【完】再会した幼馴染オカルトマニアちゃんにお薬飲まされて何やかやあった後の話 作:いらえ丸
誤字報告も非常に助かっています。感謝の極み。
次話と繋げようとしたのですが、長くなりそうだったのでいったん切ります。
要するに繋ぎの話です。
ケヤキは島めぐりの一年後に大学に行きました。ポケモン世界の学校関連ぶっちゃけよくわからぬ。
酒は飲んでも飲まれるな、とは誰に教えてもらったんだったか。
誰だかは知らないが、俺が初めてその言葉を知ったのはタマムシ大学在籍中の事だったと思う。
朝起きたら隣で異性が寝ていたとは、大学ではよく聞く類の話だった。
曰く、飲み会が終わって気がつけば、異性の友情が愛情に変化していただとか。
曰く、初対面で意気投合した相手と泥酔したままホテルに行って一夜限りの恋をしただとか。
そういう事のあった人たちは、そのまま普通に友達関係を続けられる人もいたし、気まずくなって離れてった人もいたし、中には子供がデキて結婚までしちゃった人達もいた。
そういった類の話を聞いていた俺は、当時まだ12とか13の歳の頃だった。酒なんて飲んだ事ないし、ポケモン以外にパートナーもいなかった。
近くにいる人たちは、遠い別の世界の話をしている様に感じていた。
そして俺は、ああはなるまいとも思っていたものだ。
ご覧のあり様だよ。
一度目、俺は被害者だった。
黒ずくめの幼馴染との会話に夢中になり、紅茶の中に仕込まれた薬に気づかなかった。
俺は幼馴染に薬を飲まされ、目が覚めたら……ダイマックスしていた。
二度目、俺は加害者だった。
自分に好意を抱いている女の子に酒を飲ませ、勢いのまま同衾した。
記憶はないが。
「……記憶がないぞ」
そう、俺には事の最中の記憶が欠落していた。
ぼんやりと、お互いフラフラになってムクノちゃんの家に行って、一緒にお風呂に入って……それ以降の事は覚えていない。
「くぅ……くぅ……♡ ケヤキくぅん♡ 好きぃ……♡」
隣を見る。全裸のムクノちゃんがだらしない顔で眠っていた。
飲酒、お風呂、ふかふかベッド……何も起きない訳ねぇのである。
年齢、距離感、性欲を持て余す……何も起きない方がおかしいのである。
記憶はないが、状況証拠は揃っていた。なにせムクノちゃんには前科があり、俺には前歴があったから。
「万事休すか……」
これまで、ムクノちゃんは何度か俺に交際を申し込んできた。
俺は、その全てを断ってきた。理由は簡単、気楽な独り身でいたかったのだ。
旅を続けていたいし、責任を負いたくないし、何より恋愛感情のない相手との交際はとても汚らわしい事の様に思えた。
この期に及んでも、俺はムクノちゃんに対し恋愛感情を抱いてはいなかった。俺がムクノちゃんに向ける好意はあくまでライクであり、エロ目線なのだ。それを恋愛感情とは言えまい。
だが、今後はそんな事はいってられなくなる……かもしれない。金で解決できるのか、逃げ場はどこだと、俺の卑怯な部分が騒ぎたてる。責任など、どう取れば良いと言うのだ。
「ん、んぅ~……あ、ケヤキくん♡ おはよう♡」
そんな事を考えていると、ねむねむのムクノちゃんが起床した。上体を起こした勢いで、彼女のおっぱいがブルンと揺れた。なんつー豊満さだ。視線は完璧にロックオンされた。昨晩、俺はあの山脈を好き放題していたのか……。
だが、記憶がない。なんてもったいない。
「ふへへ♡ 昨夜は楽しかったね♡」
「おうふ!」
言葉のバレットパンチ。俺の心の急所に当たった。
責任という名のタイプ一致技は俺に効果抜群だ。
「あ、服脱ぎっぱなし……」
ムクノちゃんが何か言っているが、俺は己の奥底にある信念と向き合っていた。
今だ。今、覚悟を決めろ。でなくば、お前はあくタイプにあらず、欲望のまま他者の好意を食い物にする醜悪に落ちるぞ。
あくであっても、醜くあるな。義理も道理も人情も一旦置いて、俺は兎に角腹をくくった。
「ムクノちゃん!」
「はっ、はい!?」
ベッドから飛び退いて、彼女を正面から見て直立した。
全裸なので、俺の野生も草むらから出ているが、そんなのはどうでもいい。
「き、昨日はごめん! 俺、何も覚えてない!」
「え……?」
勢いよく頭を下げる。角度はきっちり90度。
まず正直に答える事にした。以前は逃げる為に行った言葉だが、今度はまっすぐ受け止める為に言い放った。
「殴りたければ殴っていい! 気が済むまでやってくれ! 訴えてくれてもいい! そうでなくても責任は取るから! 慰謝料も示談金もなんでも払う! 絶対逃げない!」
「え、あの……昨日の、忘れちゃったの……?」
姿勢はそのままで顔を上げると、ベッドの上のムクノちゃんと目が合った。
彼女は血の気が引いた顔をして、震えた瞳でこちらを見ていた。
ちくりと、俺の胸にトゲが刺さる感覚。だが、彼女の心身へのダメージはこんな程度じゃないはずだ。多少の罪悪感など、甘んじて受け止めねばならない。
「お店で、私の事褒めてくれたのも。がんばってきたねって頭撫でてくれたのも……?」
「それは覚えてる……」
「帰り道、私の事好みの女だって、素敵だって言ってくれたのも……?」
「それも覚えてる……」
「お風呂で、私の事かわいいって……努力してきた身体だって、褒めてくれたのは……?」
「覚えている、が……」
「……ん?」
と、ムクノちゃんが首を傾げた。
見ると、真っ青だった顔からは血の気が戻っており、その眼には困惑の色があった。
「……特に忘れてなくない?」
「……え?」
いや、記憶はそこで途切れているから、その後の事が全く記憶にないんだけど。
「ご飯の後……部屋に着いて、私が泥酔してたからお風呂入れてくれて、お水とかパジャマとかのお世話もしてくれて、ベッドまで運んでくれて……」
「ああ」
「身体熱いからって私がパジャマ脱いで、フラフラしてケヤキくんの服にコップのお水かけちゃって……」
「ああ」
「……それだけ、なんじゃないのかな?」
「あぁ……ん?」
で、続きは、どうなったというのだろう。
いや続きがないのか?
本当に、それだけで終わったのか?
「あの、その後はどうしてました……?」
「えっと……私がケヤキくんから離れたくないって駄々こねてしまって、そのまま寝ちゃいました」
「うん」
「で、朝になりました」
えーっと、つまり……。
「大丈夫って事ですか?」
「何が大丈夫なのかは分からないけ……あっ!?」
バッと、女の子座りしていたムクノちゃんがベッド上で立ち上がった。
ベッドの高さ分、彼女の頭が視界の中心にある。全裸なので彼女のダイヤモンド&パールがモロバレルなのだが、今はその目にくぎ付けだった。
「そう、いう事……ですかぁ」
そしてそのまま、もう一度ベッド上で横座りになった。
ここにきて、俺も事の次第に気づいた。
「せ、セーフだったって……事だよな」
俺も、目の前のベッドに倒れ込んだ。
あ、安心した。つい、早とちりしてしまった。
何もなかった。何も起きなかったのだ。俺の欲求バトルは、性より睡眠が勝ったのだ。よくやった眠気、ありがとうムシャーナ。
「ケヤキくんが寝ている私にイタズラなどしていなければ、セーフ? なのではないかと」
「する訳ないだろ、いくらなんでも……」
「私ならしますが」
「え?」
「あっ、えぇと……なんでもありません」
「あ、なんでも……うん、なんでもないな」
なんかよく分からない会話だったが、どうにも頭が急ブレーキしたせいか思考が鈍くなって詮索する気にはなれなかった。
安心したところで、俺は目の前にあった肌面積の多さから目を外した。
大丈夫、こっちもセーフなはずだ。
「……服、着よっか」
「そうだね」
俺とムクノちゃんは、お互い背を向けたまま人間らしい衣服に身を包む事にした。
● 〇 ●
さて、妙に気まずい空気のまま朝の諸々を終えて、俺たちはリビングにやってきた。
「お紅茶淹れるね」
「あ、ああ」
と、普段の声色で話すムクノちゃん。
気まずさを感じているのは俺だけらしく、彼女は既に常の自分を取り戻していた。
その間に、俺はこれまでとこれからについて考える事にした。
ヨロイ島で、俺は近いうちに彼女との関係に決着をつける必要があると心に留め置いた。
覚悟には時間がいると思って、あの時はああ言ったが、今後このような状況にならないとは考え難い。俺の心と股間に、余裕などないのだ。
さっきも思ったが、きっと今がその時だ。
「ムクノちゃん」
「なに?」
紅茶を淹れてくれたムクノちゃんに、俺は意を決して話しかけた。
「これからの事で、ちょっと真面目な話がしたいんだけど」
「うん、わかった」
テーブルを挟んで、向かい合うように座った。
「お砂糖はこれね」
「ああ。ありがとう」
こうやって向かい合うと、ムクノちゃんが如何に俺好みの女性であるのかを再確認させられる。
真ん丸な瞳に、癖のある長い髪、病的と言える程に白い肌。その胸は大きく、安産型の下半身ははち切れんばかりに張りがある。
再会して、一緒に歩いて、近くにいて、この子の魅力を知れば知るほど、俺の中で罪悪感が増していく様だった。
だからこそ、今ここで、自分の気持ちにケリをつけねばと思ったのだ。もう一度先延ばしにしては、一生何もできないと思った。
「あのさ……」
故に、覚悟だ。腹をくくれ、意思を貫け。ちょっと言い難い事も言わなくてはならない。
理想の女性の目を通して、もう子供でなくなってしまったケヤキという男と向き合うのだ。
「ムクノちゃんはさ、俺と恋人に……結婚したいって言ってたじゃん」
「うん」
「それは、今でもそうなの?」
「うん。結婚したい。あ、別に結婚にこだわってる訳じゃなくて、一生一緒にいたいなって思ってるだけだから、システムや関係性には思い入れはないんだけど」
「……そう。それは、俺の事が好きだから?」
流石に、ちょっと言うのが恥ずかしい言葉だった。けれど、確認せずに話を進める訳にはいかないと思った。
対し、ムクノちゃんは何のためらいもなく、
「うん♡ 私は、ケヤキくんの事が大好きだよ♡」
そう、言ってのけた。
何の衒いも、恥ずかし気もなく、真っすぐ自分の心を晒してみせたのだ。
「そ、そうか……」
向けられる好意を確認して、気分をアゲたかったとか、そういうのではない。
やっぱりそうなのか、という諦観が、俺の心に在る事を確認したかったのだ。
過去、俺に告白してきた女の子はたくさんいた。
けれど、俺は向けられる好意のどれにも興味を示さなかった。恋人とか、彼女とか、どうでもいいという気持ちがあった。愛とか恋とか全く全然これっぽっちも理解できなかったし、共感できなかった。
そして何より、ムクノちゃんは、ひとつ大きな勘違いをしている。
それを正さずに、ただ関係を絶つなんてあんまりだ。
俺は、もうあの頃のケヤキ少年ではないのである。
「ちょっと、ガラル出てからの話、していい?」
「うん。聞かせて」
だから、一から十まで話をする事にした。
サイコメトリーでは読み取れなかったであろう、ろくなもんじゃない話を。
この先どうするか、どうなるかは、その後だ。
「俺は……」
「あっ、ちょっと待ってて。朝ご飯作るから」
「あ、はい」
そうして、朝食の香りと共に、俺は俺の過去について話す事になった。
朝餉が美味しくて、なかなか話し出せなかったが……。
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