【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話   作:いらえ丸

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 誤字報告も助かっています。ありがとうございます。

 例によって独自設定多めです。
 あなごポケモンがいるならアナゴがいるんでしょうという話です。

 筆者の釣り知識は昔見た釣りバカ日誌程度です。
 つまりにわかです。細かいとこ変でもご容赦頂きたく。

 やっぱり感想がもらえるとモチベが上がりますね。
 ありがたい事です。


永遠に幸せでいたいなら、釣りを覚えるべきだ。

 ポケモンとは、不思議な不思議な生き物である。

 

 ご存じの通り、ポケモンは色んなタイプに分けられる生き物だ。

 溶岩や火炎を操ったりする“ほのおタイプ”。草木や花々を象ったりする“くさタイプ”。電気や磁気を宿したりする“でんきタイプ”。

 そんでもって進化したり形態変化したりもしちゃうのだから、ポケモンとは実にファンタスティックな生命体である。

 

 さて、そんな種々様々なポケモンの中には、“みず”というタイプのポケモンもいる。

 海で泳いだり池に潜ったりする、全体的に魚っぽいポケモンだ。

 そう、みずポケモンの多くは水生生物っぽいのである。

 当然、その“ぽさ”の由来であるところの不思議でない生き物も、この世界には存在しているのだ。

 

 ヨロイ島は四方を海に囲まれた自然の孤島である。当然として、海にはお魚がたくさんいる訳だ。

 そうなると、アウトドア好きの俺的にはこう思う。

 

「そうだ、釣りをしよう」

 

 何故、釣りなのか。

 そこに海があるからさ。

 

 

 

 ネジ山地殻変動事件の後……。

 

 俺は幼き日のアローラ精神に導かれる様に、マスタード師匠から手漕ぎボートと釣り道具を借りて、いざいざ大海原へと繰り出した。

 ヨロイ島周辺には多くのみずポケモンが生息しており、中にはこういう小舟を襲ってくるポケモンもいるのだが、そんなの対策済みである。強いトレーナーである俺ちゃんはお舟でゆらゆら綺麗な海を満喫だ。

 

「私こういうボート乗るの初めてだよぉ♡ リストにはなかったけど、夢がひとつ叶った気分♡」

 

 そして、ごく自然な流れでムクノちゃんもついてきた。

 ボートの上、俺と向かい合って座るムクノちゃん。日除けのおしゃれ帽を押さえながら、彼女は心底幸せそうにニチャァと笑っていた。

 

「落ちないよう気ぃつけな~」

 

 貸してもらった手漕ぎボートは舟の頭を背にしてオールを漕いで進む仕様である。そうなると構造上、よっこいしょとオールを漕いでいると常にムクノちゃんのおっぱいを拝む事となる。

 現在、ムクノちゃんは夏用アウトドアファッションをしている。機能性重視のそれは脚の露出こそ少ないが、その身体のラインはばっちりと分かるデザインだ。

 そんなのを前にして、炎天下でボートを漕ぐ俺の精神は、もはや無我の境地に至りつつあった。イッシュでの経験がなければヤバかったね。

 

「疲れたら言ってね、私が念動力で動かすから」

「こういうのは、筋肉で動かすのが楽しいのさ」

「ふへへ……♡ 男の子なんだぁ♡」

 

 波に揺れるデカい乳。常時目に入る太い脚。それらが俺のPPを削り……いや回復させてくる。帽子の影と太陽の光でチラチラしているムクノちゃんの鎖骨が実に眩しい。

 グラサンしてくればよかった。これじゃ視線がモロバレルだ。

 

「よぉし。さて、この辺でいいかな」

「うん、近くにサメハダーも来てないしね」

 

 しばらく漕いでいい感じの釣りゾーンに到着すると、いったんオールを固定して釣り道具を用意した。

 ムクノちゃんも奥様から借りた竿を用意して、意外なことに慣れた手つきで餌を取り付けていた。

 

「アウトドア慣れしてるっての、ホントだったのな」

「ケヤキくんに嘘は言わないってぇ♡」

 

 ……そうなると、「好き♡」とか「愛してる♡」とかも嘘じゃないって事になるが。

 それはさておき。

 

「アローラっ」

 

 ひょいっと、ボート釣りようのやや小ぶりな竿をしならせ、ヨロイの海に戦いを挑んだ。

 

「なにそれ?」

「アローラ地方の挨拶」

「へぇ。アローラっ」

 

 少し遅れて、ムクノちゃんも竿をしならせた。

 

「まぁ釣りの時に言う言葉じゃないけどな」

「ふへへ、じゃあ何で言ったの?」

「さぁ?」

 

 言いながら、俺は上空にいるドンカラスに手振りで合図を送った。サメハダー警戒令だ。

 ドンカラスはひと鳴きすると、遠巻きにボートの周りをぐるぐる飛行しはじめた。これで安心して釣りができる。

 

「なに釣れるかなー」

「釣れたら何でも嬉しいもんさ。できたら食える奴がいいけどな」

 

 今回、俺たちが狙っているのは食用のお魚である。

 何も釣りとはみずタイプのポケモンを捕まえる為にあるのではない。原初、それは生存の為の手段であった。

 昨日はポケモンバトル代でご馳走になったが、今日はその食卓の彩に貢献したいところである。

 とはいえ釣りは釣りだ。釣れるも八卦。釣れないも八卦である。マスタードさんと奥様にはあんまり期待しないでほしいとも言っておいた。

 そもそも、性格的に釣果にさほど興味がないのが俺であった。

 

「ちゃんと水持ってきてるか?」

「うん、麦茶持ってきてるよ。ケヤキくんも喉乾いたら言ってね」

「おう、助かる。俺ただの水しか持ってきてねぇから」

 

 ゆらゆらと、青い海がボートを揺らす。

 波に同期するように、目の前では健康優良美少女の不健全部位が揺れていた。いやその服装で揺れるのはレギュレーション違反でしょと言っちゃう程のダイマックスっぷりである。

 いかんいかん、どうにも今朝から俺の視線が釘付けになっている。うろたえない、あくタイプ使いはうろたえない。

 

「ふっ、ふへへへへ……♡」

 

 と思っていると、何か強い視線を感じた。

 視線の主は案の定ムクノちゃんであった。俺が煩悩と格闘している間、彼女はずっと俺を見ていたらしい。

 

「なに?」

「ん、ホクロ見てた♡」

「はあ」

 

 変わった趣味をお持ちである。確かに俺の右の鎖骨にはホクロがあるが、そんなの見ても面白みはないだろう。

 どうせなら俺のこのイケメンフェイスを見ていた方が目の保養になると思う。昔から色んな人にイケメンだのハンサムだの美ショタだのと言われて来た顔面である。多分ホクロよりは価値があるんじゃなかろうか。

 

「エッチなホクロだなあって♡」

「ちょっと何言ってるか分からないですね」

 

 あー、いやいや、色んな人がいるように、色んな性癖ポイントがあるものだ。俺が知らないだけで、意外とガラルではメジャーな性癖なのかもしれない。

 実際、俺も顔にホクロのある女子好きだし、それの逆版だと思えば……いやエッチなホクロってのは分からんわ。

 

「昔、寝てるケヤキくんのホクロ突っついてたんだけど、それでも起きなかったよね」

「昔の俺どんだけ寝ぇ深いんだよ」

 

 そうホクロホクロと言われると、何となくムクノちゃんのホクロも探してしまう。

 顔にホクロは……ないな。艶黒子とかけっこう好きなんだけど。あ、右の首にホクロ発見。ムクノちゃんはめちゃくちゃ色白だから目立つな。

 

「えっと……そう見られるとちょっと恥ずかしいです……」

「最初に見てたのムクノちゃんじゃん」

「いや、それとこれとは別じゃないですか。どうせ見るならおっぱいでも眺めればいいじゃないですか。ケヤキくん、おっぱい好きでしょ?」

「いや、今はホクロ探しに集中したい。あ、左腕にもう一個発見」

「わー! こっち見ないでください! もうっ!」

 

 珍しく怒ったムクノちゃんは、ホクロを隠してプイッとそっぽを向いてしまった。その横顔はほんのり赤い。

 見慣れない反応も見れた事だし、ホクロ探しの旅はこれくらいにしよう。

 何かバトルに勝った気分である。

 

 さて、何気にさっきから竿がクイクイ引いている。開始早々これは幸先が良い。

 糸を巻き上げると、竿の先には小さなお魚がぶら下がっていた。

 

「んー? これは……」

「揚げれば美味しい奴だよ」

 

 見慣れない魚を矯めつ眇めつする俺だったが、向かいのムクノちゃんは何事もなく答えた。

 なるほど、感覚派アウトドアの俺と違い、ムクノちゃんは学術派アウトドアらしい。

 何かバトルに負けた気分である。

 ……いや、ガラル魚に詳しくないだけだし。アローラ海域なら俺のが詳しいし。

 

 まあ、そんなのはどうでもいい。

 

「よし、じゃあまず一匹目だな」

「幸先いいねぇ~」

 

 件の魚を釣りバケツに入れると、俺はもう一度竿をしならせた。釣り再開だ。

 

「おっ、ムクノちゃん引いてる引いてる」

「あ、ほんとだ。よいしょ!」

「これは?」

「さっきと同じだね。こっちはメス」

「へぇ~、どこで分かるん?」

「んーっと、このヒレの先が……」

 

 しばらく、穏やかな時間が流れる。

 

 釣りの本懐とは何か、それは時間そのものだと俺は思う。

 釣果はあるに越した事はないが、釣りは釣りをしている時間こそが醍醐味であり、楽しいポイントなのだ。

 

「でね、オスは海水の温度が上がると……」

「ムクノちゃん! また引いてる引いてる!」

「あっ! あぁ……エサだけ取られちゃった」

 

 綺麗な海の上、俺とムクノちゃんはあれこれ他愛のない話をしながら釣りの時間を楽しんだ。

 

 海の匂い、海の風、海と空の青。

 やっぱり、釣りは良い。

 

 

 

 ボート釣りを始めてそれなりの時間。いったん戻ろうとなった時、それは起こった。

 

 びゅうと強い風が吹き、ぐらりと船体が揺れた。落ちるまいと俺もムクノちゃんもボートにしがみつき。バランスを取った。

 そして、ムクノちゃんの被っていた鍔広帽が風に飛ばされてしまったのだ。

 

「あっ……!」

 

 というムクノちゃんの声より先に、俺はボートの外へ飛び出していた。

 ぶっちゃけ反射だった。なんでそんな事をしたのか、よく分からない。勿体ないゴーストが囁いたのか、物を大事にする旅人精神が身体を動かしたのか。分からないが、俺は帽子に向けてジャンプしたのだ。

 

 風はすぐに止んだが、帽子は水面に落ちた。波にさらわれるといけない。俺はアローラ仕込みの泳ぎですぐに目当ての帽子をゲットした。

 まあ、多少塩水に濡れたが洗えば問題ない。ボートに戻り、よっこいせと乗船した。

 

「け、ケヤキくん……」

 

 というムクノちゃんの声の方に、帽子を差し出す。

 

「顎紐くらいつけなよ」

「う、うん。ありがとうケヤキくん」

 

 格好つけたかった訳ではない。もしそうだとすればもっとスマートに、華麗に帽子をキャッチしていただろう。

 なんとなく、ムクノちゃんの眼を見れなかった。

 

 ふと、未だ空でサメハダーを警戒してくれているドンカラスと目が合った。

 そうじゃん、普通にドンカラスに取ってもらえばよかったじゃん。

 俺は後先考えない自分が恥ずかしくなってしまった。

 

「……やっぱり、ケヤキくんは優しいね」

 

 呟くような声に目をやると、ムクノちゃんは海水に濡れた帽子を大事そうに抱えていた。

 

「あ……」

 

 あぁ……そうじゃん。ムクノちゃんは超能力使えるんだから自力で取れたんじゃん。ていうか邪魔したんじゃねコレ?

 考え無しの無駄な行動を自覚し、俺は余計恥ずかしい気持ちになった。リソースの使い方を間違えるなど、レンジャー失格である。

 

「……ありがとう、ケヤキくん♡ 今、この帽子は世界で一つだけの最高の帽子になったよ♡」

「お、おう……」

 

 曰く、彼女は俺に嘘は言わないらしい。

 存外、悪い気分ではなかった。

 俺も、言ってる意味を理解できる感性の持ち主だからだ。

 

 

 

 そんなこんな……。

 

 あれから何度か場所を変えたり陸に戻ったりして、マスター道場に帰還。

 

 舟も竿も諸々洗って返すと、お礼とばかりに本日の釣果を譲渡した。釣果の方は上々で、釣った魚を奥様に渡すとたいそう喜んでくれた。

 曰く、全部から揚げにするとの事で、魚を捌くのには自信がある俺は夕飯の手伝いを申し出たのだが、何故か奥様とムクノちゃんに台所を追い出されてしまった。

 

「ケヤキくんは待っててね」

「あ、はい」

 

 追い出す事はないだろと思いつつ、暇なので道具の点検などしていると、昨日ボコした門下生ABCが再戦を申し込んできた。

 どうやら、対策した今なら3対1で勝てる気らしい。そういうの、あく的には大歓迎である。

 俺は夕飯が出来るまでの間、門下生たちとしこたまバトルした。

 もちろん、勝った。多少対策はしてきたようだが、対策される事を対策しないトレーナーはモグリだろう。伊達に未来のチャンピオンと言われて来た俺ではない。

 

 夕飯のお魚はとても美味しかった。

 昨日と同じく味噌汁や副菜はムクノちゃん製でこれまた美味い美味い。から揚げの油を味噌汁で流すと、炊き立て白米がすすむすすむ。んでもってムクノちゃん作の煮物も俺好みで最高だった。

 昨日と同様に、夕食後の俺はまた満腹状態になった。

 

 で、夜も深まりおやすみの時間。

 

 シャワーを浴びてからあてがわれた部屋に入ると、当然の権利の様にムクノちゃんが先行して布団を敷いていた。

 

「ヘイらっしゃい♡」

「おあいそ」

 

 戯言は無視して、敷布団エリア外の畳スペースで寝る事にした。こちとら釣りとバトルで眠いんじゃい。

 なに、枕さえあればどこでも寝れる。

 

「んん~、がおーっ!」

「がおーって何だがおーって」

 

 するとムクノちゃんは、掛け布団を被り人間ユキワラシに進化して襲い掛かって来た。

 立ち上がるのも億劫だったのでゴロンずるりと寝たまま逃げていると、布団ワラシもゴロゴロ転がって近づいてきた。

 

「ん~、おしい! もう少しで捕まえられたのに!」

「はははっ、追いつけまい!」

 

 そのうち変なテンションになり、狭い四畳半でゴロゴロしまくっていると……。

 

 ドン!

 

 と、隣の部屋から盛大な壁メガトンパンチをいただいた。

 そういえば、隣室は男子部屋であった。すまんね。

 

「あー、おやすみ」

「はぁい、おやすみ~」

 

 結局、畳上で隣り合って寝る事になった。

 掛け布団は無理やりシェアさせられた。




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