【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
こういうヤマもオチも意味もない話はパパッと投稿できますね。
適当に面白がっていただければ幸いです。
ヨロイ島は午後も熱い。
午後の門下生たちとのバトルは熾烈を極めた。
理由は明らかだが、午前よりずっと気合の入った門下生――男だけの現象だった――たちの闘志は凄まじく、それに呼応したポケモンたちも一矢報いんと何度倒しても立ち上がって来たのである。
それを容赦なく打ちのめす俺。気分はまるでRPGの魔王である。戦闘の熱に中てられたのか、ウーラオスまでやる気を出して飛び出てきたのだから堪らない。んでもって伝説ポケモン相手に門下生ズも闘志を再燃させてきたのだからもっと堪らない。
最終的には全門下生の全ポケモンを打倒し、俺は全手持ちを残して勝利した。
その後、門下生たちとは熱い――ちょっと痛いくらいの――握手を交わしてバトル終了。
連戦で疲れたポケモンたちを休ませていると、時間はすっかり夜になっていた。
夕飯は昼と同様に奥様とムクノちゃんによる手料理が振る舞われた。
ガラルに来るまではレトルトや携帯食で済ませる事の多かった俺にとって、人に作ってもらって食べる飯とは最高の贅沢である。
なんだかんだ俺も疲れていたので、久々に満腹になるまで食べさせてもらった。おまけに宿泊許可までもらってマジ感謝である。
良い気分のままシャワーを借りて、さて明日はどうしようかななどと考えつつ、マスタードさんに客間に案内してもらった。
「ケヤキくん、お前さんはこの部屋な」
と、マスタード師匠に案内された部屋は、四畳半くらいの小部屋だった。久々の畳でちょっとラッキーな気分である。
俺は何故かにまにま笑いをするマスタード師匠にお礼を言うと、荷物を下ろして布団を敷いた。
畳の上で、太陽の匂いのするお布団。
淡い月光が差し込む部屋は、ガラル地方では味わい難いジョウト的な暖かみがあった。
そして、事件は起こった。
「お邪魔しまぁす♡」
数分後、それはやってきたのである。
襖を開けて現れたのは、パジャマ姿のムクノちゃんだった。
右手には枕。背後には浮遊する荷物。そしてその意図はあからさまにあけすけだった。
風呂あがりなのか、雪の様に白い肌は上気して、もっさりした黒髪からは甘いシャンプーの匂いが漂っていた。
「邪魔するなら帰って~」
と返す俺は既に布団の住人である。
うとうとした意識は半分眠りの世界に旅立っている。いきなり現れたムクノちゃんへの対応も適当になってしまった。今、俺の三大欲求は完全に睡眠の味方だった。
こちとら日中ずっとバトってたのだ。肉体はともかく精神が疲労困憊。さっさと寝たいのである。
眠たい目には月光さえ煩わしい。俺は眠気そのまま目を閉じた。
「邪魔しないなら入っていいって事だよねー♡」
言えば帰るだろうとムクホークをくくっていたが、なんかそうでもないっぽい。
瞼の向こうから、襖を閉じる音が聞こえた。次いで、畳の擦れる音が近づいてくる。
そして、仰向けに寝る俺の右手側。腹までしか掛かっていない掛け布団に隙間が開くと、そこに暖かな人肌が侵入してきた。
「……ってオイ!?」
流石にまずいですよ。緊急事態に慌てて目を開けると、すぐ横には案の定ムクノちゃんが俺の布団にエントリーしていた。
しかも彼女が今着ているパジャマは夏用の薄手のタイプであり、半袖ショートパンツの結構露出度高いやつなのだ。上はともかく、下はむっちりとした太ももがほぼほぼ丸見えである。
これはまずい。流石にまずい。昨日の今日でこれはアカン。
俺は布団からごろんごろんとリングアウトして、狭い四畳半の壁に背中を打ち付けた。
ドン、という音が夜に響く。背中の痛みより、眼前の衝撃のが身体に悪かった。
対し、ムクノちゃんは未だ布団の上で横向きで寝転がっていた。
黒々とした瞳は爛々と輝いて、煌々たる眼光が俺の眼にロックオンされていた。
まさに、捕食者の瞳であった。
「夜だから静かにね♡」
「原因はムクノちゃんでしょうが!」
抑えた大声というものを、レンジャーの任務中以外で出したのは初めてだった。あの時は味方のレンジャーがかなり危ない状況で、俺ひとりが戦線を支えていた。夜、視界の悪い状況で、なんとか応援が来るまで踏ん張っていたのだ。
いやそんなのはどうでもいい。この状況を作り出した本人には早急に帰ってもらおう、そうしよう。
そうでないと本当に拙い。ここは彼女の住居ではない、マスター道場なのだ。俺はあくだが正義は我にありだ。
「ムクノちゃんの部屋は別のトコだろ」
「ううん、ここだよ。此処が私とケヤキくんが借りてる部屋。男子用も女子用も大部屋は満員なんだって。なんなら確認してきてもいいよ」
「マジか」
用意してきているようにムクノちゃんの発言には淀みがなかった。多分、いや彼女の性格を鑑みるにこれはマジなんだろう。
その時、部屋に入る前のマスタード師匠の好々爺スマイルを思い出した。
そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。あのクソジジイどういうつもりだ。
ふぅ、と一息。
俺は精神を落ち着けて胡坐をかいた。
応じるように起き上がったムクノちゃんも布団の上で上体を起こした。いやその服装でそのポーズはヤバい。完全にそういう本の表紙じゃん。
「布団はムクノちゃんが使ってくれ。俺は畳で寝るから」
こうなったらもうどうしようもない。部屋交代ができないのであれば廊下とか道場スペースで寝るくらいしかないのだが、それはこの部屋を貸してくれたマスタードさんの好意を無下にする行為だろう。そいつはあく道に反する。
「え~、一緒に寝ようよぉ♡ お布団気持ちいよ?」
などと言ってくるムクノちゃんの発言は無視だ無視。俺は布団にある俺用枕を手に取り、それに頭を乗せて睡眠の構えに入った。寝るのは大得意だ。
少しでも邪念を起こさぬようムクノちゃんに背を向けるのも忘れない。
「じゃ、おやすみ」
「んぅ~? おやすみ~」
さすがに諦めたのか、背後で布が擦れる音が聞こえた。呼吸音からして、ムクノちゃんは俺の方を向いて寝ているみたいだ。
「そんなに私と寝るの嫌?」
「嫌とかじゃないし、嫌じゃないならいいじゃんという話でもないだろ」
小声で話してくるムクノちゃんに返しながら、俺は自身の肉体の様子を伺っていた。
不特定多数がいる場所だ。さすがに前みたいな事はないだろうが、いきなり変調が起きて朝マメパトはよろしくない。心拍も呼吸も問題ない。熱感も何も起こっていない。
よし、問題ないな。
「昔は一緒にお昼寝してたのに」
「昔は昔だろ。今はどっちもいい歳だ」
まあ、そのいい歳した俺は未だに落ち着かない子供みたいな生活をしている訳だが、それは置いておいて。
「ふへへ……♡」
しばらくして、そろそろ眠れそうかなと思った時。背後からムクノちゃんの抑えた笑声が聞こえてきた。
「昔、一緒にお昼寝してた時、ケヤキくんったら私の足にしがみついて寝てた事あったんだよ♡」
……憶えてない。
マジかよ当時の俺寝相悪すぎだろ。
というか、ガキの頃から俺は脚好きだったのか……いやそうじゃなくて、よく覚えてるなそんなの。
「あの時、驚いて蹴っちゃったんだけど、ケヤキくんそれでも寝ててね。私、その後ずっとケヤキくんの寝顔見てたの」
全く記憶にない。そんな記憶にない事を、今話す意図は何だろうか。
いや、多分意図はない。思い出した事を口に出しているだけだ。今ので俺の弱みを握れる訳じゃないし、俺のリアクションを楽しんでいる訳でもないだろう。
俺はさっきから眠くて仕方がないので、ノーリアクションなのだ。そんなのに話しかけても楽しくないだろうに、ムクノちゃんはなおも楽しげに続けた。
「そしたらね、ケヤキくん寝言で私の名前呼んでたの。ムクノちゃんついてきてるかって、疲れてないかって……嬉しかった♡」
ムクノちゃんも記憶を掘り起こしている間に眠くなってきたのか、だんだんとその言葉から明瞭さが失われつつあった。
それでも、意識を手放すまでぼんやりと過去の思い出に浸っている様だった。
「夢の中で、ずっと一緒だったんだぁって……」
言って、今度こそムクノちゃんは眠った。後ろから規則的な寝息が聞こえてくる。
結局俺より早く寝てるじゃん。何となく後ろを見て見ると、ムクノちゃんの幸せそうな寝顔が月光に照らされていた。
「……おっぱいでっか」
そして、横向きで寝ている彼女の胸はあまりにも豊満であった。
いかん、あれは見る“どくどく”だ。いや“メロメロ”か? いやそんなんどうでもいい。俺は元の姿勢に戻って、何度か深呼吸して精神を整えた。
静寂の中、ムクノちゃんの穏やかな呼吸音と、俺の深い呼吸音が響く。
狭い四畳半には、ムクノちゃんの匂いが充満していた。目をそらしても、嗅覚のとくぼうを下げてきていた。
結局、俺は眠るまでにかなりの時間を要した。
● 〇 ●
翌朝、目を覚ますと、すぐ目の前に尻があった。
否、尻ではない。
尻と見紛う程のおっぱいだった。
視線を上に向けると、無防備に目を瞑るムクノちゃんの寝顔があった。
その顔は、安心しきったように無防備だった。
「すぅ……すぅ……」
近くで見ると、彼女は驚く程まつ毛が長いという事に気が付いた。シミひとつない肌はきめ細かく、ノーメイクの唇はナチュラルに艶やかで、頬っぺたはとても柔らかそうだった。
そんなムクノちゃんの寝顔があまりにも可愛くて、ちょっと見惚れてしまっていた。
「セーフ、だよな……?」
ダメだ、この娘の寝顔は俺を狂わせる。すぐに退散せねば。
俺は横向きのままずりずりと後退し、布団ゾーンから抜け出した。次いで自身とムクノちゃんの状態を確認した。
服、ヨシ!
上半身、ヨシ!
下半身、ヨ……。
「……よくねぇ」
ムクノちゃんの下半身は生足丸見えのノーガード状態だし、俺の下半身はネジ山状態だった。
こういう時、選択肢は二つだ。“ハイドロポンプ”か“めいそう”だ。無論、現状はめいそう一択。
俺はネジ山の荒ぶる大自然を静めるべく、脳内にアローラの水平線を思い起こした。
アローラ地方、綺麗な海、水着のおねーさん……。
水着姿のムクノちゃん。おっぱいがデカい。尻がデカい脚が太い……。
汗の滴る肌、甘い匂い、柔らかな身体……。
おや、ナッシーのようすが……?
「……いいや、イッシュ地方にしよう」
瞬間、イッシュ地方で確かに存在した記憶が蘇る。
観覧車、男二人、密室、何も起きないはずがなく……。
『ふっ! やるではないか少年! 名を何という! ほぉう、ケヤキか! 良い名だな! よし、ボクのおごりで観覧車に乗せてあげよう!』
『おぉう……観覧車の中は、まるでサウナだなケヤキ君! ああ……君の肌に汗が伝っていくのが見えるぞ……! ぬふぅ……とても綺麗だぞケヤキ君、なんて美しい少年なのだ君はぁ……!』
『ところで……ケヤキ君。君に、恋人などは……いないのか?』
ケヤキは逃げ出した。
生まれて初めて、俺は心底負けを認め、敗北の苦汁をジョッキ一杯飲み干した。
逃げて勝つという、良い経験になった。
「……ヨシ!」
こうして、俺はピンチを切り抜け、ネジ山を更地に変える事ができたのだった。
見ると、布団で寝ていたムクノちゃんがもぞもぞ動き始めた。
やまおとこがいなけりゃ即死だった。
「んぅ……あ、おはようケヤキくん♡ 朝からケヤキくんの顔が観れて幸せだよ♡」
「おう! おはようムクノちゃん! 良い朝だな!」
俺は満面の笑みでサムズアップした。
ピンチの後こそ、生を実感するものだ。必要以上に元気になるのも致し方ない。
今、目の前にいるのは“彼”ではない。おっぱいとお尻の大きなムクノちゃんなのだ。こんなに嬉しい事はない。
「ん~? 何か良い夢でも見たの?」
と、不思議そうに首をかしげるムクノちゃんなのであった。
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