても、もっと軽くできればいいのにと思ったりもした。
そう都合のいい事など、起きようはずもないが。
結局、サイトウちゃんと別れた俺たちは今一度ムクノちゃん宅へと戻ってきた。
俺の荷物を取りに来て、もっかい旅に出る為だ。いい加減、ナックルシティを出ないと拙い気がする。
「で、だ」
洗濯乾燥機の凄さを実感しつつ本来の旅人装備に身を包んだ俺は、今一度ムクノちゃんと対峙する事となった
二人、ダイニングテーブルで向かい合う。リビングでは俺とムクノちゃんの手持ちポケモンたちが各々ゆっくりしていた。テーブルの上にはガラル人らしく二人分のお茶が湯気を立てている。他地方からすると飲みすぎだと言われるかもだが、ガラル地方じゃあ常識なんだよ。
「ケヤキくんはこれから何処に行くの?」
「決めてないな。緊急の仕事が入らない限り、行きたいとこに行くつもりだけど」
そう訊いてきたムクノちゃんは、明らかに自分も同行しようという気に満ちていた。
衝撃のカミングアウトの直後、ムクノちゃんは俺に旅の同行を申し出て来たのだ。その理由は明白である。
愛とか恋とかはわからない俺だが、旅には一家言ある。だからこそ思う、ムクノちゃんに旅は難しいという事が。
「んーっとさ……」
正直、どう説明するか悩んでいた。
キャンプやらハイキングやらなら、俺もムクノちゃんと行動するのに否は無かった。
けれども俺がしているのは“旅”なのだ。安心安全な旅行ではないのである。
未舗装の道を歩き、断崖絶壁を登り、吹雪の中で野宿をするような、しっかりと身体が仕上がっている俺でも厳しいような、過酷な旅なのである。
それに、この旅に目的はない。どこそこに行くから歩くのでなく、文字通り気の向くまま歩くのだ。
そういう、自分勝手な道行に他人を振り回したくはない。俺にとって旅とは、人生の為の旅ではなく、旅の為の人生なのだ。
うん、やっぱり正面から言うしかない。言って、それだけだ。
納得させる必要さえないと思った。俺はあくだ。ついてきてもどっかで撒いてやろうと決めた。撒けばガラルに戻ってくれるだろう。
クズな俺を好きと言ってくれるような優しい娘だ。死なせたくないし、傷つけたくない。怪我などさせてしまえば彼女の両親に申し訳がたたない。
多くの社会人にとって、旅なんてそう良いモンじゃあないだろう。無意味だし、無価値だし、時間の無駄だ。
「考えたけどさ。ムクノちゃん、やっぱ君を旅に連れて行くのは無理だ」
「そうかな?」
かわいらしく首をかしげるムクノちゃん。その身体つきは豊満だが、その体格は華奢なのだ。
いくら家でトレーニングしたところで、外で生きるのには向かない身体だ。走ってつく体力と旅で必要な体力は違う。そして、大自然は体力がなくなった奴の命を容赦なく奪っていく。
ムクノちゃんは可愛い。可愛いだけじゃなく金持ちだ。社会で成功してのけた凄い娘なのだ。そんなムクノちゃんを、しょうもない旅なんぞで失わせるなどどうかしている。
もしそうなったら、俺はクズな上にゴミ野郎だ。さすがにそこまで堕ちたくない。
「ああ。いくらポケモンが強くても、道中は危険でいっぱいだ。野生ポケモンだけじゃない。自然そのものが危ないんだ。俺だって何度も死にかけた」
「そうだね、危ないよね。ジムチャレンジ中みたいに、レンジャーが見守ってくれる訳でもないわけだし」
「それに、俺がしているのは意味のない旅なんだ。経験にはなるだろうが、それだけだ。儲からないし、人の役に立つ訳じゃないし、多分つまらない」
「つまらない、のかなぁ? それはケヤキくんじゃなくて私の感覚だから、やってみないと分からないと思うけど。お金についてはもう十分稼いだし、もういいかなって。無くなったらまた稼げばいいだけだし」
「……そういう、危ない上に意味のない事に、付き合わせたくないっていう俺の気持ち、分からない?」
少し、自分の胸中がささくれ立っていくのが分かった。
どれだけ押しても避けられて、どれだけ引いても追ってくる。脅かしても怖がらせても効果がなくて、何があってもついてこようとする。
ぶっちゃけ、鬱陶しいと思った。いい加減、一人にしてほしかった。背中の荷物と頼れるポケモンたち。責任も何もない、身軽な立場になりたかった。
小さく、ため息ひとつ。苛立ちを引っ込める。でないともっと酷い事を言ってしまいそうで、それは嫌だった。
俺はついてくるなと言う。
ムクノちゃんはついていくと言う。
ここにきて、適当に撒いてやろうという考えこそ危険なのだと気が付いた。この娘、撒いたら撒いたで絶対どこまでも追ってくるぞ。多分、一人で。
それこそ危ない。なら、俺が近くにいる方が安全だ。だが、そうなると俺はムクノちゃんを放っておけない。危ない道は避けるだろうし、同行者が疲れたら休憩するだろう。ロクでなしだが、ヒトでなしのつもりはなかった。
それは、俺の意思じゃない。二人旅は俺の選択を縛る事に繋がる。勝手気ままな旅ではなくなってしまう。だから、俺は一人がいいんだ。
「ムクノちゃんはナックルシティで生きててよ……」
我知らず漏れ出た低声に、ムクノちゃんは黒々とした瞳をまっすぐ向けて来た。
まるで、こっちにも用意があるとばかりに。
そういえば彼女は百五十一の想定で準備をしてきたらしい。なら武器の貯蔵は十分なのだろう。
「さっきも言ったけど、旅に意味や価値があるかは私が判断する事だよね。で、それは旅の危険に見合うものかどうかも私が決めるものだと思う」
「まあ、そうだな」
「ケヤキくんは優しいから、もし私がついてったら私を守ってくれるつもりなんだよね」
「まあ……」
「それが嫌なんだよね。私の身の安全の為に選択肢が狭まるから」
「……そうだ」
「そう……」
ムクノちゃんは一拍空けてから、優しく微笑んでみせた。
「……私はもう、か弱い女の子じゃないんだよ」
昔のムクノちゃんなら言わないであろう事を、今のムクノちゃんが言っている。自信に満ちた、強い言葉だった。
成長したな、と上から目線の感情を抑え込む。人に歴史ありだ。もう何年も前の話だ。あの時、お互い子供だった。彼女はもうしっかりとした社会人だ。
「むしろ役に立ってみせるよ」
そう言って、ムクノちゃんはおもむろに立ち上がった。
何をするのかと思って見ていると、なんと彼女の身体がふわりと浮かび上がったではないか。
「……ね?」
反射的に、リビングでブラッキーとじゃれているエーフィに目を向ける。どうやらポケモンの技ではないらしい。
つまり、この能力は自前のものという事になるが……。
「超能力? ムクノちゃん、エスパーだったの!?」
「少しだけね。一番得意なのがこれ」
ふわふわ浮いたムクノちゃんは無造作に指を動かすと、キッチンに在った食器棚を引き寄せてみせた。
凄いパワーと精密性だ。その重さは相当だろうし、棚の中身もなにひとつ壊れていない。それどころか、そのうちの皿を一枚取りだすと、そこに新たな茶菓子を投入して、俺の前へと置いてみせた。
出力も高く、制御も上手い。なにより、熟練者特有の安定感が感じられた。
「どう? 上手でしょ?」
「あ、ああ……」
差し出された茶菓子を手に取る、タネも仕掛けもありはしない。見ると、浮いたムクノちゃんの隣には超重量の食器棚が未だふよふよ浮いていた。集中して、消耗している感じではない。ごく当たり前の日常動作として、あくまでも自然体な雰囲気だ。
制御も、維持も、出力も、これまで俺が出会ってきた超能力者の中でも指折りの念動力だ。
「マジか……」
超能力。あるいはエスパー。PSYとも。
それはポケモンのエスパータイプとは似て非なる能力。超能力者に“ねんりき”は使えても“サイケこうせん”は打てないように、一部超能力はポケモンでは使えないというのを聞いた事がある。
そして、超能力者はトレーナー以上に才能の比重が大きい。それらはほぼ先天性の能力であり、能力を1から10に鍛える事はできても、0を1にする事はできないとされる。逆にトレーナーとしての才能は長年ポケモンと触れ合う事によって0を1にする事ができたりする。
恐らく、超能力者としてのムクノちゃんはだいたいジムリーダー以下一般超能力者以上といったところだろうか。無論、念力だけがそうという可能性も高い訳だが……。
まあ、それはともかく、
「……羨ましい」
というのが正直な感想だった。
いやだって、あんな重いものをひょいひょい動かせるんならどれだけ旅の助けになった事だろうと思うのだ。
倒木程度ならポケモンに助けてもらえばいい。けれど荷物はトレーナーが持つものだ。もし俺が超能力者だったら、もっと大量の荷物が持てたのに。ずっとでなくても、一時的に使えるだけでも凄い便利だろう。
それに自分にも使えるんなら、あの時崖から落ちる事もなかっただろうし、あの時川に流される事もなかっただろう。超能力さえあればと思った回数など、片手の指じゃあまず足りない。実に羨ましい能力だ。
が、悲しい哉、俺の超能力者としての才能は皆無だった。スプーン程度なら握力で曲げれるが、それならそのへんの格闘家なら誰でもできる。
「いっぱい練習したの。どう? すごいでしょ」
「うん、すごい」
俺、あくタイプ使い。あくタイプ使い嘘つかない。
正直に答えると、ムクノちゃんはちょっとドヤっとした後に棚を元の位置に戻し、そのまますとんと椅子に座り直した。棚の食器はひとつとして割れていない。
「他には何使えるの?」
食い気味に質問すると、ムクノちゃんは指折り数え始めた。
さっき俺の中にあった苛立ちなど、好奇心の前にはパーである。
「ちょっとした精神感応でしょ? 一方通行だけど念話ができるのと、透視も少し。あと近くにゴーストタイプがいたらすぐ分かる。疲れるけど聴力も強くできるかな。申し訳程度にパイロキネシスも」
「す、すげぇ……!」
なんじゃそれ、アルセウス配分ミスってんよ! ムクノのスキルありすぎだろ! 教えはどうなってんだ教えは!
大概才気に満ちている自覚のある俺だが、多分ムクノちゃんは俺より多くのギフトをもらっている。
ゴーストタイプ、エスパータイプとの親和性。超能力者としての素質。金策も上手いみたいだし、成功できる運もある。おまけに美少女で、おっぱいとお尻がデカい。
そう、才能ある上に美少女でおっぱいとお尻がデカいのだ。運良すぎだろ。
「それとね、念動力の次に得意なのがあって……使ってもいい?」
「どうぞどうぞ! ぜひ見せてくれ!」
「見せるのは難しいんだけどね」
そう言って、ムクノちゃんは俺の方に手を出してきた。手のひらを上にした、ちょうだいの手だ。お手でもしろってのか?
「……超認識力、サイコメトリー。できたら、ケヤキくんが前から使ってた物に触らせてもらっていいかな?」
「ん、おう。ほら」
なぜか、ムクノちゃんの声色が堅くなった。僅かだが、言葉にぎこちなさもある。緊張してるっぽい。
まぁ良い、興味優先だ。俺は荷物から一本の万年筆を取り出し、それをムクノちゃんの手に握らせた。
「……使うよ?」
「どうぞー」
この万年筆は俺がアローラを出た時に父からもらったものだ。
けっこう、値の張るものらしい。俺はこれをずっと使ってきた。なので既に高級感は損なわれている、それなりに年季の入った筆だ。
「じゃあ、するね……?」
ムクノちゃんは目を瞑り、むむっと唸って集中した。サイコメトリーを使った……らしい。
ぶっちゃけ外から見ても何が起きているのか分からないので、何とも言えない。
サイコメトリーとは、触れた物の記憶を読み取る超能力の事だ。
詳しくは知らないが、今のムクノちゃんは万年筆に宿ってるっぽい記憶とやらを読み取っているのだろう。
「……そう」
呟いて、目を開いたムクノちゃんは筆を返して来た。
「どう? 成功したん?」
「うん、結構長かったかな」
ふぅと一息。ムクノちゃんは紅茶を一口飲んだ。どうやら念動力と違って使うと相応に疲れるものらしい。その瞳にはさっきまではなかった気怠さが垣間見えた。
「で、何が見えた? クイズしていい?」
音を立てず、ティーカップが皿上に戻る。
「いいよ。あ、けどカントー以降の問題にしてね。あと、ケヤキくんの印象に残ってない事は分からないよ」
「おっけー」
印象、印象かぁ。過去を掘り起こすのなんて久しぶりである。
ワクワクしたまま、俺自身思い出しながら問うた。
「じゃあ……俺の学部は?」
「タマムシ大学法学部だよね」
「正解。じゃあ……初めて受けた講義の教授は?」
「名前は分からないかな。けど髪の毛は生えてなかったね。あとネクタイが派手」
「そうそう! うわ懐かし! そうだったそうだった! じゃあ、サントアンヌ号で起こった事件のきっかけは?」
「お隣の人がケヤキくんをミルフィーユ泥棒だと勘違いしたんだよね」
「はぁー! すげぇなムクノちゃん! それポケモン考古学で使えそうじゃん!」
「ううん、そうでもないの。私じゃその人やポケモンの印象に残った記憶しか分からないから。多数の人が触れたモノだとごちゃごちゃし過ぎて分からないんだ」
言って、もう一度カップを傾けるムクノちゃん。
今度は、カチャリと音を立てて置かれた。
ちょっとだけ、手が震えていた。
「……ケヤキくん、変わってないね」
そう言う彼女の声には、安堵したかの様な柔らかさが含まれていた。
いや、だいぶ変わってるぞ、と。言葉の意味が分からず、返事に困る俺だったが、ムクノちゃんは続けた。
「すみません……私も、かなり焦ってました。最初で最後のチャンスかもしれないからって、例え嫌がられてもケヤキくんを捕まえなきゃって……かなり強引な手段を取ってしまいました」
「あ、はい」
今度は言っている意味の分かる言葉だった。
嫌じゃあなかったんだが……それにしたって薬はやり過ぎでしょと思う。女子の気持ちは分からない。
「……でも、うん。分かったよ」
瞬間、ムクノちゃんの黒くて丸っこい瞳と目が合った。
その眼光は鋭く、真剣で、それでいて無邪気な輝きに満ちていた。
何となく、さっきまでのムクノちゃんにあったモノ……そう、打算とかそういうのが抜けた眼をしていた。
「あのさ……」
ムクノちゃんの唇が、僅か震えた。
しかし、言葉は出てこなかった。言葉に迷っているというよりは、何か言い難い事を口にする時の前準備に見えた。
ゆっくりと、深呼吸。
やがて、それは震えた声でこぼれ出た。
「……ケヤキくん、一緒に遊びに行かない?」
ドキリと、何故だか心臓が跳ねた感覚があった。
さっきまではあり得なかった選択肢。ムクノちゃんの言葉を聞いて、心の隅でそれもいいかもと思い始めた。
新手のエスパー攻撃とか、そういうのではない。強いて言うなら、サイコメトリーで読み取った記憶から、俺に効くだろう最適な言葉を投げて来たのだ。
だとしても、何故だ? 何故、それなんだ?
「ヨロイ島、綺麗だったよね。カンムリ雪原、ワクワクしたよね。キャンプで食べたカレーも、ナックルシティのバトル観戦も、お誕生日会も……楽しかったよね」
それは、俺とムクノちゃんがまだ子供だった時の事だ。俺はその多くを忘れているが、その楽しさを忘れた訳ではない。
お互いまだ子供で、見聞きする全てが新鮮でキラキラしていた時の記憶だ。心底楽しかった時、それはいつも子供の頃だった。
あの時、ぼんやりした記憶の中にあって未だ大切に扱われている感情。それを感じた時は、俺とムクノちゃんはいつも一緒だったような気がした。
けど、今は違う。
俺は一人で世捨て人をしている。
ムクノちゃんは一人で社会人をやっている。
俺が旅をする理由は、楽しいからだ。
見たことない景色や、食べた事のない料理、聞いた事ない音楽やあったことのないポケモンと会いたいからだ。
そうやって、ワクワクする気持ちやキラキラとした思い出をもう一度味わいたいのだ。忘れられないのだ。昔の、子供の世界から抜け出せないのだ。
俺だけが、子供のまま大きくなっているのだ。
「また、一緒に冒険しようよ」
あの時、ムクノちゃんとの大冒険のように。
俺の感じたワクワクを、綺麗な空の下のキラキラを、気兼ねしない誰か……ムクノちゃんと共有できたなら……。
それは、とても楽しいんじゃないだろうか。
「……いや、けど」
旅は危ない。
自由でいたい。
俺の都合で振り回したくない。
それに、やっぱ昨日の今日で二人旅はちょっと気まずい。
お着換えの時など、目のやり場に困るだろう。身体を洗う時など、とんでもない苦行ではないか。
で、どうせ俺の理性なんてすぐ砕ける。据え膳出されりゃ我慢はできぬ。俺は俺の欲望の強さと我慢弱さを信頼していた。
そういうの、汚いと思う。
俺は、どうすべきなのか考えた。
そして、何故か分からないが、唐突に思い出した記憶があった。
カントーで出会った、ロクでなしたち。
バイクに乗って、社会に適合できなくて、頭と心が弱い奴等。
そいつらの、一等ガタイのいい男の言葉。今どき言うとSNSで炎上しそうな、心底しびれた発言を。
「……良い女の頼みは断れねぇ」
概ね同意できる。どうせ頼みを聞くなら、相手は可愛い女の子のが嬉しいし、楽しいだろう。
俺はおっぱいとお尻がデカい美少女が好きだ。何故か、かわいくてエッチだからだ。かわいくてエッチな女の子といると、心が躍って仕方がない。
なら、そんな女の子の言う事なら、ムクノちゃんのお誘いなら、何も考えずホイホイ聞いた方が人生なんぼか楽しい気がする。
「そう、だよな……」
何が身の安全だ。何が責任だ。
ロクでなしが偉そうに、落伍者が何様だ。バカの考え休むに似たりってな。
それに、あの人はこうも言っていた。
「ダチは命がけで守る……か」
古臭いし、スマートじゃないし、大言壮語な気ぃするけど。
心底、しびれたね。
「……ああ、そうだな。行こっか、ムクノちゃん」
「うん♡」
本人が望んだ事だ。良い女の、ダチのお誘いだ。こいつを拒めば男が廃る。
俺は生きたいように生きる。ムクノちゃんも、したいようにするのだろう。
なら、まぁ……いいか。
無意味で、無価値で、時間の無駄になる旅を。
しばらく楽しんじゃっても、罰は当たるまい。
「あっ……」
ふと、頭の中の羅針盤に行きたい場所が生えてきた。
こういう時の直感に、これまで俺はずっと従ってきた。
だから、今回もそうしよう。
「ヨロイ島、行きたくなってきた」
「いいね、行こう行こう!」
目指すは、ヨロイ島。豊かな自然と沢山のポケモンたちの住む、常夏の島。
冒険の続きができそうだ。
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